音の快楽的日常

音、音楽と徒然の日々
Hunter Killer

 

 

「潜水艦ものにハズレなし」とは映画好きがよく言うことば。

初日に仕事が休めず、土曜の朝にまずはと観に出かけた「ハンターキラー 潜航せよ」。

潜水艦を舞台にした映画は漏れなく観てきたつもりだが、

今回の作品は、国内で見られるだろうものとしては、

あのミレニアムのミカエル・ニクヴィストのほぼ最後の作品ということもあり、

どうしても映画館で見たかった。

(※リュック・ベッソン製作の"Kursk"にも出演、奇しくもこれまた潜水艦の物語)

 

まだ公開されて3日目とネタバレはよくないので、ストーリーは冒頭のトレーラーを見ていただくとして、

初見で強烈な印象の映像だったので、今日は連日の2回目(劇場は変えたが)、

ようやく細かいところを追いかけられた次第。

こういうときは英語力のある方が羨ましい。

 

ロシア国内のクーデターをきっかけに物語が進む関係で、ロシア人の俳優もたくさん出演しているが、

彼らのセリフの方がずっと聞きやすいのはなぜだろう。

要所要所、ロシア人の会話も英語が使われていて、その使い分けはなんだろうと思ったのはともかく、

(潜水艦が)沈んだ!(或いは沈められた)のsankなのかsunkなのかが聞き取れない耳だと、

2度目に字幕へ目をやるのを少なくすると、ちょっとどころか結構きつかったり(笑)。

 

話が逸れたが、本作には随所に細やかな演出、演技があって、

ひょっとしたら原作を読み込んでいるとその辺りぴんと来るのかもしれないが、

同じ原潜ものでもあのK-19のようなどっしりと重い雰囲気で当初から暗雲垂れ込める的な絵とは違い、

予定調和的に終わるであろうことを予感させつつも、

深海の闇と晴れ渡った海上の落差にも似て、様々な陰陽を織り交ぜながらの物語は、

いわゆる戦争もの、戦闘ものとして観てしまうには余りに惜しい。

 

 

 

 

本作はOSTも国内盤でリリース済み。

同じくジェラルド・バトラー主演の「エンド・オブ〜」のシリーズのサントラも手がけた、

トレヴァー・モリスが作曲。

腹の底にドスンと来るような低音使いが印象的な、

スケール感たっぷりのThe映画音楽な作・編曲作品に仕上がっている。

 

嗚呼それにしても惜しまれるミカエルの早逝。

「コロニア」の頃には(役柄もあるが)まだふっくらとして病気のようには見えないが、

その後、急に仕事を減らしていたようだから、ご本人としては本作も覚悟を持っての出演だったのかも。

その極まったものを感じてしまうせいか、エンディングの清々しさとは裏腹に、

彼の演じた敵艦のアンドロポフ艦長の機微が胸に突き刺さる。

何にでも最後はあるのだけれども、次作も次々作もぜひ見てみたかったと痛感した2時間×2だった。

 

 

 

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Nevermind

アベンジャーズの最終章を見る前にこれを見なくては、と指南いただいたこと複数。

行こうとしてなかなか行けずとうとう今日になってしまったが、

桜を見ながらのんびり歩いて街に出た日曜の午後。

 

映画「キャプテン・マーベル」はアベンジャーズの誕生秘話で、

ここにきて強すぎる!女性ヒーローというのも今ひとつしっくりこなかったが、

何が一番楽しめたかというと、挿入歌や絵に取り込まれたちょっとした背景などが、

おやー!とくすぐられるような気の利き方で、

ミュージック・ラヴァーにはなかなか面白い作りになっていた。

 

ストーリーはややこじ付けなところもあって、おやまあの連続だけど、

90年代のヒットソングが劇中ここというポイントで流れ、シャキッとなる。

取り上げられたヒットチューンについてはうまくまとめてくれているサイトがあったので詳しくはそこで。

 

→ Virtual Gorilla  https://virtualgorillaplus.com/music/captain-marvel-90s-songs/

