音の快楽的日常

音、音楽と徒然の日々
大都会

子供の頃から親しんだ俳優の訃報が続く。

それだけ自分も歳とったんだと思うことにしているが、

同じように旧い番組を懐かしむ人が多いのか、

U-NEXTで石原プロの看板番組「大都会」シリーズが通しで見られるように。

寝不足を押して一通り見たのはいうまでもなく。

 

当時の放映を見ているのは、Part3のみ。

「部長刑事」を見慣れたわたしには派手なバイオレンスてんこ盛り、

スタント満載の刑事ドラマにはびっくりしたが、

個性的な俳優がこれでもかとずらり勢揃い、

話の筋はよくわからなくてもとにかく画面に釘付けになった。

そういう馬力のようなものが70年代の番組にはあったような気がする。

 

話はそれるが、テレビというと、小学生の頃だったか、

オリジナルのスタートレックの再放送が深夜にあって、

そのタイミングに起きてテレビの前に座れるかどうかが大問題だった。

14型の色合いもモノクロと大して変わらないようなカラーテレビでは、

ディティールもさしてわからないようなものだが、

背景の大道具もそれなりだったからちょうどよかったのだ。

でも、どうやってスタートレックを知ったのか。

どうやっても思い出せない。

 

さて、シリーズをざっと見て思ったのは、

渡哲也さん、若い!とかそういうのは置いておいて、

映像とサントラがものすごくマッチしているということ。

大都会シリーズのサントラは、なかなか魅力的なバンドが手がけていて、

Part3はあの高橋達也と東京ユニオンだったりするが、

音楽と物語、映像がベストマッチ!と感じたのは1でも3でもなく、

GAME(FUN CITY)が演奏するPart2だった。

 

 

 

 

Part1である「闘いの日々」は刑事ドラマだけど群像劇的な側面もあって、

音楽も硬軟取り混ぜての0(ゼロ)座標の演奏がかっこいい。

Part3は疾走するビッグバンド、金管の咆哮にカーチェイスの映像がダブる。

でもPart2は、キャッチーでポップで、それでいてメロディアスで、

この場面、という場面にあった音楽がきっちり用意されてる感じ。

サントラが先、映像は後から見たので余計そう思うのかもしれないが、

主演級が複数画面に登場する中で、まだ若い松田優作のちょっとやさぐれた感じとか、

あるいは各々の名場面とフレーズがセットになって思い浮かぶのがいい。

 

わたしの知る限り、大都会のサントラはPart1が2枚、

Part2も同じく2枚、Part3だけが1枚で、

大半がCD化されたが、全集に近い形のボックスセットには1枚抜けているとか、

ややこしいことになっている。

レコードを聞ける環境ならば、LPの方がずっと集めやすいし、音はもちろんいい。

(Part1の2枚はジャケや帯のデザインも気合い入っていて、レコード好きにはオススメ)

 

こうして眺めていると、ほんとうに、今はもう他界された方が大勢いて、

そうでなくても、これだけ厚みというか濃い番組ってもう作れないんだろうなあと。

今時は、あれもだめ、これもだめと様々な制約があるし、

そういう意味でもこんな番組があってサントラがあったなんて

時代がなせる技だったのかもしれない。

 

数ヶ月ぶりに(というのは大げさか)朝からエアコン要らずのいい休日。

自然の風もいいけれど、こうしてバンドが奏でるグルーヴの風も心地よい。

久々に日本の誇る数々のバンドの演奏に聞き惚れた日曜だ。

 

 

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モリコーネ

ネットニュースのトップ欄に訃報が出ない日がないと思うほど、

自分にとって親しみ深い音楽家や俳優の残念なお知らせが続く。

先日のエンニオ・モリコーネもその一人で、

ご年配なのは承知でも、やっぱり報せを聞くと残念に堪えない。

 

1枚だけ彼の作品を挙げるとしたら何になるだろう。

パッと思い浮かぶのは「夕陽のガンマン」だろうか。

メロディが先かあのシーンが先かというくらい音楽と映像が一つになって記憶に刻まれている。

 

両親が映画好きなおかげで、家族でテレビを囲むというと大抵映画だった。

俳優や監督、作品の背景や話の伏線など、ある種「おたくな」家庭に育ったことは、

今思えば大変に恵まれていたと思う。

 

