音の快楽的日常

音、音楽と徒然の日々
金銭感覚って―XXL--Gordon Goodwin's Big Phat Band
 ここのところ、すっかりBig Bandにはまっている。もともと好きだったからはまっているもなにもないのだが、好きな割りには、そこまで「手が回らない」という理由で手持ちのソフトが少なかった。それが、クラーク・ボラン楽団のMoreを聴いてからというものの、じわじわと水が染みるかのように増えるソフト。
 
 そういえば、同僚にソフト代毎月いくら使ってる?と聞かれて、*万円と答えたら、「バカじゃないの」と言われた。もちろん、予算であって、毎月使い切っている訳ではないが、最近のサラリーマンのお小遣いの平均が大体4万円を切るということなので、呆れられても仕方のないところだろう。

 何にどれだけお金を使うかというのは、各人の判断に依るし、出せる出せないの問題があるから一言ではうまく言えないが、趣味の世界に使うお金は、できればクリーンで気持ちの良い使い方がしたい。たまに、趣味を通じて知り合った人間関係をお金に結び付けてしまうような話を耳にするが、そういうことは、少し、残念に思う。もちろん、どんなビジネスも人脈がなければ成り立っていかないだろうが、それは相手も同じ目的だからいいことであって、そうしたある種のしがらみのないところで、或は利害関係のないところで、肩書き関係なく、フラットな立場でつきあえる―私は趣味での人とのつながりの良さをそういうところに感じている。

 インターネットがこれだけ便利かつ一般化し、ともすれば、人との出会いは随分と簡単なものになった。様々なモノだけでなく、出会いですら簡単に「手に入る」から感動も少なくなり、一つ一つにおざなりになっていくといったら言い過ぎかも知れないが、そういうものを感じて肌寒く思うことも少なくない。私という人間は感覚が古く、どうもこうした便利なツールには不向きな人間のようだ。最近とみにそう感じることが多い。

 愚痴はこの辺にして、ゴージャスでクールなBig Bandの1枚を紹介したい。リーダーのグッドウィンはピアノやサックスを演奏し、かつアレンジして指揮もしている多彩なアーティストだ。彼のアレンジは、おしゃれでウイットに富んでおり、「ビッグバンドというと豪華はいいが、なんとなくつまらない」そう思っている方に売ってつけの作品だ。この中での一押しは3曲目のComes love。Take 6のボーカルがフィーチャリングされ、中後半からオケがうまく絡んで盛り上げて行き、まさに1曲で2度美味しい!とはこのこと。何だか体のキレが悪くって、と夏バテを自覚する方にぜひお勧めしたい1枚である。
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買い物の憂鬱―night club--Patricia Barber
 毎日の献立がストレスなく決められたら、どんなに楽だろう。夕飯を考える手間とまではいかないが、何を食べるか、何を買おうかと考えるのが、実はとても苦手である。主婦ではないので、出来合いのものだって誰も文句は言わないだろうが、健康維持を考えると、ひと手間かける食事が大事だと思うし、料理は気分転換にもなる。しかし、買い物は面倒だ。酷く。

 夕刻のスーパーは似たような立場の人でごった返す。うちの近所は一人暮らしの老人が多く、隣近所の友達の分まで頼まれているのか、レジでいちいち小分けして、買い物のスタンプまできちんと個別にもらっていたりする。かというと、売り場は、いつ頃からそういう習慣になったのか、魚や野菜売り場で独特のBGM がかかっていたりする。さかな、さかな、さかな〜、さかなーをーたべーると〜。。。あるいは、茸の唄とか。

 唯一、スーパーで楽しいことと言えば、人の生活が垣間見えたりすることだろうか。絵に描いたような楽しい団らんを囲む、そんな人もいるのだろうし、私のように、献立が決まらずに売り場をじっと眺める買い物下手もいる。あるいは、子供連れの買い物客の会話を聞いていると、どこのうちも大変なんだなと溜息が出たりもする。

