音の快楽的日常

音、音楽と徒然の日々
久々にジャズ新譜を漁る―Apres un reve--Sir Roland Hanna Trio
 恒例のカメラ中古市が銀座の百貨店で開催されている。クラシックカメラを気軽に手に入れる機会としては、年に数回のこうした催事が便利だが、日頃とはやや異なる客層がどっと押し寄せる、一見異様な光景に唖然とされた方もいるかも知れない。

 私が以前勤めていた事務所は銀座のはずれにあったので、こうした催しは欠かさず覗いていたのだが、ここ1、2年は足が遠のいている。カメラへの興味が失われたわけではないが、手元にあるカメラのメンテナンスもろくにする暇もなく、これ以上増やせないし、会場の人ごみで気が滅入るので、花粉症が始まるややこしい時期だけに、どうも気が向かなくなっているのだ。

 行けば、会場には知り合いもいるだろうから、楽しいことは間違いないのだが、今週は職場のカラオケ大会だの何だのと行事が続き、金曜の午後は既にガス欠状態。ここはおとなしく帰ろう・・・と思ったのだが、帰りがけに新譜をちょっと見て回ることにした。

 前から気になっていたピンクフロイドの「対」を探した次いでに、JAZZコーナーも見たのだが、ここ最近相次いで亡くなったビッグネームの追悼盤が目立つところに並んでいた。サー・ローランド・ハナの美しいタッチのピアノがもう聴けなくなる。そう思ったら、ついつい手にとって「お買い上げ」。

 ヴィーナスから出された「Apres un reve」はサーのラストアルバムとなった。彼の愛したシューベルトやショパンなど、クラシックの名曲のアレンジ集で、ベースに新譜の出たばかりのロン・カーター、ドラムはグラディ・テイトとサイドメンも豪華。流行る気持ちを抑えて、家路につく。部屋に入るなり、CDプレーヤーにセット。シーンと静まりかえった部屋に響く美音のピアノ。特にお勧めは6曲目のオリジナル「Like Grains of Sand」とラストを飾る、マーラーの「Based on Gustav〜Symphony No.5,2nd Movement」の2曲。思わず「ベニスに死す」のラストシーンを思い出す。白い砂と夏の終わりを告げる海風。思い思いのシーンを胸に楽しんでもらいたい1枚である。
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次のオーナーを探して―Остров Сицилия--ЛКН
 新しいオーディオに夢中になっている反面、気になっていることがあった。使わなくなったRotelのアンプのことである。私は、物に執着するところがあって、どんなものでも最後まで大切に使うよう心掛けている。だから、よほど理由がない限り、途中で手放したり、処分したりすることはない。これまでのオーディオも、壊れて修理が難しくなったりしたもの以外は、手元に残してずっと使っている。おかげで、私の年とさほど変わらないラジオがまだ現役で朝の BGMを流していてくれたりする。

 Rotel は、オーディオのブランドとしては、最近一部で注目され、量販店でも売られるようにはなっているものの、やはりマイナーなメーカーだ。まだ2年ほどとそれほど使っていないのに、大手オーディオショップの買取価格は、なんと上限1万円也。定価の10分の1以下である。私は、できればRotelを気に入って使ってくださる新オーナーを探したかったので、こういう買取を利用するつもりはなく、いくらぐらいなら適価と言えるのか、そこらへんの物差が欲しかっただけなのだが、それでも、持っていた受話器を落としそうなぐらい驚いた。

 とある情報交換の掲示板を紹介され、そこを覗いてみると、ごくわずかだがRotelを探している方がいた。1000を超える件数の伝言の中で数件。しかもよく見ると同じ方のオファーだった。希望価格にずれはあったが、とりあえずメールをしてみた。いろいろあって、最終的にはその方に使っていただくことになった。なんと、数台のRotelを既に持っていて、5.1chシステムをRotelで組もうとしていらっしゃるとのこと。偶然とはいえ、いいオーナーさんのところに行けることになって、ほっとした。やっぱり、大切にされ、しかも使ってもらえる方のところに行くのが一番。ちょっと寂しくもあるが、家で通電せずに、ガリってしまうよりは、ずっといい。

