音の快楽的日常

音、音楽と徒然の日々
散髪
半分、意地になって、この3ヶ月というもの、髪を伸ばし続けた。
明けそうで明けない梅雨と同じく、すっきりしない日々。

見た目、ということだけでなく、似合わないことはしない方がいい

というのがその3ヶ月で得た結論だった。
思い立ったら吉日とばかり、いつものカットハウスへ。
春先にお願いしたときは、店舗の入っているビルが地上げに遭っているとかで、
マスターは何だか落ち着かない雰囲気であったが、ひょっとして店が無くなってたりして、
なんて思いながら電話したら、次の落ち着き先は決まったものの、まだ旧店舗とのこと。

雷 夕立のような雨 晴れ 雷 今度は本格的に夕立

みたいなおかしな天気の中、久しぶりに銀座まで足を伸ばし、ようよう髪を切った。
あと数日我慢がきくかどうかというところまで我慢したが、
やっぱり無理だった。

暑気払いのときにわたしが髪を伸ばし続けられるかどうか賭けをした同僚の
鼻でせせら笑うような顔が思い浮かぶから思いっきり気分が悪いのだが、
それでも髪を切った気分は何とも言えず爽快、体重が5kgは減ったような身軽さだ。

同じような症状が他の人にもあるかどうかは知らないが、
わたしの場合、髪を伸ばすと偏頭痛が起こる。
髪の重さに引っ張られてそういう痛みがでるのかどうか、よくわからないが、
肩こりなんかよりずっと質が悪い。

気分がすっきりしたので、雨の中、レコード漁りに出かける。
期待していなかったのに、探していた盤が次々と眼に入ってくる(!)。
しかもどれもとても安い(嬉しい!)。
つい先日も、探しに探したレコードが出てきて、今年のレコード運を既に使い切ったか、
と思うような場面に出くわしたが、
あと少しくらいはなんとかなりそうな気配だ(笑)。
もっとも、誰もが欲しがる希少盤などを探しているわけではないから、
「人とバッティングしない強み」があるが、
探し物が出てくると嬉しいのは、それが珍しいものであってもそうでなくてもそう変わりはない。

今日の天気と同様、あれこれ目まぐるしい1日だった。
よもやま | - | - | author : miss key
梅雨明けはいつになるのやら
部屋の片付けも一段落してほっとしたのはいいが、なかなか明けない今年の梅雨。
毎年だんだん梅雨明けが遅くなっているように思えるが気のせいだろうか。
そうは言いながらも、とりあえずはエアコン要らずの毎日なので、
夏バテ発症を何とか先送りできている。

< エアコンを使うと身体の疲れが抜けなくなるのはなぜだろう?




CD棚のクリアランスセールを敢行したおかげで、昔買ったタイトルを聴き直すことができた。
上のStan Getzのコンピ盤もその1枚。
聴いた印象を書くよりも、収録曲を書いた方がわかりやすいかも。

1. Desafinado
2. Corcovado (Quiet Nights of Quiet Stars)
3. Moonlight in Vermont
4. So Danco Samba (I Only Dance Samba)
5. Summertime
6. One Note Samba
7. Manha de Carnaval (Morning of the Carnival) [From Black Orpheus]
8. Insensatez (How Insensitive)
9. O Grande Amor
10. O Pato (The Duck)
11. Here's That Rainy Day
12. Girl from Ipanema

ボサノバ系の名曲を中心に集められた約1時間の清涼感溢れる演奏集。
90年リリースのこのCD、山野楽器の輸入盤セールで買った中の1枚。
改めて聴いたら音がしょぼいかも、と期待せずかけてみたら、
音質もそこそこ以上に楽しめる内容で大満足。

本来は各々のオリジナルアルバムで聴くのがいいのだろうけれど、
こうも怠い空気が漂っていては、CDを交換するのも面倒(苦笑)。
このコンピは曲順も結構練ってあってとても聴きやすいのがいい。
9曲目以降は特に優しい演奏が集められていて、
途中からうとうと寝入ってしまってもそれを邪魔するような感じでもない。

