音の快楽的日常

音、音楽と徒然の日々
believer

今回の台風19号は凄かった。

暴風の威力なら先日の15号も凄まじかったが、

早く過ぎ去ってくれと思わずにいられない台風はそうはない。

 

雨漏りも始まった部屋の中、

ベランダの鉢植えを全員避難させたのでまるで熱帯植物向けの温室のよう。

低気圧のせいかひたすら怠かったので、ChetとJim Hallのアランフェス協奏曲を聴きながら、

これも停電するまでの一時の愉しみと、ぼんやり先週末見た映画のことを思い出していた。

 

確か香港映画の「ドラッグ・ウォー」が原作の、今回は韓国作品「毒戦- Believer」。

VODで見た彼の国のドラマ「シグナル」に出ていたチョ・ジヌンという俳優が印象的で、

今回は彼が麻薬捜査の潜入刑事を演じるというので出かけてみた。

 

 

 

 

冒頭、延々と広がる雪原の1本道を車で走る主人公。

あれ、と思わせておいて、実はこの数分のシーンがラストに重い意味を持つ。

こういう構成の作品は無くはないが、

目の前に全く想像していないシーンが現れるとつい狼狽えてしまう(笑)。

 

ストーリーは、原作を下敷きにした新たなものと思った方が良さそうだ。

そして本作は要所要所、まさにこの人というキャスティングが光る。

正直、邦画には無くなってしまった俳優の個性、層の厚さが素晴らしい。

これ、という筋書きの面白さではなく、印象的なシーンを重ねながら構成の妙で魅せる。

背景にある音楽は、最初の雪原風景もあって、ヨハン・ヨハンソンを思わせるような環境音楽風で、

ただ、途中に挟まれる麻薬工場のトンデモないシーン、

大音量のハウスミュージックが流れるや否や見るものを中毒にし、

全く救いのない結末に向かって後半すごい勢いで雪崩れ込む。

 

 

 

 

人間の持つ情と絆、そして如何しようも無い不条理とが綯い交ぜになる。

狂気、ノワールと言ってしまえばそれまでなのだろうけれど、

こういう作品がどんどん出てきてしまう韓国映画の底の見えなさが空恐ろしくもあり、

ぐったりとして映画館を後にした。

 

数日経って、どうしてもまた見たいと思い立ち、

結局、国内盤の出るのを待てず、英語字幕しかない現地盤を注文した。

爆音を良しとする環境でなければあの雰囲気、空気は出せないかもしれないが。

 

ちなみに、終盤に数分の映像を加えた拡大版が韓国でのみ上映されたとのこと。

この拡大版であれば、最後、観る者に解釈の幅を与えることなく、

ある種の安堵が得られるらしいが、

拡大版のディスクは有無自体もよくわからなかった。

ひょっとしたらこの作品は続編を予定しているのかもしれない。

期待せずのんびり待ってみることにしよう。

狂気と虚無と血の熱さと。

映画の秋はまだ始まったばかりだ。

 

 

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