就職して一時期、アラン・ドロンの主演作をあれこれ見直していた頃がある。

当時はテレビの深夜枠に映画番組があって、VHSに録画して何度も見返していた。

1本をしつこく観るということではあの時期が一番楽しかったかもしれない。

その頃の印象的な作品「シシリアン」の音楽が、そういえばモリコーネだと思い出し、

改めてレコードを買って聴いてみた。

 

 

 

 

モリコーネのニュースに合わせてリリースされたわけではなさそうな盤。

新品でこういうものが手に入るというのも改めて驚くけれど、

録画で見た映画の背景に流れる、どこかくぐもった調子の音楽とは違い、

もわん、と当時の空気が部屋に充満するような新鮮な響き。

 

1969年と古い映画だから、ラジオデイズのような音質で聴いた方が面白いかもだけれど、

(劇中の音楽として聞いていたから、当時のテレビのモノラル音声のイメージしかない)

こうしていい音質で聴けると逆に映画を観直したくなる。

映画のシーンや俳優たちがうんと引き立つようなメロディ、効果音。

俺が俺がと音楽が前に出ているわけではないのに、

この表裏一体感は、今時のスケールアップされた映画音楽とは一線を画しているのでは。

 

できれば、こういう作品を映画館で、

しかも2本立てとか3本立てで一気見できたらどんだけ幸せかと思う。

感染症の蔓延で映画館に足を運びにくい時期が続くだけに尚更そう感じるのかもしれないが。

(ちなみに、換気という点では映画館は基準を十分満たしている施設が多いとのこと)

あるいは、就職したての頃買った14インチのテレビで観たあの鄙びた感じを再現できたら。

今時ブラウン管のテレビでもないんだろうけれど。

 

素晴らしい音楽家がまた一人この世から去ってしまった。

ほんとうに残念なことが続くけれども、

こうして多くの音源や映像作品が良い状態で体験できることを幸せに思うことにしよう。

 

 

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静謐の中の響きが

新型肺炎の封じ込めがいよいよ本格的になって初めての週末。

どこもかしこもとはいわないが、近所に出かけても人出は本当に少なかった。

先週初めあたりから、スポーツ関係の試合を無観客で実施とのアナウンスが流れ始め、

一気に自粛モードになり、週末の中央競馬も無観客での開催となった。

競馬で言えば、戦時以来のことだそうだ。

 

テレビで人のいないパドックやレースコースが映し出される。

馬の息遣いや気配、蹄の音が静かに響く。

こんなことがいつまで続くのかはわからないが、

中継の音声から感じとられるこの異様な雰囲気を忘れることはないだろう。

 

職場の指示もあって、映画館に足を運ぶのも自重している。

最後に見たのは、「1917」。

こういう時に戦争映画もな、とは思ったが、

想像以上に音響も音楽も素晴らしかった。

最後まで緊張の解けない映像の2時間、本当に見ていて疲れるのだけれど、

前評判の「没入感」は決して嘘ではなかった。

 

今日、競馬中継を眺めていて、ふと思い出したのが、その作品中に流れたある歌だ。

"I am a Poor Wayfarings Stranger"(彷徨える人)、Jos Slovickという男性のアカペラ。

 

 

 

 

元歌の歌詞を少し変えてあるそうだ。

残念ながら、1917のサントラ盤にはこの曲は入っていない。

なので、この1曲を聴きたいならストリーミングになる(捜した限りCDなどは見当たらなかった)。

 

この歌の文句が沁みるのは、映画が素晴らしかったこともあるが、

それだけではないだろう。

物事には必ず終わりがあるから、とは子供の頃に父から言われたことだ。

そう思いながら、わたしには、できることを確実にしながらその時を待つことしかできない。

それにしてもいい歌だと思う。

宗教や文化が違っても、胸に深く響く歌。

1曲やそのひとことに、本当に救われ、癒される夜だ。

 

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Parasite パラサイト 半地下の家族

 

受賞作品ということで、一時そこここに取り上げられたので、

このジャケットをご覧になった方も少なくないかも。

映画「パラサイト 半地下の家族」のサントラ盤ジャケット。

 

