音の快楽的日常

音、音楽と徒然の日々
DE STAAT


現代音楽、その言葉の響きだけ一つとっても腰が引けてしまいそうな、
そんなイメージを払拭できない人間のひとりだったりするわたしが、
偶然、ネット上で見かけたジャケットに一目で魅入られてしまった。

オランダの作曲家、Louis Andriessen(ルイ・アンドリーセン)の"DE STAAT"(邦題『国家』)だ。

つい最近まで、ミニマル、という言葉にすら実感の沸かない音楽生活を送っていたというのに、
得てして、恋は突然やってくる。

CDがまだ手に入ることがわかり、早速注文したものの、なかなか届かない。
なんとしても取り敢えずその中身を聴いてみたい。
そんなこんなで探し当てたレコードは、彼のコンピレーションというか、
宣伝用のデモアルバムで、『国家』と他の作品の抱き合わせになっていた。

しかも、というか、
残念ながら、ジャケットはブルーを基調とした、
上のものと比べると普通っぽさが否めない程度のもので少しだけがっかりしたのだが、
そのタイトルのレコードが「その」ジャケットで出ているかどうかもよくわからないし、
他に選択肢もなかったのでその2枚組LPを箱から引っこ抜いた。

部屋に戻るなり、早速かけてみたレコードから出た音は・・・。
こういう音楽、こういうサウンドを欠片程も思い浮かべてはいなかったけれど、
曲が始まるなり、すっかり引き込まれて瞬きも忘れるほどだった。

音を聴くのに瞬きしないというのはおかしな話だけれど、
今まで全く耳にしたことのない、新鮮で驚きに満ち満ちた世界に遭遇すれば、
他の人でもきっとそういう風になるだろう。

パッと聴きは決してリスナーにリラックスを許さないような感じがするが、
ガツンとくるのは最初の一瞬だけで、あとはとても身体が楽になっていく。
全身の力が抜けて頭の中に麻薬がじわじわ溢れてくるのだ。
癖になる、といえばもっと伝わりやすいだろうか。

幸か不幸か手元にある音源はレコードなので、
聴くのは「1日1回」に留めている。
レコードを大事にするこつの一つと教わって以来、それを頑に守っているのだけれど、
おかげでこんなとき、中毒症状を上手く回避できる。

でもCDが届いたら最後、当分飽きるまでリピート&かけっぱなし
なんてことをやらかしてしまいそうでこわい。

万人が聴いて楽しいとか快いとか感じる音楽ではないのかも知れないが、
こういう出逢いもあるのだよねえと独り言しつつ、
優雅に回るレコードを眺めてはため息を床にまき散らしている。

「人は見かけで選んじゃいけないよ」
とは子供の頃に教わったことだけれども、
レコードは中身も見た目も重要だ。

「その」レコードがあるのかどうかもよくわからないのに、
いつか自分の手元に来ますようにと念じてみたりする。
誰に迷惑かかる訳でもないが、思えばちょっとばかし滑稽で、
まさにそれは「恋」の感覚だったりする。
レコードというのは危険だ。

それにしても、また捜し物リストが増えてしまった。
困ったような、嬉しいような・・・。
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気怠くて、切なくて
ここのところロシアンポップスの新譜も続いてあれこれリリースされている。
ドミートリィ・マリコフはピアノのインストルメンタルで歌ものを期待したファンには肩透かしだったし、
アリーサのライブ盤は、さすがにちょっとパワーダウンかなという感じもしなくはなかった。
そんな中、一服の清涼剤とまではいわないけれど、
ポピュラー音楽のリスナーにお勧めの1枚がゴーラット312のアルバムだ。

□ Обернись / Город 312

 ここ1年の活躍が目覚ましい彼らの最新作。
 「振り向いて」というタイトル曲、
 彼ら独特の尖ったサウンドを抑制しながらも
 こみ上げるものを上手くサウンドに乗せている。
 インディーズで鍛えられたバンドだけあって、
 2ndアルバムにありがちな腰砕け感もない。
 映画『ドゥニェーヴヌイ・ダゾール』の挿入歌としてもヒットした
 "Останусь"がオーケストラバージョンで収められているのも見逃せない。


