音の快楽的日常

音、音楽と徒然の日々
野毛餃子行き
桜木町の駅と日の出町駅の間に横たわる野毛の歓楽街。
細い通りがいくつもあって、
間口の狭い、昔ながらの居酒屋、小料理屋が並ぶかと思えば、
外国人のシェフがいる洒落た雰囲気の洋食店が顔をのぞかせたりと、
店の場所を覚えるのも一苦労。
そぞろ歩きで見落としがちの空中店舗には面白いバーが多いというし、
看板の無い人気店もあるというから、飲屋街が好きなら何度も通い甲斐のある街というもの。

もう何年前だか、写真の好きな友人とこの界隈からみなとみらいへの撮影散歩をしたことがある。
その際にも通りがかって店の存在を知ってはいたが、
ポルノ映画感だの風俗店だのが、
飲食店の並びを縫うようにしてあちらこちらに点在する猥雑さも手伝ってか、
当時はその看板の文句のあまりの奇天烈さに腰も引けて店に入る勇気がなかった(笑)。

そんなエピソードのある店に初めて入ったのが数ヶ月前、まだ少し寒さが残った季節で、
そのとき食べた餃子が久々に美味しかったのでもう一度また行きたいと思っていたところだった。



店の名前は三陽。
知っている方には何の説明も要らないだろう、一度入れば忘れられない店。
店員さんはみな勧め上手で、昼間だというのにビールも進んでしまい、
餃子のほか、レバニラや手羽先などを腹に納めすっかり出来上がってしまった。

土曜の午後からそんな調子で夜遅くまでダラダラ呑んで食べてをしたので、
翌日は頭痛はするは、体はだるいはと、すっかり不健康が服を着ている状態で、
楽しみにしていたオークスの中継も激戦のゴール前に今ひとつ感動がやってきやしない。




少しネジを巻き直すかな、と部屋に流した音楽はNina Simoneの"Silk & Soul"。
カラリとしたニーナの歌いっぷりに野毛の街の様子を思い出してみれば、
前回訪ねた時に比べてどこか活気が足りなかったような。
話題の新型インフルエンザの影響があったりするんだろうか。
そう言えば喉の調子がちょっとおかしくて熱っぽいような・・・。
体力をわきまえずに遊んだツケを翌週に持ち越すなんて社会人失格もいいところ(笑)。
今夜は早じまいして週明けの忙しさに備えることとしよう。
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Любэの新譜から - Мой Адмирал
五月病ということばをあまり耳にしなくなったような気がするのは
わたしだけだろうか。
朝からどうもエンジンがかからなくてピリっとしなかったのに加え、
幸運なことに午後の予定がすっぽり空白になったので、
ここはチャンスとすかさず有休を取った。

だからといって、特別出かけることもせず、
溜まった読み止しの本を片付け、こんな日に聴くならやっぱりこれかな?と取り出したのは、
久々のリュベーの新譜、"Свои"。

このCDに収録された"Мой Адмирал"は映画の挿入歌だけど、
ネットのラジオでもよく流れてた。





最近、特に似たり寄ったりな作りのロシアものに食傷気味だったわたしも、
こういうものを耳にするとやっぱりロシアの歌謡曲っぽさがちゃんとあって、
それだけで安心して聴けてしまったりする。

曲の後半、つぶやくように声を乗せているのはВика Дайнеко(ヴィーカ・ダイネコ)。
先日紹介したDVDにもリュベーと彼女がコラボしているライブの映像が収められてたけど、
何と言うか、無表情なリュベーにコケティッシュなヴィーカの絵がなんと座りの悪いこと(笑)。
それでも、リュベー健在なりということで、長年のファンとしては素直に楽しむべきだろう。
ちなみに、彼女はカザフスタン出身の歌手で、オリジナルアルバムも出ている。

わたしは映画作品の方はまだ見ていないけれど、気になる方は↓の公式サイトをどうぞ。
ロシア語のみで見づらいですが、動画もあります。
またYou Tubeでタイトルを検索すると、きれいな画像も出てきます。