 

私的には、この曲が流れてそういえば明日から4月だったと背筋が伸びたのだった。

NirvanaのNevermindから"Come As You Are"。

 

 

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日々に流され、忘れかけていたことをふと思い出させてくれる気合いスイッチのような曲。

年度の切り替わりと個人的な区切りが同じ時期になるわたしには、

今日、3月31日に偶然この映画をみて気持ちの切り替えができ、

もやっとしていた胸中にようやく春一番が訪れた気がした。

季節の素晴らしさに救われつつ、映画に背中を押されつつ。

今日で1年の一区切り。気持ちを新たにまた一周、時の巡りを感じながら前を向こう。

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1987

雪が降る降ると言いながらわたしの住まいの近くはほとんど降らなかった。

その代わり、空気が氷のように冷たく、鉢植えに水を遣っても凍ってしまいそうだった。

張り詰めたような冷たさは一体いつ以来のことだろう。

 

iMacのおまけアプリに「写真」というのがあって、連休中に少し遊んでみた。

普段はもう一つ古い世代のiPhotoというソフトで写真を整理しているが、

「写真」には新しい機能がたくさんあって、それがなかなか面白かった。

例えば、メモリー。過去の写真を日単位でアトランダムに見せてくれる。

今日は寒い日だからというのではないけれど、5年前の大雪の日の写真が次々と目の前に現れた。

以前の広いマンションに住んでいた頃で、ベランダの欄干にもしっかりと雪が積もり、

氷の粒というか雪の結晶というか、あの雪印の形がマクロレンズを通してうっすら見えるほどで、

いやもう雪が苦手な人種には部屋に引きこもるしかない天気だったけれど、

当時のマンションは寒くて暑いというあまりよろしくない建てつけで、今の部屋よりずっと寒かった。

 

最上階の部屋は雪でも降ろうものならまるで冷蔵庫状態で、これなら本物の冷蔵庫も不要と思えるほどだった。

その教訓が生かされた今の部屋では、外気が氷点下でなければ、暖房もそう必要と感じない。

それでもこの連休の週末は久々に部屋の中の空気が冷たく、

どうやっても咳き込みが止まらないので、おとなしく部屋に籠ることとなった。

 

映画小僧にはもってこいの季節、積ん読ならぬ未視聴盤を端から見ていても、

映画館でも見た「1987、ある闘いの真実」が改めてすごい1本だと思わざるを得なかった。

 

 

 

 

演技力に定評ある俳優が何人も出ている豪華版ということで映画館でも初日に乗り込んだが、

最近とみに涙腺の緩いわたしにはもう一度、映画館に見にいくのがしんどかったので、

このブルーレイが出るのを待つこと数ヶ月、週末に届いたので早速というわけで。

 

本作の背景となっているのは、以前紹介した「タクシー運転手」の光州事変の数年後、

ある学生の死をきっかけに民主化運動のうねりが頂点に達した時代。

光州事変の記録フィルムを学生サークルのオルグで流す様子などは、

実際にあの「タクシー運転手」に登場する外国人ジャーナリストが撮った映像を使っているとはいえ、

若い人々の葛藤が生々しく見て取れる。

闘って勝ち取るという歴史体験の有無は、隣国でありながら様相を異にするこの国に

ひょっとしたら足りないものの一つかも知れないと思いながら、

多くの登場人物の人となりが丁寧に織り込まれ、表現されていて、

単なる告発ものや歴史ものでもない、さりとてサスペンスでもない独特の重厚さとなって、

観るものの胸に迫り問う。

 

主だった登場人物の誰の視点で見るかによって、物語に感じる展開や流れも変わるだろう。

2時間強の作品が、釘付けにされたままあっという間に終わり、

間を置かずしてもう一度見たいと思わせる根源は一体なんだろう。

観る者にいろいろな問いかけがなされているが、答えは必ずしも一つではない。

また正しいか正しくないかではなく、答えは自らが見出すべきものだと、出してこそだと。

 

