音の快楽的日常

音、音楽と徒然の日々
探し物―狂気-リマスター盤--PINK FLOYD
 小さい頃、最初に聴かせてもらったオーディオをようやく探し当てた。その機種は、現在のケンウッドの前身のTRIOから出ていたレシーバーで、KR- 2120というものだった。昔のカタログというのが、これがなかなかなくて、探し当てるのに時間がかかったが、ようやく見つかった。

 偶然にも、オークションの出品写真を眺めていたら、ああこれこれって感じで、目に留まったのだ。その機種名で検索して、とある中古オーディオショップに行き当たり、さっそく見積もり依頼をしたが、つい2日前に売れてしまったという。なんと、そのレシーバーは、2年ほど在庫として棚を占めていたらしい。今回は残念だったが、丁寧に探してみようかと思う。

 タイミング良く、「狂気」のリマスター盤が出た。SACDとのハイブリッドで、普通の CDプレーヤーでも聴ける。タイミング良く、というのは、そのレシーバーを通してよくかけてもらったレコードが、この「狂気」なのだ。それ以来、ピンクフロイドは大好きになったし、私にとって、ロック=ピンクフロイドであった。それは、今もほとんど変わっていない。

 好きなタイトルは、リマスターされるとほぼ迷わず買うことにしている。音が良くなるというより、うんと聴きやすくなるからだ。特に、昔レコードで聴いていたようなものは、大抵そういう感じで、ごく初期の頃にCD化されたものと比べると、その差が明快である。今回の「狂気」はまさにそれで、できれば、「おせっかい」や「原子心母」あたりもリマスターしてもらえないかなあと、ついつい期待してしまう好リリースの1枚である。
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カメラを手放す―Только любовь--Вика Цыганова
 古いレンジファインダー機と標準レンズのセットを、ある方に譲り受けていただいた。私は、クラシックカメラに詳しい知人のおかげで、珍しいレンズのついたそのカメラをもう随分前に購入し、以来、大切にしてきたが、その数の少なさや製品の由来などを思うと、少々気が重くなっていた。

 大げさを承知で言えば、クラシックカメラは、いわば文化財だ。湿度や気温管理が通常以上に管理できる環境もない我が家では、時の経過による劣化が進んでしまいがちであり、いい状態で保存できる自信もない。大切にしているものが目の前で痛んでいくのは、やはり辛いものである。ましてや、それが希少品で、当時のまま残すことに大きな意味がある場合には。

 このカメラを作ったメーカーは現存しているが、カメラ事業からはすでに撤退している。私は、このメーカーのカメラが好きで、いくつも集めて持っているが、デザインや機構の凝ったものなど、時と形式で様々であり、もちろん、写りの素晴らしいレンズも数多い。今回は、その企業に縁のある方に貰っていただいた。これ以上ない、製品とオーナーの由緒正しい組み合わせであり、また喜んでいただけて良かったと思う。

 CDを整理していたら、ウ゛ィーカ・ツィガノワの大ヒット盤「愛だけ」を見つけた。96年の作品で、翌年ペテルブルクに旅行したときに買った1枚。今もあるかどうかは分からないが、モスクワホテルから歩いて10分ほどのビデオとCDのお店で、店員さんのお勧め内容がすごく良かった。そのお店では、予算の許す限り買い集めたが、店員さんが勧めてくれた10枚はどれもマイフェイバリットの「殿堂入り」を果たしたタイトルばかり。

 例によって、話がそれたが、ウ゛ィーカは日本でも比較的人気のあるアーティストで、お土産に配った中でも、評判が良かった。歌い方が自然で、コッテリさも適度に加減されているので、ロシアンに耳が慣れていない方でも聴きやすいし、もちろんルックスも魅力的だ。休日の午後、美味しい紅茶でも入れながら流したい、お勧め女性ボーカルの1枚である。
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桜は咲いたが―戦争反対--スネークマンショー
 桜の開花予想を気にする柄ではないが、職場でこの時期になると、桜の話題でひとしきり盛り上がる。最近はデジカメで手軽に撮影ができることもあって、週末に撮った作品をパソコンの壁紙にしたりして、思い思いに春を満喫している。

 私は、咲き始めよりも、散り際のほうが好きだ。満開のあとの何とも言えない寂しさ。すっかり散ってしまって青葉が芽吹く頃は、また別の新鮮さに満ち満ちて、初夏の訪れを誘う。

