音の快楽的日常

音、音楽と徒然の日々
最近のお勧め盤【その2】
 まともな時間に帰宅できない鬱憤をはらすべく、夜中にあれこれ新譜を聴いて楽しんでいます。日頃ライブラリに並びそうにもないところから選んで買ってみたら!(とても良かった)というのを順不同で紹介します。

□ FUJI SATISFACTION soundclash in Lagos / BANTU feat. AYUBA

 以前紹介したDJパーティでさわりを聴かせていただいて以来気になっていたアルバムです。ナイジェリア人とドイツ人の両親を持つBantuとナイジェリアのフジ・ミュージックのアーティストAyubaのコラボレーションによる楽しい作品。私にとっては耳慣れないジャンルなので最初は「これ何!?」状態でしたが、思いっきりハマってます。Forest Beat主催のDさんによれば好き嫌いが分かれる盤ということで、日頃アフリカンミュージックを楽しんでいる方の間でも賛否両方あるようですが私は文句なしに一押しします。
 ところでフジというのは富士山から来ているんですね。私のようにアフリカン初心者の方には、解説の親切な日本盤がおすすめです。今ならHMV新宿に試聴盤も出ています。


□ AS IS NOW / PAUL WELLER

 音楽サイトのいくつかで、「今おじさんアーティストが熱い!」みたいなコメントがあって思わず頷く私です。私はこのポール・ウェラーという人が誰なのか知りませんでした。(調べてみたらあまりに有名な人なので、説明はいらないでしょう。)
 故に先入観も何もない状態で試聴したのですが、一瞬で”落ち”ました。かっこいいです。四の五の言わずに聴いてみて!の一枚。何と言うことのない歌の文句ですが、「こんなこと、こういう人に言われたらたまりませんね〜」などと表情が緩んでしまいます。ノリもよいです。うわずらない安定したビートの心地良さ!
 国内先行発売で国内盤だけが出ています。10月になると外盤およびDVD付きの限定盤が出るとか。


□ Catching Tale / Jamie Culum -- Special Edition

 ジェイミー・カラムの3rdアルバムがようやくリリースされました。縦横無尽に歌い、演奏するジェイミーはここでも健在。内容的には前回から比べてよりポップなアレンジが増えて、ジャズボーカルの範疇ではくくれなくなっています。上記2枚が聴いて踊れるノリのよさですが、このアルバムは前作に比べてバラード調のナンバーが増えたせいもあってじっと聴き込んでしまいます。どちらかと言えば女性リスナーにお勧めです。ブックレットに収められたセルフポートレートが素敵です。
 ちなみに外盤の通常盤は廉価なので、特別なファンでなければ通常盤がおすすめ。限定盤は通常盤CDにアルバム収録の様子とインタビューが収められたDVDがおまけについたデジパックタイプのものです。


□ New York Lullaby / Franchesco Cafiso New York Quartet

 最後に秋らしいプラス・1ホーンのアルバムを。まだ16歳というフランチェスコ・カフィーンのアルトにデヴィット・ヘイゼルタインのピアノが軽やかに踊ります。本当に16?と思うような芯のしっかりした音色。気持ちいいほどよく鳴っています。おすすめは4曲目のMy Old Flameと続くEstate。ラストの9曲目、Speak Lowでしっかり締めくくる様は、一通りのコース料理を食べ終えた満足感といったところでしょうか。ヴィーナス盤なのでドラムがやや煩い録音ですが、軽く BGMに流すというよりは、しっかり正面から聴きたいアルバムです。
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風の日に聴きたくなるのは
 陽も差さないような薄暗くて風の吹く日に限って、何故かKeith Jarrettが聴きたくなる。昔は『ケルン・コンサート』ですら全く受け付けず、アレルギーがあるのではと思うほど敬遠していたピアニストだったが、30代後半になってやっとその良さが理解できるようになったのか、今では夜中に聴く曲の定番になっているのが彼の『パリ・コンサート』。

 赤いジャケットが目立つ1枚だが、前から欲しくて探しているLPは何故か見つからない。ケルン〜ほど売れてはいないのだろうが、演奏はどちらかというとパリ〜の方がメランコリックで一般受けしそうな感じなのに、どうしてLPが見つからないのか不思議なくらい。音がいいとかどうとかではなくて、ぼんやりとレコードが回っているのを眺めながら聴くのにこれ以上ない演奏だから、『パリ・コンサート』はやはりCDではなく、レコードで聴きたい。