◆ 映画"Адмиралъ" Official Site http://admiralfilm.ru/
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映画の中のちょっとした一言に
昨夜、テレビで放映されていた『ネゴシエーター』という映画の中でのこと。
凶悪犯である男のマンションに内偵に入った刑事が、
BGMのエリントンのレコードについて尋ねたところ、
「メモリーレーン」という店で探したんだ、と男は答えた。

メモリーレーンという名の中古レコード店は実在のお店で、
わたしが知っているお店そのものを指しているかどうかは定かではないが、
少し前にメモリーレーンで買ったChetのイージーリスニングアルバムを思い出し、
何となく聴いてみたくなった。

このお店に置いてあるレコードは、希少盤とか高額盤というのはほとんどなくて、
手軽に聴いて楽しめるような、コンディションもそこそこで価格もこなれた盤が
たくさん置いてある。

なぜか年がら年中バーゲンセールをやっていて、
調子に乗って買っていると、それこそ大変なことになるが、
特定のアーティストの盤をざっと大人買いするにはとても便利で重宝する、
そんな店だったりする。

***

中古レコード店が集まったネットのモールを覗いてみると、
それこそ五万と店があり、何十万枚ものレコードが売られている。
その中から偶然に自分が手にすることになった幾枚かのレコードを眺めるにつけ、
CDには日頃感じることのない感慨深さのようなものが沸き起こってきて、
その中身の音楽を横に置いといて、盤を眺めてはいろんな想像をして遊んでしまう。

世の中に似たようなことをしている人がきっといるんだろうな、などと思いながら、
レコードの回る様子をぼんやり眺めて過ごしている。
今夜は昨晩の強風が嘘のように静か、遠くで猫の鳴き声が響いて消えた。
明日もまた充実した一日になりますように。
レコードの話 | - | - | author : miss key
力強く、一歩、一歩
もともと前から好きなマーラーだったけど、
最近また毎日のようにマーラーを聴いている。

眠る前にかけっぱなしで聴くようなのは、
本来の作品の聴き方ではないのかも知れないが。

他所のblogで素晴らしい録音と紹介されていたので買ってみた、
バルビローリの6番。



ソフトの値段は中身の音楽性とは関係ないけど、
これが、しかもシュトラウスの曲も入ってたった1000円ちょっとというのはびっくり。

なんという力強さ。
一歩、一歩前へと迫ってくる。着実に、一歩ずつ。
しかも音楽はひたすら優美に流れていく。

音の強さではなく、音楽の強さに助けられて、
自分では振り払うことのできない雑念を無理矢理払拭している日々。
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"ゲバゲバ90分"を体験する
タイトルを見て何の話かすぐ分かった方がどのくらいいるだろう。
70年前後、ナイター中継のない時期に放送されていた「巨泉×前武ゲバゲバ90分」というテレビ番組。

わたしはこれを当時楽しみにしていたという知人からDVDで見せてもらったが、
< そのDVDも最近見つかった同番組のアーカイヴから復刻され、発売されたばかりのもの
なんというか、笑いのツボが微妙でなおかつ妙にシュールだったりするので、
笑う余裕もなく、とにかく真剣に画面を眺めてしまった。

この番組がどういうものかは、ゲバゲバ90分、でググるといろいろ出てくるので、
そうした解説をご覧いただくとして、
わたしがすごく喜んだ!のはその番組で流れる音楽だった。

一度聴いたら耳を離れないオリジナル曲や効果的なサウンド。
特に、オープニングの、出演者が各々のプラカードを掲げて登場するシーンに流れる、
なんとも言えず楽しいマーチは宮川泰作曲のものとは後から調べて知ったことだ。

映像はともかく、音楽には興味津々!という方は、
amazonで下のCDサントラ盤をチェック。





或は、とにかく曲の感じだけ知りたい〜という向きにはYou Tubeが楽しい。



曲も楽しいけれど、↑のように演奏するのはきっともっと楽しいに違いない。

You tubeで芋づる式に出てきた『11PMのテーマ』や『ウィークエンダーのテーマ』。
このあたりはわたしも聞き覚えがあって、
特に後者はオルガンを弾くようになってからコピーしたりしていた。
Q.ジョーンズが好きなのはそういう刷り込みがあったからだろうか(笑)。

