音の快楽的日常

音、音楽と徒然の日々
昔探し
久しぶりに天気のよい休日の午後、
ところどころに咲く桜の花に目をやりながら、
学生時代に住んでいたことのある街をのんびり訪ねて歩いた。

見覚えのある看板に懐かしさを覚えつつ、
かつて友人の住んでいたアパートが既に今風のマンションに建て替る様子に、
思えば既にあれから20年近く経っているのだから無理もないと、
足の疲れもそろそろピークという折に路線バスに乗り、ターミナル駅へと向かった。

少し汗もかいたけど、なんと言っても嬉しかったのは、
久々に自然と空腹感を覚えたことだった。
去年、潰瘍をやってからというもの、
お腹の空くのが病気のせいなのか、薬のせいなのかよくわからないことが多くて、
山にでかけておにぎりをほおばるときのような、
そういう食の幸せみたいなものから随分遠ざかっていた。

体を痛めた原因だった職場からは今月一杯で離れることになり、
数日後に始まる新しい生活に少し緊張を感じつつも、
無意識に力の入る生活が3年も続いていたのが嘘のように、
青空を眺めながらとぼとぼと歩くだけで気持ちが晴れたのだった。


自宅に戻り、ちょっとソウルな音楽を聴きたくなった。
流したのは週末に買ったSealの"Soul"というカヴァーアルバムだ。



Sealという人の詳しいことは知らないけど、
ソウルフルな歌唱の中に、どこか陰があってストイックな感じがするのがとても好きだ。

本作は、日頃ソウルというジャンルの音楽を聞かない方でも、
どこかで耳にしたことのあるようなスタンダード曲集に編まれている。
まだ肌寒さの残る夜、温かいお茶でも飲みながら聴きたい1枚。
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脈絡もなく
年度末というのは何故にこうも慌ただしいのか。
日頃のツケがここにきてボディブローのように効いているとはいえ、
脱いだ靴が履けないくらい歩き回る毎日にうんざり。

移動中の電車の中で一服の清涼剤ではないが、
気付け薬代わりに重宝しているのが次の2枚。




Wagner Loveはフランクフルトの4人組。
どこか甘ったるさを残しながらも、
キャッチーな楽曲が小難しいことを考える気力を根こそぎ奪ってくれるので、
頭が飽和しているときの気分転換にはぴったり。

このアルバム"Everything about"は1stのようだけれど、
バンドの結成は2003年なのだとか。

彼らの歌で癒されない、いや間に合わない時には、
Sparksの"Balls"を大音量で両耳に流し込み、無理矢理脳味噌をリセットする。
< 車中では端迷惑なので歩く途中の歩道脇で一服しながらのこと、もちろん。

両バンドの年齢差は一体いくつだ、などと計算する必要もなく、
どちらもわたしにとっては愛くるしい。




Nickelbackの最新作"Dark Horse"はわたしのニッケル初体験盤。
彼らの詳しいことは何も知らないけど、
ザリザリした演奏の向こうに聞こえるきれいなメロディに一聴で落ちた。

普段あまり手の伸びないジャンルでも、たまには試聴台にチャレンジするのもいいなあ。
でも音の洪水のような音楽には気持ちよりも先に耳が疲れてしまうので、
そんなときはPain of Salvationの曲に切り替えて空想に耽る。

脈絡のない無節操な音楽の聴き方で救われるOL一匹の魂なり(笑)。
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命の洗濯ではないけれど
若い頃は、今よりずっと自分の気持ちに素直だった。
泣きたいときには泣けて、意地を張るのもそれなりに楽しんでのこと。
それが、最近はなかなかそうはいかなくなった。

周囲が見えるようになった分、「そういうわけにもいかなくなった」だけなのか。
否、感情の起伏には結構なエネルギーが伴うから、
自らにそれだけのものを注ぎ、つき合うだけの気力体力が足りなくなっただけのことかも知れない。





去年、書店の平積みで何度も見かけた立川談春の『赤めだか』。
文芸誌"en-Taxi"の連載でずっと読んでいたので、
単行本は何となく買いそびれたままだったのを思い出して買ったのがこの週末。

泣いて笑って、笑って泣いて。

ここしばらく、無意識のうちに体に力が入っていたのかなあ。
なんだか随分疲れていたんだ、溜まっていたんだなあと、しみじみしつつ。

一気読了の後の脱力感がこの上ない快楽をもたらす1冊。
よもやま | - | - | author : miss key
ペリメニと格闘する
つい最近、とても美味しい餃子を口にする機会があって、
それは、例えてみれば「ガッツのある味」、
要はにんにくがしっかり効いていて食べごたえのある美味さで、
翌日が仕事でなければ3人前くらいは食べたいと思うような感じだった。

最近はにんにく控えめの優しい味付けのものが多いのか、
そういう、ガツンとくる餃子は久々でどこか懐かしさを覚えたほど。

それで、というわけではないが、
気分転換にペリメニでも作ってみるかと日曜の夕方からごそごそと作業を始めた。

本当は、写真を載せようかと思ったが、
成形がへたくそなので(要するに手先が不器用だ)止めておいた。

今時はネットで検索すれば、ペリメニのレシピだけでも何十通りも出てくるが、
わたしはいつも、強力粉と卵、水で作る皮と、
中身の具材は合いひき肉とたまねぎ、セロリ、すり下ろしたにんにくとシンプルだ。

