音の快楽的日常

音、音楽と徒然の日々
辺境本

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この表紙の写真がどうしても気になって買ってしまった1冊の本。

最近は書店に、廃墟をテーマにした写真集や旅の本が特集してあることが常になっていて、

これもその中の1冊だ。

立入禁止エリア、未承認国家、卑怯、廃墟・遺跡の4章構成で、

写真集と呼べるほど綺麗な装丁でもなく、紹介もそれほど突っ込んだ書き方でもないが、

70箇所も訳ありの場所が紹介されていると、なかなかの迫力。

それでも、耳にしたことのある場所や施設も結構出てくるのが少々意外だ。

 

いずれにせよ、こうした「難所」に出かけて紹介してくださる方がいることに素直に感動するとともに、

南オセチアやアブハジアといった地名に目を留めつつ、

いつかはコーカサスやその周辺地域を旅してみたいと想像を膨らませる。

 

まずは一定の荷物を背負ってうろうろできる体力をつけなければ(笑)。

とりあえずは狭いベランダの作業で足腰を鍛えつつ、

出かけたいという思いを静かに育てよう。

春近し、マーガレットがそろそろピークを迎えそうだ。

 

 

 

 

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カメが教えてくれた、大切な7つのこと
塞ぎ込みがちな気持ちはどんなに隠したとしても周りに伝わるようで、
連休の終わりにこの辺りでは随一の大型園芸店に車で連れていってもらった。
ちょうど花が咲いた薔薇の鉢がたくさん並んでいて、
店に着く前からそれはもう楽しみでならなかったが、
薔薇の他にも、見たこともない種類の花がズラリと並んでいて、
あるいはそれ以上に鉢や道具の豊富な品揃えに思わず何度も溜息が出た。

一通り見て歩くだけで2時間ほどかかっただろうか。
まるでホームセンターのような大きさ故、通路の途中で迷ったりもしたが、
「今日は車があるのだから、重たいものをたくさん買っていいよ」
と言われても、珍しいものを一度にたくさん見たせいか、
興奮が頭の中に渦巻いて、とにかく見て触って楽しむので精一杯だった。

それでも、前から実はとても欲しいと思っていた植物の苗を見つけた時は、
「車でどこかに出かけよう、どこがいい?」と言われて、
相手の行きたいところなど露ほども思わず、◯◯園芸店と言い、
呆れもせず連れていってくれた友人には心の底から感謝した。


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この暑さでうまく育てられるのか、ベランダの過酷な環境でほんとうに大丈夫か、
と置き場所などを悩み、一時は萎れてしまってもうだめかとも思ったが、
今ではすっかり元気を取り戻し、次々と蕾が上がってきたので嬉しさ倍増。
このビビッドな色合いに、ただ眺めているだけで元気をもらえる花なのだ。

ところで。
ギアチェンジを試みるべく、頭の栄養がちょっとばかり足りないのかと、
久しぶりに書店を流して歩いたら、一冊の本が目に留まった。
アリョーシャ・A・ロング、ロナルド・シュヴェッぺ著、
「カメが教えてくれた、大切な7つのこと」。


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「焦りや不安から心を救う7つの教え」を長生きのカメ、クールマが教えてくれる。
ひょっとしたら原著とは少しニュアンスの違うところがあるかもしれない、
或いは時間にキッチリとしたドイツでロングセラーということに少し驚きを感じながら、
少しずつ読み進めては、また少し戻って読み直しを繰り返している。

簡潔なことばで編まれた7つの金言は、人によって受け取り方が異なるだろうけれど、
今のわたしには、ゆっくりと、そして落ち着いて、という当たり前のことを、
いつの間にかできなくなっていて、どんどんと焦りを感じていたんだなと、
まさに目からウロコで、下手な服薬よりずっと気持ちが楽になった。

思わせぶりなタイトルの本がたくさん出される出版社、
というイメージを抱いていたところからの本だけに、
当初はそれほど期待もしていなかったが、
そういう先入観こそ、楽しい読書を逃す一因だなと反省しつつ、
いい年になったというのに、もう随分長いこと働いているというのに、
今でもこのありさまであることを残念に思いつつ、
まあだからこそ1回限りの人生なんだろうと思いながら、また読み返す。