熱帯夜の眠れぬ時間を過ごすBGMにお勧めの1枚。
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ブラスはやはりこうでなくては
ホルストの『惑星』という組曲を知らない人は少ないと思う。
通しで聴く機会はあまりないかもしれないが、曲のそこここがいろいろなBGMに使われたりしているし、
その昔、シンセサイザー音楽が元気だった頃は富田勲編曲のバージョンが大ヒットしたりもした。
わたしもその例に漏れず富田シンセ版で初めて聴いた口で、
数年前にCD化されているのを知ってCDで聴いてみたものの、
当時の感動は既に薄れて、こんな風だったかなあと少々がっかりのまま時が過ぎた。

先日、イベントで『惑星』の中から「木星」のパートを聴いた。
ズービン・メータ指揮、ロスアンジェルス・フィルによる演奏、オーディオマニア御用達の高音質盤という。

曲は確かに知っていた。
知っていた「はず」と思えるほど、イントロから噴出する勢いのブラスに圧倒された。
エキサイティングで色彩感溢れるその音楽と想像する木星のイメージは少々かけ離れていたものの、
そんなことはどうでもいい、と思える程気分は最高!
弦楽器の音が艶やかかつ繊細に絡み、金管楽器の極彩色がさらに際立っていく。
ああもうこれで思い残す事はない、とは言わないが、
ブラスの快楽ここに極まれリ!と言いたくなる程楽しい演奏なのだ。



イベントの帰り、中古店で早速『惑星』を探す。
いろんな演奏家の録音が並んでいたが、たまたまメータ指揮のものはなく、
代わりに小澤征爾&ボストン響を選ぶ。
部屋に着くなり早速聴いてみたら・・・!?
噴出するどころか、ゆったりと美しく宇宙に浮かぶ星々のパノラマの世界。
確かにこれはこれで素敵だが、
わたしは頭のてっぺんから何か飛び出すんじゃないかというような興奮感をもう一度体験したかったわけで、
きっとあの盤でなくてはいけないのではないかと思い直して探したのが写真の右側のレコード。

それは、Speakers Cornerというところから出ている今でも新品で手に入る盤で、
同じ高音質盤でも、イベント当日に聴かせていただいた盤とは違うかも知れない。

思えば、ズービン・メータ指揮の『スター・ウォーズ』と『未知との遭遇』のカップリングアルバムも、
それはもうブラス好きには堪えられない1枚だったりするので、
彼の振る演奏にはそういう傾向が強いのかも知れない。
近所迷惑になるといけないので、自宅ではそうそう音量を上げるわけにはいかないが、
大音量再生が苦手なわたしですら気持ちもう一目盛りか二目盛り、ボリュームアップしたくなる。
これだからレコードは止められない。
ブラスの快楽に溺れたい向きにはマストアイテム、お勧めです。
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冷たい夜のNomad
東京の梅雨時は、昼に蒸し暑くても夜間になるとぐっと冷え込むことがある。
上京したての頃は、そういう気候の変化に身体が追いつかなくて、よく風邪をひいていたが、
20年以上経った今でも体調がややこしくなる苦手な季節。

ここのところ音楽CDの整理をずっとやっていたら、久しぶりに聴くタイトルもかなりの枚数あって、
うれしい「再発見」も少なくなかった。
たまにはこうしてソフトの山を掘り返すのも悪くない。

そんな中で、おおこれは!と思った盤がフェレンツ・シュネートベルガーの『ノマド』。
アコースティックギターとベース、パーカッションというシンプルな構成で織りなすのは、
まさにタイトルまんまの揺らぎの世界。
温度感が低めなので、今夜のような冷たい夜にはもう一つだけれど、
寒い冬の日に食べるアイスが旨い、みたいな組み合わせなのか、なかなか他の盤に替える気持ちになれない。
無理にジャンル分けすれば、おそらくJAZZになるのだろうけれど、
アンビエントや環境音楽のような響きも聞こえてくれば、
時折トラディショナルなメロディも顔を覗かせる。
しかしいずれの演奏も、
ギターが弦楽器であったことを改めて思い出させてくれる素晴らしい響きに満ちている。
楽曲のイメージを高めるためだろうか、ベースの質感を前に出すような録音になっていて、
audioファンの方にも楽しめる内容だと思う。