もう1本、発売されたばかりのディスクで見た作品があるが、

こちらも同じ韓国作品とはいえ、観る者に余りに重く、暗い影を落とす。

なので、ここでは紹介しないが、両国の関係が様々な場面で冷え切っているとはいえ、

ここ数年の韓国映画は、詳しい人からすれば勢いが落ちたということらしいのだけれども、

映画好きなら見て損はないと、そっとつぶやいておきたい。

 

ちなみに本作のサントラ盤はどうやら出ていない様子。

「タクシー運転手」と違い、音楽的な要素はかなり少ないので仕方ないのかも。

劇中、登場人物が手にするポータブルカセットプレーヤーが何とも懐かしく、

そういえば、87年といえばわたしもまだ通学時にウォークマンを手放せなかった。

当時のわたしにはペレストロイカとベルリンの壁が最大の関心事で、

海を隔てた隣国でまるで内戦のような事件が起こっていたことにほとんど関心を持っていなかった。

恥ずかしいというにはあまりに簡単すぎてことばが見つからないが、

今こうして映像を前にして、今だからこそ考えるべきことが山ほどある、

その感触をずっと忘れずにいられるよう、ここに備忘のためメモしておくことにしよう。

 

 

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ゴールデンスランバー

毎週映画館に通うのはなかなかしんどいのでと、去年はストリーミングを幾つか試してみた。

Netflix、U-Next、TSUTAYA、Hulu。。。

それぞれに特徴があって画質も費用と釣り合うものであったが、

困ったのは、契約しているのだから何か見よう、としてしまうことだった。

 

確かに、見そびれてしまっていたものを拾い出して端から見るのにはいいのだけれど、

隙間時間を映画で埋めるような見方はどうも良くないと感じた。

なので、面白いオリジナル作品がたくさんあったり、なかなか楽しかったけれど、

最後の1つも今日、解約してしまった。

 

***

 

さて、ゴールデンスランバーと聞いて思い浮かぶのは小説、それともビートルズ?

年始からインフルエンザの猛威にも負けず、週末映画館を守っている(笑)。

彼の出ている映画は一通り観ることにしているので、と出かけたシネマート新宿、

カン・ドンウォン主演の「ゴールデンスランバー」。

 

 

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チラシにある通り、原作は伊坂幸太郎の小説。

日本の映画作品を見た主演俳優が提案しての映画化で、

作品自体は、サスペンスやアクションというより青春群像劇。

もちろん韓国映画お得意の追いかけて追いかけられてのシーンは見応えたっぷりだが、

驚いたのは、学生時代のバンド演奏シーンで流れた曲を聴いたときのこと。

韓国のミュージシャン、シン・ヘチョルが残したアーカイヴに出演者の声を乗せたものだそうだが、

本当にバンドの生演奏でコーラスしているような熱気が伝わってくる。

 

 

 

 

もちろん、サントラのCDにもそれらの曲が入っていて、

さらにいうまでもなく、肝心のGolden Slumbersも複数バージョンで楽しめる。

特に女性ボーカルバージョン、こういう透明感溢れるアレンジにも合うんだとひとりごちた。

ただサントラ盤としては構成が少々寂しく、apple musicなどでこれという曲だけ聴いてもいいかもしれない。

とにかく寒い週末、雪が降ると言って降らなかったがこうしていても指先が冷たくなる。

さて明日から1月後半、せめて音楽は熱い系で行こう。

 

 

 

 

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12 Strong

そろそろ11月だというのに、妙に蒸し暑い日があったり。

「感熱センサー」が壊れたのかと思うことが多いこの頃。

 

映画自体はどちらも見逃していたが、音楽は要チェック!なLorne Balfeのサウンドトラック。

パシフィックリム・アップライジングと12 Strong(邦題「ホースソルジャー」)のどちらが

いいかと思ったが、やっぱりこちらかな、と。

 

 

 

 

いかにもサントラらしい音楽や録音がだんだん少なくなってるというのは

わたしの勘違いかもしれないが。

既成曲の再編成のようなものと違う、オリジナルスコアを通しで聴くのは、

映画好きのもう1つの愉しみで、

楽器の使い方、編成の規模感など、ああこれでなくてはと思う現役の作曲家は

それほど多くない。

 