できうることなら、ここのところ大増殖中のブツヨクとの折り合いも、
この読書でうまく折り合いがつけられたらな、などと、
勝手なことをつい考えてしまうからまだまだダメだなと海より深く反省。
風は強いが天気が良くて、手ぶれ写真を大量に生産しながら日が暮れた日曜。
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LINNの本
自分の使っているaudioブランドの本が出された。
"LINN  the learning journey to make better sound"。


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英語ではなくて、国内で出版されたものなのがちょっとうれしかったり。
ネタバレになってしまうから、中身はどこかでご覧いただくとして、
この本は読み物であることに加え、写真集としても楽しめるようになっていて、
美しいスコットランドの風景も大きな写真で収められている。
そう、audioの技術満載の難しい本ではなくて、
ただ眺めてほっとすることを許してくれる本なのだ。
もちろんLINNの来し方ゆかりや製品、音楽への思いが、
関係者へのインタビュー記事、実際の工場や製作の様子を通じて紹介されている。

掲載された写真のインテリアなどについ溜息しつつ、
うちのaudioたちは狭い部屋でかわいそうだなあと溜息しつつ、
すうっと風のようにして静かに流れる音楽に耳を傾ける。


ずっと以前の話だけど、
自分用にPink Floydのレコードを集めていたとき、
「Sydのソロは聴かないの? 英国の田園の風景が浮かぶよ・・・」
と勧められたのを思い出した。
LP12にした理由はいくつもあるけれど、
子どもの頃から聴いてたフロイドが、こんなにもいい感じで聴けるなんてと驚いたから。
こんなに聴いて来たのに、まだ知らないことがあるなんてと本当に驚いたから。

そんなこんなが一気に頭のなかに渦巻いて、すっと消えた。
外は春の雨。
しとしとと、随分長い間途切れることなく降り続く。
こんな日は部屋でじっとしていて、レコードで音楽聴くのがいちばんの贅沢だ。
盤も量をある程度整理したのだけれど、それでもどれを聴こうか迷うのだ。
そんな、これもあれも、ああ贅沢かもしれないとやっぱり溜息が出る日曜の午後だ。

 
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音楽の架け橋
1年に一番まとめて本を読める時間、それが正月になって何年になるか。
とはいえ、震災後にまとめて本を手放してからというもの、
それほどまとめて本を買い込み、端から読むような真似はしなくなった。
できなくなった、という方が正確だろうか。

本を読むのには体力がいる。
多分、気力の前に、集中できるだけの体力が。
そのことに気づいたのは恥ずかしながらごく最近のことで、
若い頃は時間と体力はあっても経済力が伴わず、図書館にない本はどうすりゃいいんだ状態で、
働くようになったら、体力はあっても時間はなくなり、
職場から勤続○○周年なんて表彰してもらう今となっては、
多少のお金と時間はできても、体力的な問題が立ちはだかる。
ああ、なぜにこうもうまく行かないのか、
三竦みの問題というのはオチがどうやら同じようで。


2014年は珍しく、クリスマスプレゼントをいろいろと戴けた。
贈ってくださった当人はそういう意識はお持ちではないのかも知れないが、
わたしはちゃっかりしているので、これが世間で言うクリスマスプレゼントか、
と、一つひとつ嬉々として包みを開け、こみ上げるうれしさをかみ殺した。
その中の1冊が、タイトルにあげた「音楽の架け橋」というディスクガイドだ。


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著者の渡辺亨という方をわたしは知らない。
敢えて、検索しないで、知らないままに頁をめくってみた。
すると、「青」というテーマでもって、
ジャンル横断的に著者の感じるところの快適盤が簡潔な紹介文とともに並べられている。
その先頭に、見覚えのあるジャケットがあった。

音楽の内容は正直思い出せないその1枚のアルバムは、
なんでもグラスゴーで活動するバンドで、なんと(灯台下暗し)LINNから出ていたもの。
おやまあそれなら聴いてみなくてはとネットで検索してみたら、
これはちょっと向き合って聴いてみたいなあということで、
しばらく止んでいた音源捜しの旅が期せずして始まってしまった。

この本を贈ってくださった方は、
まさか、どんなに仲の良いご夫婦にも訪れる倦怠期のようにして、
わたしが音楽とのつきあい方を、距離を測りかね、悶々としているなどとは、
全く想像だにされていないはず。
それでも、この一冊は、ずっと取れないで苦労していた喉の閊えを
見事に一瞬にして抜いてみせた。

