音の快楽的日常

音、音楽と徒然の日々
The last temptation
3月末というと年度末で、慌ただしいことこの上無し。
そういう時に限って、眠くてもなかなかぐっすり眠れず、いかにも春先を思わせる。
春眠暁を覚えず、なんて言ってる場合じゃないのに、
ここのところ、寝る前に、もう1曲、あと1曲だけと、
誰に断る必要もないのに遅くまで音楽を聴いている。



Alice Cooperというと、奇抜で奇天烈な衣装にステージで顔をしかめる人も少なくないかも知れないが、
とても美しいメロディをごくごく自然に歌ってしまえるシンガーでもある。
"It's me" というバラードのナンバーを偶然、有線かなにかでかかっているのを耳にして、
それ以来、彼の音楽を新旧取り混ぜて楽しんでいるが、
上のアルバムなんか、1曲と言わず、あっという間に片面が終わってしまう。

無音の溝を針がなぞるのをぼんやり眺めながら、そろそろいい時間かなと明日の予定を確かめる。
そういうのが習慣になってもうひと月ほど経つだろうか。

最近、周囲で新しい語学にチャレンジする人が少なくない。
語学というと、英語にしろロシア語にしろわたしにとっても悩みの種だけど、
こればかりは得手不得手があるから仕方がない。

この春は何か新しいことでも始めてみようか。
そんなことを思いつつ、一体この東京で何年という月日が過ぎたろう。
そんなわたしにも平等に春は訪れる。

暖かな日差しに移動途中の公園で空を仰ぐ。
そのまぶしさに荷物もしがらみも捨て置いてどこか遠くにでも行ってみたい、
などとは思えない我が小心がやるせない今日この頃。
pop & rock | - | - | author : miss key
最近聴いたディスクから
最近、気になる作品がまとめて紙ジャケでリリースされたり、
試聴台で聴いてとても気に入ったものがあれこれあったりと、
それでなくても送別会etc.の嵐で大変な財政状況だというのになかなか大変な今日このごろ。
で、中でも特に良かったなあと思うものを書き留めておくことにしよう。

□ 9 / Damien Rice

アイルランドのシンガーソングライター、ダミアン・ライスの2ndアルバム。
サウンドはオーガニックな感じで、押し付けがましさもない。
でも歌の文句を眺めてみると、底の見えない暗い淵のような近寄り難さに、
ソファーによりかかった姿勢を思わず直す自分がいる。
音は整理されているけれど、ダミアンの声は表情豊かで、audio再生の愉しみも十分。


□ Ranchory!!! / Chocadelia Internacional

バルセロナのファンクでキッチュなバンド、チョカデリア・インテルナシオナール。
先日、彼らの最新アルバムをサンプルでちょっと紹介してもらう機会があり、
そのたった1曲で夢中になってしまった。
ミクスチャーとは便利なことばだけれど、何でも混ざってればいいってことでもなくて、
彼らの音みたいに密度の濃さと適度なヌケ具合が両立していると、
聴いていてただひたすら楽しい!って感じになる。
なんでも最新盤のPVは凄いらしい(笑)。
春だからってわけじゃないけど、何かパーッと気分を変えたい時にもってこい。
で、audio的にも快楽な1枚。


□ Promise / Omar Sosa

スピリチュアル・ジャズというジャンルがあるけれど、
どちらかというとそういうのはちょっと苦手だ、と思ってきたのに、
このアルバムは、もろスピリチュアル系ながら、何度も気持ちよく聴いている。
ジャケットに祈りを捧げるOmarの姿が織り込まれているのだけれど、
ジャケのイメージとCDから出てくる音はちょっと違うかな、いやかなり違うかも。
今ならまだタワレコなどで試聴できると思うので、見つけたらぜひご一聴を。
ピアノの透明感溢れる響きに春先の眠気も癒される1枚。
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ラジオの愉しみ
台所において使っているトランジスタラジオの調子がここのところ今ひとつ。
原因に思いあたることもなく、流石に古い機種で修理となると代わりの部品探しが必要。