話が逸れたが、個人的にも手薄だったテレビ系サントラ盤の充実度は意外に侮れないと知り、
これからはそういうジャンルのものも聞いてみたいなと思いつつ、
明日からまた平日、の憂鬱に少々気の重たい週末の夜。
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リヒテルの平均律を聴く



レコード店に行くと必ず眺めるくせに、重たいからと買いそびれている盤がある。
リヒテルのバッハ、平均律全曲集。

上のCDは、69年モスクワでのライブ演奏他の録音。
平均律以外にも曲が入っていて、ヴェデルニコフとの連弾も収録されているのが魅力。
音は決してHi-FIではないけれど、自然な残響音にロシアのホールの、
あの独特のひんやりした空間を思い浮かべるのは何もわたしだけではないはず。

同じ録音でぜひ第二巻も、と思って検索していたら、
残念ながらこのライブ演奏では、平均律の第一巻しかないそうで、
二巻目の演奏を聴くなら、よく見かけるメロディア盤の全集などを買うのがよさそう。

CDはリマスターに関して賛否両論あり、
旧版のあまり加工していない音質のものを推す声も少なくない。
収録してある曲順も気になるが、
重たいのどうのと言う前に、手に入るうちにレコードを手に入れようと思った。

休み明けにいきなり問題が重なり、どっと疲れてしまった夜、このアルバムに無意識に手が伸びた。
やり場の無い感情の渦もやがて霧散し、空虚ながらも平穏を取り戻すことのできる無二の演奏集だ。
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100 лучших песен года 2008
朝から雨だったけれど、せっかくの連休最終日だから懸案事項のプチ模様替えをした。
モノがたくさんあるが故に、寝室にも背の高い本棚が並べてあり、
地震でもきた日にはさぞかし悲惨なことに・・・、と眠っていても落ち着かなかったので、
高さを抑えるよう棚の作り替えをした。

普段眺めることもない本は押し入れにしまい込み、
入りきらないものその他を組み直した棚へ。
我が家の模様替えは必ずといっていいほどレコードの上げ下ろしが付いて回るため、
これがなかなかに辛い作業(笑)。
これだけやれば少しは二の腕が引き締まるはず・・・、
などと淡い期待も持ちつつ、暗くなる頃には作業を終えられた。

さて、汗を流したあとは何と言ってもビールに限る。
普段部屋では飲まないけれど、こういうときはね。
それで、ここしばらく忙しくて見そびれていたDVDをチェックした。
ロシアのTV番組などで流れた歌謡ショーのてんこ盛りで編まれた
”100 лучших песен года 2008”というビデオクリップ集だ。





正確に100曲入っているかは確かめなかったけれど、全部で4時間を越える超大作。
去年一年間からピックアップ(というのを信じれば)された映像だけど、
相当流行り廃りが目立つというか、かつてのピェースニャ・ゴーダ(ロシア版紅白)みたいで、
ロシアものが好きな人には堪えられない内容の濃さ。

最新のヒットがなくて、少し前の歌を歌っている歌手がいるのはご愛嬌として、
イーゴリ・サルハノフがチャップリンの仮装で歌ったり、
ワレーリャとアレクサンドル・イワノフの意外ながら豪華デュエットが聴けたり、
或はミラーシュのお二人って結構歳なんだ!とか、めくるめくサプライズの連続。
驚いたと言えば、ロシアの人じゃなくて、あのパトリシア・カースも登場!
彼女はロシアでも人気のある歌手とは聞いてたけれど、
何の前触れも無く(それはそう、編集しているから)画面にいきなり登場したのでびっくりした。
パトリシアのファンならこの部分だけでも値打ちがあるかも。

ただ、編集が粗いので、すべてのアーティスト登場時に名前と曲名が出てこなかったり、
アメリカ経由で外盤を購入するとNTSCに変換したものが届くので、
画像は結構荒れが目立ってしまう。
音声はそこそこ安定しているけれども、
ごく普通にワールド系に興味があって見てみようという方にとっては少々難点あり。
しかしながら、これだけまとまって、
ロシアの歌謡番組を端から手軽に見ることのできる良さは損なわれるものでもなく、
90年代のロシアものをこよなく愛するファンにはまたとない映像集であることは確か。

