音の快楽的日常

音、音楽と徒然の日々
早朝目が覚めて聴いたのは



ここのところ疲れて早く寝てしまうせいか、
朝、目が覚める時間が早くて仕方がない。
いつもは寝台の中からリモコンでラジオを聴いたりしているが、
今日は朝の4時というのに起き出してaudioの前に陣取った。

特別何かを聴きたいわけではなかったけど、
何となく手が伸びたのがバッファロー・スプリングフィールド。
細野さんのインタビューで「これは聴かなくちゃだめですよ」みたいな発言があって、
活躍というか活動していた時期が60年代中域と興味の沸く時期だったので、
近所の中古屋で埃をかぶっていたボックスセットをいきなり買ってしまったもの。

CDが4枚、時系列に曲が整理してあって、写真も多数掲載のブックレット付き。
それで2000円でおつりがきたので喜んで買ったが、
買った当時はそんなに気に入るでもなく、2、3度聴いてそのままになっていた。

なので、自然に手が伸びるのが自分でも不思議なくらいだが、
まあ時間はたっぷりあるしと順に聴いてみたら、これがとても耳に馴染み心地良い。
HDCDということもあって、小音量でも音が自然にリビング全体に広がるので聴き易い。

そんな適当な買い方をしていても、
CDなりアーティストなりが何年も経ってつながっていくのが面白い。
元々不勤勉なので、
アルバムの背景やアーティストのプロフィールなどを細かく調べたりもしない。
そうすればきっともっと音楽が面白くなるのだろうと思いながらも、
他のことはともかくとして音楽くらいは気楽に好き嫌いで選んで聴きたい、
という気持ちがどこかしらあってそんな姿勢がなかなか正されないでいる。

仕事が忙しくて、かといって帰宅後は家族サービスがあるからと、
好きな音楽を聞けるのは朝起きてわずかな「自分の」時間だけ、という知人がいる。
そんな知人に申し訳ないほどわたしはいい加減だけれど、
朝の静けさの中で小音量の音楽に包まれて時間を過ごすのもなかなかいいものだと感じた。
出勤前だとうっかり二度寝しないよう気をつけなければいけないけど(笑)。
pop & rock | - | - | author : miss key
Lulu on the bridge



映画の方はもうずっと前に観て知っていたが、
サントラ盤の方は出ているのも知らず、偶然中古で見つけて買ったのが上のアルバム。

ストーリーが奇想天外というか、きちんと筋を追わないとよく分からなくなるので、
音楽に注意を向ける余裕が無かったのだろうか。
どんな音楽が流れていたのかあまり印象に残っていなかったのだが、
改めてこのアルバムを聴いてみると、
「あれ、こんな人の演奏が入ってたんだっけなあ」
といい加減な自分の記憶にげんなりしつつも喜んで聴いている。

ちょっとびっくりなのは、
冒頭1曲目のMira Sorvinoのアカペラで"Close your Eyes"。
彼女は主演Harvey Keitelの恋人役を演じている女優さん。
1分にも充たない、まるで傍にいる誰かに話しかけるように歌う彼女の歌。
これを聴けば、別にハーヴェイ演じるジャズマンじゃなくても恋におちるかも。

と思えば、メデスキ・マーチン&ウッドのファンクな演奏があったり、
アマリア・ロドリゲスの憂いたっぷりなファドが流れたり。
映画作品から離れて、ちょっと面白いコンピとしても十分楽しめる。

サントラ盤は割と気をつけて良さそうなものを拾うようにしているけど、
これはちょっと見落としていた意外な1枚だ。
others (music) | - | - | author : miss key
「サカイ」の面白い話
否、決して面白がってはいけない話しなのだろうが、
流石、書店の店頭で話題になった本だけのことはある。
浅井建爾著の「知らなかった!驚いた!日本全国『県境』の謎」。




わたしは「境」にこだわる土地の仕事をしていることもあって、
未解決の話題として既に知っているものもいくつかあったが、
各々の事例はさらっと流していても、
だからこそ見えてくる共通の問題点が興味深い。

物事「なぜそうなっているのか」が見えると、
どんなにややこしく拗れていてもいつかは解決のきっかけがつかめるものだ。
そう思いながら、わたし自身も日々諦めることなく、
土地の上に描かれたネジくれたパズルと格闘中(笑)。
毎日のように都内のあちこちを歩き回り、
或いは土地にへばりつくようにして境界の名残を探したり、
さらには地誌や地暦を求めて古文書と日がな一日格闘したりもする。

