音の快楽的日常

音、音楽と徒然の日々
「アサイラム・レコードとその時代」lost and found vol.2
音楽評論家の天辰保文さんと北中正和さんのユニット、The Silver Cricketsのイベント"Lost and Found"の第2回目に出かけた。日曜の夕方というのに、会場は盛況、加えてスペシャルゲスト多数。開催前にどなたと具体的にアナウンスされていなかったので、私を含め、落ち着かない様子の参加者もちらほら(笑)。

 今夜は「アサイラム・レコードとその時代」と題して、
 アサイラム・レコードというレーベルにまつわる話と
 代表的なミュージシャンのライブ映像etc.の上映。
 ―ジョニ・ミッチェル、ジュディ・シル、ジャクソン・ブラウン、イーグルス、
 リンダ・ロンシュタット、トム・ウェイツ・・・
 貴重な映像が多かったせいか、途中で映像が止められるとブーイングも(笑)。
 後半はスペシャルゲスト―左の本を編集された山本智志さん、
 本にも登場されている佐橋佳幸さん、Kyonさん、そして萩原健太さん
 が客席から入れ替わりながら次々とステージに!

私がこのイベントがいいなと思うのは、ほのぼのとした「よそ行きじゃない雰囲気」。
音楽にまつわるエピソードが分かりやすく添えられると、
その音楽と聴く人の距離がぐっと近くなるだろうし、楽しみ方の幅も広がるような気がする。
私のように気楽に音楽と接したいと思っている我侭リスナーにはピッタリのイベントだ。

今日紹介されたミュージシャンの中で、特に印象に残ったのがジュディ・シル。
家に戻ってから改めて「アサイラム〜」の本を読み返し、
今夜映像で見た、歌や容姿の清楚な印象と生い立ちのギャップの激しさに驚いた。
彼女の歌は、生前発表された2枚のアルバムに加え、
3枚目のために用意された貴重録音がCD化されていて、どれもまだ手に入るようだ。
私は早速、今日紹介された"The Kiss"が納められた2枚目を注文。

今夜のイベント、ああ、行き損ねた!という方はぜひ音楽出版社から出ている「アサイラム・レコードとその時代」を読んでみて。
レーベルの解説やたくさんのディスク紹介に加え、
The Silver Cricketsのお二人の対談も写真入りで掲載されている。

またアサイラム特集ではないけれど、萩原健太さんが主催されているCRTの次回イベントは「ポール・サイモン特集」、今度は逆にSilver〜のお二人がゲスト参加。詳細は萩原健太さんの公式サイトをご覧下さい!

◆ 萩原健太 公式サイト Kenta's...Nothing But Pop!
  http://www.st.rim.or.jp/~kenta/
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野村雅美・黒井絹Duo Live
ギタリスト&アーティストの野村雅美(のむら・まさよし)さんのライブに出かけた。
今夜は黒井絹(くろい・きぬ)さん(Voice)とのデュオ。


会場のグッドマンは、かつて荻窪にあった有名店。混沌とした空気の中から生まれた音楽やアートについて綴られたWeb Siteを見て知ってはいたが、足を運んだことはなかった。

野村さんの演奏を聴くのは初めてで、彼自身のサイトを読む度に、ぜひライブにと思っていたのが今夜実現。
しかも、アコースティックギターでの生演奏だ。

 ☆ 黒井絹(voice)
 声を楽器のようにして野村さんのギターに合わせて音を連ねながら、
 ゆるりゆるりと空間を生み出していく。
 浄瑠璃を語るような感じにも似て―アジアングルーヴとでも言おうか。
 特に、別の演奏者を挟んでの第二部の演奏には
 自然と引き込まれている自分がいた。
 聴く者の心のうねりとシンクロするような、不思議な世界。


☆ 野村雅美(g)
もっと鋭角な音を想像していたのだけれど、いい意味で裏切られた。
即興演奏は「どう受け止めていいか戸惑う」ことも少なくないけれど、
黒井さんのVoiceに寄り添うようにして、
ギターの音色はごくごく自然に、弦から放たれていく。
部分ではなく、一体としての音空間を生み出すような、
独特の抑制感のある演奏がとても印象的だった。

即興演奏のもつ一期一会の潔さにも満ちて、聴き終えた瞬間のリラックス感はなかなか快感だった。
青森のイタコが現代人の癒しの視点から改めて注目されているようだが、そういう世界にも通じるようなお二人の演奏だった。

◆ 野村雅美 公式サイト http://www.purple.dti.ne.jp/miyabis/
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心の歌
歌は世に連れ、人に連れ、ではないが、
10代の頃に見たテレビ番組の主題歌、ふと思い出して口ずさむ自分がいる。
YOU TUBEで懐かしい画像を見て夢中になる、というメールを
複数の友人から貰ったりすると、
そういうの、感覚的にすごく理解できる。そういう年代なんだな、とも思う。

