音の快楽的日常

音、音楽と徒然の日々
ラジオの修理と映画の1日
またしても、というか家のラジオが不調。
流石にもう何十年も働いているラジオだからなあと思いながら、いつ頃の発売なのか調べてみたら、
なんと1971年とのこと。
世間では30年以上も使った家電から火が噴いて問題になったとか、
おそらく製造時には想定もしていなかった長期稼働からくる不具合が話題になっているけれど、
そういうのを思えば、もういい加減、休ませてあげないといけないのかなあと思いつつ、
できる修理はできるところまでしようということで、中を開けてみた。

開けてみると、
バンド切り替えの部品が経年劣化で破損していて、
3バンドのうち死んでいるSWからFMもしくはAMへの切り替えができなくなっていた。
要するに、感度がた落ちのSWのままだったのだ。
バンドの切り替えは取り敢えず諦め、
もっとも受信感度の安定するFMに固定すれば、まだ当分は使えそうなので、応急処置。
有り合わせのネジ類で間に合わせ、あとは清掃と半田の手直し程度しかできなかったので、
まあどれだけ持つか分からないけれど、今度ダメになったら現役引退させて、愛玩用にしよう。

外は雨だし、修理したりしていたらいい時間になってしまったので、借りてきたDVDを消化。



『善き人のためのソナタ』、舞台は壁が落ちる前の東ベルリン。
主人公は、ある劇作家を監視する任務を命じられたシュタージの将校。
最初は地味な映像で少々退屈するかと思っていたら、
彼の感情の揺れが画面に映し出されていく様に、知らぬ間に釘付けになっていた。

作品全体を通じて抑えられた色味と音楽、
全ては秘密裏に監視されているという空気感を損なわぬためだろうか、
それとも、将校の心情の変化に光を当てるが故のことなのか。

ヒューマンドラマ仕立ての割にはエグい描写もあって、
家族揃って見るような中身にはなっていないが、
ラストには思わぬシーンで、観る側の緊張が一気に解れる仕掛けがある。
それをどんな風に受け止めるかはきっと人によるだろう。
わたしは予想外の後味の良さに随分得をしたような気がした。
正直、受賞作品にはそれほど期待もせず、数合わせで借りたDVDの1枚だったからだ。

主役のゲルド・ヴィースラー大尉を演じたウルリッヒ・ミューエという人の作品を
もっと観てみたいと思い調べてみたら、
この作品を撮り終えた後に急死されたとのこと。
何でも自身も監視されていた経験を持ち、「公式情報提供者」の中には実の妻もいたというが、
そういう予備知識を持って観たら、また違う世界を作品から読み取ることができるかも知れない。

何が真実で、何が虚構なのか。
信じるに値するものを見いだした人の美しさがこれほどまでとは。
心の有り様を問い直す好機を与えてくれる素晴らしい作品だった。
cinema & Soundtrack | - | - | author : miss key
title


昨日発売されたばかりの雑誌、『title』。
コーヒーと音楽のホットな関係を著名なミュージシャン達が自らの言葉で語る。
!と注目のおすすめ盤リストも添えられて、
美味しいケーキがなくとも、
この1冊をパラパラめくりながらコーヒーブレイクするのはさぞ楽しそう・・・

というのもわたしはコーヒーが合わなくてあまり飲めない質なので、
これが紅茶だったらまた違った語り口になったり、
或いはそのBGMも別なものになってくるんだろうなあと勝手に想像して楽しんでいる。

いいなあ、コーヒーが美味しく味わえる人は・・・なんて思いつつ、ジャスミンティーで一息。

遠く電車の音を聞きながら、温かいお茶が美味しい季節になったのを実感する静かな夜。
others (music) | - | - | author : miss key
円盤来襲


聴いた途端、ああ生きててよかった!と思える盤があるけれど、
今日届いた細野晴臣&THE WORLD SHYNESSの最新作"FLYING SAUCER 1947"は
わたしにとってまさにそんな1枚。

スウィンギーなカントリーサウンドを纏った隠し味たっぷりの音楽。
1曲目はピストル・パッキン・ママ、いきなり2コードでノリノリ。
今回のアルバム、細野さんの声がいい具合だなあと思ってたら、
何とヴィンテージのマイクを使ったりしているそう。
1曲、1曲にコメントの付いた充実豪華版のブックレットにも、
録音現場の解説があるけれど、かなり歌えてる様子♪

テクノやアンビエントから細野さんに入った人にはどんな風に聴こえるのか興味津々、
『泰安洋行』あたりが好きな人にはもう黙って買って聴いて下さいと言いたくなる。
録音はHi-Fiを強調する感じでは決してないのに、密度感たっぷり、
スタジオの空気がもあーと溢れ出てくるような生温かさあり。
妙な緊張感やシリアスな雰囲気は少しもなくて、
演ってる人たち自身が楽しんでるのがストレートに伝わってくる。