映画は今の時点ではまだ上映されているので、

本作を監督したポン・ジュノさんもおっしゃっている通り、

結幕は明かさないで、とのことなので、興味ある方は上映中にぜひ。

 

とは言っても、新型肺炎で亡くなる方が日々増える今の状況では、

地域によってはシネコンに出かけるなどお勧めすべきではないのかもしれない。

 

ところで。

映画が先か、サントラが先か、と言われたら、

明らかに本作のOSTは映画鑑賞の後がいい。

うまく表現できないが、音と「臭い」をキーワードとする映像とが強烈にシンクロする。

この一体感こそ、まさに映画の醍醐味。

日本の作品では手の込んだサントラを作ること自体少なくなってきている気がするけれど、

視覚と聴覚のいずれもが同様レベルに刺激されて、

我が身がスクリーンに現れた空間にすっかり囚われた錯覚を起こさせてくれる。

 

同監督の作品には、ある種のヒエラルキーを象徴的に扱ったものが複数ある。

SF・サスペンス調のハリウッド作品「スノーピアサー 」は、徹底した横の動きで表現しつつ、

「後ろと前」のヒエラルキー。

特撮でも注目された「グエムル」は見えない支配と弱者の関係。

そして本作では徹底した「上下」でもってスクリーン目一杯に展開する。

洪水のように流れ込む情報量の中で、

実はものすごく緻密な作り込みの存在を知った時の圧倒感といったら。

 

ちなみに、このOSTのCDはどこもSold Out状態。

サントラを多く扱うお店の方の話では、版元も品切れで再販予定なしとのこと。

デジタル音源はAAC(320Kbps)で各所から入手可能。

海外では権利の関係でCDレベルの音源も出ている様子。

近く、アナログLP2枚組でリリースが予定されているので、

手に取れる形で音源が欲しい方はこちらを。

(なぜかグリーンとオレンジの2種類のカラー盤で音質は今ひとつかもしれない)

 

 

 

追記(2020.2.25)

サントラCDの再発が決まり、amazon等で予約も受け付けられています。

また上述のレコード、透明感あるグリーンで音質もまずまずです。

 

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Motherless Brooklyn

この1年は本当に観たい映画が多い。

本当に多くて、困る必要はないけれど、思わず体に力が入る。

1年が動き出して最初の週、1本目に観たのが話題の「マザーレス・ブルックリン」。

キャスティング以外には何の予習もなしに出かけたが、正解だった。

まだ始まったばかりなのでネタバレは避けよう。

監督及び主演という離れ業(だと思う)のエドワート・ノートンには素直に拍手。

わたしは他の作品の上映時間の兼ね合いで朝一番に観たが、

できれば日が暮れてから観たい映画だった。これだけはメモしておこう。

 

 

 

 

これはもしや、と思う音色が劇場に響き渡る。

ウィントン・マルサリスのトランペットだ。

物語の重要な舞台となるジャズバーに、「すごくいいバンド」が演奏する夜だから、

と女性に誘われてかぶりつきの席に案内される主人公。

作品のハイライトではあったけれど、これほど印象的に選曲、演奏されると参ってしまう。

サントラCDが某大手通販店で品切れているのはあながちでたらめではないだろう。

 

 

 

 

全10曲が収められた本作のオリジナルサウンドトラック。

わたしはアナログレコードで買ったが、なぜか裏ジャケ違いのが2枚出ていて、

ひょっとしたらもうセカンドなのか?

微妙に発売時期が遅い方が手に入りやすかったのでそちらを(笑)。

こちらの裏ジャケには、映画のキャスティングも記載されていて、それらしいから。

それに、このジャケット。

夜寝る前の1枚にCDを当初買おうと思ったが、

このジャケを見てこれはレコードじゃないとだめでしょう、と。

 

この中から1曲だけ選べ、と言われたらとても難しい。

やはりハイライトシーンに流れる"Daily Battle"というワルツのバラードだが、

この曲を描いたレディオヘッドのトム・ヨークの歌バージョンと、

ウィントンのバンドバージョンで計2曲入っていて、

これが本当に甲乙つけがたし。

むしろ、この2曲を聴くためだけに買うべき1枚といっても言い過ぎではない。

 

 

 