このサントラ、どうもCDでは出ていない(これから出てくるのか?)ようで、

探してもmp3のダウンロードやストリーミングしか見つからない。

せっかくのスコア、良い音質で迫力満点で聞いてみたいのだが叶うだろうか。

 

Balfeはスコットランド出身の作曲家で、Hans Zimmerとの共作でも有名。

或いは、映画音楽よりもゲームのBGMの方がお馴染みの方も多いかも。

 

それにしても。

CDが売れないからダウンロードだけ、という作品がこれからどんどん増えるんだろうなあ。

そういうわたしもCDの購入枚数は少なくなってるから大きなことは言えないけれど。

明日は月曜、今夜は夜更かしもそこそこにしないと、なんて言いつつ、

最後に見る1枚をついつい物色してしまう。

秋の夜長は映画を見るのにぴったりだから、

しのごの言わずモニターの前にしっかり陣取ろう。

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1812

 

 

遅ればせながら「V フォー・ヴェンデッタ」を見た。

始終、ガイ・フォークスの仮面を被ったままだったから、

まさかその中の人がヒューゴ・ウィーヴィングだとは思わなかったが、

彼と言えばマトリックスのスミスで、そこからしたら、

映画自体がマトリックスのチーム参画で成り立っていたのだから、
彼が謎のダークヒーローを演じことに結果的になったのは、

(※当初のキャスティングは別の俳優で、急遽降板による入れ替わり)

そういう流れなんだろうと感じた。

 

ミュージカル風の独特のリズム感に少し戸惑うも、

なかなかにハマったのはここというポイントで流れたチャイコフスキーの1812だった。

有名な楽曲だから、それこそ星の数ほど演奏や録音が世に出ている。

その中のいくつかは私のライブラリにも収まっていて、

さて、どれがいいか、とあちこち聞き始めたら止まらなくなった。

 

感じとして、スヴェトラーノフ指揮、ソ連国立交響楽団の演奏集にある1812が良さげだと

どれどれ、といった感じで聞き始めたが、

ラストがこの映画を見た後だと、恐ろしく淡々としすぎていて、

そうじゃない感が身体中に拡がる。

 

カラヤン&ベルリンフィルとか、きっとそういうのが映画にあった炸裂感もあるかも、

と思ったが、全体の迫力は確かにそうだがどうも何処かが違う。

金管系が鮮やかな方がいいかと思ってショルティ&シカゴ響も聞いてみたが、

大きな花火の上がるフィナーレのハチャメチャさが今ひとつ、と思って、

一縷の望みではないが、ゲルギエフ&マリインスキーの古い録音で聴いてみたら、

お、これだ、とストンと落ちた、ようやくだ。

 

 

 

 

正直、演奏自体は他のものと比べて粗いのは否めない。

でも、フィナーレの高揚感、いかにもロシアの匂いがして、

これでなくては。今日のこのタイミングだとこれしかない。

映画をもう一度見てみようとは思ったが、さすがにその体力もなく(笑)。

気付いたら、虎の子日曜日はすでに日が暮れ始めた。

いよいよ夏も終わり、と行けばいいのだが。

それにしても戸惑いたっぷりのツクツクボウシの鳴き声が物哀しい日暮れどきだ。

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Red Sparrow

2018年も3分の1が過ぎてしまった。

「しまった」というのも、人から指摘されてはっと気がついたほど、

時の経過に意識が向けられておらず、驚いたから。

 

備忘の意味で、気になった映画を順に書き留めておこう。

前評判とは全く関係のないところで、とにかく初日に観たいと思い、チケットを取ったのが、

「レッド・スパロー」。

ジェニファー・ローレンス主演のスパイ映画、と紋切り調に書くのもどうかだけれど、

James Newton HowerdのOSTを聴くだけでも、その時代めいた独特の重たさが

どっしりと伸し掛る、スパイ物好きにはなかなかの好作品だ。

 