 今日の1枚、LKNは、謎の男性デュオ。1人は、”ミナミの金融王”で主役をしている俳優さんにそっくりなお兄さん(笑)である。バリバリのロックンロールかもと想像してジャケ買いしたのだが、案外穏やか系だった。「シチリア島」と銘打ったこのアルバム、8ビートあり、ラテンあり、ちょいフォーク系ありと、コンセプト不明な、やはり謎のアルバムなのだが、そういういい加減さがロシアンぽくていい。強面のお兄さん達が歌う、脱力系の素敵アルバムは、最近のクラブ系ロシアンに飽き飽きした向きにぜひお勧めしたい。
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何故か盛り上がらない―Кто?!--Пропаганда
 ついさっき、馬友達から電話があった。競馬が盛り上がらないね〜、どうしてかね〜と言う彼に、一も二もなく同意する私。最近、どうしてだか、あれだけ好きな競馬に盛り上がれない自分がいる。

 大きな理由は、まず一つ。華のあるスターホースの不在。ジャングルポケットやマンハッタンカフェが怪我で相次いで引退し、特に牡馬でエース級の馬というと、シンボリクリスエスがいるのだが、いま一つ、華やかさに欠ける。彼曰く、エルコンドルパサーやグラスワンダーと比べるとね、ちょっと役不足というか、違うよね・・・電話片手に大きくうなづいてしまう。

 倦怠期というか、好きで長く続けているものにだって、かならずそういう時期はあるのだろう。昔撮った、大好きな馬達の写真を眺める。レースの様子やエピソードなど、まるで走馬灯のように胸いっぱいに広がる思い出の数々。馬達はいつだって、私に勇気と元気を与えてくれた。盛り上がらないなんて言っていられない。応援はやっぱり続けて行こう、改めて思い直す。

 プロパガンダはキュートでガーリッシュな女性トリオ。女の子3人というのが流行なのかどうなのか、スリーフキもジェーバチカも、それぞれ個性は違うけれど、いずれも人気者だ。ちょっと古いとリツェイまでさかのぼれるけれど、彼女たちの新譜は、そういえばここのところご無沙汰だ。

 プロパガンダのアルバムはリミックス盤を入れて、今のところ3枚出ている。「クトー」はオリジナル2枚目のようだが、正確なことはプロフィール等の資料もなく不明。でも、歌が巧すぎず、クラブ系のようでそうでない、どこか曖昧なところが逆に魅力的だったりする。個人的には、リミックス盤よりも、オリジナルの方が、彼女たちのボーカルを素直に楽しめるのでお勧めである。何だか気が晴れない、そんなときの憂さ晴らしBGMにもってこいの1枚である。
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オーディオ狂想曲―Echoes the best of Pink Floyd--Pink Floyd
 LINNが家にやってきて早一週間。最初は元々あったコンポーネントたちと仲良くやってくれるかどうか、心配だったが、どうやら杞憂に終わりそうだ。そろそろ風邪をひきそうなCDプレーヤーも、なんとかもうしばらくはもってくれそうなので、やっと一息つけそうである。

 アンプの性能が単純に向上し、解像度が上がった反面、ちょっとしたノイズも気になるようになってしまった。いままで適当にマスクされていたものが、良くも悪くも表に出てきてしまうので、最初は戸惑ったが、慣れてしまうと、かえって昔レコードで聴いていた頃を思い出すほどである。

 考えてみれば、オーディオシステムを組むとき、アナログの方がずっと安上がりである。同じLINNで考えてみても、最高のアナログプレーヤーがざっと100万円ほどで組めるのに対し、同社の最高額CDプレーヤーは280万円する。ソフトの入手や消耗品のコストを抜きにして考えれば、独特の温かみと音の濃さを持つアナログを私も支持したいが、如何せん、ロシアものをレコードで入手するのは不可能に近い。

 いつぐらいからCDにとって変わったか、CD はレコードよりもずっとコピーが簡単だという事情もあって、過渡期は日本のそれよりもずっと短期間だったように思う。私はその昔、レコードでなく、もっぱらカセットテープでロシアンのソフトを入手していたので、レコードはほとんど手元にない。他に好きなJAZZを考えても、レーベルによっては今でも新譜がレコードで出ているようだが、旧譜を、例えば、オリジナル盤を探したりしだすと、これはもう時間とお金を湯水の如く使うことになる。こういう沼は一旦はまると深すぎるので、私は最初から諦めている。