今週は週明けに休みが1日あったので、何だか得した気分。
部屋に置く観葉植物、思い切ってもういくつか増やしてみようかなと思う今日この頃。
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「引越ですか」と訊かれるほど
6畳とキッチンだけのアパート住まいを脱出して、高い家賃を払いながら広い空間を確保したのはここ数年のこと。
それでも、肝心の生活態度がさほど変わらないために、モノがどんどん溜まっていく。
さすがにこれでは何をしているのかわからないと大反省して、7月は物量の圧縮をすると決めた。

雑誌のバックナンバー、ここに越してくる時ですら捨てられなかった大量のムック本etc.
読み返してみることもなくダンボール箱に入っているのでは無意味と思い、処分した。
一番捨てにくいものに手を付けると、あとは勢いがつくというか、
捨てるもの、捨てる以外の処分をするものと見当をつけて、土日の度に大掃除(笑)。

夕方、ゴミ集積所と部屋を往復するのを見てか、ご近所さんから、「引越するの?」と訊かれてしまった。
確かにそう見えるだろう。
最近、すっかり埃に弱くなった喉をガードするのに大きなマスクをしながらの作業だし、
紙類を弄ると手が荒れるので、手袋もしているしで、大事に見えるのも仕方なし。

今週末は、件のレコードコンサートに出かけた以外は、ずっと部屋でCD整理。
流石に数が増えすぎているので、棚に収まる数だけ手元に置くため、選別作業。
これが2日がかりになってしまう。
買い取ってもらえそうなものは、中古店に持って行ったり、Amazonに出したり。
そうでない外盤、特にロシアものは本当に言葉通り処分するしかないのだけれど、
盤も相当痛んでいたり、買ったときにしか聞かなかったハズレ盤は思い切ってさよならした。
本の類いも結局、読み返しもしなければ、持ち続ける必要のないものは、
次の読み手のところに行った方がいいに違いないと思い、かなりすっきりさせた。
とはいっても、まだまだ本棚に隙間はできないのだけれど、
今回の大掃除で床に置かれたモノがほとんどなくなり、引っ越してきた当初の広さをようやく取り戻せた。

残った作業は、粗大ゴミの処分ぐらいになり、なんとか月末には目標達成の気配(苦笑)。
どうやら今年の夏は風通しのよい部屋でゆったりとレコードを聴けそうだ。
なかなか腰が上がらなかったのだけれど、思い切って整理してよかった。
今後、モノとの付き合い方ももっと考えていかないとと思った次第。

それにしても酷い筋肉痛。日頃の運動不足だろうか。
来週は気分を変えて、街に出て、ぶらり目的のない散歩をしようかと思う。
どうぞ天気に恵まれますように・・・。
よもやま | - | - | author : miss key
Barrett
台風の一番酷い時は午前中に過ぎたが、台風一過は明日になるのか、1日中ぐずついた空模様。
日頃、部屋に居る時間が少ないので、休日はここぞとばかり窓を開け放ちたいところだが、
今日ばかりは、窓を開けると部屋の湿度がどんどん上がるので開けたり、閉めたり。
そうこうしていたら、ロンドンから郵便小包が届いた。
以前から探していただいていたシドのアルバムだ。



フロイドをずっと聴いている割には、シドの音楽に触れる機会はあまりなかった。
なかったのではなく、避けてきていたのかも知れない。
歳をとって、頭というか耳が柔らかくなったのか、
ここ2、3年はフロイドの1stも聴いていて以前よりずっと楽しくなったし、
シドの伝記を読んだりして彼との距離がいい具合になってきた。
彼の訃報が届いたのは、ちょうどそういう時だった。

表面的な評価に囚われて、自分の眼と耳で確かめてみようとしなかった彼の音楽。
レコードに針を落とした瞬間、広がった音をなんと表現すればいいのだろう。
ついさっきまで窓の外の、ごうごうという風のうなりが気になって仕方がなかったのに、
緑豊かな田舎の昼下がりにうたた寝でもしているような優しい気持ちになれた。