サウンド全体に漂う気怠さと切なさと。
雨の多くなるこの時期によく合いそうな1枚。

◆ Город 312 Official Web Site
  http://www.gorod312.ru/index.html

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ブラスにはゴールドが似合う!?
最近入手したクラシックのアルバムからお勧めの2枚を。

□ "BRASS" / ロイヤル・コンセルトヘボウ・オーケストラ

このジャケット、言いたいことがもの凄く分かりやすいと思いませんか?
知らない曲ばかりなのに、思わずレジに運んでしまったわたし。
聴いてみてとにかく思ったのは、ブラスはやっぱり金色!が似合うということ。
JAZZ系のビッグバンドとはまた違った金色極鮮感にうっとり。
曲がどうのこうのという前に、この魅惑の音色に言葉を失してしまう。
ちなみにSACDハイブリッド盤、マルチチャンネル録音有り。
トータル80分超の極楽トリップ、ブラスファンならぜひぜひ。


□ Complete orchestral works / Martucci / The Philharmonia, F.D'Avalos

これはブラスものではないけれど、
ジャケットがとても素敵だったので思わず買ってしまったもの。
マルトゥッチという作曲家のオケものの全集で4枚組だが、
店頭でわずか2000円程。
もちろん音楽の中身は1枚いくらかでは計れないけれど、
一体どんな音楽かと思いながら聴いてみたら、
伸びやかで美しいメロディの、
音楽の豊かさを感じさせてくれる素晴らしいアルバムだった。
上のブラスとは違って、大編成でも炸裂感のない穏やかな演奏。
夜寝る前のひとときをリラックスして楽しむのにもお勧めだ。
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『鳥』と『海』
ここ半年くらい、クラシックをあれこれつまんで聴くようになっている。
最初は、いつものように「芋づる形式」で、
たまたま気に入ったアルバムの曲つながり、演奏者つながり、指揮者つながりで、
こんな適当な選び方はないというくらい、ジャケット重視な選択だったのだけれども、
ここ2ヶ月ほどは、レコード芸術なる専門誌も読んでしまったりして、
その上当誌にはおまけCDがついてたりするものだから、ついつい喜んで新譜を買ってしまっていたりする。

< 最近は雑誌におまけCDがついているのは珍しくないとしても、
  話題の新譜の聴かせどころ(聴きどころ、というのとは少し、違う)を
  ほんの「ちょっぴり」ずつ収めている。
  「ちょっぴり」というのが絶妙で、どうしてもその先を聴きたくなる、
  そういう気持ちになるのはわたしだけ、とは思えない上手い作りになっている。

なので、これまでは全然疎かった新譜情報にも詳しくなり、
6月の臨時収入を当て込んで、アシュケナージのBOX大人買いをもくろんでしまったり、
いいのか悪いのか、ほんとに困ってしまうのだけれど、
前から一度聴いてみたいと思っていた廃盤が再発で2枚同時リリース!というのには
特段クラシックファンではないわたしも発売日をメモしていた。
それが今日のアルバム、スヴェトラーノフ指揮、ロシア国立交響楽団の『鳥』と『海』だ。



『海』の方には、最近どっぷりハマっているグラズノフの「海」も入っているし、
リトアニアの画家にして作曲家のチュルリョーニスの「海」も収められている。
後者、名前だけは知っていたけれど、どんな曲なのか聴く機会もなかった。
一方、『鳥』には、ラヴェル、レスピーギの他、ストラヴィンスキーの組曲「火の鳥」が。
「火の鳥」というとついつい手塚漫画を思い浮かべるようなミーハーなわたしにも
十分以上に楽しめる演奏。