紹介されたすべての盤が全ての方にとってすばらしいはずはなく、
星の数より多いかも知れない盤の中から、
たった1枚でも気付きや心の靄が解けて晴れるようなきっかけとなる音楽があれば、
もうそれで十分なのだ。

柔らかな装丁の横長の本は、ぱらぱらと頁をめくって眺めるには好都合で、
気に入ったジャケットの作品を、
一昔前ならいきなり購入などして、届いてからの悲喜こもごもは避けられないのだったが、
いまどきはネットでさわりを試聴できたりもできるから、
(その意味ではどんな音楽が届くのか、わくわくする気持ちはあまりなかったりするが)
手にしてがっかりというのを避けられるから、
ウン十枚の紹介がなされているディスクガイドを手にして気後れすることもなくなった。

職業的にいい音楽探しをしているわけでもなく、
自分にとっての好評盤とそうでないものはどうしても分かれてしまうから、
そういうちょっとした、そうはいっても当たり前の流れというものが、
思えばどうもここのところ面倒になっていたのだ、多分、きっと。





今は店頭に出向いて気に入ったものを探す、ということ自体ちょっと難しくなってきていて、
以前なら、何年も前の作品が棚に並んでいて選び放題が羨ましいなどと、
海外からやってきた知り合いから言われたりなどしたのだが、
数年経ってみると、その某国と同じような状況になった。

話は逸れるが、ロシアのポピュラー音楽はストリーミングラジオでもって、
それも結構な音質で常時楽しめるようになり、
何が何でも盤を探さなくても良くなってきている。
聴けさえすればいい、そう思えば、盤の入手にこだわる理由はなくなってくる。

しかし何のきっかけもなく、ある1枚が手元にやって来れるのか、と考えた時、
それはやっぱり無理な相談であって、
となれば羅針盤とまではいかなくても、それなりの道標となる一冊が、
それもその人のリスニングスタイルによく間に合う一冊があるのとないのとでは、
音楽生活の快適さも結構変わってくるんじゃないだろうか。

今回この本を贈ってくださった方には、以前にもディスクガイドを戴いており、
前のはそれこそ読む端から「うひゃひゃ」などと絶対他所の人には聞かれたくないような、
萌えの高テンション状態が続くような特殊なものであったけれども、
この「音楽の架け橋」は、ある程度の時間、音楽に親しんで来た方にとってなら、
何かのきっかけをつくってくれるだろうと期待して損は無い。

わたしの場合、自分で探すとここに行かないんだよなあ的な、
なかなか手の届かない部分の1枚というのを何枚か見つけ、
ちょっと、否もうかなりうれしかった。
年初のお年玉、といえばまさにその通りだ。
この歳でお年玉までちゃっかり戴いてしまったような、気恥ずかしさも手伝って、
連休の怠さもどこへやら、これで溜まったディスクの整理もできるというもの。

辞書や事典のような役割でなく、いろんなところに出向くきっかけさえ作ってくれればいい、
そんな方にもうってつけの一冊。

 
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一度住んでみたいと思うような
バラを育て始めてみたら、
ベランダの広さや日当り、
それも時間帯によってどんな風に陽が当たるのかまで、
矢鱈に気になるようになってしまった。

ネット上の様々な画像から、広くてゆったりとしたベランダを、
そういうベランダのある住戸を探してネット上をほっつき歩いていたら、
いい具合に日当りのある、とある分譲団地の中古販売サイトに行き着いた。

K台団地、という都心から程よく離れた街に立地するその団地は、
駅から歩くとするとちょっとしんどい距離にあるも、
住棟間の距離もたっぷりととってあって、
春が来たら植栽の桜がおそらくは見事であろうというような具合。

そんな調子で画面を眺めていたら、いつか団地に住んでみたいなあ、
なんて思ったりして、
そのうち、団地萌えなる表現まであることを知った。
そこで、先週末書店を上から下まで漂流して行き当たったうちの1冊がこれだった。


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「世界一美しい団地図鑑」。
図鑑というくらいだから、建物や配置の分かる航空写真が満載で、
その他図版はもちろんのこと、
団地の構造を理解するための基本的な知識や時代背景も丁寧に解説されていて、
単なる事例集とは趣の異なる指向。