 静寂で甘やかなピアノの響きがあまりに叙情的だから、思わず膝を抱えてしまうかと思いきや、そうでもない。ただぼんやりと、何も考えず頭の中を真っ白にできる。寂しさとか苦しさとか、そういう一切のものから解放されて、体の隅々まで無になれる。演奏の間に漏れるあのピアニストの叫びとも歌ともつかない声がなければ、もっといい。

 本当に心の芯まで疲れ切っている時には、2曲目の"the Wind"を聴いているだけで涙が止まらなくなる。哀しいのではなくて、命の洗濯をするような、面倒なものを絞り出すための作業。人前では決してできないが、誰に迷惑かけることなく一人夜するなら、泣くことは決して悪いことではない。

 『パリ・コンサート』のジャケットを眺めていたら、キンズマラウリの味をつい思い出した。思えば忙しさにかまけて最近は凝った料理を何もしていない。一区切りついたら何か豪勢に作って食べるのもいいかも知れない。秋は紅葉ではないけれど、紅や朱の色に気持ちの高揚を覚える。四季のありがたみが身に沁みつつ、田舎の風の匂いを思い出して目を閉じる。秋の手招きする風の夜、電車の音は遠い。
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『ビニール・ジャンキーズ』再び
 本を読む時間が限られた生活の中で、同じ物を何度も繰り返して読むことは極めて少なくなっているが、ブレット・ミラノという人の書いた『ビニール・ジャンキーズ』だけは、何故か何度も読み返しては面白がっている。ほんのわずかな時間、例えば掃除機をかけ終えて、お茶を沸かすまでの数分間、とかにぱらぱらっと読んでは笑いをぐっと堪えたりするのが楽しくてならない。いや、そういう読み方をする本では本来ないとは思うが、ちょっと手の空いたときに読むのがいい。

 なぜこれほど面白いのか、それはおそらくコレクターのエピソードを通じてそれぞれの人生観が透けて見えるからであり、それは悲喜交々そのもの、否、レコードを集めること自体が人生なのだ。私などはとてもコレクターの域に達するものではないが、それでも涙なくして読めない妙味に溢れている。

 コレクションと恋愛は両立するかという素朴な疑問に、本書はいくつかの角度から光をあてているが、コレクションという行為が恋愛を阻害するというよりは、どちらも恐ろしくエネルギーの要る行為なので、それを両方ともやすやすとやってのけるにはその人に溢れんばかりのパワー、生きることへの欲求の強さが必要だろう。

 私は、自分自身が何事にも中途半端で徹底できないその理由が知りたくて、その対極を行く人の考えに触れる度に思うこと感じることが多いが、本書にあるように、のめり込み切れないことが女性のもつある種のバランス感覚から来ているものならば、とても納得がいくことではある。そういうブレーキングの効いた人生はどこかつまらないと思いつつも。

 本書は原書の英語版でも手に入るが、邦訳の独特の間合いが本書をより面白可笑しくしていると思えるので、英語が不自由でない方にも邦訳版がおすすめだ。ぜひ、ぜひ!
レコードの話 | - | - | author : miss key
最近のお勧め盤
 ロシアンポップス以外で最近聴いてとても良かったものをピックアップ。

□ Chaos and creation in the backyard -special edition-
/ Paul Mccartney

 こんな音楽が聴きたかった!というくらい、乾いた喉に注がれる水の瑞々しさ。私はビートルズもポールの歌もそれほど聴いていないけれど、彼の"Flaming Pie"が好きな方にはお勧めです。所々に入る美しいハーモニーに懐かしさを覚えます。CCCDじゃなくてDVD付きなのはとりあえずスペシャルエディションのUS盤のみのようです。お間違いなく。

□ Play the songs of Bob Dylan / The Byrds

 ボブ・ディランという人があちこちで話題になっているので、聴いてみようと思い、眠た目で選んだらバーズという有名なバンドがディランのナンバーを歌ったアルバムでした(笑)。でも、怪我の功名ではないですが、フォークソングのような穏やかでリリカルなサウンドが魅力的。ジャケットもお洒落です。

□ Who's next / The Who

 フーって誰!?といって笑われたのは私です。駄洒落たつもりはなく、いつかは聴いてみようの1枚でしたが、このアルバムで如何に私がBritish Beatと言われるジャンルが好みなのかがよく分かりました。ちょうどリマスター再発の廉価盤が出ています。少し高いですが、スペシャルエディション版も出ていて、おまけ好きの私はかなり迷いましたが、これでも16曲入っていますから、ヘビーなファン以外は廉価版で十分かも。