わたしの体内の「ロシア不足」を補う成分がたっぷり詰め込まれた2枚のアルバム。
蛇足だが、発売日に購入したせいか、豪華特典がついてきた。
なんと指揮者エフゲーニィ・スヴェトラーノフの生写真!
クラシックでも特典に「生写真」がついていたりするのかと店頭で驚いてしまった。
いや、それが今を時めくピアニスト、ニコライ・ルガンスキーのというのならわかるのだけど。

わたし以上にロシアな成分が充満したものをお探しの方に。
同じ指揮者とオケの組み合わせによるスクリャービンの交響曲集が超のつくお勧め。
HDCD録音で、デコードできるプレーヤーをお持ちなら強烈にオーディオ的快楽も味わえる豪華3枚組。
しかし、ちょっとお値段が高いので、わたしはせこく中古でゲットした。
でも聴いてみると、中古で買ってから言うのもなんだが、9450円という価格も納得できる。

それにしても、次々と物入りなこと・・・。
休まず頑張って働かねばと思い直す夜だった。
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たまには胸躍る歌謡曲を
何が寂しいって、ロシアンポップスもどんどん普通の西側ポップス化して、
当たり障りのない歌とサウンドになってしまっていること。
だから逆に日頃J-Popや洋楽を楽しんでいるリスナーでも入りやすくなっていることは確かだけど、
わたしのようにもう30年から「濃い歌謡曲」を求めて彼の国の音楽を聴いている人間からすると、
黄金の時代は90年代で既に終わったか、と新譜情報を眺める度にため息する始末。
それでも、ごくたまにベテラン勢が新譜をリリースしてくれるので、やはりチェックは欠かせない。

そんな中、事前のアナウンスもなしに突然リリースされたのがニコライ・トゥルバチのオリジナルアルバム。

□ Я не жалею ни о чём / Трубач Николай

 彼は公式サイトも持っていないので、
 ジャケ絵もいつもお世話になっているお店からお借りした。
 さて、肝心の内容はというと、感涙ものの純歌謡曲仕様(笑)。
 何曲かはシングルカットで既に発表済みだが、
 もちろん全曲、トゥルバチのオリジナル。
 彼の本業はトランペット演奏なので、歌はその次なのだけれど、

 きっと自分の歌いたい、自分らしい歌を少しずつ作り溜めているのだろう。
 注目はラストに収められた"Знайди мене"(ズナイディー・メネー)。
 彼のウクライナ語を初めて耳にしたけれど、
体の力が抜けて何処までも優しく歌われるメランコリックな歌。
アレンジを欲張らないでいる分、思いがストレートに伝わってくる。
やっと届いた新譜に大興奮で聴いていたわたしもこの一曲でしんみり。
こういうまとめ方がしてみたかったのね、
とデビュー当時からの大ファンであるわたしも納得したのだった。

思えば歳も近い彼。
大好きなアーティストと現在進行形で音楽を楽しみ、時を経ていけるというのは、
なかなか贅沢なことかも知れない。
そんなことを思わせる歌謡曲好きには堪えられないアルバムだ。 
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"Call me irresponsible" - Michael Buble
物事に追われどうしで、何だか余裕全然なしの日々。
そういう時はどんなに疲れていてもゴージャスなヴォーカルものを聴きたくなる。
「確かもう新譜が出ているはず」とふと思い出して閉店間際に購入した1枚が今日のアルバム。

□ Call me irresponsible / Michael Buble

前作もなかなか内容が濃かったのだけれど、
録音が今ひとつなのか、伸びやかに再生するのが難しかった。
でも今回は、タイトながら歌伴オケのグルーヴ感も◎だし、
マイケルのヴォーカルも録音がどうのと気にせず楽しめる仕上がり。
意外な組み合わせ、Boyz 2 menやIvan Linsとのコラボも各々1曲ずつ。
そしてなんといっても、"Me and Mrs.Jones"など、
彼がいつか歌うだろうなとファンが思い浮かべるような曲を
出し惜しみせず選んでいるのがこのアルバムを推せるところ。
あるいは最近、この手のゴージャス極まりないオケ演奏というのがあるようでなかったりするから、
歌の絡んだビッグバンドが好きな方にもお勧めだ。
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モップスのモップって
残業がありませんように、などと書いたせいか、その翌日からすっかり帰りが遅くなってしまった。
日頃の行いが悪いせいだろうか(笑)。