若い頃はぱっと聴き、面白い音楽なら何でも飛びついて喜んで聴いた。
でも最近はどちらかというと、根の存在を強く感じさせる音楽に惹かれる。
いつか英国の田園風景を見に出かけたいと思う。
シド・バレットという人か見たかも知れない、素朴で美しい風景を。
pop & rock | - | - | author : miss key
雨ニモマケズ
土曜の午後、台風がそろそろと近づきつつある東京は渋谷の国境の南へ。
レコードコンサート「世界の音楽を聞く」の第二回目は無事開催された。
今回はワールド・ミュージック前夜の世界音楽と題して、ファイルーズを皮切りに、
70年代半ばに来日したアーティストからラテン・ブラジル、そしてアフリカ、アジアとぐるり世界一周。
さすがに予定時間の2時間に収まるはずもなく、たっぷり3時間にわたって素晴らしい音楽を堪能した。

***
Play List

ファイルーズ/Sanarjou
ジミー・クリフ/メニー・リヴァース・トゥ・クロス
エリゼッチ・カルドーゾ/生きているうちに優しさを
ファニア・オール・スターズ/デスカルガ・ファニア
ジョルジ・ベン/タージ・マハール
カルトゥーラ/沈黙のバラ

ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ/コンクリート・ジャングル
マヌ・ディバンゴ/ソウル・マコッサ
フェラ・クティ/ゾンビー
フランコ & O.K.ジャズ& カミーユ・フェルージ/シルヴァンギ
フランコ/リベルテ
レイル・バンド=モリ・カンテ/スンジャータ
ピヴィ・エ・レ・バラダン/サンバ
マハムード・アハメード/エレ・メラ・メラ
キング・サニー・アデ/シンクロ・システム
エルフィ・スカエシ/セクシー・シンガー
喜納昌吉&チャンプルーズ/東崎

***

アフリカものは、ここという聴きどころまでをうまくまとめて聴かせていただいたが、
普段なかなかこの辺りまで手が回らないわたしのようなリスナーには貴重な機会。
中でもフランコの2曲―
1曲目のシルヴァンギはカミーユ・フェルージという方のアコーディオン演奏が素晴らしく、
2曲目はギターの入り方が特徴的なゆるいグルーヴがなかなか印象的だった。
しかも、後者は復刻されたばかりの2枚組CD『黄金の20周年』で楽しむことができる。
アフリカ音楽の音源はありそうでなかなか手に入れにくかったりするので、気になる方はぜひチェックを。



もちろん、前回同様、DJ&司会進行の北中さん、蒲田さん、田中さんのおしゃべりが面白過ぎだ。
解説が素晴らしいのは言うまでもなく、そこここに溢れるこぼれ話が音楽を聴く愉しみを一層深めてくれる。
話しの流れでデビィ夫人の話題が出たのだけれど、会が終わって街に出てみたら、
なんと元某国大統領だった方の選挙応援で、ご本人が選挙カーに乗ってマイクを握っていた。
あまりのタイミングに、大雨の中、思わずぼんやり立ち尽くす(苦笑)。
東京というところは狭いんだか、広いんだか。
不思議な空間の片隅で、ひっそり開かれるレコードコンサート。
街の喧噪からも切り離され、日頃の慌ただしさから解放されまったりと過ごすひととき。

文字通り「雨ニモマケズ」大量のレコード、CDを持ち込んでイベントを開催してくださった皆さんに心より感謝申し上げます。
また次回開催のアナウンスがされたら、このブログでも告知したいと思います。
今回は見送られた方も次回はぜひ。
live & イベント | - | - | author : miss key
降るなら降れと
雨が降りそうで降らないでいると、蒸し暑さが事務所に充満して不快指数の針が振り切れそうだ。
日曜に大掃除をしたせいで酷い筋肉痛になり、階段の上り下りも鬱陶しいのに、
いつものお店に立ち寄って箱を覗いたら、John Williamsが何枚か入っていた。



クラシック、フュージョン、トラディショナル、ワールドと八面六臂のギタリスト。
わたしは彼の中南米のトラディショナルソングをアレンジした作品をよく聴いているが、
アンサンブルでいろいろな楽器、演奏者が入れ替わり立ち替わりで
楽しく演っているのが上のアルバム、"The Guitar is the song - A folk song collection"だ。
選曲は英国にアイルランド、ハンガリー、そしてベネズエラの民謡などから。
変わりどころの楽器では、ツィンバロン、クアトロ、チャランゴ、ギタロンなどなど。
いずれの曲も聴きやすく、蒸し暑さでダルダルの辛さを癒す好演。
雨が降るなら降れと思いながらも、
降ったら降ったでレコード屋に行かず、このアルバムとも出会わず終いだったかも。

このアルバムはCD化されているようなので、ご興味のある方はぜひ彼の公式サイトをCheck!