この手のものは出したっきりで再販は滅多にないので、
ご興味のある方はぜひショップでチェックを。
ちなみにリージョンフリーなので、日本での再生は問題なしです。

http://www.russiandvd.com/store/product.asp?sku=49800&lang=rus

※ちなみに登場アーティストは(順不同)
Лолита, Кристина Орбакайте, Стас Пьеха, Григорий Лепс, Максим,
Тамара Гвердцители, Александр Буйнов, Павел Смеян, Татьяна Буланова,
Валерий Меладзе, Надежда Бабкина, Владимир (старший) Пресняков,
Светлана Владимирская, Леонид Агутин, Лайма Вайкуле, Людмила Сенчина,
Ирина Аллегрова, Дмитрий Колдун, Ирина Отиева, Сосо Павлиашвили,
Валерия, Виктория Дайнеко, Лариса Долина, Алена Свиридова,
Александр Малинин, Дима Билан, Михаил Боярский, Наталья Подольская,
Елена Камбурова, Вадим Казаченко, Борис Моисеев, Евгений Маргулис,
Дмитрий Маликов, Алсу, (Трофимов Сергей) Трофим, Михаил Шуфутинский,
Сергей Мазаев, Александр Розенбаум, Лев Лещенко, Согдиана,
Александр Иванов, Александр Яковлев, Натали, Маша Распутина,
Виктор Салтыков, Владимир Семенович, Иосиф Кобзон, Ренат Ибрагимов,
София Ротару, Алексей Кортнев, Сергей Пенкин, Валерий Леонтьев,
Анастасия Заворотнюк, Игорь Саруханов
Группа:
Корни, Фабрика, Челси, Банд'эрос, ВИА Гра, А-Студио, Уматурман / Umaturman,
Иванушки International, Инфинити, Чай вдвоем, Мираж, Серебро (рок)
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Martin Denny



以前から知っていて、気にもなっているのに、
どういう訳だかただの1枚も音源を持っていないアーティストがいる。
Martin Dennyもその一人で、
細野晴臣さんが雑誌の記事かなにかで紹介していたのを相当前に読んで、
それでもって絶対に聴かなければ、などと思いつつも、
ラジオの番組などで流れたのを耳にしては、また今度探そう、の繰り返しだった。

今日、夕刻より渋谷Uplinkでの『音楽夜噺』に行こうと、
Mark-Almond盤を探しつつ、時間調整に寄ったレコファンでたまたま見つけたのが、
Martinのベスト盤LPだった。
ジャケ絵はCDのものとは全然違う、ぱっと見はMartin Dennyと気がつかないような、
ラウンジ系コンピかと思うようなもので、
まさにMarkのMを目当てに盤を抜いてはまた戻し、の繰り返しをしていたから、
偶然見つかったようなもの(笑)。

家に戻って早速レコードをかけてみると、
もわっと立ち上る独特の埃っぽさがいきなり南国熱帯風。
別に暑くはないけれど、なんとなく窓を開けて小音量でのんびり聴いた。
そう、細野さんの初期のソロアルバムの2枚目とか3枚目を思い出す雰囲気だ。

***

ところで『夜噺』はフレンチポップス特集でフランソワーズ・アルディが取り上げられた。
フレンチポップスというと、ジェーン・バーキンとゲンズブールぐらいしか思い浮かばないわたしだが、
今夜紹介された曲のうち、3分の1ほどはどこかで聞いて覚えのあるものだった。
知的な美人という印象の彼女だけど、
話者の向風三郎さんによれば、決して幸福とは言えない道のりを歩んできた人のようだ。

淡々と歌われる曲が多いのに、どこか物悲しさを覚えるのは、
そんなエピソードを聞いてしまったからなのだろうか。

また一度引退、ブランクのあとカムバックした彼女の数枚出されたアルバムの中で、
多くのアーティストとデュエットした作品を集めたものがある。
最後にそのアルバムの曲が流れたが、
フランス語を解しないのに、やりどころのない切なさで胸が一杯になったのは、
単なる気のせいではなかったと思う。
アルディの歌声は魅力的だったが、当分の間、彼女のアルバムを手元に置くことはないかも知れない。


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