 食育という言葉がある。食の問題は小さい頃からきちんと取り組むことで、健康の礎となるきちんとした食事ができるようになるということだ。食べる行為はもとより、何をどのように食べるのか、今は食品が安全ではない時代になっている。一人一人がよく考えるべき行為として食をとらえなおす必要が出て来ている。美味しいものを食べたいという素直な欲求だけではだめなわけで、道ばたのよもぎで餅を作って食べたりした経験のある私には、いよいよややこしい時代になったと思えなくもない。

 昨日の涼しさはどこへやら。食材を刻みながら聴いたのは、クールなボーカルで定評のあるパトリシア・バーバーの一枚。これほどクールダウンを求める夏もなかったと思うが、道理で音楽を聴くペースも落ちる一方。オリンピックの喧騒にもそろそろ疲れてきたので、静かに流れる女性ボーカルは体にも優しい。神経を癒す静かなBGMにぴったりの一枚である。
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スポーツ音痴の素朴な疑問―Meddle--Pink Floyd
 このコラムを読んでくださっている方の中には、私同様、アジアカップのここ数日の連戦をTV観戦した方が少なからずいると思う。私は、どちらかというとプロ野球派であり、或は好きなスポーツはと聞かれれば、アイスホッケーと答えるような人間なので、こうしたテーマで独り言を書きちらすのはどうかと思わなくもない。しかし、中国での反日感情のうねりが、サッカーに興味のない私をもテレビの前に引きずり出し、一生懸命応援させてしまうという力には、改めて驚かずにはいられない。

 私が疑問に感じたのは、サッカーではホームとアウェーという概念がはっきりとしていて、アウェーでの試合は何かと不利を被ることは当たり前、という点である。その不利とは、試合前の練習環境や選手の食事はもとより、本来は中立であるべき審判のジャッジにまで影響しているという。確かに、韓国がワールドカップで大きな批判を浴びた事例はまだ耳に新しいし、今回のアジアカップで言えば、中国の優勝の障害となる相手には、よくカードが出されたり、あるいはその対戦チームのラフなプレーを注意にとどめ、審判の顔には笑みが浮かんでいたりさえするといった場面を、幾度となく見ることができた。否、これは私が「サッカー音痴だから」そう感じただけのことかも知れないが。

 試合の勝敗を賭けて、ぎりぎりのプレーをするという点までは理解できるし、フェアの解釈もそれなりに幅があるものだろう。しかし、ことサッカーに関しては、ここまでいろいろと話題に事欠かないのには、単なるスポーツの勝敗に留まらない、経済の論理が強く働いているからではないかと私は考えている。選手一人の移籍にも数億円というような金が右から左へと動き、有名チームとの試合などは、放映権やグッズ販売など、マッチメークの経済波及効果は相当のものだ。世界的プレーヤーを起用したCMは、最近ではごく当たり前となった。こうした恩恵を政府とて見過ごせるはずはない。

 今回の中国での騒動が反日教育のせいではないか、とか、或はスポーツなのだから友好を基調に、などと要人の発言が連日新聞に踊っているが、過去の戦争に絡む遺恨のみが原因とすると、説明のつかない事が多すぎる。敵対感情がファンの心理に強く影響するとしても、試合の結果としてどれだけの利権や実利が国に流れ込むか、そこに敢えて蓋をすることはできないだろう。選手の環境や審判に不利を与えたのは、地元ファンではなく、それ以外の誰かでないとできないことだ。

 サッカーは、プロ野球が地団太を踏んでも到底かなわない程に、マネーゲームの梃子となっている。日本は、チームが強くなり、実績を積んだことで、結果的にそのゲームの主要プレーヤーとなりえた。ファンタジスタと呼ばれるような選手の素晴らしいプレーに酔いつつも、ある種のきな臭さを禁じ得ない現実に、世の中にきれいごとなど一つもないなと溜息も出る。もう少し気楽に楽しめたらどんなにいいだろう、そんなことをつらつらと考えさせられた一週間であった。