 極東の国には春がやってきたが、彼の国では砲弾が飛び交い、日々大勢の犠牲が出ている。アメリカが悪いとか、イラクの独裁はいけないとかといった単純な問題では片付かないだろう。戦争に正義はない。私は、少なくとも自分の生きている間に戦争が無くなることはないだろうと思っている。行き着く先は見えたとしても、過ちを繰り返すのが人間なのではないかと思うからだ。

 スネークマンショーの戦争反対。81年リリース作品で、YMO人気もあってこのアルバムもよく売れていた。私はラジオドラマが大好きだったので、迷わず買った1枚だが、本音を皮肉でうまく包んだコントと、合間に挟まれたThe Spoilをはじめとする楽曲がナイスミックス。

 時代はこの後、バブル景気に向かって一直線。遊びにゆとりがあって、このころの音楽にも印象深いものが少なくない。パロディなんてけしからん、とお叱りを受けそうだが、スネークマンショーの言わんとするものは非常に奥深いと思う。アルファレコードの倒産により、版権がソニーエンターテイメントに移っているらしいので、CDでの再リリースを期待したい1枚である。
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「かなしばり」を科学する―Радио ночных Дорог--Валерий Сюткин &Ко
 今年になって、何度か「かなしばり」に遭った。遭った、という表現が正しいかどうかはよく分からないが、寝入りばな、それほど時間が経っていないときに、それは起こった。夢の中で、何かから逃れるようにもがいている自分が分かる。夢で見ているので、そういう自分をみている「自分」がいる。

 どこか冷静なのか、「目を覚ましてしまえば大丈夫だ」と、一生懸命頭を振ったりして目を覚まそうとするのだが、全くだめだ。焦る。焦る。やがて、ふっと目が覚めると、時計の針はまだ夜中の2時を過ぎたところ。そんなことが数回あったが、いずれも部屋の電気を落として真っ暗にして休んでいたので、少し、明るくして寝れば大丈夫か、などと自分なりの「対策」を講じていた。かなしばりは、心霊現象だと思っていたからである。しかし、かなしばりはまたやってきた。

 さすがに怖くなって、調べてみた。すると、かなしばりは、心霊現象などではなく、科学的にある程度説明のつく睡眠障害の症状の一つだという。過眠症などの関連でもあるようだが、眠りのリズムが狂っていると、幻覚を生じ、かなしばりに遭ったと感じるようである。日本人には、この類いの睡眠障害が増えているとかで、詳しく説明したサイトも多い。

 それにしても、救われた。お化けの存在を信じている訳ではないのだが、昔、「恐怖新聞」(作者はつのだじろうさんだった?)を読んでから、どうしてもそういう話には弱い。事実、テポドンが先か、地震が先か、それとも・・・などと考えたりもした。ああ、ただの睡眠障害でよかった。ここのところ、仕事のことでオーバー・ストレス気味だったので、よく眠れていないのかもしれない。しばらくは、音楽をかけっぱなしにしたりして、ぐっすり眠れる工夫をしようと思う。

 そんな今日は、大好きなスュートキンの大ヒットアルバム、「夜道のラジオ」をチョイス。ブラーウ゛ァを脱退して自分のバンドをもった彼が、バンドとして一番ノリに乗っていた時期の作品で、モットーとするロックンロールにとらわれず、軽快なリズムで唄うスュートキンがすごくいい。この後、ソロ活動が中心になり、最近は新譜リリースからも遠ざかっているが、96年リリースのこの作品は、いささかも古さを感じさせることは無く、むしろ、今だからこそ楽しめるバラエティに富んだ内容だ。後のベスト盤に収められているナンバーが目白押しのこの1枚、自信を持ってお勧めしたい。
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マイブームのチェット・ベイカー―Heartbreak--Chet Baker
 ここのところ、チェットの録音を漁り続けている。70年代以降の録音は、乱発されているというか、過作状態で、更にその中にはブートレグのようなのも入り交じっているので、よほど丁寧に情報収集していない限り、「集める」のは大変なことだ。ライナーノーツを書かれているような専門家の方でも、いわゆるコンプリートを目指すのは、チェットに限っては大変なことである。世界的にも有名なコレクターの方が作成したディスコグラフィーでさえ、人によって微妙な違いがある。その困難さが容易に想像できるというものだ。