そこまでおたくな人間でなくても、
「なぜ人は境にこだわるのか」が見えると、
退屈な生活の中にも面白い出来事が見いだせそうな、
そんな気さえするから本書は面白い。

本に取りあげられたエピソードの、
さらに真相ならぬ深層を極めたくなるのは決してわたしだけではないだろう。
「日本全国『県境』の謎」、通勤電車のお供に気軽に読める1冊、お勧めです。
よもやま | - | - | author : miss key
泣きたいから聴く
今時の流行歌には全く疎くて、
それがTVの主題歌だったりすると全然わからなかったりするが、
80年代までの歌謡曲なら、フォークから演歌まで好きなものがたくさんある。

その人それぞれにしっくりくる音楽というのがあるとすれば、
わたしの場合、それは多分演歌だったりするのではないかと思うことがある。
日頃、海外のポピュラーだのJAZZだのクラシックだのとあれこれつまみ食いしていても、
歌として一番自分にぴったりくるものって何かって言えば、
それはド派手なビッグバンドでもなければ、高尚な趣の類いでもなく、
メランコリックな日本語の歌かも知れない。





谷村新司という人の歌を聴くようになったのは、
当時夢中になって聞いていたラジオの深夜放送のDJを彼がしていたから。
アリスの「冬の稲妻」が出た前かどうか記憶が怪しいけれど、
彼のソロアルバムは1stから順に聴いているので、
多分フォーク好きな従兄弟のライブラリからカセットに落としてもらったりしていたんだろう。

上のジャケットのアルバム「海猫」は自分で最初に買った彼のレコード。
フォークというより演歌に近いウエットな歌詞とメロディに、
中学生だったわたしは何を感じていたのか今は思い出すこともできないけれど、
このレコードから流れ出る音に、何を思うでもなくただ静かに涙を流したくなる。
否、そうしたいから聴きたくなるというのが本当かもしれない。

そういうレコードが手元に何枚かあることを、時に幸せに思う。
黒い円盤が回る様子を眺めながらぼんやりする時間を心からありがたく思う。
そして音の善し悪し以前に、
そういう音楽との接し方ができるレコードってつくづくいいものだと思う。

レコードの話 | - | - | author : miss key
鉄道革命


週に1冊ぐらいずつこの手の経済誌を買っているが、
それは必要にかられてではなく、電車の中吊り広告の文句に釣られてのこと。
タイトルが大げさだったり、切り口が面白そうだったりと、
その時々気分次第なので随分いい加減な読者だと自覚もしているが、
今週は「モーダルシフト」が取りあげられている東洋経済にした。

「鉄道革命」と銘打って特集が組まれた本誌には、
ここ数年注目されているシベリア鉄道や、モスクワの地下鉄事情なども取りあげられていて、
(きっとごく僅かだろう)ロシアンフリークな読者も大満足のはず(笑)。

ところでモーダルシフトってあまり聞き慣れない方も居るかもしれない。
Wikipediaの説明では、
「モーダルシフト(Modal shift)とは、貨物の輸送手段の転換を図ること。
具体的には、トラックや航空機による輸送を鉄道や船舶による輸送で代替することが
考えられている」(引用終わり)とある。
CO2の削減など環境に配慮した輸送への転換が叫ばれる中で、
世界的にも鉄道が脚光を浴び始めている、その具体例と背景の分析が肝になっている。

わたしにとっては「東方征服」と名付けられた街ウラジオストックから一週間乗りづめで
モスクワに行けるレトロな路線というイメージでしかなかったシベリア鉄道。
それが想像以上に条件の整った貨物路線になっているというのがとても興味深い。

リュクスクラスの客車は居心地もよくて、ロシアを鉄道で旅するのは決して嫌いではないが、
輸送の途中で「物がなくなる」みたいな先入観が強かったので、
今の状況はにわかには信じ難かったというのが正直なところか。
現実にはそういう時代もあったから、
今後、日本企業の利用を増やすにはそうした先入観を払拭できるかどうかが鍵のようだ。

鉄道ではないが、飛行機では預けた荷物が開けられて中身が物色されていたり、
ものが無くなったりということはわたし自身何度も経験済み。
それが金目のものじゃなく、身近な雑貨やチョコのような食品だったりするのが
少々悲しい気持ちにもなったけど、
バッグの外ポケットにチョコなどいくつか入れておくと、
鍵を開けられたりしないようだとわかってからは、
物事何ごとも付き合い方次第だなと妙に納得した(笑)。