この本を手に取ってぱらぱらと頁を繰っていたら、
やはり郊外の丘陵地にある団地に目が留り、
ああいつかこういうところに住んでみたいなあと、
特にそれ以上、それ以下でもなく、
或る種の懐かしさからそんな気持ちが胸の底から沸いてきた。
60年代の終わりに構築されたその団地は、
写真がいいからかもしれないが、何とも言えず鄙びていて、
坂の上や坂の下の住宅は意外に大変という事前のレクチャーがあっても、
やっぱり気になるなあと結局この本を買って帰ることにした。





わたしが団地という響きに持つイメージは、
上の写真のように、どこか無機質で人工的であったりするが、
あくまでも想像の産物としてそのような先入観があったにすぎない。
実際に長く大勢の人が暮らしてきた建物やその一団の区画に感じるものは、
意外にも、もっと身近で温かみのある空間であったりした。

いま、若い人達のワークショップなどが催され、
団地という空間の再生や新たな住まい方の模索のような活動があったりするという。
わたしなどはその年代から、
昭和の薫りがするというだけで所謂萌えだったりしてしまうのかもしれないが、
いま自分が20代だったらどんな風に捉えるのだろうと思うと、
そういう想像自体が面白かったりもする。


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落ち着いて考えてみると、
朝夕1時間ほどの世話で育てられるバラの数には限りがあって、
当初見た中古住戸のような広々としたベランダをいっぱいにするほどには、
バラを育てることはできないことに気がついた。

今にも引っ越そうという勢いがついていたが、
こうして図鑑を手に取ってみると、
ひとつの団地というのは、
当時の時代背景や技術、街への指向の具体化であることに思い至った。
実際の空間を体験してみたい、
そんな思いが出不精解消のきっかけになるといいなあと思いつつ。
否、今度ぜひ気になる某所を訪ねてみようと思う。
 
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かもめのジョナサン
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かもめのジョナサン。
作者の意向で改めて発表された最終章が加えられ、
今回「完成版」として和訳も出版された。

初めて読んだ英語で書かれた本がジョナサンだったということもあって、
これはもう読まねばと予約をしてまで買ったが、
話題になっていたせいか、なかなか届かなくてやきもきした。

13の時に手に取った本が、こうしてまたわたしの手に戻って来た。
愚直、ということばをこの本をきっかけに知った。
鳥には鳥の苦労があるなどと言ったりもするが、
かもめのように空を飛んでみたいと切望もした。
いかに飛ぶか、は、如何に生きるか、と問われているようで、
問いに応えられず悩みもしたが、やがてその気持ちも凪いでいった。

数十年を経て、わたしの中で再度完結した物語。
もう少し時間ができたら、改めて自分に問いかけながら読み直してみたい1冊。


 
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旅と映画と音楽と。ー「HOSONO百景」
嗚呼、こんな本があるなんて。
手のひらにのるわずか200頁足らずの本だけど。
めくる頁々に旅と映画と音楽が満載の1冊、「HOSONO百景」。


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いまどきの世の中、新刊書は日々ウン百冊と出ているに違いない。
でも、内容はさておき、装丁や構成、ちょっとした作りの隅々にまで、
これほどこの本を世に出したいという愛情が溢れた本もそうはない。

細野さんの新著が河出から出るというので一体どういう本になるんだか、
想像がふくらみ過ぎて発売されるまで胸が苦しくなった。
それが目次を見て数頁眺めてみただけでぱっと視界が開けるような爽快感が押し寄せてくる。

もちろん、長年のファンだから、うれしいと思える企画だったりするだろう。
例えば、挿入されている写真ひとつとっても、
細野さんの随分若い頃の写真だったり、懐かしい!YMO時代のスナップだったり。

本文は、テーマ別に細野さんのインタビューをまとめたものに、
彼のその時々に注目するディスクの情報が欄外にジャケットと一緒に並べられていて、
読む角度を変えれば、かなり濃厚で楽しさ一杯のディスクガイドにも。
これだけひとの名前やアルバムタイトルがそれこそとめども無く口をついて出てくること自体凄いと思うけれど、
自らいろんな音楽を生み出してきたと同時にいろんな音楽を探してきたわけでもあって。

そういう盛りだくさんのエピソードが海外のいろんな街を旅した記録に織り込まれていて、
ただそれをずんずん読み進めていくだけで、
新緑の眩しさをみたときのような清々しさに包まれていくのだ。