 ネットショッピングにも慣れ、UK盤などの輸入ディスクも簡単に探せるようになったので、チェット探しに拍車がかかっていたのだが、タイトルと録音時期、収められているナンバーだけでは、オリジナルなのかどうかがよく分からないものも多い。まあ、仮に失敗したとしても、べらぼうに高価なものではないので、授業料を払ったと思って諦めがつくのだが、それにしても数が多い。

 今日のチェットは、晩年ヨーロッパで録音されたものに、後からストリングスを被せた、ちょっとパチもん臭い1枚である。パチもんという言い方は良くないかもしれないが、後から加工してしまうのは、そのアーティストをして、どういうもんだろうかと疑問に思う。しかし、このアルバムは、聴いてみて納得のいく出来映えで、ちょっと驚いた。曲は、エンジェル・アイズからマイ・フーリッシュ・ハートまで、チェットの愛した名曲揃いで、その意味でも、チェットファン以外の方でも十分に楽しめる内容だ。もうすぐ春なのに、気持ちはなぜか弾まない、ちょっとセンチメンタルな気分のBGMにぴったりの1枚、ぜひお勧めしたい。
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グルーヴ快勝!―Самый нежный--Света
 エアグルーヴという牝馬を知らない方は少ないと思うが、天皇賞(秋)を勝ち頂点を極めた母と、今は亡きサンデーサイレンスとの間に生まれたのが、初子のアドマイヤグルーヴだ。華奢な体つきは、いかにも若い牝馬といったもので、牡馬を圧倒すると言われたエアグルーヴとは似ても似つかないが、細い流星をたたえた美しい面持ちは、母譲り以外の何ものでもない。

 母のファンが多かったように、その娘に対する応援は、すでにヒートアップしている。調教師は、馬場の悪さを嫌って中山のトライアルではなく、阪神の若葉ステークスを選んだが、それは見事な決断だったと証明されることになる。

 若葉ステークスは、レベルが若干落ちるとはいえ、彼女以外の参戦馬はすべて牡馬。見た目ではあまり違いのないサラブレッドだが、牡牝の差はやはり存在する。しかし、当日の単勝オッズは堂々の1.7倍。馬券を買った客は圧倒的に、アドマイヤグルーヴを支持した。彼女を支持するお客の気持ちは複雑だろう。純粋に彼女のファンであるから、勝って桜花賞に向かってもらいたいという心理。勝算無しに出さないであろうから、ここは狙えるという勝負の駆引き。単に、牝馬への判官びいきというのもあったかも知れない。

 レースは、途中抑える余裕を持ちながらも前寄りに取り付き、常に先頭を射程に納めた横綱相撲。4コーナー手前からじわっと追い出され、スムーズにコーナーを回ると、彼女は力強く先頭に躍り出た。最後の100mでビッグコングに並ばれ、壮絶な叩き合いとなったが、彼女は、ゴール手前でまた差し返すという3歳離れした勝負根性を見せ、見事、勝利した。私は、このレース結果を着差以上の快勝と見ている。最後の直線まで脚をため、どの馬のマークも受けず楽に運んだ2着馬と、終始、標的となり、弛める暇もないきついレースをした彼女とでは、同じ土俵で比べるのもおかしいというものである。

 アドマイヤグルーヴのこれからの活躍を祈りつつえらんだのが、スウ゛ェータの新譜、サームイ・ニェージュヌイだ。彼女は、ここのところ、立て続けに新譜を発表している、注目の若手シンガーソングライター。流行のクラブ系とは一線を画した、本格派のタンツェバーリナヤ・アーティストだ。彼女の公式サイトでは、最近の活動状況や音源も公開されている。ビジュアル的にも充実しているので、ぜひ訪問してみて欲しい。今後が楽しみな女性アーティストである。
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温泉行き―Кленовый лист--Валерий Леонтьев
 事務所の大先輩が無事、定年退職されるのを祝うのに、温泉旅行が企画された。今時、職場旅行でもなかろうが、周囲が何かの形で祝いたいと思うような、自分のことよりも人に尽くしてきた方なので、私も今回は喜んで参加した。