 3月にハイブリッド盤(SACD+CD)で「狂気」の発売が予定されているピンクフロイド。前回、リミテッドで出たシリーズは、音が悪いと一部ファンの間でもがっかりする声が出たが、今度はどうだろう。今日の1枚、エコーズは、フロイドの美味しいところ取りをしたようなアルバムになっていて、さらにその構成がすばらしくて全く別なアルバムとしても楽しめる充実の1枚。こうしたアーティストはどうしても、商売上の食い物にされがちだけれど、ファンは純粋にいい音で楽しく聴きたい、それが人情というものだ。そういうある種の弱味に付け込むようなことなく、いい音源を出してもらいたいなあと、音楽ファンの端くれとして思ったりもするのである。
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花粉の飛ぶ季節―Меамуры--Мумий Тролль
 いよいよ花粉の飛ぶ季節がやってきた。歩く花粉探知機とあだ名される私は、1月末から”飛散のはじまり”を感じ取っていたけれど、今年はインフルエンザにも冒されることなく、「緊張感」を持って冬を終えようとしている。

 新聞には、教科書に使われた溶剤でアレルギーが悪化してしまった児童の話題が出ていた。花粉症によらず、よろずアレルギー国家となった日本では、何かしらのアレルギー症状に悩んでいる人が五万といる。昔はそうでもなかったような気がするが、どうしてこんな風になってしまったのだろう。

 私は吉野杉の花粉がそれこそ黄色の風となって押し寄せる田舎で大きくなった。だから、未だに花粉症なんて信じられない。医者の言うには、もともとは排ガスなどの影響で炎症が進み、ある時期以降はそれこそ家の中のほこりにまで鼻がむずがゆくなってしまうのだという。ちなみに私は檜の花粉に最もアレルギーが強く、人よりは症状のピークが遅い。まだまだ先が長いのでこれからが思いやられる。

 脱力系といったら言い過ぎかもしれないが、私にとってはそんなイメージのムミィ・トローリのオリジナル最新盤を聴く。ピンクというか桃色のジャケットはいつになくラブリィで飾るのにもいい。2曲目に日本語で「もしもし?」と入っているのだが、ロシア人には、このもしもしが受けるようだ。語感というか音が面白いらしい。私がホームステイでお世話になったおばあさんも、よく受話器を持つ真似をして「もしもし」と楽しそうだった。

 話が脱線したが、さすがに人気バンドのトローリだけあって、公式サイトも充実している。メニューに入ってからの移動がよくわからないのだが、意外なところから飛べるようになっている。暇を持て余している方にもぴったり。音源もあるので、興味のある方はぜひどうぞ。
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戦いすんで日が暮れて―Great Pianists of the 20th century--Martha Argerich
 家に帰ってきて、何が楽しみかって、それはもちろん人それぞれだが、私の場合は何と言っても風呂である。今の住居を探すのにも、「ユニットではなく、独立した風呂場で、追い炊きができて、窓が有る風呂」というのが必須条件だった。

 最近は、温泉の素に凝っていて、一時期クナイプ等のハーブ系が好きだったのが、ここのところ、日本の名湯シリーズとか、そういうバスクリンの親戚よりはもう少し温泉っぽい素(実家が進物品にいただいたのが使わずに残っていた)などなど。湯置けに色とりどり30種ばかりの「素」が勢揃いし、今か今かと出番を待っている(笑)。

 つい長湯をしてフラフラすることもあるが、よく温まってかく汗もまた気持ち良し。以前はここで缶ビールなどを取り出したりしたが、最近は専らトマトジュースで健康路線を行っている。これが実にうまい。本当はトマトを丸のまま塩をかけてかじりたいが、財政状況が許さないので、ジュースで我慢している。

 風呂上がりに、ぼーっとしながら聴く音楽ではないが、久々にアルゲリッチのピアノが聴きたくなって取り出したのが、ミレニアム記念で出たグレートピアニストのシリーズだ。この1枚に、レーベルを横断して、アルゲリッチ演奏の数々が贅沢に収められている。クラシック好きの方なら、このシリーズから何枚も買い求められた向きも多いだろう。

 情熱的で、一体何と闘っているんだろうと感じるくらい、求める表現に向かってすっくと立っている、それが私の彼女のイメージだ。特に、静的な演奏の多いラフマニノフのピアノコンチェルトの中で、彼女の弾くピアノコンチェルトの1番は出色の演奏だ。彼女のピアノの音色を聴くだけで、何もかも忘れられる。まさに至福の1枚である。
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暦の上ではもう春近し―Я на Арбате продаю дожди--Юлиан
 日曜も随分降ったが、今日も、いよいよ雪が降るかと思うほどの冷たい夜。残業続きで「寒い」を連発しながらの帰り道、春はまだかいなあと溜息が出る。春になったらなったで、苦手な花粉症に悩むことになる。どちらがましか。私の悩みとは関係なく、季節は巡る。また東京で迎える春。一体何度目になっただろうか。指の数が足りなくなってから、数えるのも億劫になっている。