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 最近、またピンクフロイドを聴きなおしている。フロイドのマイブームは、10歳の頃から中学卒業までで、就職時には金策の目的もあって、フロイドのソフトは一通り処分してしまった。時折、「狂気」や「対」を聴いても、それは再発で話題になったからである。それが、ここにきてやっぱりというか、Meddle「おせっかい」が聴きたくなった。これには、有名なエコーズの他、プロレス選手の入場曲に選ばれた「吹けよ風、呼べよ嵐」が入っているので、フロイドの中でも特にメジャーな一枚だと思うが、私が一押しするのは、シーマス、そしてサントロペの2曲である。私が彼等の演奏に求める独特の生温かさが、これらに凝縮されている。有名盤ながら改めて紹介したい1枚である。
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近頃のプロ野球に思う―Explosive!--Milt Jackson meets The Clayton-Hamilton Jazz Orchestra
 合併だ、1リーグ制だと矢継ぎ早に話題の耐えない日本のプロ野球。私は何を隠そう、その話題の渦中にある近鉄バファローズファンだ。かれこれ20数年間。小学生の頃には既にサイン会の列に並ぶほどであった。それが、12球団中一度も日本一になれないチームと言われたまま、名前が消滅するかもしれないとは!

 近鉄、地下鉄―これは日本一になれないことを揶揄して言われる悪口の一つだが(もちろん、近鉄は上の鉄道しか走らせていない、念のため)、どんなに卑下されようと、いつか強くなる、いや強い時期もあってリーグ優勝は何度もしているのだ、きっと日本一になるさと隣りの阪神ファンを羨みつつも地味に密かに、時には声高く応援し続けて来た。

 そんなものだから、ライブドアの話をどう思うかと周りからよく尋ねられるが、何とも答えがたい。株価の下がり気味な同社において、こんな恰好の話題提供はないだろうし、買収に失敗したからといって同社に何の痛手があるだろう。「本当に買うなら、本社を先に大阪へ移転するぐらいでないと」という府知事の言いようももっともだ。そんなこんなで、私は期待していない。

 プロ野球なんてなー、ほんとうにもういやになってしまうなー、でもなーと、どこかの掲示板のモナー状態の自分に流石に嫌気が差しそうだったのだが、昨日の阪神は金本選手の入魂の一打、セーフティバントには、じんと胸が熱くなった。負傷で片手打ち状態の金本は、4番のプライドもかなぐり捨てて、初球を狙い打ち。その一本が結局は逆転勝ちに繋がり、チームは対巨人戦勝ち越しを決めた。胸のすっとする一瞬。

 そうかと思えば、今朝はイチロー選手のまたまた大記録樹立のニュースが。3か月50本超安打の記録は、かのピートローズ選手でも2か月止まりという素晴らしいものだそうで、低迷するチームにあってもやはりイチローはイチロー。天才と言われる人は、自分の周囲に言い分けなど探しはしないで、結果のみを出す。真似は無理でもその真理を学びたいと思う。

 プロ野球贔屓の私が、昨日などもサッカーを見て、最後のPK戦サドンデスに胃を痛くし、また日本のゴールキーパーの素晴らしいセーブに酔った。日本のプロ野球の運営は、今一度、せめてもう少し、見ているファンのことを意識できないのだろうか。いくら経営ありきでも、少し寂しい今日この頃。カチワリが旨い季節だというのに、今年はまだチケットを一度も買っていない。騒ぎにはもううんざりだ。

 気分をパーっと変えたいときには、ゴージャスなブラスサウンドがいい。好きな割りにはビッグバンドの手持ちソフトが少なくて、ここのところ意識して探すようにしているが、アマゾンコムのお勧めで買ったクレイトン・ハミルトンオーケストラの1枚が大当たり(笑)。ミルト・ジャクソンのバイブの音色が何とも涼しく、汗の引かないこの暑さにはおあつらえ向きだ。内容も濃く、冷えたビール片手に楽しみたいアルバムである。
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