『いつもレコードのことばかり考えている人のために。』 | 2008.05.31 Saturday |
眺めているだけで楽しくなる本はそれだけで値打ちがある。
ずっと手元に置いて、何度も何度もページを繰っては、
知っているはずの紙面にまだ気がついていなかった新しい発見に感動したりして。
レコードのジャケットを集めに集めた本書。
帯のことばを借りれば「レアなレコードから誰も見向きもしない駄盤まで1500枚!」。
レコードとの接し方については、この半年ばかりいろいろと考えてきた。
その一方で、いつもレコードのことばかり考えているわけではないけど、
「部屋に少しでもたくさんのレコードを買い込めるように」
と想定していなければそんなにモノを処分できないというくらい、
「優先順位」に従って徹底的に部屋の中を整理してきた。
どんなにモノを整理して物理的空間を空けたところで、
自分の月々負担できる床のコストはたかが知れている。
それ以前に、
ダブってモノを買ったりしないで済む頭の中の「持てるキャパシティ」の限界値が低いので、
どんな基準でレコードを買ってよいことにするのか、
それは声高に人に話すことでもないけど、自分の中ではとても大事だったりする。
大体、肺の底に膿が溜まって咳が始終止まらないという面倒な病気がようよう治ったばかりで、
埃と大のお友達である中古レコードのことばかりあれこれ考えてしまうというのも困りものだ。
でも体が元気になると、やっぱり出かけてしまうのがレコ店と本屋。
そして『いつもレコードのことばかり〜』を眺めていると、
誰も聞いちゃいない「約束事」を作るのに一喜一憂していたのが何だかバカバカしくなった。
この本、紹介されているレコードに関して溢れんばかりの蘊蓄が披露されているとか、
集めまくったレコードに埋もれた部屋の写真が掲載されていたりとか、
そういうまとめ方はされていない。
レコードの中身は取り敢えず置いといて、図録集としてあっけらかんと楽しめる、
そんな割り切りに思わず笑みが洩れる人はどのくらいいるだろうか。
美麗な装丁にジャケ絵を眺める楽しさのスキマ隙間にそっと隠されたレコードの愉しみ。
ここに入り込むと面倒というか厄介と言うか、でも幸せだろうなあと、
先に進むか引き返すか行きつ戻りつ「寝しなに眺めて」楽しめる本。