 LINN のおかげで以前にも増して音楽三昧。速攻帰宅でCDをトレイへ運ぶ。部屋もすっきり模様替え。今日選んだのは、ユリアンの最新盤。彼について詳しいことは何もわからない。リリース作品は、これとあともう1枚、99年に20曲ほどまとめて入っているのが出ているが、これがすべてかどうかも不明。でも、そんなことはおいといて、声が個性的というか、こってりとした響きが何とも言えず魅力だ。

 今日のアルバムには全部で13曲収められているが、俗に言う捨て曲は1曲もなし。ノリのいいポップなアレンジもいいが、一押しはバラード、3曲目の「ヤー・ウ゛ァズブラシャーユ」だ。ピアノにかかったエフェクトがちょっとレトロスペクティブだが、それと彼の濃い声音がうまい具合に混ざりあってゴキゲンなナンバー。とにもかくにも、残業明けのお疲れOL仲間にプレゼントしたいアルバムである。
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LINNがやってきた!―Сама--Катя Лель
 とうとう我が家にLINNがやってきた。せっかくいいアンプを買ったからと、思いきって新調したラック(以前は自作)がまず組み立てられ、そこに順々に収まるアンプとCDプレーヤー。担当のKさんが組んでくれた時には、まだ機器が温まっていないのか、本領発揮とは行かなかったが、大ざっぱに聴いただけでも、全然違った音の空間が狭い部屋一杯に広がった。

 音を出し始めてから1時間ほど経った頃から、様子は一変。ピエガがなんだか楽しそうに歌っている。装置に対してそういう表現も変かも知れないが、以前と比べて伸び伸びしているのだ。そうなると、いろんなCDを聴いてみたくなるのが人情。プレーヤーはROTELのままだが、アンプがセパレートになって余裕が出ると、こんなに違うものか、とあきれるくらい、音の芯がしっかりして豊かになった。聴いていてひたすら楽しい音だ。

 私は、電源まわりやラックなどにあまり気を遣ってこなかったのだが、今回のことで大いに反省し、せっかくやってきたコンポーネントの性能を発揮できるよう、いろいろと工夫してみようと思う。オーディオ雑誌の受け売りのようでウソ臭いと怪訝な顔をされる向きもあろうが、私のヘボな耳で聴いてわかるほどの差が「出てしまう」のは事実。同じなら、いい音で楽しく聴きたい。私は早速、スピーカースタンドの下にひくMDF材を東急ハンズに買いにいった。2枚で1800円ほどと安価だ。オーディオショップの方にも、私のように単に音楽が好きで、楽しく聴きたいリスナーには、オーディオアクセサリーに懲り過ぎて泥沼に陥るよりは、手軽で安価な工夫で条件を整えた方がいいとのアドバイスを受けた。

 今回の入れ替えで少々心残りなのは、お気に入りのROTELのアンプの今後である。今まではそれこそ「ぶっ壊れる」まで使ってきたのだが、今回はまだ新しい状態での入れ替えになってしまい、セカンドシステムを組めるほど広くない我が家では、彼の居場所はない。気に入って使って下さる方がいればそれ以上のことはないのだが・・・。

 先日、到着した新譜の1枚が、カーチャ・レーリのサマー。前作と比べてかなりクラブ・ミュージックを意識した内容になっていて、古いカーチャファンならびっくりするかも知れない。ロシアン・ポップスが全体的にそういう傾向にあるだけに、エストラードナヤファンとしては寂しい限りだが、そうはいっても、さすがカーチャ、と思わせるボーカルは必聴ものだ。本来はおまけにビデオ・クリップが付いているが、私の買ったCDにはデータが入っていなかった(ロシアンにはありがちだが)。彼女の公式サイトでも、映像が見られるようにはなっているが、"not found"連発でかなり残念。タトゥの影響で、日本でもロシアンに注目が集まっているだけに、公式サイトの充実を望みたい今日この頃である。
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写真の個性―Casa dolce casa--Trio Montmartre
 このサイトを開いてから、時々褒めてもらえるのが写真だ。感想の中でよく出てくるのが「安定感がある」ということ。おそらく、手ぶれに最も気を遣っているということと、一眼レフを使うときは方眼マットが入っていて、水平を出しやすくしていること、この2つが絵に影響しているのだろうと思う。しかし、褒めてもらえるのは稀であって、多くの友人達は「いいカメラを使っているから(いい写真が撮れて)当たり前だ」と言うので、私の撮ったものについては、せいぜいそんなところかも知れないと思う。