今日は樫の女王決定戦。
この日はほぼ毎年、府中で観戦していたものだが、ここのところの体調と相談して今日はテレビ観戦。

桜花賞馬も出なければ、ウオッカもダービーへ回るという。
ベッラレイアという素晴らしい末脚を持った馬がどうやら一番人気だ、
ぐらいにしか関心の持てなかった程度だけど、
それでも終わってみれば、馴染みの血統をもつローブデコルテの優勝に手を叩いた。
なんでも初の芦毛の優勝馬誕生なのだとか。
そうはいっても、わたしには鼻差に泣いたベッラレイアの愛くるしさがより印象的だった。

TVを消したら急にお腹がすいて、豚骨ラーメンが食べたくなったので、町中へ。
ラーメンというとこのお店と決めているいつものお店に出かけたら、
店内にラジオ番組が流れていた。
ちょうどグループサウンズを特集していたようで、
ジャッキー吉川とブルーコメッツの『青い瞳』を聴きながら注文をする。

次はモップス、ちょうど鈴木ヒロミツさんが亡くなったばかりだから、どうしたって出てくるだろう。
何でもこのグループ名は、掃除道具のモップから来ているのだそうだ。
サイケで新しい音楽でもって、旧態依然とした音楽を一掃しよう、みたいな意気込みを込めて。
グループサウンズというと、わたしはスパイダースかブルーコメッツかという感じで、
実はモップス、ただの1枚も持っていなかったりするのだけれど、
時々レコード屋で見たりするから、今度1枚引き抜いて来ようかと思う。



ラーメンを作ってくれた店員さんたちはみんなわたしより若い人たちで、
とてもじゃないけど、モップスどころか、『ブルーシャトー』も危ない感じだったから、
今日は何も話さず、わたしは黙々とどんぶりの中身を平らげた。

ごちそうさまを言って外に出たら、いい感じで風が吹いている。
昼間にちょうどいいTシャツ姿が少し寒そうに見える夕暮れ時。
さあ、来週はダービーだ。
運の強い馬が勝つというけれど、その運を持った仔は誰だろう。
週末を楽しみにして残業の山を少しずつ潰すことにしよう。
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Russian Pop & Rockの新譜から
GWの影響なのか、届くのに少しだけ時間がかかった春の新譜、ロシア編。
ざっと印象だけを並べると次のような感じ。

[Rock]
* チーシュ&Coとウラジーミラフのコラボレーションアルバムは、意外なほどまったりしたノリ。聴き込んでこそ、の内容か。

* アレクサンドル・イワノフの『パサジール』、なかなか流通に乗らないなと思っていたら、なんと本人名義のレーベルでのリリース。豪華ブックレットもさることながら、曲もかなりの自信作、しみじみ聴ける久々のサーシャの歌に酔いましょう。

* 新譜じゃないけど、今更ながらマカレヴィチとクレオール・タンゴ・オーケストラのコラボアルバムをDVD付限定盤で。試聴のときにはパスしてたんですが、いや、それは間違いでしたと訂正しておきます。マカレヴィチの最近の作品、善くも悪くも軸が安定しない感じで手が伸びにくいのですが、これは要チェック。

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いい加減なディスク選び
お金が余っているわけでもないのに、CDショップの棚を眺めていると、
何の気無しにジャケットのちょっとした絵柄が気になって、
他に買うものも特にないという訳でもないけれども、
その1枚を喜んで買って帰る、というようなことを繰り返している。

ニコライ・カプースチンという人の名前を聞いたことはあった。
でも、その人のピアノ曲集を、ジャケットの端に"hyperion"と書かれていなければ、
多分わたしはそのCDをレジには運ばなかっただろう。