受信も安定しないしなあ、困ったなあと何の気無しにアンテナに触れたら、少し元気に。
そうか、単純にパワー不足?ということで電池を入れ替えたら調子がすっかり元通りに。
壊れてたのではなくて、電池が減っていて十分動作できなかっただけなのだ。
今時の電気製品と違って、電池の減りがだんだん動作に表れるだけに、
こんな単純なことに気がつかなくて数日焦っていた自分が恥ずかしい。

最近、番組ねつ造とか某局の受信料義務化とか話題に事欠かないテレビは
我が家ではただのDVD用モニターと成り果てているので、
日々の情報源というと、やっぱりラジオだ。
小さい頃からラジオで大きくなったから、未だにその生活習慣から抜けられない。
音楽番組を端から追いかけることはしなくなったけれど、
朝起きて最初に入れるスイッチはラジオなのだ。

じゃあどんなラジオでもいいかというと、そうでもなくて、
耳当たりのよい音のするラジオは、ある程度昔に製造されたものに限られてしまう。
写真の11Dは、何かのムック本に出ていたりするくらいだから、いまでもラジオ愛好者には人気があるのだろうが、
それも分かる気がする。
特に人の声は古いラジオに限るなあとしみじみ・・・。

プロ野球のナイター中継、若者向けの深夜放送、ラジオドラマ、そして音楽。
ラジオを通じて好きになったものは数限りない。

話しは逸れるが、
ヴァンゲリスの"See you later"をなぜサントラのような括りにしているのですかとお尋ねをいただいたが、
その中の"Memories of Green"が映画『ブレード・ランナー』の挿入歌だったりするからなのだけど、
わたしがまだ10代の頃に聴いていたNHK-FM『クロスオーバー・イレブン』という番組で、
ヴァンゲリスのこの曲やクラフトワークの作品を中心に編まれたドラマ仕立てのDJがとても気に入ってしまい、
取りあげられた曲の入ったアルバムを少しずつ揃えていったので、
ヴァンゲリスの件のアルバムは個人的にはサントラ盤の印象が強かったから。

思えば『クロスオーバー・イレブン』はとてもいい番組だった。
今の自分があれこれと気に入りそうな音楽を探すためのアンテナは、
この番組を通じて創られた部分が大きいように思う。

**さんは懐古趣味ですねえ、などと笑われながらも、
わたしの一日はやっぱり今日もラジオで始まる。明日もあさっても、きっとその次も。
あなたもいかがですか、決して無理にはお勧めしませんが。
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大阪ミックスジュースにmondo candido
街をうろうろして足が疲れると、つい入りたくなる喫茶店。
チョコの入ったクロワッサンで人気のチェーン店の店頭に飾られた
「大阪ミックスジュース」
のポスターが目に留まり、試してみることに。

わたしは大阪人ではないけれど、関西の喫茶店ならどこにでもあったミックスジュースの味がするのなら、
久しぶりに飲みたくなったのだ。

「さぼうる」や「らんぶる」に入ると必ずバナナジュースを注文するような人間なので、
そういうメニューが町中に増えるのは大歓迎。
だが、実際飲んでみたそれは、舌が覚えていた味とは随分かけはなれたものだった。
どろりとした食感なんかはうまくまねてる感じはしたが、
何が足りないのだろう、味はどうしてもピンとはこなかった。

ちょっとばかし思ったのと違ったのが、先走った期待があっただけに間の持たない空虚を生む。
その間がどうしても持たなくて店の中というのにiPodのイヤホンを耳に突っ込んでしまう。

たまたま耳に流れてきたのはMondo Candidoの"Bizarre"。
彼らのことは全然知らないけれど、そのサウンドはひとことで言えば、軽快なレトロスペクティヴ。
メンバー構成がロシアのコミックバンド「風と共に去りぬ」っぽかったので買ってみたが、
おしゃれの質感がえらく違って1曲目が流れたときは思わず仰け反ってしまった。
それにしても腰のあたりと頭の中に広がる心地よいまったり感。

そう、先のミックスジュースには、Candidoのような、ちょうどいい加減の混ざり具合というか
まったり感のようなものが欠けているのだ。
アイスコーヒーを「冷コー」と呼んだりするような店が今でもあるのかどうか知らないが、
きっと数字やレシピに落とせない風味のようなものがあるに違いない。
そんな勝手なことを考えながら行き交う人の流れをぼんやり眺めた。