何かと不穏なニュースが流れるロシアで、

諜報機関の上級幹部を叔父に持つバレリーナがジェニファー演じる主人公。

才能に恵まれた彼女が思わぬ同僚の行き過ぎた嫉妬によってプロの道を断たれてしまう。

重い病気で治療費の掛かる母親を抱える彼女にとってバレエは金策の道でもあったのに、

劇場があつらえたアパートからも出て行かなくてはならない。

ありえないくらいの不幸の吹き溜まりのような出だしで驚く間もないほど、

その後の彼女を取り巻く人間模様も出来事も、あまりに時代めいていて、

一体いつの話なのかと困惑しているうちに、観ている自らがすっかりその空気に囚われている。

 

叔父の歪んだ愛情と上昇志向によってスパイ養成所に送られてしまった彼女。

その養成所というのも、ハニートラップを専門とするスパイ養成所。

叔父を演じた俳優が彼の国のリーダーにそっくりであまりに意味深だが、

それはさておき、彼女は、逆境を逆手に取って自らの足で立ち上がる。

(ちなみに、スパイ養成所の教官にシャーロット・ランプリングが出てくるのも、

 「愛の嵐」のワンシーンを思い起こさせそうであまりに重たいが・・・)

 

 

 

 

バイオレンスと裏切りの渦の中にも彼女はまるで使い込んだ銀器のような魅力を放つ。

無垢に見えて、その背後に溢れるほどの妖艶と力。

それらは必ずしも主人公を幸せにはしなかったが、

信じるものを失わないということが今の時代においても有用かどうかは別にして、

ブレないことの強さを思い知らされるのだ。

 

 

 

 

さて、OSTはアンジェリーナ・ジョリー主演のSalt OSTも手がけたJames Newton Howard。

全曲、クラシカルなオーケストラ仕立てで編まれたサウンドトラックに、

嫌が応にもどっぷりと作品の世界にはまり込んでしまう。

映画はちょっと、という向きにも本作のOSTはオススメだ。

iTunesの音源の他、海外版のCDが出ている。

また近々、真っ赤なカラーレコードでも発売されるらしい。

私はCDで購入したが、音質も安定していてなかなか楽しめる。

 

単純なスパイ物として見てしまうと、ストーリーにやや無理を感じるかもしれないが、

映像と音楽の全編に立ち込める言葉にできない不安感は、

決して遠い時代の話に終わらせない忠告のようでもある。

言いたいことを全て映像化するのではなく、観る者に手番を渡すような作り、

エンドロールが終わっても尚、喉のつかえを感じながらも、

もう一度じっくり見たいと思わせる。

できれば、人気の少ない、場末の鄙びた映画館で。

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Салют7 (Salyut7)

気がついたらもう桜も散ってすっかり葉桜の季節。

街路樹も青々とした新しい葉をつけ始めている。

この春は花粉アレルギーが随分酷く、元々インドアなのにさらに引きこもりに。

映画館通いは控えつつ、部屋で映画ばかり見ている。

 

そのような中、これだけは忘れずにいようと思う作品がいくつもあって、

これはもう嬉しい悲鳴というか、なんというか。

とりあえずの1本ということで、まずは、

懐かしいメロディを織り込みながら歴史的な出来事(実話)を基に作られた"Салют7"(サリュート7)を。

 

 

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映画館での上映時には見逃していたため、TSUTAYAレンタルで借りてきたDVDで鑑賞。

通常のDVDというのが本当に返す返すも残念、というのは置いといて。

 

サリュート7はロシア(旧ソ連邦)の宇宙ステーション。

1985年、突如制御不能となったサリュート7の修復のため、

ベテラン宇宙飛行士と技術士が現地に赴き、見事、成功したという実話を基に描かれている。

折しも米ソ冷戦の最中、

制御不能のサリュート7から技術を奪われんとして撃墜を主張する軍、

宇宙開発の遅れを懸念して何とか修復を試みようとする研究スタッフたち。

人々の思惑の間で、図らずや運命に身を委ねることとなった2人とその家族の思い・・・。

 