□ Going home / Georgie Fame

 いつかはフラミンゴ・・・と思うくらい有名なmono盤があるジョージィ・フェイムですが、このアルバムは歌中心です。最近、カフェ・アプレミディシリーズでも出ていますが、人気があるんですね。やや脱力系、陽性の彼の歌声には癒されます。肩が凝るような音楽はちょっと、という時にぴったり。

□ Possibilities / Herbie Hancock

 ハンコックというと『処女航海』かウォーターメロンマンぐらいしか聴かないミーハーな私ですが、彼のピアノってこんな音色だったかな?と新鮮さに満ちたアルバム。John MayerやSantana、Annie Lennoxなど数多くの豪華メンバーを迎えての演奏の数々。どの曲も素晴らしいですが、特におすすめはChristina Aguileraの歌による"A song for you"、そしてLisa Hanniganの"Don't explain"。静かな夜にしっとりと聴きたい歌です。

□ I'm all for you / Joe Lovano

 ベテランテナー奏者のジョー・ロバーノによるバラード集です。サイドをハンク・ジョーンズ、ジョージ・ムラーツが固めています。落ち着いた艶のある音色で抑制気味に流れるテナー。一人で聴くのはもったいないです。お洒落なクラブの生演奏の雰囲気が楽しめます。スコット・ハミルトンやスタン・ゲッツが好きな方に合いそう。秋の夜長におすすめの1枚。
pop & rock | - | - | author : miss key
Ramones
 音楽を聴くこと自体は何も難しいことではないけれど、何故か縁がなくて聴く機会のないアーティストやタイトルといったものが結構ある。何かの折に名前を見聞きする度に、今度CD店に行ったら買おうなどと思っているのだが、肝心のその時には記憶からすっかり抜け落ちていて、ライブラリに加わることはない。

 そんな私の中で宙ぶらりんになっている数々のタイトルをひとまとめにオーダーした。その中の1枚がラモーンズの"Ramones"、多分彼らのディスコグラフィーで最も有名なアルバムの1つである。

 なぜ、ラモーンズなのか。それは、私が好きな中島らもに関連していて、氏の著作の中にも何度かその名を見た覚えがあるし、中島らもその人も、ギターを弾き、パンクに叫ぶバンドをやっていて、そのルーツがラモーンズにあるというような話も聞いていたからずっと気にはなっていた。なのに何故かただの1枚もCDを持っていなかった。

 いざ聴いてみると、ラモーンズは腰が抜けるくらい単純でストレート、何の迷いもなくてあっけらかんとただひたすら楽しいロックだった。仕掛けとかそういうのがなくて、あまりにもあからさまな音の塊。パンクという言葉に惑わされて、私はラモーンズがもっと別なものだとばかり思っていた。もっと早く聴けばよかった。

 今日届いたCDは、オリジナルアルバムにたくさんのおまけトラックが収録された、付録大好き人間の私が大喜びして買う仕様になっている。しかも、amazonで買うととても安い。いや、音楽以前に、ジャケットがとてもかっこいい。素敵だ。よれたジーンズに革ジャケット、マッシュルームが中途半端に伸びた年齢不明の4人の男性がただ壁を後ろにして立っているだけの絵なのだが、例えば私的にはThe Clashの"London Calling"より断然こちらだ。

 どうしてこれをもっと早くに聴かなかったのだろうか!?

 音楽は際限なく私の周りに在る。一生のうちにどれだけ「無理」したとしても、そのすべてを聴くことは不可能だ。だから、音楽を聴いて幸せな時を過ごすためには、おお!と思うようなタイトルを選びとる不断の努力が必要なのだ。そういう単純なことに、今更ながら気がついて気合が入る始末。タイトル探しを狩りに例える人がいるが、今ならその意味が分かる。"あなた"は正しかった。