人ごみが苦手だなどと言いながら、もうこの街に20年も居る。
「レトロスペクティヴ」とはいいながら、かつては現在進行形で楽しんでいた音たち。
思わず風にあたりたくなって、店の外に出た。
空気は冷たいけれど、空はすっかり春色の休日の出来事。
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甘いけど、甘ったるくはなくて
 □ El Tren de los Momentos / Alejandro Sanz

 スペインのシンガーソングライター、Alejandro Sanzの最新盤。
 思わずジャケ買いしてしまったが、素敵なジャケ盤にハズレなし。
 決して美しい声ではないが―
 耳元で震えるような甘さと熱感たっぷりな歌いまわしに
 一も二もなく惹かれてしまう。
 伴奏のアレンジも演奏も余裕さえ感じさせる。
 ゴージャスに音量を上げて楽しむのもよし、
 小音量なら部屋の雰囲気を盛り上げるお洒落なBGMに。
 でもどうせならじっくり向きあって聴きたい男性ヴォーカルの好盤。
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Mort D'un Pourri / Philippe Sande & Stan Getz
昨日、たまたま見つけたアラン・ドロンの『チェイサー』サウンドトラック盤。
去年、CDで再発されてたりもしたが、ゲッツのテナーがあまりにも渋く素晴らしいのに、
ソフトが出回っていないのも不思議だった。

□ Mort D'un Pourri / Philippe Sande & Stan Getz

右のジャケットはCD化されたときのもので、
レコードの方はアラン・ドロンの横顔アップ。
ボサノバタッチのゲッツを好きな方は少し敬遠するかもしれないが、
音数の整理されたメロディラインを際立たせる音色に鼓動が高まる。
アルバムの構成もサントラ盤というよりは
1枚のコンセプトアルバムのように楽しめる。
もう春だけど、昼間っからカーテンを引いて薄暗い部屋の中、
静かに音楽を聴きたい気分にお勧めの1枚。
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犬も歩けば―神保町漁盤散歩
レコードを探して歩く様子を「パトロール」と表現したりする。
人知れず箱に埋まったままじっと「救出」を待つレコードがあれやこれやと思い浮かぶような様に
言い得て妙とはそういうことを指すのだろうと思わず口元が緩む。

今日は珍しく、クラシックのレコードを見て歩こうと思い立った。
探しているものは特にないのだけれど、思わぬ出逢いがあるかも知れない。
自分にも予想できない出逢いに寄せる期待のせいか、足取りも軽いというものだ。

専修大学にほど近い専門店に足を踏み入れてみると、
店内にはところ狭しとレコードが並べられ、どれも丁寧なタグがついている。
しかもジャンル別、作曲家別に選り分けられているので素人のわたしにもとても探しやすい。
オペラのコーナーに『エフゲニー・オネーギン』のセットがあったらどうしよう、
とか思いながら眺めていたが、残念ながら今回は空振りで、
その代わり、マーラーやラフマニノフ、ショパンのコーナーには
いつかはぜひ聴いてみたい録音が何枚も並んでいた。
ジャケットを眺めてはどれにするかと迷ってしまったが、
結局財布の中身と相談して、ニッパー君がジャケットに描かれたショパンのピアノコンチェルト1番を買った。

盤の質感や重みが心地よく、正直、どういう演奏でもそれは構わなかったが、
家に戻って早速聴いてみたら、端正にまとまった演奏で拍子抜けしてしまった。
でも、長い曲を聴いていると集中力の途切れるわたしが、
盤をひっくり返す以外はじっと盤の回るのを眺めながら聴き入ってしまったぐらいだから、
地味だけどとてもいい演奏なんだろうと思う。

最初のお店でいい買物ができたのですっかり満足してしまい、
あとは運動不足の解消になれば、くらいの気持ちで適当にお店を梯子したら、
日頃の探し物が予想外にあれこれ見つかってかえって困ってしまった。