 

 

 

ロケットの打ち上げもままならない日本からすれば、

30年以上も前からこのような有人の取り組みを実現している科学技術力に脱帽だけど、

この映画が胸にジーンとくるのは、そういう堅苦しさだけではなくて、

ちょっと演歌が入ってるかな、というぐらいの泥臭い彼の地の人間模様があって、

懐かしいヒット曲がサウンドトラックに使われていたりもして、

作品中、当時の出来事を伝えるソ連国内のニュース番組のオープニングたるや、

モスクワ放送でも耳馴染みの曲だったりで、懐かしさに感涙を禁じえず。

 

 

 

 

残念ながら、本作はDVDの国内販売は未定で、レンタルかストリーミングでの鑑賞になる。

とはいえ、もう1度じっくり見たい!と思うだろうから、

結局、ebayで露版のブルーレイをオーダー。

字幕はないがリージョンフリーとのこと。

高額でも構わなければ、ドイツ版の4K UHDが出ている(私の買った盤の4倍近く)。

そして懐かしの曲が盛り込まれたOSTもストリーミングのデジタル配信のみのようだ。

 

すでに本作を観た方で、あの曲は誰が歌っているのか?という、

来るかどうかもわからない問い合わせを先取りすると(笑)・・・

 

切ない歌詞でちょっと演歌入ってるかな、というメロディラインのあの曲は、

Cергей Скачков(セルゲイ・スカチコフ)の歌う"Трава у дома"。

当時、彼はЗемляне(ゼムリャーニェ)というロックバンドのヴォーカルで、

今でも何と現役!とのこと。Apple Musicでは彼の旧譜もいろいろ聞ける。

 

クライマックスシーンに流れたあの女性ヴォーカルは、

言うまでもなくアーラ・プガチョーワ。

"Арлекино"(道化師)がここで流れるなんて意味深と取るべきか、どうか。

 

そして最後を締めくくるのは、ヴィソツキーの歌う"Корабль"(船)。

独特の声でロシアの心を歌い上げる、まるで舞台で演じるようにして。

 

DVDはもう返してしまった(だから今夜はもう一度この映画を見られない)。

今時はネットでモスクワからも簡単にディスクを買うことが出来てしまう。

(だからポチッとブルーレイを買ってしまった!)

リージョンとかもう止めてもらいたいと思いながらも、

目を閉じるとあのシーン、このシーンと浮かび上がってくる。

もう一度見たいなあと思える映画にたくさん出会える幸せに感謝する夜だ。

 

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Shape of Water

すっかり映画小僧な生活を取り戻している。

できればもっと黒が締まるモニターで見たい、そんな贅沢なことを思いながら、

ネットで最近のTVをあれこれ漁っていると、

「没入感」という表現に行き当たった。

 

「没入感」・・・。

 

あまりに画面が美しすぎて、われを忘れるほど映像に集中する様のことだろうか。

もちろん作品が素晴らしいことが大前提なんだろうけれど、

単に映っている絵にそこまで入り込めるとしたらどんなに楽しいだろうか。

そういう想像をしているだけですっかりお腹が一杯になってしまい、

店頭に製品を見に行くようなことも全くなかったりする。

オリンピックや大きなスポーツイベントに合わせて良い製品がでたりするから、

家で三管じゃなくても豪華に楽しめるミニシアターがひょっとして実現するような、

手頃なTVが売られるようになるかもしれない(と期待しよう)。

 

ところで。

最近観た中で、エンドロールが流れる間の幸福感といったらなかった1本を。

Shepe of Water、ギレルモ・デル・トロ監督作品。

 

 

 

 

当初は観る予定にも入れてなかったのが、OSTのジャケットを見て、これは行かねばと。

話の筋もよく知らずに行ったので、このジャケットのシーンがいつ出てくるのかも、

予習なしで行ったから却って良かったのか。

 