ここ数年、いろいろなアルバム作りやライブで知らぬ間にひとつひとつ植え込まれた種が
ここに来て大きな花に育ったような感じだ。
シンプルなんだけれど、聴けば聴く程いろんな音がきこえてくる不思議な世界。
こんな「円盤」ならいくつでも飛んできて欲しい。
当分はヘビーローテが収まりそうにない充実の1枚。
pop & rock | - | - | author : miss key
音の出せないレコード
TVを見ないせいか、最近の「お笑い」事情にはとんと疎い。
東京にいるのだから、ライブでも何でも見に行けばいいものを、
思えば、お笑いではないが、立川談春のチケットを獲り損ねてからというものの、
音楽と講演会以外のイベントにはここ数年出かけていない。

「笑い」の世界は、とてもデリケートでナイーブなものではないかと感じることがある。
笑わせる側の突くツボがハマれば、よく考えてみれば別に可笑しくとも何ともないことでも、
受けるのは、そう難しいことでもなさそうだから、
人間の笑いは意外にシステマチックな部分があるのを否定はしないけれど、
やはり「笑い」は個人的なものだったり、
或いは人に見せられないところに各々の笑いの原点があったりするのではないか。



レコードの棚をがさがさと漁っていると、懐かしいレコードが。
10代の頃、親に聞かれるのが嫌で、わざわざカセットに録音してから
ウォークマンで聞いていたのがジャケ絵のスネークマンショー。
ちょうど、YMOとのコラボレーションで『増殖』が出たりと、
スネークマンショーも随分注目されてたが、元々はラジオドラマ仕立てだったような。

< ラジオドラマシリーズもCD化されたが、現在はかなり入手困難

スネークマンショーのアルバムは音楽も凝っているから普通に音を出して聞けばいいものを、
まあそれは10代女子なりの自己規制で、「こっそり」「小音量」で聞いては、
声にならない笑いをかみ殺して、「この人たち何でこんなに面白いんや」と悶絶した。
いま思えば、こういう刺激に慣れてなかったんだろうなあと思うのだけれど、
改めて聞いてみても、なかなかに面白い。

スネークマンショーをお笑いと定義するのはちょっと違っているのかもしれないが、
こういう密度感とスマートさの両立するブラックな笑いというのは、
いまどきあったりするんだろうか。

アングラなパフォーマーの出没するライブハウスを巡り歩けば、
これと思うようなものに出会えるかもしれないし、
東京で居るとそういう部分に簡単にアクセス出来てしまえるけど、
そこまでは億劫というか腰が引ける部分もある。
お笑いに限らず、最近の「表現」の世界というのは、何でもアリというか、
単に過激で刺激の強さを争うような感じのものも少なくないだろうから、
心のスキマをそっと埋めてくれるようなユルい笑いを得るのはそう簡単でもなさそうだ。


休みの日の昼間からこういうレコードかけてて大丈夫か!?と思ったりもするが、
愉しさというと、こういうのはやっぱりiPodにでも入れてこっそりイヤホンで聞くのがいい。
いまどきこの程度のギャグならわざわざ隠れて聞く必要はないんだけれど、
音を出して聞くレコードじゃないなと改めて納得の昼下がり。
強制的な脱力を必要とする方におすすめの1枚です。
レコードの話 | - | - | author : miss key
夢旅行への飛翔
久しぶりに競馬中継を見ようと思ったら、自民党総裁選の開票特番で、
たった30分の中継しか流れなかった。
それでもドリームジャーニー号が菊花賞の前哨戦、神戸新聞杯に出るというから、
気を取り直してチャネルをそのままにしていた。

新しい総理大臣が決まった途端、週刊誌には過去の大掃除とでも言いたいのか、
お金や女性にまつわる記事を早速用意して待ち構えていたようで、
ほかにもっと書かれるべきことはあるのだろうにと電車の中吊りを見て閉口する。

話は逸れたが、ドリームジャーニー号は香港で涙のG1勝利を飾ったステイゴールドの仔。
母の父が名優メジロマックイーンとなれば、
彼の成績はどうであれ応援せざるを得なくなるというのが人情というもの。

ジャーニーは見るからに小柄で、まるで牝馬のような馬体だが、
引き締まった馬体に潤んだ瞳の幼い表情、そして独特のピッチ走法は、
父ステイゴールドを思い出させるに十分すぎるほどだ。
そして、神戸新聞杯はライバルを一蹴、直線13頭ゴボウ抜きの差し切り勝ちを見せた。
その瞬間に香港ヴァーズのゴールを重ねたファンは決して少なくなかったろう。