 特急きぬに揺られること約2時間。もうすぐ春というのに、鬼怒川はまだ冬景色。昨日は雪も降ったという。私たちのグループと同じ車両に乗り合わせた方は随分驚かれたことだろう。浅草を出て約10分、次の北千住につく頃にはすでに出来上がっていたのだから。朝早いということもあるが、車中のシャンパンはよく回る。

 湯巡りを満喫した後、お決まりの宴会へ突入。もちろん1次会などで終わるはずは無く、二次会のカラオケスナックから、部屋での三次会と、朝方近くまで盛り上がった。宿の露天風呂に入らずじまいのメンバーもいたのではないだろうか。それにしても、本当にこの日を迎えることができて良かった。大きな病気を何度もされたご本人も、喜びは一入というもの。転職がもてはやされる昨今だが、一つの仕事を勤め上げるということの大変さと値打ちを、私は改めて痛感した。

 こんな心温まる日に相応しい1枚が、レオンチェフの新譜、クレノーウ゛イ・リーストだ。ごく初期のものを除き、私は彼のアルバムを一通り揃えているが、いずれもノリのいいレオンチェフ節が楽しめる。特に今回の新譜は、派手なルックスやノリの良さとはまた別の世界を覗かせている。円熟味を増したボーカルは、これまでちょっと彼を敬遠していた向きにも十分アピールする内容だ。特にお勧めは3曲のバラード、ウ゛ィチナヤ・リュボーフィ。じっくりと心に染入る1曲を味わっていただきたい。

 年令を重ねると、エストラードナヤからシャンソンに転向するアーティストが少なくないが、レオンチェフにはまだまだ頑張ってもらいたい。また彼のみならず、ここのところリリースが止まっていた新譜も4月には多数お目見えする。これはと思うものは、随時、この場で紹介してきたいと思う。
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無題―В 20.00 по Гринвичу--Чиж & Со
 とうとう砲撃が始まった。難しいことは、分からない。ただ、戦争で本当に人が解放されるのか、ひたすらに疑問だ。

 ここ数日、ひたすらチーシュを聴いている。聴くだけで、救われる音楽がそこにある。今日の1枚は、BBCのラジオライブの模様を収録したもので、99年にリリースされている。チーシュ&Coは、ロシアのみならず、多くの国でライブを行なっており、NHK-FMでも放映されたこともある。そんなこともあって、日本にはチーシュのファンが結構いる。かつて、日本にもあった、懐かしいフォークの響きと、力強く絶えることのないメッセージは、異文化の壁を軽く突き破り、聴くものの胸に深く突き刺さる。

 どんなに疑問を抱いていても、私は戦争に関してなんら具体的な行動を起こしているわけではない。その自己嫌悪から逃れることもせず、ただ音楽を聴いている。先が見えないややこしさと、聴けるうちに聴いておこうという、単純な理由から。

 お勧めは2曲目の「エドゥ・エドゥ」。これは以前の日記でも一押ししたが、チーシュの歌から数曲選べと言われたら、この曲を外す理由は無い。

 チーシュによらず、90年代にリリースされたタイトルは手に入れるのがそろそろ難しくなっている。探し物のある方は、早めにネットショップ等にオファーされたし。ややこしい時期にモスクワの市場でひたすら探すというのも一興だが、あまりお勧めできない。値段も手間を考えれば、ネットショップは効率がいいので、上手に活用するのが吉である。
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戦争が始まってしまうのか―Танец на цыпочках--Настя
 17日が政治的解決の期限と一方的に突き付けた大国に対し、依然として抵抗の意思表示を示す中東の盟主。どうあっても、戦争を始めないと気が済まないのかと思えるほどの、一見、子供じみたやり取り。もちろん、ドロドロとした利害関係と政治的駆引きが渦巻く外交舞台だ、新聞やテレビで言われることなど、ごく限られた情報でしかないし、それとてどのように操作されていても、それに気が付く術もない。

 人間の盾を志望してかの国に旅立った人々。そしてとうとうその中から犠牲者が出た。いよいよだな、と感じた月曜の午後。湾岸戦争のときには、帰宅途中のキオスクで、砲弾が飛び交いはじめたことを報じたタブロイドの大見出しに目を疑った。信じる宗教が違うから?それとも、石油の眠る土地を保有しているから?あんなに気候の厳しいところに、せめて金になる資源がなければ、大勢の人が住んではいられないだろう。