 機材は大事だと思う。新機種が出る度に買い換えの嵐だとキツいが、私はコンタックスのマニュアル一眼とG2、そして最初に買ったカメラであるT2で通しているので、初期投資は少々かかっているが、好みの画質が簡単に得られるので、助かっている。クラシックカメラは何台も持っているが、それは撮影というよりは骨董趣味のためであり、愛玩目的のようなものだ。もちろん、どれも個性的できれいな写真が撮れるのだけれども。

 写真の個性とは何だろう。どうやっても、こういう絵になる、そんな個性というのがやっぱりあるのだと、思う。最近、自分の撮った写真を見ても、そう感じることがままある。それ以前に、腕がどうのこうの言う前に、そこには写し取りたい、共通の何かが必ずある。きっと、ある。

 アルバムのページを捲る後ろで、さらさらと静かに流れるのは、トリオ・モンマルトルの話題盤。最近、ボーカル物ばかり聴いていたので、ピアノトリオが妙に新鮮。いや新鮮なのは、静謐な中にも生命感に溢れるピアノと、決して主張しすぎることのないベースとドラムが織り成す音空間だ。静かに、ただひたすら静かに考えに耽りたい、聴く者をそんな気持ちにさせる、とっておきの1枚である。
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アリとキリギリス―言い忘れたさよなら--古谷一行
 日本の誇る、まさに”看板”企業であるトヨタの経常利益が1兆円を超えたという。グループの連結でということだと思うが、それに比べて大多数の企業ではリストラ続きの厳しさだ。あるトークショーで司会者が、昔、日本人は勤勉でアリのようだと言われたが、今はすっかりキリギリスではないか、と嫌みまじりに話していた。

 アリ、アリというけれど、すべての蟻が勤勉ではないことを、ある昆虫学者が発表している。だいたい、非常によく働くのは全体の2割ほどなのだが、面白いことに、その2割の蟻を集めてみても、落ち着くとやっぱりよく働くのはその2割ほどなのだそうだ。社会はよく働き、人一倍頑張る人によって支えられている。自分の事務所をみても、よくあてはまる。集団というのは、えてしてそういうものかも知れない。

 翻って、私は自分を、どちらかといえば、キリギリスだと思う。ここ数年、年収が減っているというのに、手取り1か月分を超える金額を注ぎ込んでオーディオを新調してしまった。もちろん、その価格以上の内容に満足してのことだし、だいたいそれを売ったお店の担当者の笑顔は、営業のそれとしても、「まあ、しかたないなあ」と折れさせるに十分であった。

 考えるに、私は日に平均して6時間は音楽を聴いている。2、3年もすれば十分元を取れる額の投資だ。それに何よりも楽しくなる。オーディオの入れ替えにつきものなのが、現有のコンポーネントとの相性だが、幸い、うちのピエガとも大丈夫なのは確認済みであり、しかも中古で”慣らし運転”は済ませてあるから気楽なものである。今日は休みを利用して、週末のセッティング後に何をかけようかと、CDを整理していたら、偶然目にとまったのが今日のBGMだ。

 古谷一行は、私にとって永遠の「唄のおにいさん」である。バイト半分だったのだと思うが、その昔、彼はNHK子供向け番組で、唄のお兄さんとして出演していたことがある。今でこそ、温泉ナントカシリーズで胸を露出したお姉さんと戯れるおじさん俳優だが、当時はなかなかのものだった。そんなこともあって、彼が数枚出しているオリジナルのレコードも所有しているが、そのなかの2枚がQ盤シリーズで復刻している。そのうちの1枚で古谷のファーストアルバムが、「言い忘れたさよなら」である。

 説明がいつにもまして長くなった。とにかく何もかもが懐かしい。サウンドも、歌声も、自分の当時の記憶も。”歌詞がきちんと聞き取れる”昔の歌謡曲が好きな方に、ぜひお勧めの1枚である。
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