 

乱暴かもしれないが、

音楽のいい作品にだめな映画というのは滅多にない、というか知らない。

だけども、今回は、映画を見なくてもこれはぜひお手元に1枚、のOST。

ちなみに、アナログレコードの盤質はまあまあ、肝心の音もなかなかいい感じ。

ジャケットはぺらジャケに近くて、

できればもう少し厚みのある紙にしっかりとコーティングされてると、

モノとしてもぐっと愉しめるものになると思うが、

盤を出してもらえるだけでも感謝しないと、と思う。

 

レコードに夢中になっていたら、いい具合に日が暮れていた。

トムの歌声と歌詞も相まって、連休の終わりの日暮れが何だか切ない。

もう1度、このレコードをかけて1日を締めくくろう。

 

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2019 総決算(映画編)

この1年間を振り返るとき、幾つものトリガーになっているのがなんと言っても映画。

忙しい時ほど数を見てしまっているのは、あんまりいいことではないかもしれないが。

ざっと記憶を整理し、特に印象的な作品を主に映画館にて鑑賞したものからメモしておこう。

 

 

1 工作 黒金星と呼ばれた男

 

 

本作がなんと言ってもダントツの1位。

今一番ノっている俳優が惜しみなくキャスティングされていることもあるが、

新聞やネットに「韓国」の二文字を見ない日はなかったほど、

二国の関係性が取りざたされた1年において、

この作品ほど、彼国の文化、根を理解するきっかけを与えてくれたものはない。

手の込んだスパイものとして楽しむのも一つにはあるが、

セリフの一言、ひとことが選び抜かれ、繊細な間合いと呼吸の中に、

北と南にまさに分断された歴史の重みを痛感させられた。

 

あんまり重たくなってもいけないということなのか、

エンターテイメントとしての映像も部分的には仕込まれているものの、

台詞のない映像、空間に込められたメッセージは、異文化の人間であっても痛切に響く。

主演のファン・ジョンミンが太陽なら、北側のキーマンを演じたイ・ソンミンは月。

立ち位置が全く違えども、互いに人として惹かれ、心通わせていく様に、

理解しようとさえ思えば、人はわかりあえないということはないのかもと思うほど胸が熱くなる。

 

 

2 JOKER

 

 

ホアキン・フェニックスの怪演に圧倒されてしまうとその先が見えなくなるほど、

全編にわたり独特の緊張感に満たされた2時間。

米国では封切り前に異例の通知がなされるなど、始まる前から話題のてんこ盛りで、

映画館の席に着く頃には既にお腹いっぱいの状態だから、

とにかく、いろんな意味で見ていてしんどい作品には間違いなかった。

 

正直に言えば、見終わったあとの胃のあたりが重たくて口の中が酸っぱくなるような映画は、

何度も見たくないし、そういう馬力もない。

だけれども、じっくりと見返してみて、シーン毎の主人公のつぶやきを今一度反芻しながら、

自分の置かれている世界について考え込んでしまいたくなる。

病みつきになるものが良いもの、美味しいものばかりとは限らないが、

もういいや、と思ったその瞬間からまた見たくなる不思議な魅力を湛えている。

都心ではまだ映画館で見られるようなので、時間があればぜひ。

 

 

3 シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢

 

 

勝ち組、負け組という表現がある。

いつの頃からか、受験や就職、

そして結婚と人生のステージが語られる際につきものとなった。

そう簡単に二分していいものかと疑問に思うが、

本作はまさに負け組(と自分で思っている)中年男性の再生物語だ。

当初、英国の作品「フル・モンティ」の仏版かと思っていたが、

そう簡単ではなかった(笑)。

 

男性であるがゆえの生きづらさ、立場のなさが全てを奪うもどかしさ。

仕事での失敗が身近な人間関係まで傷つけてしまう。

登場人物に共通する不器用さが観ている者に愛嬌を覚えさせる点、

救いのスパイスになっているが、

男性シンクロスイミングに挑戦する!