 音楽を聴くということが、ある意味受容するばかりで、演奏することの気力尽きて楽器を捨てた自分にどこか後ろめたさがないでもなく、心の中に置き所のなさを感じていたのだが、探すという行為は極めて能動的で、時に音楽との出会いは官能的ですらある。ラモーンズはそういう単純明快な回答を3分足らずの曲で私にやってのけた。偉大さというのは、そういうことを指して言うのかもしれない。この清々しさを何と言えばいいのか。貴方にもぜひラモーンズを聴いてもらいたい。語弊を恐れず、もう一度言う。ラモーンズは偉大である。
pop & rock | - | - | author : miss key
レストランはペクトパー
 ここ10年ぐらいのロシアンポップスのヒット曲をコンピレーションCDで端から聴いてみた。10年前というとまだ今のようにネットも発達していなくて、アーティストのディスコグラフィーを集めるのにも一苦労していた頃。手元のソフトもカセットがほとんどで、CDは現地に行かないとなかなか手に入らない状況だった。

 夜な夜なラジオ・マヤークで1曲でもたくさん聴こうと気合いが入っていた頃が懐かしい。今はアーティストのサイトやネットショップでかなりの曲が試聴できるので、特に興味を持って探さなくてもロシアンポップスに触れる機会はそれなりに増えた。そういう環境がなければ、私のサイトのような情報提供の仕方はなかなか成り立たない訳で、ロシアンポップスのようにWorld Musicのコーナーでもあまり扱われることのないエリアの音楽の場合は、それこそプロの方の紹介を待つにしても、気の長い話になってしまう。

 レコメンドの100枚をアップしてから、何人かの方からお便りをいただくことができた。そこで気がついたのは、キリル文字の表記がいろいろな意味で大きな壁になっているということだ。ネットショップにしても、最初のところは英語表記だが、途中の決済はロシア語のみとかまだまだ不親切なところが多いのが現状。これは、CDを売る側としても、キリル文字を読まない人たちがこういう音楽を買ってまで聴かないのではという決めつけが多分にあるからだろう。

 私も当初はお店の方から「なぜこんなにたくさんのCDを買うのか?」とよく尋ねられた。たくさんといっても月に10枚ほどだったが、日本の客というのはそれだけ珍しかったということだ。ただ、今は当時と随分環境も変わって、日本のリスナーだって結構いいお客になる可能性だってあるわけで、もっとヘルプや英語表記を詳しくして欲しいとリクエストしたりしているのだが、もともと商売熱心な国民ではないので(笑)その辺は徐々に良くなってくるのではと思う。

 そういえばモスクワで出会った日本人旅行者の男性が、「ペクトパー」というのを探せばお昼が食べられるというようなことを言っていて思わず笑ってしまったのを思い出した。キリル文字のрестран(レストラン)がローマ字読みでペクトパーと読めるからなのだが、そのくらい気楽にキリル文字と接していると壁の高さは一気に低まるような気もする。

 もっとも多くの人はそこまでして壁の向こうにある文化と付き合ってみようと思わないであろうから、やはり文字や言語の違いは、音楽を聴くにしてもバリアになってしまう。この辺を気に留めながら如何にサイト内でバリアフリーにするのかが課題なんだろうなあと思う。実際どうしたらいいかという点についてはなかなか難しそうだが、解決のヒントを感想やお便りから探り当てつつ、少しずつサイトの内容を充実できたらいいなあと思う今日この頃である。
pop & rock (russian and other slavic) | - | - | author : miss key
残業続きの憂さ晴らしは買物で
 根が不勤勉なので、あまり仕事のきつい日が続くとどうしても溜まってしまう。これまでなら泥のように寝て憂さを晴らす、とか、銭湯に行ってのんびり汗を流す、とかで何とかしのいでいたが、昨日今日はなぜか物欲過剰でAmazon等々をあれこれ物色。

 この調子でリアル店舗に行けば、おそらくCDをかご一杯にしたかも知れないが、ネットショップだと多少は冷静になれるので酷い散財をしないで済んでいる。それでも、「おすすめ」画面に出てくるタイトルを次々に試聴してはとりあえず気に入った物をバスケットに放り込んでいたら、大変な額になっていた。

 哀しいかな決めた予算をなかなかオーバーできないので、とりあえずウイッシュリストに載せたまま、どうしても聴いてみたいものを数枚購入したにとどめたが、ふらりと覗いたOzon.ruではスュートキンのDVDなど気になるリリースが目に留まる。ここでは迷わず精進した。ロシア国内盤はたいてい1ロットなので、見た時が買うとき。ロシアものはこういうところが辛い。

 画面での買物も1時間もすれば目が疲れてしまうので、CDやレコードの並び順を整理したりしていたら、あっという間に日曜が終わってしまった。片付けついでに懐かしいアルバムを端から聴いたが、思いのほか新鮮で、こんな音楽だったっけなあと手が止まりがちであった。