□ The Songs / 中村雅俊

こういうCDが出ているのを偶然知って、以来繰り返し聴いている。
当時、聴いていてちょっと気恥ずかしかった歌詞も、
今の私には沁みるようにして心に馴染む。
「まごころ」とか「人は一人では生きられない」、「勇気」とか、
目を覆うような事件が日々新聞を飾る今時の人が
ひょっとしたらどこかに置き忘れてきたような言葉が
一杯につまった歌の数々。
いい歌だなって改めて聞き惚れるひと時。
少し疲れた貴方にもお勧めの1枚。
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もどかしさ故・・・
人の感情って、ほんとうに複雑だ。
手が届くような、届かないような、
そんな距離感が切なく、もどかしいのに、
それがよろこびにもつながったりして・・・。

 □ Леди дождя / Александр Панайотов

 アルバムのジャケットだけみれば、ああよくいる男性アイドル・・・
 くらいにしか思わなかったと思うけれど、
 ラリーサ・ドーリナとのデュエット曲を聴いていると、
 歌い負けてないどころか、彼が84年生まれのキャリアの浅い歌手だとは
 とても想像できなかった。


ラリーサは、恋というより愛のもどかしさを歌わせたらもう絶品という歌い手。
その彼女と組んで歌う7曲目「月のメロディ」は、聴かせどころが難しい曲なのにあっさりとこなしている。
スタースとワレーリャのユニットがほとばしる熱情のぶつかりなら、
アレクサンドルとラリーサの歌は熱くも溶け合うハーモニー。

お勧めは8曲目の「灰色の瞳」からアルバム後半のバラード曲。
ロシアのエストラードナヤらしい切ないメロディと唄の文句が魅力だ。

♪ Александр Панайотов Official Site  http://www.panaiotov.ru/
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Питер FM

"Питер FM"(Piter FM)は、ラジオじゃなくて、映画・・・
取り立てて気の利いた宣伝文句でもないのに、
なんとなく気になって観てみた映画。

出会うはずのない青年とキュートな女性DJが、
彼女の落とした携帯電話を彼が拾ったことから始まる物語。

すれ違いと二人それぞれの甘酸っぱい恋模様
思うようにならない人生・・・

見終わった後のこの爽やかさは一体なに!?


これまで観たロシア映画に、こういう感覚ってなかったような気がする。
サンクトペテルブルクの街の様子が何とも開放的で、
現在進行形の若者の息づかいが聞こえてきそう。

ソクーロフ作品が注目を集めているようだけれど、
肩の凝らない本作品もなかなかお勧め。
さらに音楽もお勧め!(サントラCDも出ています)

□ Питер FM Official Site  http://www.piter-fm.ru/





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たまにはお洒落な女性ヴォーカルも
□ Красивая любовь / Ассорти

 アソールチは女性6人のグループで美しいコーラスを聴かせる。
 ブラックミュージックの雰囲気を上手く消化して、
 やや抑制気味なお洒落サウンドにまとまっている。
 1曲目の表題曲だけが何故かアラブ風のアレンジで、
 < これはストリーミングでもよく流れてた
 ロシアでアラブ系の音楽が流行ったことの影響かも。
 私のお勧めは3曲目のトゥク・トゥク。

詳しくは彼女達のサイトでどうぞ。
◆ Ассорти Official Site  http://www.asortie.ru/
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渋い紅茶にあうRock
毎日こう鬱陶しい日が続くと、
紅茶を強めに入れていただきながら聴きたくなるのが、普通にストレートなRock。

□ Нормальный человек / СерьГа

「普通の人々」と題されたセリガの新譜。
セリガは、ヴォーカル・ギターのセルゲイ・ガラーニンの2つ目のバンド。
ブリガーダ・エスというバンドで
素敵なジャケのアルバムを数枚出してたから、
ご存知の方もひょっとしたらいるかも。
彼らの音楽はとてもストレートで、ある種泥臭い。
でも、奇をてらうようなことが微塵もないのがとてもいい。
素のかっこよさ。

カントリーのような懐かしさを覚える優しいメロディもあれば、
唄の文句にあわせてゴリッとした感じの曲もあって、
そこここに彼らの魅力が炸裂。
残念なのは、例によって歌詞が載っていないこと。
いずれ彼らのサイトにアップされるので、興味のある方はぜひ覗いてみて。
サイトには旧譜の音源(mp3)満載です。
♪СерьГа Official Site  http://www.serga.ru/
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ロシアっぽさを愉しむ
 ロシアが場面に出てくる映画をあれこれ見ていて、ああこんなのもあったよと思いながら観たのがクリント・イーストウッド主演の「ファイヤフォックス」。
 時は米ソの冷戦、互いに諜報活動活発なりし頃、旧ソ連邦が開発した戦闘機ミグの新型「ファイヤフォックス」を盗み出すパイロット役にイーストウッド。ロシア語で思考しないと操縦できないこの戦闘機を、ロシア人を母にもつ彼が抜擢され・・・という設定の奇抜さはともかく、例によってロシア人登場者はみな英語で話しているし、ソ連邦に関する「表現」をそのまま受け止めるにはやや無理があるけれど、当時のモスクワの地下鉄駅や市街地で撮影されていて、その雰囲気を感じ取ることができる。

