音の快楽的日常

音、音楽と徒然の日々
Red Sparrow

2018年も3分の1が過ぎてしまった。

「しまった」というのも、人から指摘されてはっと気がついたほど、

時の経過に意識が向けられておらず、驚いたから。

 

備忘の意味で、気になった映画を順に書き留めておこう。

前評判とは全く関係のないところで、とにかく初日に観たいと思い、チケットを取ったのが、

「レッド・スパロー」。

ジェニファー・ローレンス主演のスパイ映画、と紋切り調に書くのもどうかだけれど、

James Newton HowerdのOSTを聴くだけでも、その時代めいた独特の重たさが

どっしりと伸し掛る、スパイ物好きにはなかなかの好作品だ。

 

何かと不穏なニュースが流れるロシアで、

諜報機関の上級幹部を叔父に持つバレリーナがジェニファー演じる主人公。

才能に恵まれた彼女が思わぬ同僚の行き過ぎた嫉妬によってプロの道を断たれてしまう。

重い病気で治療費の掛かる母親を抱える彼女にとってバレエは金策の道でもあったのに、

劇場があつらえたアパートからも出て行かなくてはならない。

ありえないくらいの不幸の吹き溜まりのような出だしで驚く間もないほど、

その後の彼女を取り巻く人間模様も出来事も、あまりに時代めいていて、

一体いつの話なのかと困惑しているうちに、観ている自らがすっかりその空気に囚われている。

 

叔父の歪んだ愛情と上昇志向によってスパイ養成所に送られてしまった彼女。

その養成所というのも、ハニートラップを専門とするスパイ養成所。

叔父を演じた俳優が彼の国のリーダーにそっくりであまりに意味深だが、

それはさておき、彼女は、逆境を逆手に取って自らの足で立ち上がる。

(ちなみに、スパイ養成所の教官にシャーロット・ランプリングが出てくるのも、

 「愛の嵐」のワンシーンを思い起こさせそうであまりに重たいが・・・)

 

 

 

 

バイオレンスと裏切りの渦の中にも彼女はまるで使い込んだ銀器のような魅力を放つ。

無垢に見えて、その背後に溢れるほどの妖艶と力。

それらは必ずしも主人公を幸せにはしなかったが、

信じるものを失わないということが今の時代においても有用かどうかは別にして、

ブレないことの強さを思い知らされるのだ。

 

 

 

 

さて、OSTはアンジェリーナ・ジョリー主演のSalt OSTも手がけたJames Newton Howard。

全曲、クラシカルなオーケストラ仕立てで編まれたサウンドトラックに、

嫌が応にもどっぷりと作品の世界にはまり込んでしまう。

映画はちょっと、という向きにも本作のOSTはオススメだ。

iTunesの音源の他、海外版のCDが出ている。

また近々、真っ赤なカラーレコードでも発売されるらしい。

私はCDで購入したが、音質も安定していてなかなか楽しめる。

 

単純なスパイ物として見てしまうと、ストーリーにやや無理を感じるかもしれないが、

映像と音楽の全編に立ち込める言葉にできない不安感は、

決して遠い時代の話に終わらせない忠告のようでもある。

言いたいことを全て映像化するのではなく、観る者に手番を渡すような作り、

エンドロールが終わっても尚、喉のつかえを感じながらも、

もう一度じっくり見たいと思わせる。

できれば、人気の少ない、場末の鄙びた映画館で。

cinema & Soundtrack | - | - | author : miss key
<< NEW | TOP | OLD >>