 特に、『細野晴臣インタビュー〜The endless talking』を読んだ直後ということもあって、細野さんのアルバムを古い順にかけたのだが、好きなアルバムは買った当時と全く変わらなくて、やっぱり『泰安洋行』と『はらいそ』がなんといっても押しも押されぬMy Favorite。これらを聴いたのは中学のときだから、かなりの時間が経過しているわけだけれど、(自分にとって)いいものはずっといいものであり続けるのだろうなあとしみじみした。

 これで仕事がなければこれ以上幸せなことはないのだが、そういう訳にもいかないので、また火曜から真面目に働くこととする。最近、こうしてわざわざ言い聞かせないと仕事をする気になれない―否、逆にこれまでよく仕事を辞めずに続いたものだと思ったりもする。多少の買物で気が晴れるのなら、それでいいのかもしれない。これからの世の中、収入は少なくなるばかりだから、そうとばかりも言っていられないのだけれども。
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赤とんぼの群れる夕焼けに
 「負われてみたのはいつの日か」というのは童謡「赤とんぼ」の歌の文句だが、この意味が分かった大学生は6割だったという新聞記事を見て思わずため息が出た。何でも高校生の正答率より悪かったそうで、他にも「蛙飛び込む池の音」の「蛙(かわず)」が読めなかったりと、活字離れの進み具合は深刻のようだ。

 もちろん、背負われて見たの意である。思えば、職場でも10歳以上離れた人たちと話していると、言葉尻を掴まれて説明に難儀することが少なくない。こちらの間違いを咎めているなら別に何とも思わないが、そうではなくて、言われた意味がきちんと取れなくておかしな質問が返ってくることがあり、時にこちらも言葉を失ってしまう。

 何と言うか、物の喩えとか、物事を大括りに捉える力とでもいうのか、そういうのが相手に欠けるがゆえにやりとりに窮する場面に少なからず遭遇していたため、その記事はとても合点がいくものであった。

 もちろん言葉や表現ですべてを正確に伝え得るわけではないが、それを補うものとして、受け取る側の想像力とか解釈の力が必要なわけで、しかしそれ以前に言葉の持つ意味がきちんと受け取れていないと理解の大きなつま付きの元になる。

 対人関係に不安を感じる人が職場に増えつつある中で、私もその真ん中にいてコミュニケーションはどうすればうまくいくのか、はたと悩んでしまう今日この頃。パソコン端末中心の仕事の仕方も多少なりとも影響があるのだろうかと、素人なりに考えを巡らしてはみても、対処法は浮かんでこない。こういった傾向はこれからもますます強くなるのではと思われるだけに、自分自身も言葉を使いこなす力を失わないように意識しなければと反省する。


 部屋の片付けを終えてマンションの廊下で涼んでいると、空には数え切れないほどの赤とんぼが気持ち良さそうに飛んでいる。ふわりふわりと風任せに浮かんだり、あるいは時折ダンスのような仕草を見せながら・・・。ただそれをのんびり眺めるだけなのに、だんだん気分が和み、疲れが取れていく。

 毎日慌ただしく過ごしていると、つい肩に力が入って力みがちだが、それは時間がないからではなく、心の余裕がないからだ。私の頭や肩に暢気に留ったりする赤とんぼには、「赤とんぼ」の歌も分からなくなってしまった人間の事情など理解しようもないだろうが、彼らの朱色に染まった胴の色に、今時の人は一体どのくらい秋を感じるだろう。

 赤とんぼを背負われて見たという歌の解釈ができないことが情けないのではなく、そうした光景に自ら身を置いた記憶を持たない人が増えているのだろうということに一抹の寂しさを覚える。否、私がいい時代に育ててもらっただけのことかも知れない。わが食卓に松茸のぼらずとも、十分に秋を楽しませてくれる赤とんぼの群れに心から感謝する夕刻であった。
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『ジプシー・ミュージックの真実』by 関口義人
◯ 『ブラスの快楽』の著者でもある関口義人さんから、新著『ジプシー・  ミュージックの真実』(青土社、9月末発売予定)発刊を記念しての数々のイベントのお知らせが届きました。

◯ ロシアンポップスのアーティストでは、カブリオレートなどはロマ音楽の影響大ですが、このコラムを覗いてくださっている方の中には音楽ファンが多くいらっしゃると思いますので、ぜひご紹介したいと思います。