 戦争が始まるからといって、自分に何ができるわけでもない。が、無関心でいるのだけは、よそうと思っている。決して、無関係ではありえないからだ。例えば、チーシュの歌を聴く度に、無言で繰り返す自分がいる。目をそらしたくてもそらしきれない、そんな現実が眼前にある。

 今日のナースチャのアルバムは、94年にリリースされた作品。最初はインディーズで出たのか、ナースチャのアルバムはメジャーリリースと制作の時期がずれているのが多く、このアルバムは比較的初期のもの。彼女の声も若く、どこか頼りな気なかわりに、どこまでも澄み切ったよどみのない声音だ。そして何よりも、曲が素晴らしい。全部で14曲収められているが、ベーゲーやアガタ・クリスティなどのカバーが多数入っていて、どれもこれと選ぶのが難しい。ナースチャの曲がいいなあと思うのは、曲自体はもちろんのこと、アレンジにもかなり凝っていて、その濃さ具合がちょうどいいことだ。自然にロックしているのがもっといい。そして、何げに厳しいメッセージを突き付けてくれる。慌ただしい毎日の中、ふと足下をみるきっかけをくれる、そんなアルバムである。
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リフォーム・ブーム―Секрет счастья--Вахтанг Кикабидзе
 リフォーム・ブームが叫ばれて久しい。手の込んだ模様替えが流行る背景には、それこそいろいろな理由があるのだろうが、面白いと思うのは、TVの「リフォーム番組」がやたらと多いことだ。ある雑誌に「もう笑いでは視聴率が取れない。やっぱり”泣ける”ものじゃないとね」と語る番組ディレクターのインタビューが掲載されていたが、なるほどと思う。

 デフレ基調の中で、ご多分に漏れず、番組制作の予算も限られたものに違いない。経費のかかる大掛かりなセットを使うものや、人気歌手を大勢呼ぶような歌番組が減ったのは、単純に金がかかるからだと私は思っている。それにしても、リフォーム、だ。

 日曜の夜に放映中の某番組では、デザイン料を除くその他経費は、リフォームの依頼者が負担し、それ以外をどうやら番組が持っているようである。もっとも、施工者側も宣伝になるから、デザイン料は取っていないのかも知れない。なんといっても、ゴールデンタイムの全国ネットで、何度も「***の匠、○○○○」と名前を連呼されるのである。その効果たるやはかり知れない。

 視聴する側にとってみれば、どの家庭でも関心のあるテーマである。家を買うとなると簡単ではないが、リフォームなら今すぐでもできることがいくらでもある。ちょっと背をのばせば「手が届く」という設定が効いている。それに、他所の生活を覗く愉しみ。これはどんな人にも多かれ少なかれあるのではと思う。他人の生活が見える、というのは、この種の番組のキーワードだ。

 不景気で手取りは減るばかりのサラリーマン家庭では、外へ出てお金を落とすことよりも、家の中を充実させることに目を向けはじめているのかも知れない。お金が全くないわけではない。ホームシアターブームなどは、それと無関係ではないだろう。人々は許せる予算の中で、ほんの少しの贅沢と充実した楽しい時間の過ごし方を模索しはじめている。

 今日は、グルジアのエンターティナー、キカビゼの大ヒットアルバム、「幸せの秘密」を取り上げる。彼はもう随分高齢だと思うが、歌って踊れる人気のシャンソン歌手で、このアルバムはほとんどロシア語で歌われている。大歌手とはいえ、アルバムをリリースするのは大変なことであり、バックの演奏は多機能ポータサウンドプラスアルファ程度の簡単なもので、ちょっと寂しいが、彼のボーカルがそれを埋めて余りある魅力の1枚である。

 表題曲は2曲目に入っているが、10曲目には中近東の香りのするザカフカース民謡が現地語で歌われている。グルジア語なんてあるの?とよく聞かれるが、グルジアワインのラベルに、ミミズのはったような(失礼)文字が書かれているのを見たことはないだろうか。あれがまさに古いグルジア文字で、「何か適当な模様」とかではない。このアルバム以降、ベスト盤が出ただけで、新譜は久しくお目見えしていないが、まだまだ歌い続けて欲しい大スターの1枚、騙されたと思って聴いてもらいたいお勧め盤である。
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