という奇想天外なモチーフがどう花開くのかは観てのお楽しみ。

 

残念なのは、国内ではDVDでしか発売予定がないこと。

今時のテレビではブルーレイでないと先々も含め視聴が難しくなる。

先のことを考えてブルーレイで出してくれないかな。

興行的に今一つだったのかもしれないけれど、これ、観たい人は何度も見る作品だと。

何かあって落ち込んでる時、暗い部屋で一人で見て、で、元気になる、みたいな。

こういうことがあるから、あまり良くないけれどリージョンフリープレーヤー欲しくなる。

4kのように早くリージョンとか撤廃されますように。

 

 

4 ハンターキラー

 

  

 

それほど大きな期待を持たずに出かけたが、結局映画館で3度も見てしまった。

アクション映画としてさらっと見てしまえば、面白かった!で済んでしまうが、

惜しくも亡くなったミカエル・ニクヴィスト(ロシア艦のキャプテン役)のほぼ最後に近い出演作、

ディスクで見る前に大きな画面でよく焼き付けておきたかったから。

 

種明かしをすると見たときにつまらないと思うが、

潜水艦ものが好きな方は迷わずチェックを。

amazon primeでもやってます(2019.12.31時点)。

 

個人的には120分が140分超の作りでもよかったなと。

編集で削られてる場面が結構あるんじゃないかと想像するがどうだろうか。

 

ディスクでは国内版のDVD、ブルーレイに加えて米国版の4Kが出ている。

環境が揃っていれば4Kでの視聴が映画館の迫力とはまた別の楽しみがある。

最近は家庭での再生環境もバカにできず、映像美だけで満腹するほどの充実感。

ストーリーや展開に言いたいことのある人は少なからずいると思うけれど、

映像、音をとにかく楽しみたい方におすすめできる1本。

 

 

5 永遠の門 ゴッホの見た未来

 

 

上野で開催されていたゴッホ展はあまりの人手に尻込みし、そのままになったが、

想像していたものと全く違った映像で息が詰まるほど圧倒されたという意味ではこれが1番。

ゴッホの生涯を描く、ウィレム・デフォー渾身の作品。

 

台詞も極端に抑制されていて、まるでドキュメンタリーかと思うような静謐の世界。

これに合わせてということなのか、少々残念だったのは音楽。

環境音楽のような趣向で時にヒリヒリするほどのピアノ音楽に違和感を感じたのは

わたしだけだろうか。

 

ゴッホという画家の印象が変わるほど、活き活きと演じられるデフォーのゴッホ。

生きづらさを超えて物事が提案されることの難しさを、

シンク・・・、とは別のアプローチで思い知らされる。

本作はディスクで何度も見るというよりは映像の記憶を愉しむ作品のように感じた。

ゴッホの絵画に興味なくとも、ウィレム・デフォーのファンの方なら必見。

 

 

【 番 外 】

 

最近困るのは特定のストリーミング媒体でのみ公開される作品が増えていること。

物によっては公開後時間が経ってディスクが発売されるものもあるが、

なかなか出ないものもあり、難儀なところだ。

 

ちょうど3本ほど見たいものがあって契約したNetflix独占公開の作品で、

これは、と思ってメモしておきたいのはこれ。

 

ポーラー 狙われた暗殺者

 

 

 

いかにもキャッチーな作りで先の5本とは全く異なる地平に立つ1本。

マッツ・ミケルセン、出演作を選ばない人かもとふと思ってしまうが、

アニメではなくて実写だからこそ溢れ出るグロさにハマる人がいるかも。

 

筋立ては予告編2本を見て想像していただくとして、作品に落ち着きを与えているのが、

バネッサ・ハジェンズ演じる復讐者の女性。

実在の連続殺人事件を描いた「フローズン・グラウンド」でも鍵となる被害者を演じ、

影のある少女を演じさせたら右に出るものがいないと感じるほど。

 

この1本のために契約というのはどうもという声が聞こえてくるので、

・「麻薬王」 ソン・ガンホ演じる釜山の麻薬王の成功と挫折の物語

・「ザ・テキサス・レンジャーズ」  ボニーとクライドの逃走劇を捕まえる側から描く

  グロな映像もあり、正月のお茶の間向きではありませんが、これはぜひ。

  ケビン・コスナー、ウディ・ハレルソンの演技を見るだけでも◎。

・「鋼鉄の雨」 これも今の隣国との関係を自分の目で見直すきっかけになるかも。

 

 