ダービーを女の子に勝たれてしまって、どうも今ひとつ盛り上がらない牡馬3歳戦だが、
今年は久しぶりに淀に繰り出してみようかと思う。
せっかくだから京都の街を歩いたり、昔行ったことのあるjazz喫茶を訪ねてもみよう。
わたしに久しぶりの旅程を考えあぐねる時間をくれたドリームジャーニーに心から感謝!
よもやま | - | - | author : miss key
『恋と愛と涙』― 西田佐知子


先日の『タナカヒロシのすべて』以来、西田佐知子の他の歌ももっと聞きたくなって、
先週末、やっとこさ彼女の2枚組ベスト盤に遭遇。
こういうジャンルを定番に揃えているお店というと神保町の富士レコードとかになるのだろうが、
近所の安レコ新着箱にひょっこりあったりするのを見つけるのがまた楽しかったりする。

ところで、さすがにベスト盤だけあって、1曲目の『アカシアの雨がやむとき』をはじめ、
彼女の唄とは知らずに聞いて知っている曲の多いこと。
わたしは『コーヒー・ルンバ』にハマる前は彼女のことをそれほどよく知らないでいたので、
< 関口宏の奥さんで前は歌手だったんだって、みたいな程度
かなり意外だった。

昭和歌謡の女性ものというと、わたしは何と言っても藤圭子にザ・ピーナッツ、
さらにもう一人と言われれば、梶芽衣子だが、
この時代のきちんとした日本語の歌というのは、言葉にできない凛とした美しさが溢れている。
それに、70年代のレコードなので、正直それほど音に期待はしていなかったが、
とんでもない、決して欲張ってはいないからいまどきのHi-Fiではないけれど、
声の艶と張り、歌に芯が感じられるしっとりとした生々しさは、
レコードが丁寧につくられているだろうことを想像させる。

やっぱり、歌っていいなあとつくづく思う。
先日のFADOにしても、日頃よく聞くジャンナ・ビチェフスカヤの弾き語りにしても。
歌心とは本当によくいったものだと思う。
風に遠くの電車の音を聞きながら、回るレコードをぼんやり眺める夜。
others (music) | - | - | author : miss key
携帯電話
NTT docomoから何度もDMが来るので、とうとう重い腰を上げて交換に出かけた電話機。
PHSといういまどき使っている人を捜す方が難しいものを10年以上使っていたので、
いざ「どの機種でもタダで交換してあげますよ」と言われても、選べない。
どれを選んでも機能満載でどうせ使いこなせないのが目に見えているので、
結局、見た目とボタンの押しやすさで選んでしまった。

さて家に戻って使い方を確認しようと思い、マニュアルを見たら、
一体なんでこんなに厚い!というくらい、分厚い本になっていて一気に萎えた。
老若男女、こんな難しいものをみな使いこなしているなんて、
日本はとんでもないところじゃないかとぶつくさ独り言しつつ、
電話のかけ方以外はまだ何もわからない状態が続く(苦笑)。

もっとも、使おうと思っているのは通話とメールとカメラぐらいなので、
他は正直どうでもいいけれど、迷惑メールが来ないようにする設定とか、
着信時の音の調節など、外に持って出るまえにやるべきことがどっさりある(汗)。

さて、一体いつになったら実用になることやら。
そんなこと言っている端から迷惑メールらしきものが届いている。

他所で聞いたことだが、着信時のメロディでロシア国歌があったりするらしい(笑)。
どんな曲でもあるよと同僚が音楽で釣ろうとわたしに日々餌を投げてくるのだが、
どうせなら、電話がかかってきた時に面白い音がするようにしたいから、
まずはその辺りからマニュアルを読んでみよう。

通勤電車の中で似たようなマニュアル本を読んでいるサラリーマン諸氏を見かけるが、
自分がそういう風になるとは思ってもみなかった。
天にツバするではないけれど、まああんまり人のことを笑ったりするもんじゃないと、
マニュアルをとりあえず横において電話機の画面を凝視した。

願わくばこの電話がわたしにとって犬の首輪のようになりませんように。
よもやま | - | - | author : miss key
『ファドの100年―アマリア・ロドリゲスとその周辺』
土曜の午後、渋谷・国境の南で開催されるレコードコンサートに出かけた。
前回は酷い雨に祟られたが、今日は快晴を通り越して汗ばむほどのよい天気。
スタートまでには少し時間があったので、寸暇を惜しんで漁盤に励む。
ここのところ日々誠実に過ごしているせいか、次々に探し物に遭遇(笑)。
こういう時に限って手持ちが心細かったりするのだが、多少の事には目をつぶってゲットする。