◆ John Williams Official Site http://www.johnwilliamsguitar.com/
world music | - | - | author : miss key
ロシアンミクスチャーに心奪われて
先日のベールイ・アリョールに続き、ベテラン勢のオフィシャルなアルバムリリースに小躍りするのはわたしだけ?
そんなことはどうでもいい、
アレクサンドル・マルツィンケヴィチ&カブリオレートの最新盤は聴く者の胸を熱くする好盤だ。

 □ Незнакомый город / Александр Марцинкевич & Кабриолет

 カブリオレートと言えば、ロシアンミクスチャーの雄。
 ロマの音楽と郷愁誘うロシア民謡をベースにしながら、
 センチメンタルとかなわぬ恋に身を焦がすような熱い思いの間を
 縫うようにして歌われる13曲。

 『知らない街』と題された最新アルバムは、
 評価の割れた一時期のキャッチーさはないけれども、

「恋の唄はこうでなくちゃ」と言わんばかりに、マルツィンケヴィチの美意識が貫徹する。
演奏やアレンジがやや一本調子で残念な部分はあるものの、アンサンブルの一体感は抜群。
ライブ主体の彼らだけに、普段演れないような凝った作り込みにはあまり興味がないのかも知れないが、
ギター一本で歌う彼の歌もぜひいつか聴いてみたい。

pop & rock (russian and other slavic) | - | - | author : miss key
読み聴かせ
昨夜、職場の暑気払いで終電まで飲んで歌った翌朝のこと。
飲んだ翌日は間違いなく早起きになってしまう悩ましさを脇にどけ、ラジオのスイッチを入れる。
J-comのデジタル回線のおかげで、これまで高圧線の影響で音質が劣化していたのがウソのようにいい音で聴ける。
しかも、聴ける局の数もかなりのものになって、つい寝台の上でぼんやり斜め聞きをすることもしばしば。

チャンネルをあれこれ変えて遊んでいたら、「読み聴かせ」という聞き慣れない言葉が流れてきた。
ゲストは中井貴恵さんで、彼女が読み聴かせのさわりをやってみせてくれたのだ。
単なる感情移入ではない、音に乗せられた物語のしみじみと胸に迫る様は、
例えば、国語の時間の音読、朗読などとはまったく異なるものであった。

少し調べてみたが、朗読と読み聴かせの定義はいずれもはっきりしない。
しかしながら、その番組で紹介された内容からは、
読み聴かせは、子供を膝に乗せ、一緒に本を見ながら母親が読んで聴かせるような、
具体的な聞き手がいて、しかもその聞き手が単なる読みに耳を澄ませるのではなく、
本を読み、描かれた物語を深く味わうことの楽しさを体験する、そんなことのように思えた。

例えば演劇、お芝居の類いやポエトリー・リーディングと呼ばれるようなものも含めたところの朗読など、
聴いている自分がくすぐったくなってその場から逃げ出したくなるわたしが、
そのラジオ番組で流れた読み聴かせにいつの間にか虚心坦懐の境地。
アルコールが残った重たい頭でも、まるで子供の頃に戻ったかのように、
純粋という言葉をひさしぶりに口にしたくなった。

思えば、小さい頃、母はよく本を読んでくれた。
どんなことが美しく、素晴らしく、そして哀しく、温かいのか。
何度も繰り返し味わうことで見えてくる物語の奥底に隠された作者の思い。
わたしもまた母親の体温を感じながら、人の思いに触れることの歓びを知る端緒を得ていたのかも知れない。

情操教育、などととってつけたように言われる前に、
もっともっと身近でなされるべきことがたくさんあるような気がする。
目を覆うような事件が多発する中で、
他人に荷物をぶつけても一言も謝らないのと、欲望を一方的に満たす行為に至ることとは、
相手を傷つける度合いは天と地程の差があれども、ことの根は同じではないか。
相手への思いやり、わたし自身、今一度我が足元を見直したいと思う。
よもやま | - | - | author : miss key