しょっちゅう作っている訳ではないので、
皮の種の量と具材の量がピシッと合わず、いつもどちらかを余してしまうが、
今日は具材が多く残ったので、皮を2度作った。

ところで、包む皮を上手に作る方法がないものかとは毎度悩むことだ。
こねた種を伸ばす棒がないのでコップで代用しているとか、
作り方が荒っぽいのはまあ脇においておいても、
具材を包むときに、ペリメニ独特の花のような形を作るのがどうもうまくいかない。

成形しやすさを優先すると、皮の種が柔らかめになってしまい、
形を整える段でうまくいかず、
さりとてしっかり作ろうと思うと皮が厚くなりすぎて、
今ひとつ冴えない食感になってしまう。

困ったことに、今回は先の「ガツン」のせいか、にんにくを効かせ過ぎたようで、
ガーリック大好きな人ならまあ大丈夫だが、
本当なら日曜の夜に大量に食すには少々問題ありの味付けになってしまった。
にんにくの風味が強いので、バターやサワークリームにつけて食べるのではなく、
マヨネーズと醤油の2つを付けダレにして食べた。

本当は夜遅く帰ることが増えてきたこの時期の簡単夜食に冷凍しておこうと作ったのだったが、
5人前分を作ったうち、結局2人前分は今夜のうちに湯がいて食べてしまった(笑)。
見てくれはぱっとしないが味は思ったより良かったので救われた。
皮を伸ばすのに結構体力がいったのでお腹が空いてしまったのかもしれない。

それにしても、ペリメニの皮。
手早く美味く美しく作るのにはどうすればいいのか。
ついでにいえば、台所を粉だらけにしないで作る方法はないものか。
ペリメニを作る度に毎度同じことで悩む、進歩のない人間の独り言である。
よもやま | - | - | author : miss key
ロシアの汽車旅、いつか、また。



『世界の車窓から』DVDブックno.30はロシア・ウクライナ特集。
ペテルブルクとモスクワを結ぶ「赤い矢」号はもちろん、
ウクライナ鉄道の旅は、それを体験した人もまだの人もきっと魅せられるはず。

さらに注目すべきはモスクワ市内の地下鉄の様子が収められた映像。
すごいスピードで滑り降りるエスカレータ、美しい駅ホームの意匠。
時折夢にみて思い出してはいたけれど、
またいつかそう遠くないうちに彼の地に出かけたいと思った。

汽車旅、それも夜行列車の旅はそれでしか味わえない愉しさがあるけれど、
ここしばらくは雑事に追われて旅しようという気持ちもどこかに失せてしまっていた。

でも、もうすぐ春。
このDVDはすっかり出不精になったわたしにはとてもいい薬、
テレビでご覧になった方にもお勧めできる充実の作品だ。
よもやま | - | - | author : miss key
アクヴァリウムの『白い馬』
ここ5、6年、随分といろいろなコンセプトでアルバムを発表してきたアクヴァリウム。
楽しい試行錯誤のようでもあり、旅の経過を知らせるメッセージのようでもあり。

そんな中で、一つの区切りのような作品が昨年末にリリースされた。
Аквариум(アクヴァリウム)の"Лошадь Белая"(白い馬)。




ミクスチャーという表現があるけれど、今回の作品は、
伝えたいメッセージの形がいろいろな音楽の衣装を借りながら、
それが自然と一つの体にうまく収まった感じだ。

サウンドの印象は―
彼らの長いファンなら"Навигатор"を思い浮かべるかもしれない。
ボリス・グレベンシコフの語りかけるような歌と、
低音にアクセントを置いた今っぽいアレンジの曲が交互に繰り返されたかと思うと、
いきなりポップで陽気な南海テイストの歌になったりして、
気まぐれそうな彼のイメージからしてなるほどと思ってしまう楽しい仕掛けも。

7曲目の『ありがとう』、途中「アリガトウ、ママサン!」という歌詞があって、
(そのまま日本語で歌っている)
この曲の歌詞が上手く日本語に訳せたらと思いつつ、
サビの部分の

 Аригато, мама-сан,
 Никто, нигде и ничей
 Весенний ветер,
 Девяносто дней и девяносто ночей  ("Аригато"より抜粋)

という部分を無意識のうちにリフレインする自分に笑ってしまう。

ところで、ベーゲー、CDで声を聞いている限りは10年前と何も変わらないけれど、
久しぶりにアクヴァリウムのサイトを覗いてみたら、
スキンヘッドに髭を蓄えた彼の写真に思わず見入ってしまった。

2、3年前に全作品のボックスセットが出ていかにも集大成という感じで、
おやおやと思っていたのだけれど、
よく考えてみなくても、そういう年だしタイミングだったのだと思い直した。
ともあれ、今回の『白い馬』は、
彼らの軌跡や背景に関心がなくても、とても楽しめる内容になっているので、
どなたにでもお勧めできる1枚だ。


◆Аквариум Official Site http://www.aquarium.ru





pop & rock (russian and other slavic) | - | - | author : miss key
待ち遠しいという気持ちを



待ち遠しくてならないようなことがあると、
それだけで心癒されるというものだ。

帰省時、買い物に出かけた両親達が戻るのを玄関でひたすら待ちわびる犬の姿に、
ただそれを眺めているだけでわたしは温かいものに包まれたような気持ちになった。

そして帰れる場所があるということが、どれほど心強いものかということを、
いよいよ痛感する歳になった自分。
物事のありがたみにようやく思い致すようになった自分にどこかほっとしつつ、
熱いお茶をすする週末のひととき。
よもやま | - | - | author : miss key