夜桜に想う | 2008.03.31 Monday |
人の入れ替わるこの時期、引き継ぎ作業でつい帰宅も遅くなる。
帰る道すがらに疲れた目を楽しませてくれる夜桜、
花の硬い咲き始めよりも、
ほどよく解れて散り始める今の時期の方が、ずっと桜の花それらしくて良い。
桜の木の下で想うのは、
梶井基次郎の書いたそれではなくて
「夜、桜の木の下で遠くに逝った人の声が聞こえる」
そうわたしに言って残したとある人のことだ。
そんなことを言っては返答に困るわたしを見て笑ったその人も
今はもう鬼籍の人だ。
今夜は生憎の雨模様、さりとて傘をさすほどでもなく、
空気の冷たさを背中に感じつつ、人気のない遊歩道を流して歩くにはいい具合。
寂しい街灯に照らされて、はらはらと舞い堕ちる桜の花びらに、
つい足を止めてぼんやりする。
調子をすっかり崩した体をわざわざ冷やしてすることでもないだろうに。
こんな夜にはヴェデルニコフのBachがいい。
部屋の暗がりの中、穏やかなピアノの響きに包まれて今日一日をゆっくり反芻する。
まだ季節は始まったばかりだというのに、
もう階段下でしゃがみ込みたくなるような気分。
これから1年の課題、あまりに荷が重くて最初の一歩が踏み出せない。
あの人だったら一体どうしたろうと想いながら桜を眺める自分に、
かつて言われたことを心のどこかで信じていたのかと問い返す。
そんな動揺をせせら笑うでもなく、桜の花は淡々として夜の灯りに舞う。
その静けさが却ってせつない夜だ。
帰る道すがらに疲れた目を楽しませてくれる夜桜、
花の硬い咲き始めよりも、
ほどよく解れて散り始める今の時期の方が、ずっと桜の花それらしくて良い。
桜の木の下で想うのは、
梶井基次郎の書いたそれではなくて
「夜、桜の木の下で遠くに逝った人の声が聞こえる」
そうわたしに言って残したとある人のことだ。
そんなことを言っては返答に困るわたしを見て笑ったその人も
今はもう鬼籍の人だ。
今夜は生憎の雨模様、さりとて傘をさすほどでもなく、
空気の冷たさを背中に感じつつ、人気のない遊歩道を流して歩くにはいい具合。
寂しい街灯に照らされて、はらはらと舞い堕ちる桜の花びらに、
つい足を止めてぼんやりする。
調子をすっかり崩した体をわざわざ冷やしてすることでもないだろうに。
こんな夜にはヴェデルニコフのBachがいい。
部屋の暗がりの中、穏やかなピアノの響きに包まれて今日一日をゆっくり反芻する。
まだ季節は始まったばかりだというのに、
もう階段下でしゃがみ込みたくなるような気分。
これから1年の課題、あまりに荷が重くて最初の一歩が踏み出せない。
あの人だったら一体どうしたろうと想いながら桜を眺める自分に、
かつて言われたことを心のどこかで信じていたのかと問い返す。
そんな動揺をせせら笑うでもなく、桜の花は淡々として夜の灯りに舞う。
その静けさが却ってせつない夜だ。