重い本 | 2005.05.31 Tuesday |
先週、久しぶりにまとめ買いした本の中に、一時期書評で話題になった「自閉症裁判」というノンフィクションがあった。福祉施設で指導経験のある筆者が後にノンフィクションライターになり、レッサーパンダの帽子で有名になった猟奇殺人事件を「猟奇」ではなく「自閉症」に光を当てて事件の本質を浮き彫りにしようとしたものだ。
ノンフィクションというジャンルがもともと好きで、学生時代もそれ以降もこれはという作家のものは端から読んでいたが、最近は読む根気がなくなってしまったのか、事実に基づいて書かれたまとまった分量のものを読みくだす馬力がなく、敬遠気味だった。前回読んだのが東電OL事件の裁判を追ったものだったからもう随分間があいている。
店頭で数ページ読み流してから、これならと思って買ったのだが、読み出して止まらない内容の反面、その重たさといったらなかった。裁判に関する記述が十分整理されていないというせいもあったのかもしれないが、自閉症という病気のもつ難しさに加え、殺人を犯した男性の生い立ちや家族の悲惨な様子、ことに癌に続け様に襲われて手術を繰り返しながらも、母亡き後稼ぎのない父親や家族を支えるためにぼろぼろになるまで働き続けた男の妹にまつわるエピソードは、あまりにも陰惨である。
まるで「地雷」を踏んでしまったかのように被害にあった女性がいる傍ら、その殺人事件がきっかけで福祉支援団体の目に留まり、人々の支えの中でわずかでも人生を楽しむことができた犯人の妹。筆者は、同様の事件が繰り返されないよう、自閉症への理解と社会の対応が必要と考えているようだが、取り上げられている内容や触れられている関係者の心境など、今ひとつ焦点が絞りきれないでいる。それが、畳み掛けるような筆者の自問自答をそのまま表しているといったら、そうなのかも知れないが、興味本位で手に取るにはあまりにもヘビーな内容だった。
これという方向や光が見えないまま結ばれた1冊の本を、さすがに長く手元に置く気にはなれず、早々に手放した。今は処分の方法もいろいろあって、次に読んでくださる方を探すのもネットでは簡単だ。その手軽さが日頃は疑問に思えども、今回ばかりは有り難く感じられた。
気分転換にマイブームのScorpionsのバラード集を聴く。中でもStill Loving Youが心に沁みる。本を読み終えて心の襞のざらつきを感じることなどこれまでなかったことだが、それだけ私に物事を受け止める度量が小さくなっているということなのか。酒も止められていることだし、せいぜいマイネのボーカルを流し込んで眠ることにしよう。
ノンフィクションというジャンルがもともと好きで、学生時代もそれ以降もこれはという作家のものは端から読んでいたが、最近は読む根気がなくなってしまったのか、事実に基づいて書かれたまとまった分量のものを読みくだす馬力がなく、敬遠気味だった。前回読んだのが東電OL事件の裁判を追ったものだったからもう随分間があいている。
店頭で数ページ読み流してから、これならと思って買ったのだが、読み出して止まらない内容の反面、その重たさといったらなかった。裁判に関する記述が十分整理されていないというせいもあったのかもしれないが、自閉症という病気のもつ難しさに加え、殺人を犯した男性の生い立ちや家族の悲惨な様子、ことに癌に続け様に襲われて手術を繰り返しながらも、母亡き後稼ぎのない父親や家族を支えるためにぼろぼろになるまで働き続けた男の妹にまつわるエピソードは、あまりにも陰惨である。
まるで「地雷」を踏んでしまったかのように被害にあった女性がいる傍ら、その殺人事件がきっかけで福祉支援団体の目に留まり、人々の支えの中でわずかでも人生を楽しむことができた犯人の妹。筆者は、同様の事件が繰り返されないよう、自閉症への理解と社会の対応が必要と考えているようだが、取り上げられている内容や触れられている関係者の心境など、今ひとつ焦点が絞りきれないでいる。それが、畳み掛けるような筆者の自問自答をそのまま表しているといったら、そうなのかも知れないが、興味本位で手に取るにはあまりにもヘビーな内容だった。
これという方向や光が見えないまま結ばれた1冊の本を、さすがに長く手元に置く気にはなれず、早々に手放した。今は処分の方法もいろいろあって、次に読んでくださる方を探すのもネットでは簡単だ。その手軽さが日頃は疑問に思えども、今回ばかりは有り難く感じられた。
気分転換にマイブームのScorpionsのバラード集を聴く。中でもStill Loving Youが心に沁みる。本を読み終えて心の襞のざらつきを感じることなどこれまでなかったことだが、それだけ私に物事を受け止める度量が小さくなっているということなのか。酒も止められていることだし、せいぜいマイネのボーカルを流し込んで眠ることにしよう。