細野さんのアンテナは音楽や映画だけではなくて、
失われていく街の良さや自然そのもの、そういう変化をしっかりと捉えているよう。
ものごとの感触をしっかり自分の皮膚で感じ取りながら、
その道程にいろんな国の音楽やカルチャーが絡めとられていく。

わたしはそんな彼の「触角」にそっと触れてみたい気がした。
そして、自分自身が感じている世の中の変化の何か、にもっとしっかり目を向けようと。
最近とみに植物の緑や空の色が気になって仕方がなかったが、
その理由が少し分かったような気がした。
思わず深呼吸したくなる、旅と映画と音楽が満載の!スピリチュアルな1冊。
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集めるということ
「手放す時代のコレクター特集」

というタイトルに釣られ、つい買ってしまった雑誌。
車中の中吊りではないが、表紙やキャッチコピーはやっぱり大事だ。


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愛すべきおたく特集のような雑誌は少なくないが、
興味や収集の対象となるグッズがこれほどカラフルに彩られていて、
集めることの愉しさを端的に伝えてくれるものはそうないだろう。

どのコレクションも驚きと充実の溜息ものだが、
露盤の、しかも貴重な稀少盤ばかりのコレクターが紹介されている頁には、
いやもうなんともはや。
そういう拘りが長期に渡って持続する、というのが羨ましすぎる。
わたし自身は薫りのようなものが感じられれば盤そのものにはそれほど条件を付さないが、
そういうエネルギーが、わたしのどこを探しても無いもので、
無い物ねだりとはこのことだと痛感した。

この方が集めたレコードのジャケット集が昨年出版されたばかりで、
こういう本を手に取るのはどんな人なんだろうと時折眺めてもいる。
それにしても。
ブルータス本号に掲載されたコレクター諸氏の幸せそうな表情といったら。
集めることは人生を楽しくすることに通じる近道なのかも知れない。
集められる、そのエネルギーと集中力がほんとうに羨ましくてならない。
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蔦屋体験
今月の雑誌は部屋と趣味、本をテーマにしたものが次々に出て来て、
普段買わないようなタイトルもついつい買い込んでしまった。
ポパイ、ブルータス、そしてRoost。
手放すのではなくてもの集めをいい意味で肯定した中での特集は、
各々の個性が溢れる、眺めていて楽しくなるものばかりだ。

そんな中で、「本と暮らす」をテーマにしたRoost vol.2の中で紹介されていた、
代官山の蔦屋書店に行ってみた。


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雪がちらほら舞う寒さの中、店内はお客で賑わっているのにまず驚いた。
活字離れ、なんて言い古されたことばもあるが、
PCとコーヒー片手にくつろげるコーナーは満席で、
ごく普通の書店でもなく、図書館でもない空間を掴み切れないのか、
わたし自身はこのお店の提案になかなか馴染めずにいた。

​これという本を探しに行くには、どうやら普段利用するお店の方が合いそうだ。
棚の作りが頭の中の引出しと合っているとでもいえばいいのか。
2時間ほど「漂流」し、
写真集の棚のヴィンテージ(古本)コーナーに溜息しつつお店をあとにした。


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結局、探しものはいつもの紀伊国屋にて完了。
30年近くも通っていると、どこに何というのがよくわかっていて安心。
サブカルな強烈提案、とか、文学を極めているからこそのこの1冊とか、
ある意味極端だったりするのは他に譲るのかも知れないが。

帰りの電車に揺られながら思ったのは、
東京の地の利だ。
新刊書も古本も、これほど縦横無尽に探せるエリアはそうないだろう。
レコードについても全く同じことが言えるのではないか。

最近、仕事の慌ただしさにかまけてつい探す努力を忘れてしまっているが、
環境に甘えず、活かしていかないともったいないことを痛感。
おしゃれなファッションに身を包んだ若い人たちに紛れながら、
楽しさ半分、反省半分の1日だった。
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「嶋護の一枚 - The BEST Sounding CD」
音楽好きにとって、「この一枚」を探し出すのは終わりのない旅のよう。
世の中には素晴らしい音楽は何千とあるのだろうけれど、
自分が「必要」としない音楽の数もまた星の数ほどあるわけで、
これという存在を知って探すのはまだしも、そうでないなら出会いはまさに時の運。

もしとめどもないこの旅にこの1冊!というガイドがあれば・・・。


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「嶋護の一枚」は、専門誌で連載中のコラムを中締めのようにして集めたディスクガイド。
連載が開始された2003年からの10年分39本とボーナスの計40本から編まれている。
以前紹介した「名録音106」と違い、図版も必要最低限にして一見地味な印象だが、
これがどうしてトリッキーで、内容は幅広く次の1枚は予想不可能、
その色鮮やかさ豪華さは「名録音106」に引けを取るどころか・・・!