中古レコード探しの困るのは、予算があまりない時に限って「あれ」も「これ」も出てくること。
釣りのキャッチアンドリリースではないが、どれを離してどれをゲットするのか、
迷いに迷う数分間、店の客からじっと顔を覗き込まれたことも一度ならず。
いくら中古レコード屋に女性客が少ないからといって、
そういうときの人の顔をまじまじと見ないでいただきたいものだと思う。
そういう心配りがあればその手の店に女性客はもっと増えるだろう、とまでは言わないけれども。

そういえば、最近は中古レコード屋にも女性客が随分増えた気がする。
わたしがレコードを探し始めた頃はお店の方が珍しがってよく声をかけられたが、
今では店によっては、日に何人も来店することもそう珍しくないかもしれない。
いずれにせよ周囲を気にせず「探索」に集中できる環境が整ってきたのは喜ばしいことに違いない。
この春はレコードマップも新調して、新しいルート開拓に精を出すこととしよう(笑)。
レコードの話 | - | - | author : miss key
何故モノラルに惹かれる
今日、海外から待ちに待ったパッケージが届いた。
ここ数ヶ月都内某所に通っても見つからなかったサントラ盤を
結局痺れを切らしてメールオーダーショップで探したもの。

ヘンリー・マンシーニの代表作『シャレード』と『ひまわり』、
それからVangelisの"See you later"の計3枚。
ちょうどセール中ということでとても安く手に入ったうえに、
届いてみたらどれも思ったよりずっとコンディションが良くて驚いた。

中でも嬉しかったのが『シャレード』のサントラ盤で、これがmono盤だった。
年代が年代なんだから別に驚くことではないけれど・・・



わたしはモノラルの音がとても好きだ。
レコードで音楽を聴くことを再開してから3年程になるけど、
モノラルの盤をモノラルの針で再生するときの独特の雰囲気、密度感はたまらない。
だから、ジャケットの端かなにかに"mono"と銘打ってあったりすると、
もうどんな音がするのかとそれだけでもってうずうずしてしまう。

子供の頃からラジオ小僧だったから、
自然に広がる音よりは、多少ふんづまった感じでも濃い音に慣れてしまっているのかも知れない。
でも、多分これという理由なんか、きっとない。ただ、こういう音が好きなのだ。

さて、"Charade"の1曲目が流れると、誰憚ることなく気分はすっかりオードリー。
これで傍らにケーリー・グラントが居れば完璧なんだけど、
そうはいかないのが人生なんだな、と感じる今日この頃。
レコードの話 | - | - | author : miss key
追憶に涙する
昨夜、鳥肌の連続だったせいか、或いは朝からしとしととよく降る雨のせいか、
日曜の休みというのに、わたしはすっかり脱力し、とにかくだらしがなかった。
目覚めてもその実感もなく、珍しく目覚ましの音を鳴らしてしまう。
昨日という日があまりにも慌ただしかったせいなんだろう、そういうことにした。
朝起きてみたら、昨日あんなに近くにいたかもしれないロジャーもカシミールのおじさんもいない、
当たり前のこと、日常に戻ったある種の平和にひとりごちた。

くどいようだが、昨日の鳥肌体験を反芻しながら、
年末からやろうやろうとしてやらなかった部屋の整理にとりかかった。
リビングの方は少しずつやっていて、概ね模様替えも終わっていたのだが、
寝室にあまりにも物を詰め込んだせいで落ち着いて眠れなくなった!ため、
これをなんとかしなければ、
本棚に本が入れてあるのではなく、「つっこんである」みたいな
本に対して失礼な状態から脱しなければ、
と、何かに追われてでもいるような強迫感がずっとつきまとって離れなかった。

いっそのこと引越するか、
とわたしの悪い癖で、面倒なことがあると一気にひっくり返したくなるのを抑え、
せっかく落ち着いたのだからと賃貸契約の更新も無事滞りなく済ませたところ。

一番過ごす時間の少ない台所の空間を物置にしなくてどうする、
とこんな簡単なことに気づくのが遅過ぎた。
写真を撮って、「使用前」「使用後」比較をすれば、
きっとこんなブログでも笑いが取れるに違いない、と思う程だったが、
先日、取材でもってウソのように美しく紹介(もちろんリビングだけだが)されたばかりなので、
止めておいた。
いわゆるゴミ部屋ではないが、物が単純に過密になるということで部屋がどうなるか、
物持ちの人にはわかっていただけるに違いない。