年末から上映の話題作「パラサイト 半地下の家族」は、

いつも見ている館での上映が1月中なので、とりあえず先送り。

(内容はすでに友人宅で見てしまっているのですが、やっぱりこれは映画館で)

 

ディスクでの視聴を入れれば選びきれないため、身近に盤が手に入りやすそうなものから。

2020年も忙しそうだから、きっと大量の映画を見るかも。

やったことはないけれど、見た本数をきちっと数えてみるかな。

映画好きにはなかなか充実の1年、来年もまた新しい作品にたくさん出会えますよう。

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believer

今回の台風19号は凄かった。

暴風の威力なら先日の15号も凄まじかったが、

早く過ぎ去ってくれと思わずにいられない台風はそうはない。

 

雨漏りも始まった部屋の中、

ベランダの鉢植えを全員避難させたのでまるで熱帯植物向けの温室のよう。

低気圧のせいかひたすら怠かったので、ChetとJim Hallのアランフェス協奏曲を聴きながら、

これも停電するまでの一時の愉しみと、ぼんやり先週末見た映画のことを思い出していた。

 

確か香港映画の「ドラッグ・ウォー」が原作の、今回は韓国作品「毒戦- Believer」。

VODで見た彼の国のドラマ「シグナル」に出ていたチョ・ジヌンという俳優が印象的で、

今回は彼が麻薬捜査の潜入刑事を演じるというので出かけてみた。

 

 

 

 

冒頭、延々と広がる雪原の1本道を車で走る主人公。

あれ、と思わせておいて、実はこの数分のシーンがラストに重い意味を持つ。

こういう構成の作品は無くはないが、

目の前に全く想像していないシーンが現れるとつい狼狽えてしまう(笑)。

 

ストーリーは、原作を下敷きにした新たなものと思った方が良さそうだ。

そして本作は要所要所、まさにこの人というキャスティングが光る。

正直、邦画には無くなってしまった俳優の個性、層の厚さが素晴らしい。

これ、という筋書きの面白さではなく、印象的なシーンを重ねながら構成の妙で魅せる。

背景にある音楽は、最初の雪原風景もあって、ヨハン・ヨハンソンを思わせるような環境音楽風で、

ただ、途中に挟まれる麻薬工場のトンデモないシーン、

大音量のハウスミュージックが流れるや否や見るものを中毒にし、

全く救いのない結末に向かって後半すごい勢いで雪崩れ込む。

 

 

 

 

人間の持つ情と絆、そして如何しようも無い不条理とが綯い交ぜになる。

狂気、ノワールと言ってしまえばそれまでなのだろうけれど、

こういう作品がどんどん出てきてしまう韓国映画の底の見えなさが空恐ろしくもあり、

ぐったりとして映画館を後にした。

 

数日経って、どうしてもまた見たいと思い立ち、

結局、国内盤の出るのを待てず、英語字幕しかない現地盤を注文した。

爆音を良しとする環境でなければあの雰囲気、空気は出せないかもしれないが。

 

ちなみに、終盤に数分の映像を加えた拡大版が韓国でのみ上映されたとのこと。

この拡大版であれば、最後、観る者に解釈の幅を与えることなく、

ある種の安堵が得られるらしいが、

拡大版のディスクは有無自体もよくわからなかった。

ひょっとしたらこの作品は続編を予定しているのかもしれない。

期待せずのんびり待ってみることにしよう。

狂気と虚無と血の熱さと。

映画の秋はまだ始まったばかりだ。

 

 

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Hunter Killer

 

 

「潜水艦ものにハズレなし」とは映画好きがよく言うことば。

初日に仕事が休めず、土曜の朝にまずはと観に出かけた「ハンターキラー 潜航せよ」。

潜水艦を舞台にした映画は漏れなく観てきたつもりだが、

今回の作品は、国内で見られるだろうものとしては、

あのミレニアムのミカエル・ニクヴィストのほぼ最後の作品ということもあり、

どうしても映画館で見たかった。

(※リュック・ベッソン製作の"Kursk"にも出演、奇しくもこれまた潜水艦の物語)

 