□■□「ジプシー・ミュージックの真実」刊行関連イベント□■□

★10/7(金)ワールド・ミュージック・バー「国境の南」
      http://www.kokkyo.net/
      FB/DJ PARTY VOl.4
「ジプシー・ミュージックの真実」と
            アラブ、マグレブ音楽特集
      DJ’s :関口義人 x 北中正和 x raye X D(FBDJ主宰)
      Start : 19:00 − 24:00
       *小さなバーですので、来ていただける場合あらかじめご連絡
        頂ければ幸いです
入場無料( cash on delivery for food & beverages ) 

★10/15(土)渋谷アップリンク・ファクトリー
      渋谷区宇田川町37-18 トツネビル2F
http://www.uplink.co.jp
      「ジプシー・ミュージックの真実」(青土社)刊行記念イベント
      トーク:関口義人x熊ワタル(CICALA MVTA)
珍しい音源+映像+写真を用意しています
      Start:19:00 − 22:00
      ¥2,000(w/1 drink)

★(ラジオ)10/23(日)Part1
      10/30(日)Part2
    いずれも放送時間5:00-5:45(早朝です)
      東京FM“トランスワールド・ミュージックウェイズ”
      「ジプシー・ミュージックの真実」特集(2回)
      田中美登里x関口義人

★(ラジオ)10/29(土)NHK-FM “Weekend Sunshine”
      「ジプシー・ミュージックの真実」特集 
      ピーター・バラカンx関口義人
放送時間:7:00 − 9:00

★11/9日(水)19:40−21:10
    早稲田大学での講義「欧州辺境でのジプシーの文化と音楽」(仮題)
       早稲田大学文学部36号館382教室
       新宿区戸山1-24-1
     (地下鉄東西線早稲田駅出口2から徒歩7分または高田馬場駅から
       都バス早大正門行きに乗り馬場下町下車徒歩5分)
*外部からの聴講も可能です(聴講無料)

★11/25(金) 大阪フィドル倶楽部「ジプシー・パッション」
     大阪市西区南堀江1-1-12 浅尾ビル3F(06-6536-7315)
   ライブ(フレイレフ・ジャンボリ−、イノウラトモエ)
       トーク:関口義人x伊東信宏(大阪大学文学研究科助教授)
Open:18:00 Start:19:00
前売:¥2000 当日¥2,500 (w/ 1 drink)

●12/3(土)ジプシー/ロマ懇話会 VOL.19     
     「ジプシー・ミュージックの真実」を読んで
     14:00-17:00(ジプシー/ロマに関心を持つ有志による集まりです)      会場未定(参加無料)
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散財の日
 手が痛いといいつつ、ついレコード店に出かけた土曜の午後。予約してあったアナログ盤や気になる新譜が結構溜まっていたので、一気に「片付けよう」と街に出た。

 ここしばらくレコード店巡りをしていなかったこともあって、棚を覗くこと自体が楽しくて仕方がない。思わぬ掘り出し物、例えばHerb Pomeroyの"Band in Boston"を安価で手に入れることができた。他にも、最近書いたイカ天時代によく聴いていたバンドのお手本であったT-Rexのシングル曲集がピクチャーレコード4枚でBox Setになったもの、などなど。

 手がまともならもっとたくさん買ったのに、その日はもう限界で持ちきれなかった。帰る足取りも重く、翌日はきっと筋肉痛だと思ったら、日曜は選挙に行くのも億劫になるくらい体中が痛かった。棚の組み立て作業のせいもあって、手の腫れがひかない。レコードを買うのは体力勝負である。

 ぶつぶつ独り言をいいながらも、翌日曜は朝から1枚1枚をチェックしながら楽しんだ。安いのを雑に選んだ割には盤の状態もよくて、大満足。昔の歌謡曲やニューミュージックも何枚か選んだが、風の2ndアルバムなどは涙が出そうであった。CDだとわざわざ探して買うような感じではないのだが、300円とかそういう値段できれいなレコードが並んでいて、つい手に取ってしまうのだけれど、そういう買い方ができるのもレコードの楽しさだなあと納得してしまう。

 なんだかんだ言いつつ、先日の棚の代金の支払いも含め、大変な散財の1日。滅多にないことだけれども、たまには許せと謝る相手がいる訳でもないのに言い訳を考えて。今週は真面目に働こう。
レコードの話 | - | - | author : miss key