舞台は1960年代、冷戦下のアメリカ。

地味に米ソの「探り合い」が下敷きにあったり。

車に詳しい方なら、要所要所に出てくる車種でもって時代がわかるかも。

とある政府の研究機関にて、発話できない一人の女性が職場のメンテナンス業務についている。

その研究所に秘密裏に運ばれてきた、一見半魚人のようなもう一人の主人公。

この物語は、彼女と彼のファンタジー&ラブストーリーだ。

 

ストーリーはせっかくだから伏せておこう。

物語を詳細に追いかけずとも、きめ細かく計算されて造られたセットや、

映像の色合いなど、さきほどの没入感ではないが、

まるで自分がおとぎ話の主人公になったような気分だ。

できれば、もっと大きな画面でたった一人でひっそりと見たかったなあ。

ミュージカルの舞台でたった一人、クライマックスシーンで歌って踊る、みたいな、

物語だけではなくて、自分自身がすっかりファンタジーな空間に躍り出ていた。

 

ところでOST。

アレクサンドル・デスプラ作曲の、不思議感、浮遊感たっぷりの楽曲集。

時代めいた雰囲気を出すためなのか、ラジオデイズな音作り。

劇中、主人公の女性が彼に音楽を聞かせようとこっそり持ち込んだ蓄音機とレコード2枚。

グレンミラーとベニーグッドマン。どちらがいい? みたいなシーンが焼き付いて離れない。

当時、そんな女性がいたのだとしたら、それだけで思わず恋しそうな予感(笑)。

 

 

 

 

OSTにも収められているグレン・ミラー楽団の"I Know Wry (And So Do You)"。

当時のグレン・ミラーサウンドにぴったりな甘いボーカル。

この歌詞があって映画のストーリーができたのかと思うほどの出来すぎ感。

目をそらしたくなるような現実から逃避するためのファンタジーではなく、

本当にほんとうのファンタジー。かくあるべし、ファンタジーの世界。

しつこいようだけど、この作品はぜひ劇場で。ぜひに。

 

 

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SEIMEI

毎日のようにメダル獲得のニュースに沸いた平昌オリンピック。

印象に残る競技はたくさんあったけれども、

思わず溜息が出たのは男子フィギュアスケートだった。

優勝、それもオリンピック2連覇を達成した羽生結弦選手。

フリーの演技はプログラム(選曲)としては既出ながら、一層磨きがかかった4分半。

負傷して痛いところのある選手とは思えない、

そういう気配さえ感じさせない凛とした姿に、

最高の結果も付いてきてそれ以上何を望むだろう。

 

 

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梅林茂さん作曲の陰陽師サウンドトラックから編まれたプログラム。

多くのファンが古いCDを買い求めるからなのか、

オリジナルの中古盤はプレミアで高額に。

陰陽師2の盤も同様だが、2015年に2枚合わせて再発盤が出ているので、

これからCDを買い求める方はそちらをぜひ。

 

夢枕獏原作で映画作品の方は主演を野村萬斎さんが2作とも演じられているが、

劇中もさることながらエンドロールに流れる妖艶な舞があまりにも美しい。

日本中世の不思議旅といった物語から、

本当に目の前に出てきたかと思うような生きた安倍晴明だったが、

羽生選手の演じるSEIMEIには、

音楽の持つ力強さも加わってまた萬斎晴明とは違った美しさがある。

 

選手を指導するコーチの言葉に、

羽生選手を他所の星から来たようなといった表現があったが、

冷静に、計ったように技を決め、そこにある空気すべてを支配した彼の演技は、

当代随一の科学者にして魔術師といった陰陽師が

氷に降り立ったらきっとそうなんだろうと、

こじつけてしまいたくなるようなものだった。

 

こうして改めてこのサントラ盤を聴いていると、

癒し系のメロディーが多いのに改めて気付く。

龍笛や琵琶などの古楽器を使った本格的な雅楽を楽しむためには、

また別の盤を探さなくてはならないが。

今夜はいい具合に空気が冷たくていい。

静かな夜、久々にこのまま全曲聴き直してみよう。

 

 

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