結果、筋肉痛と引き換えにして、外の人にも入ってもらえる空間のある部屋が取り戻せた。
へとへとになりながら、お茶でも入れてと落ち着いたら、なぜか『追憶』が見たくなった。
DVDをトレイに入れて、ぼんやりとモニターを眺めていたら、涙が止まらなくなった。
昨日の「鳥肌」でふるい落とされた心の襞に溜まった埃を、さあ一気に吐き出そうとでもいうのか、
涙はなかなか止まらなかった。
確かにこの物語は、本当に泣けるストーリーで、
バーブラの歌う『追憶のテーマ』もあまりに美し過ぎて泣けるのだけれど、
半年分くらい一気に涙を流したような気がした。

雨が止んだと思えばすごい風が、びゅう、びゅう、ごと、ごと、と大きな音を立てている。
部屋も片付けば、わたしの心の中も大掃除が完了。
さあ、いつでもこい、春!
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ロジャーがふっと傍を通ったような
LINN LP12の新しいグレードアップキットをお披露目する試聴会に出かけた。
試聴会、といっても、LINN JAPANの方がナビゲートするそれは、
まるでレコードコンサートのような仕立てになっていて、
ゲストが聴きたそうな曲やLP12の良さを掴みやすい録音がずらりと用意され、
あれこれと勝手気侭なリクエストに柔軟に応じていただける。

そんな美味しい会を逃してはもったいない!というので、
今日という日に限って予定が立て込み、どたばたとする中、
なんとか時間を確保して(というわりには、レコードを漁ってから会場に向かったが)参加。

< 忙しい、疲れている、という時に限って行きたくなるのがレコード店
  というわたしはどこか病気なんだろうか

LP12のグレードアップキット、特に新しいトーンアームは・・・
その音をどんなに言葉を尽くしても、言いたいことは伝わらないと思うが、
工業製品としての感触は、これ以上ないほどに心地が良かった。
見た目は太いパイプで無骨さの方が先立つが、凛という音に連想される佇まいに惹かれる。
製品の詳しい解説が為されながら、実際にその部品にも触れて体験する機会がいただけたが、
その動作の滑らかさといい、質感といい、触れて思わず笑みがこぼれる。

今回は、プレーヤーの土台の部分にもグレードアップがなされていて、
それらが組合わさると、こんなにも安定感があり、
抑揚豊かでふくよかに、音楽が大きく伸び伸びと再生されるものかと、
実際に聴かせていただいて、
「音楽を聴くのがこんなに楽しいとは!」
と、言わずもがなのことを心の中で繰り返す自分がいた。

今日、かけていただいたアルバムの中で特に印象に残ったのが、
カシミールのおじさんたちがいやもう楽しそうにお囃子と歌で奏でるトラディショナルソングと、
< 録音現場の空気が立ち上るような生々しさ

ロジャー・ウォータースの"Amuse to Death"から"Too Much Rope"。
これが、もう、なんというか・・・
ロジャーが私の傍をふっと通り過ぎたような気がして、思わず目眩がした。
< いや、それはもう錯覚にすぎないのだが
わたしがリクエストした自前の『狂気』の1曲目〜2曲目に続き、
「毛色の似たものをもう1曲かけましょう」とあまりにあっさりとこの曲が選ばれた日には、
わたしはいったいどうしたらいいのでしょう(笑)。

だからといって、わたしがこのセットを一式揃えて音を出せば、また同じ体験ができるかというと、
決してそうではないところがaudio再生の不思議さ、面白さ。
きっと、いろんな方の思い、タイミング、そして素晴らしい機器という条件が揃って
叶えられた一瞬だったのだろう。
一瞬、一瞬、生まれては消える音の真実―
あるいはそれがあまりにも儚いがゆえに、その背中を追い求めて止まないのだろうか。
audioにも盤集めにも中途半端なわたしでも、神様の気紛れか、
そんな幸せな瞬間と相見えることができたようだ。
音の快楽、とはよく言ったもので・・・。
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