それはともかくとして、特にモスクワの地下鉄を取りあげたコラムを読んでいると、
なんだかまた地下鉄に乗って街をうろうろしたくなった。
独特の薄暗さとアナウンスの響き、これはもう好き嫌いが分かれるが、
「どこで降りるのか、大丈夫か?」と不案内な外国人に声をかけてくれるなんていうのは、
これまでロシアでしか体験したことがない。
路線や時間帯によっては強烈に混んでいる彼方の地下鉄、
アナウンスも慣れないと聞き取りづらいのでそういう声掛けは実際とてもありがたかった。

今回の特集、トヨタの"カイゼン"貨物列車や世界の高速鉄道事情、
アルプスのど真ん中を南北に貫くスイスの世界一長いトンネルを含む国家的プロジェクトなど、
読みどころは盛りだくさん。
日頃この手の雑誌を敬遠される方にもお勧めの一冊だ。
よもやま | - | - | author : miss key
鳥には鳥の
鳥には鳥の苦労がある

そんな言い方で両親からよく嗜められたのを覚えている。
学校でつまらないことがあったり、
当時やってたオルガンで上手くいかなかったりすると、
つい口癖のように「鳥になりたい」とぶつぶつ言う子供だったから。

『かもめのジョナサン』は中学時代の一番の愛読書だった。
英語が苦手というか嫌いで、さっぱり勉強が進まず、
入試どころではないという状態だったが、
ジョナサンの原典を手に入れてから一言ずつでも辞書で調べて英語を読むようになった。
日本語で読むジョナサンよりも、
英語の方がずっとジョナサンとの距離が短くなったような気がしたからだ。

今のわたしは新しいことに取り組む意欲もなく、
まるでアパシー状態だ。
仕事はしているし、寧ろ外では過剰にアグレッシヴで余力をなくしてしまう。
消尽に満ちた生活をあれこれ気の付いたことから見直して、
時間の使い方もがらりと変えてしまったけれど、
それが急すぎてわたしの中身が着いて行けてないのかも知れない。

***

ダルな時に決まって聴くアルバムがある。



Chick Coreaの"Return to Forever"。
10代の頃自分で買った数少ないレコードの1枚。
曲ではなく、ジャケットが欲しかったのだ。かもめが写っているから。
オルガンのプレイヤーとしては早々に先が見えてやることがなくなり、
文字通り無気力に過ごした時期の愛聴盤。
今聴いても胸の中に大きな穴が開いたような虚ろな気分になる。
どんなに辛いことがあったとしても、全てがぼんやりしてしまうほどに。




Jim Hallの"Conciert"。
高校時代に擦り切れるほど聴いた1枚。
10代最後の3年間を事故に遭ったり、体を壊したりで棒に振ってしまったが、
リカバリーする努力をしてもしなくてもやっぱり次の朝が来る。
そんな行きどころのない気持ちを解放してくれたアルバム。
陰に陽にと自在に姿を変えて響くChetのトランペットとJimのギター。
今は眠れぬ夜の睡眠薬代わり。
最後の曲を聴かずに眠れるうちは、まだ心に元気が残っている。


鳥には鳥の苦労がある。
今のわたしは鳥になりたいとは思わないけれど、
鳥のことばが話せるようになったらいいなと思う。
鳥にとって飛ぶという当たり前のことが、
一体どんな気分のするものなのか、
いつか彼らの口からきいてみたいと思う。
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青春の欠片というには遅すぎたけど
久しぶりにお茶の水へ出かけた。
知人が参加しているモノクロ写真展を見るのが目的だったが、
会場で美味しいビールをいただいて勢いがついたのか、
中々足を向けることのなかったニコライ堂に寄ってみた。



ここにかつてロシア語学校があったのを一体どのくらいの人が知っているだろう。
ロシア語が学べる専門学校は都内にいくつかあったが、
週二回、仕事帰りに確実に通おうと思うとわたしにはここしかなくて、
二十代後半の仕事もそろそろ忙しくなる時期に、
敢て1年間、定時帰りを通して上級コースまで終えることができた。

その結果、職場で不利益を被ったり面倒なこともあったけど、
ブロークンながら一人旅でも何とかなる程度にまで
読んだり話したりできるようになったのは、
語学音痴な自分としては何にも代え難い嬉しい出来事だった。