本編に入る前に置かれた「はじめに」の4ページは旅の心得のようにして、
まさに文字通り、この本をどのように読めば楽しめるのかが掴めるガイドになっていて、
なぜこれらの音源がとりあげられたのかと同時に、
それらをぜひに聴いて欲しいという著者の思いがひしと伝わリ、気が逸ってしまうほどだ。

でも、このディスクガイドは逃げも隠れもしない。
文字通り、快哉を叫ぶと同時に今風に言えば胸熱な「はじめに」を通過したら、
縦横無尽に音楽という名の宙を旅する船に乗り、
あとは読者の思いのままにもくじから好きなディスクを選んで読み出せばいい。

よい音のするディスクを追い求めて、と帯にも銘打ってあるように、
録音の時代背景や技術的側面に分析を加えながらの掘り下げた解説に、
何も尻込みすることはないのだと思う。
その辺り、わたしのようなただ音楽を面白がって聴いている不勉強なリスナーには、
ちょっともったいない、その凄さが半分も理解できなくて猫に小判だけど、
行間から溢れる「この一枚」を探し求める読者への温かな眼差しもあって、
どんどん読み進めることができるのだから。

正面切って並べられた40枚のディスクの他に、
各コラムの中にこれこそ1枚というような素晴らしいアルバムの情報が詰まっている。
例えば、読み出して途中、どうしてもこの音楽が聴きたい!と捜しまくってしまった1枚が、
先の写真に写っているPhilippe Sardeの"La Petite Apocalypse"。
モラゲスというクラリネット奏者によるモーツァルト集のCDの紹介の件に出て来るのだが、
まさにこのアルバムの紹介を読んで、いてもたってもいられなくなった。
特に心の真芯を捕らえた3行をここに書き出したいけれど、ネタバレはまずいだろう。
Sardeのファンの方なら、もしこれをお持ちでないなら、必聴の1枚とだけ書いておこう。

アポカリプスつながりではないが、何とバイオハザードのサントラまで取り上げられていて、
これを単にゲーム音楽まで取り上げられた、と言うだけでは物足りない。
既成概念の囚人とならずによい音のするディスクを追い求める、ということ以上に、
その分け隔てのなさは音楽への深い愛のなせるわざかと。
とすれば、一方で音源への厳しい批判も理解できてしまう。

こうでなくてはいけない、というような縛りからの解放感、
そして丁寧な表現から繰り出されるまさにこの一撃というのが、
痛快と言わずして何と言えば良いのか。


ノイマン&チェコフィルのオペラやテミルカーノフのマーラー5番、
果てはジョン&パンチのサントラ集にまで言及された論集は、
偶然にも個人的にかなりのツボな1枚が積み重なり、
これを読まずしてと大興奮のままに人にお勧めするのもどうか、なのかもしれないが、
手にする人のスタンスや求めるものに応じていろんな読み方を許してくれる一冊は、
長い長い旅のお供にあって、荷物でも損でもなんでもない。

手元に届いてから何度か読み返しているのだけれど読む度にわたしなりの発見がある。
標題となった1枚の解説中に盛り込まれた紹介盤にも熱視線を送りつつ、
或はこのコラムが季刊ステレオサウンドで現在も連載中であることを更に楽しみにしつつ、
はたまた「欲しい盤がなかなか見つからない!」というむず痒さに堪えつつも、
旅を続けることにしよう。

もちろん、書かれた通りに追体験するのは簡単ではないとわかりつつも、
ついついこうして読み返しては新たな想像と期待が膨らんでいく。
紹介された盤をきっかけにさらに行きたいところが見つかってしまう、
悩ましさ満載のディスクガイド。
願わくば、わたしのようなリスナーのために本書の第二集、第三集が出ますように。

◇ 「嶋護の一枚 - The BEST Sounding CD」 
  嶋護(しまもり)著(株式会社ステレオサウンド社) 
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