まだ公開されて3日目とネタバレはよくないので、ストーリーは冒頭のトレーラーを見ていただくとして、

初見で強烈な印象の映像だったので、今日は連日の2回目(劇場は変えたが)、

ようやく細かいところを追いかけられた次第。

こういうときは英語力のある方が羨ましい。

 

ロシア国内のクーデターをきっかけに物語が進む関係で、ロシア人の俳優もたくさん出演しているが、

彼らのセリフの方がずっと聞きやすいのはなぜだろう。

要所要所、ロシア人の会話も英語が使われていて、その使い分けはなんだろうと思ったのはともかく、

(潜水艦が)沈んだ!(或いは沈められた)のsankなのかsunkなのかが聞き取れない耳だと、

2度目に字幕へ目をやるのを少なくすると、ちょっとどころか結構きつかったり(笑)。

 

話が逸れたが、本作には随所に細やかな演出、演技があって、

ひょっとしたら原作を読み込んでいるとその辺りぴんと来るのかもしれないが、

同じ原潜ものでもあのK-19のようなどっしりと重い雰囲気で当初から暗雲垂れ込める的な絵とは違い、

予定調和的に終わるであろうことを予感させつつも、

深海の闇と晴れ渡った海上の落差にも似て、様々な陰陽を織り交ぜながらの物語は、

いわゆる戦争もの、戦闘ものとして観てしまうには余りに惜しい。

 

 

 

 

本作はOSTも国内盤でリリース済み。

同じくジェラルド・バトラー主演の「エンド・オブ〜」のシリーズのサントラも手がけた、

トレヴァー・モリスが作曲。

腹の底にドスンと来るような低音使いが印象的な、

スケール感たっぷりのThe映画音楽な作・編曲作品に仕上がっている。

 

嗚呼それにしても惜しまれるミカエルの早逝。

「コロニア」の頃には(役柄もあるが)まだふっくらとして病気のようには見えないが、

その後、急に仕事を減らしていたようだから、ご本人としては本作も覚悟を持っての出演だったのかも。

その極まったものを感じてしまうせいか、エンディングの清々しさとは裏腹に、

彼の演じた敵艦のアンドロポフ艦長の機微が胸に突き刺さる。

何にでも最後はあるのだけれども、次作も次々作もぜひ見てみたかったと痛感した2時間×2だった。

 

 

 

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Nevermind

アベンジャーズの最終章を見る前にこれを見なくては、と指南いただいたこと複数。

行こうとしてなかなか行けずとうとう今日になってしまったが、

桜を見ながらのんびり歩いて街に出た日曜の午後。

 

映画「キャプテン・マーベル」はアベンジャーズの誕生秘話で、

ここにきて強すぎる!女性ヒーローというのも今ひとつしっくりこなかったが、

何が一番楽しめたかというと、挿入歌や絵に取り込まれたちょっとした背景などが、

おやー!とくすぐられるような気の利き方で、

ミュージック・ラヴァーにはなかなか面白い作りになっていた。

 

ストーリーはややこじ付けなところもあって、おやまあの連続だけど、

90年代のヒットソングが劇中ここというポイントで流れ、シャキッとなる。

取り上げられたヒットチューンについてはうまくまとめてくれているサイトがあったので詳しくはそこで。

 

→ Virtual Gorilla  https://virtualgorillaplus.com/music/captain-marvel-90s-songs/

 

私的には、この曲が流れてそういえば明日から4月だったと背筋が伸びたのだった。

NirvanaのNevermindから"Come As You Are"。

 

 

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日々に流され、忘れかけていたことをふと思い出させてくれる気合いスイッチのような曲。

年度の切り替わりと個人的な区切りが同じ時期になるわたしには、

今日、3月31日に偶然この映画をみて気持ちの切り替えができ、

もやっとしていた胸中にようやく春一番が訪れた気がした。

季節の素晴らしさに救われつつ、映画に背中を押されつつ。

今日で1年の一区切り。気持ちを新たにまた一周、時の巡りを感じながら前を向こう。

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1987

雪が降る降ると言いながらわたしの住まいの近くはほとんど降らなかった。

その代わり、空気が氷のように冷たく、鉢植えに水を遣っても凍ってしまいそうだった。

張り詰めたような冷たさは一体いつ以来のことだろう。

 