諸般の事情あってその学校は閉校となったが、
今日訪ねてみても、当時と全く変わりはなく、
教室もおそらくは当時のままではないかと思われた。

食事をする時間も惜しんで勉強するという時期が、
ひとりの人生のうち1年くらいあってもいいかな、
そう思って根気のないわたしにも頑張れた、そういう貴重な時間。
青春の欠片を拾うというには余りにも遅い青春だけれども、
溢れんばかりの思い出が詰まったこの場所、
どうかいつまでも変わらないでいて欲しいと切に願う。

駅への帰り道、夕食によく利用したお店がまだ健在で嬉しくなった。
街の変化はとても面白いけれど、変わらずにいるものがあるとほっとする。
勝手なものだと思いつつ、
わずか15分の散策でこの間の憂鬱が少し晴れたような気がした。

よもやま | - | - | author : miss key
忘れた頃にやってきた
オクタヴィアレコードから届いた1枚のCD。
もうすっかり忘れていて、あれなんだっけと封を切ったら、
出てきたのがシベリウス全集(CD4枚)を購入したリスナーへの全員プレゼントCD。

そうだった、このシベリウスは北欧のオケ&アシュケナージの指揮でのチクルスだったけど、
特典CDはアシュケナージのファンを意識した彼のピアノ演奏の録音。
曲はシベリウスの「5つの小品『樹の組曲』作品75」。
全体で12分ほどの、本当に小品という感じだけど、
ピアノの響きを豪華に堪能できる素晴らしい録音だ。

わたしはアシュケナージの弾くピアニッシモやピアノのタッチがもの凄く好きだけど、
この曲ではフォルテの響きにジーンと来てしまった。
そういう感動的な曲調では決してないのだけれど、
ピアノのピアノらしい響きが何とも素朴で美しいと思った。

このCD、応募していたのもすっかり忘れていたけれど、
こうして忘れた頃に貰えたりすると、意外に嬉しくなってしまう。
というか、わたしが単純なだけなのか。
いずれにせよ、このCDは宝物の1枚となった。
オクタヴィアレコードさん、ありがとう。
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Tudor Lodge
ずっと若い頃のこと。
英国というと思い浮かべたのは紅茶とトラッド・フォークだった。
紅茶はともかく、なぜフォークなのかというと、それほどきちんとした理由もなかったが、
当時周囲にそういった音楽ばかり好んで聴いていた方がいたので、
その影響が大きいのかもしれない。

随分いろいろなレコードを聴かせてもらった記憶があるが、
今思えばとても貴重なアルバムも少なくなくて、
言ってみれば猫に小判状態でとっかえひっかえ聴いていたのが信じられないくらい(笑)。



下北沢に遊びにいった折に寄ったレコード屋で拾ったTudor Lodgeの再発盤。
Zapというレーベルから80年代に出されたもので、ジャケットは残念ながら簡易版だ。
ちょっと前にCDが品切れで買い損ねていたので、ちょうどいいと思って購入した。

音楽は爽やかながら稠密で、伸びやかなヴォーカルがとても印象的だ。
こういうサウンドからついつい想像してしまうのが深々とした森や田園だったりする。

フォークは決して嫌いではないのだから、もっといろいろ聴いてみたい気もするが、
手を広げてみたはいいものの、そこはそれ、また深い沼だったりするわけなので、
躊躇するというか、少し遠巻きにして
何かのきっかけで手元にやってくるアルバムを楽しむ程度が合っているのかも知れない。
Tudor Lodge、わたしにとってささやかなタイムマシンの鍵のような1枚だ。
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Zabriskie Point



Pink Floydが絡んだアルバムで最も聴くのが遅かった1枚、映画"Zabriskie Point"のサントラ盤。
わたしにとって洋楽への入り口の一つが映画音楽だったのはいつか書いたかもしれないが、
Pink Floydが手がけた映画音楽、
いずれも直感的で凝りすぎてないのがとてもいい感じだ。

"Zabriskie Point"の音楽は映画を見て以来で、
最近ふと思い出したように未発表音源の入った2枚組のCDを買ってみた。
未発表、の方はおまけ程度にしか考えていなかったのに、
意外なほど2枚目のボーナストラックの4曲はとても良かった。
メロディもリズムも力みがなくて、本当に流れるような自然さ。

それがかえってアウトテイクになった所以かもしれないが、
こんなリラックス度満点な音楽が下敷きになっているのなら、
各オリジナルアルバムの制作途中の音やデモ演奏をいろいろと聴いてみたい気がする。

天気予報によると、今夜から明日にかけて大雨になるとか。
そういえばさっきから雨音がだんだん強くなってきた。
今夜はリックが静かにピアノを弾く指先を思い浮かべながら眠ることにしよう。
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