ところで、今日はファドの特集。
アマリア・ロドリゲスというと、素人のわたしでも聞いたことがあるくらいその名は有名だけれど、
彼女の他にも素晴らしい歌い手はいるよということで、
選りすぐりの約20曲が解説とともに流れたくつろぎの3時間。

興味深かったのはファド歌手にも男性がいたことだった。
男性、といっても中には女性歌手のカテゴリーに入ってしまうような嗜好を持つ人だったりするようだが、
ファドというと酒場女の歌という固定観念があったので、意外に楽しめた。
ただどのくらい歌えるのと訊かれたら、やはり女性歌手達に譲る部分は小さくないようだ。

ギター&ポルトガルギターと伴奏がシンプルなだけに、
歌い手の巧拙がすぐわかるような難しいところがあると思う。
アマリアがあまりにも有名というのも、その歌唱の素晴らしさ故仕方のないことかも知れない。
その一方で、ファドの伝統を引き継ぎながらも、
その素晴らしさをまた別な角度から見せてくれる新人アーティストも出てきていて、
その中の注目株、ジョアナ・アメンドエイラという20代前半の若い歌手の歌が紹介された。
透明感溢れる歌声と堂々とした歌いっぷりが魅力的だった。

ファドは日本でも比較的知られているジャンルだと思うけれど、
市場規模で言えば、リスボンを中心としたこじんまりとしたもののようで、
解説の中では、裾野という点では広いながらも日本の演歌が引き合いに出されていた。
確かに音源は古いものが中心だし、店頭でも手に入るCDのタイトル数はごく限られている。
その意味では、今回のように歴史的録音から最新アーティストの曲まで通しで紹介される機会はとても貴重だ。



今日聴かせていただいた音楽の中で、最も気に入ったのが、
マリア・テレーザ・デ・ノローニャという歌手の歌う"Castanheiro"という曲。
歌はもちろんのこと、ポルトガルギターの音色も文句なく素晴らしかった。
残念ながら、彼女の音源はとても手に入りにくいようで、会場では彼女のEP盤を2枚見せていただいた。
上のジャケットはその中の1枚。
コーティングされた折り返しのあるジャケットは小さいながらも質感がしっかりしていて、
裏ジャケットにはポルトガルギターのイラストがあしらってある。
リュートやビウエラ、ウードといった楽器が好きな方なら、きっとその音色を気に入るはず。

さて、会の終わりに主催者の一人、蒲田耕二さんの誕生日を祝ってバースデーケーキがゲストにも振る舞われた。
アマリアの『最後のファド』でしんみり散会かと思いきや、思わぬサプライズが。
参加者全員のハッピーバースデー合唱、こじんまりしたイベントの良さに思わず表情もほころぶ。
久々に盛りだくさんの充実した1日だった。
live & イベント | - | - | author : miss key
遠雷
まだ火曜、週明けにたった2日働いただけでどっと疲れが溜まっているのがわかる。
残業もそこそこに雨を避けて帰宅、窓を開け放ったら涼しい風が吹き込んできた。

しばらく何もせずただその冷たい風に身を任せていたら、どーん、どーんと太鼓の地響きのような音。
今時分、もう祭り太鼓でもあるまいしと窓から外を眺めたら、遥か遠くに稲光の鈍い光が見えた。

少しして、またどどどーんと響く音。
こういうのを遠雷というのだろうか。

そしておあつらえ向きにしとしとといい感じの雨。
雨は嫌いな癖に今夜は何故か気持ちが解れる。

音楽でも聴こうと思ったが止めにした。
しばらくは遠くの空の雷を雨音とともに楽しんでいよう。
よもやま | - | - | author : miss key
気分が落ち込みがちなときの1枚


全身を包むようにじんわりと沁みる男性ヴォーカルの1枚。
風邪ぎみの怠い時に飲むハーブティーのような、主張はあっても決して強すぎない味わい。

これといって思い当たる理由もないのに、気分が沈みがちな時って誰にでもある。
そういう時はムリにテンションを上げても無意味に疲れるだけだから、時が過ぎるのをぼんやり待つのがいい。

忙しさに溺れて時間を創りだすのがつい面倒になる時。
目一杯の緊張がこれ以上ないくらい続いて、それが解けたら壊れてしまいそうなくらい―
余裕のない時程失敗が怖くてかえって堂々巡りの迷宮歩き。

JTの歌なんかと比べると、リスナーとの微妙な離れ具合がいい。
押し付けがましさはないけれど、手の届くところに温かな毛布がそっと置かれているような。

Stephen Bishop、取り敢えずの1枚はこのベスト盤でいかが?
誇張のない自然なリマスターでとても耳馴染みよく楽しめる手軽な1枚。
女性のリスナーにおすすめです。
pop & rock | - | - | author : miss key