iMacのおまけアプリに「写真」というのがあって、連休中に少し遊んでみた。

普段はもう一つ古い世代のiPhotoというソフトで写真を整理しているが、

「写真」には新しい機能がたくさんあって、それがなかなか面白かった。

例えば、メモリー。過去の写真を日単位でアトランダムに見せてくれる。

今日は寒い日だからというのではないけれど、5年前の大雪の日の写真が次々と目の前に現れた。

以前の広いマンションに住んでいた頃で、ベランダの欄干にもしっかりと雪が積もり、

氷の粒というか雪の結晶というか、あの雪印の形がマクロレンズを通してうっすら見えるほどで、

いやもう雪が苦手な人種には部屋に引きこもるしかない天気だったけれど、

当時のマンションは寒くて暑いというあまりよろしくない建てつけで、今の部屋よりずっと寒かった。

 

最上階の部屋は雪でも降ろうものならまるで冷蔵庫状態で、これなら本物の冷蔵庫も不要と思えるほどだった。

その教訓が生かされた今の部屋では、外気が氷点下でなければ、暖房もそう必要と感じない。

それでもこの連休の週末は久々に部屋の中の空気が冷たく、

どうやっても咳き込みが止まらないので、おとなしく部屋に籠ることとなった。

 

映画小僧にはもってこいの季節、積ん読ならぬ未視聴盤を端から見ていても、

映画館でも見た「1987、ある闘いの真実」が改めてすごい1本だと思わざるを得なかった。

 

 

 

 

演技力に定評ある俳優が何人も出ている豪華版ということで映画館でも初日に乗り込んだが、

最近とみに涙腺の緩いわたしにはもう一度、映画館に見にいくのがしんどかったので、

このブルーレイが出るのを待つこと数ヶ月、週末に届いたので早速というわけで。

 

本作の背景となっているのは、以前紹介した「タクシー運転手」の光州事変の数年後、

ある学生の死をきっかけに民主化運動のうねりが頂点に達した時代。

光州事変の記録フィルムを学生サークルのオルグで流す様子などは、

実際にあの「タクシー運転手」に登場する外国人ジャーナリストが撮った映像を使っているとはいえ、

若い人々の葛藤が生々しく見て取れる。

闘って勝ち取るという歴史体験の有無は、隣国でありながら様相を異にするこの国に

ひょっとしたら足りないものの一つかも知れないと思いながら、

多くの登場人物の人となりが丁寧に織り込まれ、表現されていて、

単なる告発ものや歴史ものでもない、さりとてサスペンスでもない独特の重厚さとなって、

観るものの胸に迫り問う。

 

主だった登場人物の誰の視点で見るかによって、物語に感じる展開や流れも変わるだろう。

2時間強の作品が、釘付けにされたままあっという間に終わり、

間を置かずしてもう一度見たいと思わせる根源は一体なんだろう。

観る者にいろいろな問いかけがなされているが、答えは必ずしも一つではない。

また正しいか正しくないかではなく、答えは自らが見出すべきものだと、出してこそだと。

 

もう1本、発売されたばかりのディスクで見た作品があるが、

こちらも同じ韓国作品とはいえ、観る者に余りに重く、暗い影を落とす。

なので、ここでは紹介しないが、両国の関係が様々な場面で冷え切っているとはいえ、

ここ数年の韓国映画は、詳しい人からすれば勢いが落ちたということらしいのだけれども、

映画好きなら見て損はないと、そっとつぶやいておきたい。

 

ちなみに本作のサントラ盤はどうやら出ていない様子。

「タクシー運転手」と違い、音楽的な要素はかなり少ないので仕方ないのかも。

劇中、登場人物が手にするポータブルカセットプレーヤーが何とも懐かしく、

そういえば、87年といえばわたしもまだ通学時にウォークマンを手放せなかった。

当時のわたしにはペレストロイカとベルリンの壁が最大の関心事で、

海を隔てた隣国でまるで内戦のような事件が起こっていたことにほとんど関心を持っていなかった。

恥ずかしいというにはあまりに簡単すぎてことばが見つからないが、

今こうして映像を前にして、今だからこそ考えるべきことが山ほどある、

その感触をずっと忘れずにいられるよう、ここに備忘のためメモしておくことにしよう。

 

 

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