 そんなことをしていたら、何となくシャンソンが聴きたくなって、引っぱりだしたのが、リサパヴァールと新鋭マーフィクの新譜、2ndアルバム。

 ◆ Лесоповал 9
 ロシアの心の唄を歌えるグループ、リサパヴァール。
 9枚目のアルバムながら、グループ初期作品で未発表のものを収録。
 音質にやや厳しいところがあるけれど、歌は非常にオーソドックスで、
 自然とロシアな空間に引き込まれる。
 構えない、自然体の語りが信条。このあたり、同じシャンソンでも、
 メッセージを前に出すベラモルカナールとは一線を画す。


 ◆ Птицы / Мафик
 マーフィクは71年、エカテリンブルク生まれの若手注目株。
 多くのミュージシャンが市場性のあるジャンルを志向する中で
 彼が選んだのはロシアンシャンソン。
 でも、ゴリゴリとした若者が敬遠しそうな歌ではなくて、
 「あか抜けすぎない」すれすれの線でまとめた彼の音楽には、
 エストラードナヤの黄金期を知っている世代への説得力大。

私もそんなリスナーの一人として、耳懐かしい音に乗せた彼の歌心に魅せられている。

♪ Мафик Official Site  http://www.mafik.ru/
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えとせとら、えとせとら
 出張帰りにふと時間をみたら、これからすぐ食事、という感じでもなかったので、特に目的もなくえとせとらレコードに足を向けてみた。

 このお店、かつては蒲田にジャンル別の店舗が複数あって、そのさらに支店という感じで新宿に1つ店があった。それがこのご時世だからか、蒲田の店は統合に統合を重ねてついに1店舗のみとなり、新宿の支店はそのまま残ったようだ。

 えとせとらレコードは、どちらかというとレアな国内盤をいい状態で確保できるお店であって、安い盤があれこれ手に入る、という感じではなかったと思うのだが、今回はたまたまなのか、1枚500円、3枚で500円の箱に結構魅力的な盤が入っていて、私はこのエサ箱からヴァンゲリスの国内盤を数枚抜いた。私には、帯が付いているかどうかはあまり関係ないのだが、どれもとても良い状態で、帯の文句を見るとその時代が読み取れるようで面白い。

 通常の棚でも嬉しい収穫が―久保田麻琴と夕焼け楽団「ディキシーフィーバー」の再発盤。オリジナルは結構な価格になっているのでちょっと手が出ない。家に帰って真っ先にターンテーブルに載せたが、とてもいい感じで、中学の頃聴いたあのときの音そのまんまだ。

 よいレコードが雨の日割引とかでさらに安く買えたのは本当にラッキー。ちょっとしたことが買物を楽しくさせてくれる。安い国内盤というと、どうしてもレコファンに足が向く私だが、時々はこちらも覗いてみようと思った。新宿西口はそういったお店がひしめいているので、うっかりするとお財布の中身が空になるなんて笑えない状態になるけれど、でもレコードを探すって本当に楽しくて時間を忘れてしまう。雨上がりの夕刻の、ノーストレスなひと時。
よもやま | - | - | author : miss key
青春というにはあまりにも
10代の頃の音楽体験をつらつらと思い出していたら、
どうしても聴きたくなったレコードが2枚。

■ 12枚の絵 / 北山 修

北山修を知ったのはもちろんザ・フォーク・クルセダーズじゃなくて、
自切俳人の名でDJをされていたから。
後から精神科のお医者だと知ってものすごく驚いた。
いや、彼の語りの延長線にあっても違和感のない話だけれど、
子供の私には、シンガーで、DJで、しかも医者、
というのがものすごく大変なことに思えたのだ。
でもその唄は覗いてはいけない深く暗い沼のようでもあり、
だから歳とった今、聴くのがいいかなと思ったりした。
< のめり込めども節度と自制をもって


■ 16の夏 / 田辺靖雄・寺尾聰

寺尾聰はご存知の通り、ザ・サベージでプロデビューしているが、
自身で書いている音楽のジャンルは意外に幅広くて、
名前を使い分けたりしながら作品を発表している。
ただし、いずれの名義でも寡作かつ散発的で、
しかもすべてがヒットしたわけではないから、
後追い的にソフトを探すのがちょっとだけしんどい。
このレコードの曲も何ということもない
タイトル通りのイメージの清々しい歌。
記憶って面白いもので、
なぜか突然思い出して聴きたくなる。
自分の家の電話番号を忘れて言えなかったりするのに、
そんな大昔のレコードのタイトルを思い出したりする。
頭のしくみってほんとうに、不思議だ。
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