"Hyperion"と聞いて、わたしは何より英国の生んだ名馬ハイペリオンを思い浮かべた。
ただその一点だけで、Marc-Andre Hamelinというピアニストのことも知らずに買った。
駿馬に連想されるものは、「わたしにとって」つまらないものは想像できないからだ。

この演奏、曲の難しさというか、音数の多さをそれを感じさせることなく弾き進むのに圧倒される。
わたし自身はよどみなく流れる超絶技巧的な演奏よりも、
多少ぎこちなくても音の間を感じさせてくれるものの方が好きなので、
この曲目、例えばエフゲーニ・マスロフが弾いたらまた随分楽しい演奏になるのではと想像したり・・・。

今日は今日で、ふらりと覗いた中古店で引き抜いたコダーイの合唱曲集がハンガリーのレコードで、
それがロシア盤のようにいかにもというビニールに入っていたので「おお」と思わず声が出てしまった。
メロディア盤のようにジャケットの糊が悪くて、大抵前後が剥がれてバラバラになってたり、
みたいなことはなくて、随分綺麗なコーティングのかかったジャケットだったりして、
これだからレコードというのは面白いなとつい思うのだけれど、
そういう1枚が600円で買えてしまったりするものだから、
最近は仕事帰り、本を買わずにレコードを1枚買い、
家に帰って喜んで聴くということを飽きずに繰り返している。

どうか今しばらくは残業の嵐に見舞われませんように・・・。
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ロシア禁断症状に効く本
先日、仕事帰りにモスクワでゴールデンウィークを楽しんだ知人の土産話を聞いた。
例えば、生演奏付きのクラブで一皿何十ドルもする料理を次々とオーダーして楽しむ富裕層の様子など聞くと、
にわかには信じ難い「経済の二極分解」が、
知人の、そしてわたしのごく「身近」な人々にも当てはまる現実を思い知らされる。

モスクワに居るわたしの知人たちは、元はと言えばそれほどリッチだった訳ではない。
何かの巡り合わせで今はたまたま余裕があるようだが、
お金を使う楽しさを謳歌しているとでも言えばよいのか、どこか壊れている感じがしなくもない。

わたしがかつてロシアに感動した「ないないづくしの豊かさ」のようなものが
跡形もなく消し飛んでしまっているとは思いたくもないが、
知人を介して届けられた、おそらくは露店で廉価に並んでいただろう傷だらけのCDの山を眺めると、
かえってほっとしたりするのだ。

ジャンクなCDから流れる今時のモスクワの流行曲・・・。

もうしばらくロシアの地を踏んでいないわたしには禁断症状めいたものが出ない訳でもなくて、
時折、旅先の出来事や友人達とのやりとりを思い起こしては、
記憶の断片にロシアの感触を弄るようにして身震いする。
それでも、今のわたしにはそんな現在進行形のロシアを正面から眺める気持ちにはなれないでいる。
休みを数日とって、飛行機に乗ればいい、ただそれだけのことだというのに。

そんなこんなで、気持ちを紛らわせるのに絶好の一冊を見つけた。
リシャット・ムラギルディン著の『ロシア建築案内』がそれだ。

この本のことを先日紹介した米原万里さんの書評集で知った。
歴史的な建築物の紹介などはこれまでもなくはなかったが、
近現代までの建物をざざっと横断的に集めるに留まらず、
これだけ丁寧なコメントが付されているのは他に見当たらない。
写真の質が今ひとつだが、3500円という値段ならそれも納得のこと。
シンプルな線と石のごつごつとした素朴な感覚がマッチした、
イタル・タスやイズベスチヤの本社ビルの項など、
眺めているだけでモスクワ巡りの楽しさを思い出す。
往復チケット代がこれに替わるとまでは言わないが、
机の脇に置いておいて眺める楽しみ十分の一冊。
よもやま | - | - | author : miss key