音の快楽的日常

音、音楽と徒然の日々
Pavane for a dead princess
日頃からジャンルに拘りなくあれこれ雑食的に音楽を聴いているけれど、
最近あまり聴かなくなったものといえば、
例えばJAZZのピアノトリオ。

つまらない、とかではなくて、新譜探しにほとんど時間を割けないから。
専門店の店頭で試聴でもすればきっと気に入る1枚や2枚、簡単に見つかるのに、
たったそれだけのことが腰が重くてできなくている。


 


棚に並んでいるものから適当に抜いたら、それはスティーヴ・キューンの『亡き王女のためのパヴァーヌ』だった。
表題曲はどんなアレンジでも愉しめる奥の深い1曲。
日頃オーソドックスなクラシック演奏で聴くことが多いけれど、
蒸し暑い夜の部屋ならこうした軽いノリにかえって救われる。

仕事が山のように残っているのに、どんなに時間をかけてもはかどりそうになく、
あっさり諦めて帰った今日の夕方。
せめて事務所の窓が開けられて、外の風を入れられたらなあ。
超高層ビルの事務所だからそんなの絶対無理に決まっているのに。
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鐘、または探していたレコードに出くわす
週末の土曜は酷いくらい良い天気で、ひょっとしたら日曜の関西は梅雨の合間の晴れ?
と思っていたら、やっぱり。
おかげでステイゴールドの子、ドリームジャーニーが宝塚記念優勝。
雨の苦手な馬、わたしも同じだから心情的にも応援したくなる。
そんな人の思いが募ったか、春の最後のG1レースに。

友人の写真展に出かけるのをきっかけに川崎に行った。
CD TOPSという老舗のレコード店に寄ったのは何年ぶりのことだろう。
このお店、Chetのワールドパシフィックものだとか、ジャケ違いイタリア盤とか、
そういうのが箱の中に何枚も在庫してあるので、ある時期に何度か通ったことがあった。

他所のお店と少し違うのが―わたしにとって、だけれど
Big BandのLPが結構たくさん置いてあること。
ベイシーのようなメインストリームはもちろんのこと、
ヨーロッパで活躍したバンドのアルバムや国内盤なら原信夫とシャープス&フラッツも揃っていたりする。

減額されたけど一応出たボーナスだから、欲しいものがあれば買ってもいいかな、
そんな軽い気持ちで覗いた箱には、最愛のクラーク・ボラン・ビッグバンドのLPが多数!
その中から手元にCDすらない英盤2枚を抜き取って盤も確かめずに買った。
結構な値段だったが、中をみて多少のキズがあったところで、どうせ買い求めるのだから。
レコードを我がものにした瞬間から思い浮かべる音、音、音。
久しぶりに心の襞がブルブルする嬉しさをどうやって言葉にすればいいのか。

***

家電量販店の店頭に並んだテレビの映像にはフィギュアスケートの演技の様子が。
そう言えば朝方ネットニュースで浅田真央選手のフリーの音楽はラフマニノフの鐘に決まったとか。
ロシアのコーチが振り付けもして、ということだったのでロシアものが選ばれるのはそれほど驚かないけれど、
一体どんな感じでまとめるのか。
途中、大技を幾つも繰り入れる彼女の演技からはちょっといいアレンジが浮かばないけど、
オリンピックを目指してのものだからきっと素晴らしいに違いない。

いかにも梅雨といった雨の午後、
体調の思わしくない体を引きずり部屋に戻ってから、
いきなりクラーク・ボランというわけにもいかず、「鐘」に手を伸ばす。


 


アシュケナージのピアノで「鐘」を聴く。
いかにもというおどろおどろしさではなく、陰影豊かなピアノの響きに聞き惚れる。 
しばし雨の憂鬱すら忘れて、氷上の舞を思い浮かべ涼をとる。 

この曲、冬の寒い時期に部屋ごもりして聴くのが気に入っているが、 
ラフマニノフのピアノ曲、この季節でもいい感じで聴けるのがわかって一人うなづく。
次の週末には他の作品もあわせてじっくり聞き込んでみよう。
レコードの話 | - | - | author : miss key
戦いすんで日が暮れて
長い長い名人戦の七番勝負にようやく決着がついた。
最期はひょっとしてあっけない幕切れであったのかも知れないが、
それは素人目にそう映るだけで、
勝者が漏らした「勝てると思ったのは最後の最後」の奥にはいろいろな意味合いが込められているのかもしれない。

***



蒸し暑さも手伝って、どっと疲れが出た一日の終わりに選んだ1枚、Jane Dubocの"Sweet Lady Jane"。
このアルバムの9曲目、"Pra Dizer Adeus "が体の緊張をゆるり解きほぐす。
同曲は、オーストラリアの歌姫、ジャネット・サイデルの歌でも知られたメロディアスでムーディな1曲。
サイデルが気怠さと切なさに満ち満ちて歌えば、
ジェーンのそれはどこか郷愁さえ覚えるほどに対照的な歌唱。
今夜のような寝苦しい夜にはかつて失った恋を思い出させるサイデルよりもジェーンの方がありがたい。

期せずして手元に届いた手紙の、送り主の心模様を写し取ったかのように滲んだインクの青色に思わず目を閉じた雨上がりの夜。
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仮想横浜散歩
今から10年ほど前か、もう少し前のこと。
落ち着いて住める場所が欲しいと思い、家を探していたことがある。
海にほど近く、窓から眺める景色が開けていて、落ち着いた環境の町に。

当時は都心部よりも気持ち横浜に近い場所に住んでいたので、
気晴らしに出かける街と言えば新宿渋谷ではなく横浜だった。
だから、先のような条件に当てはまり、なおかつ馬に縁のある根岸に目が向いたのは、
ごく自然なことであったと思う。

たまたま縁がなくて家を買うには至らず、未だ仮住まいの身ながら、
つい先日、そんな当時の日々が映画のシーンのように思い出したのは、
『横濱ナイト&デー』と題された一冊の写真集の一枚、根岸競馬場の風景に誘われてのこと。


著者、町田昌弘氏は写真家である知人のそのまた知人で、
ひょっとしたらその昔仲間内で開いたグループ展にてすれ違ったりしているかも知れない。

記憶が不確かで定かではないが、
そのときに見た、枯れ行く向日葵が太陽を背負って立つ姿、
そしてその生々しい生から目を背けることのない撮影者の真っ直ぐな視線が、
この作品集の中にも透けて見えるような気がしてどこか胸騒ぎを覚えるけれど、
まさに光と陰、時の移ろいまでもが写しとられて真空パックになったような1枚、1枚に、
旧知の知人に久しく会うときの面映さ、懐かしさを覚えるのはやはり錯覚なのだろうとも思う。

光の描く美しい絵の中に、撮るその人もごく自然にとけ込んで、
写真の持つ刹那の残酷ではなく、静謐ながらもその醸す気配に思わず目を見張るような様に、
おそらく同じものを見ることはできないであろうその場所、場所を訪ねて歩きたいとも思う。




こんな写真集を眺めて過ごす時間のBGMにと選んだのはVangelisの"Opera Sauvage"。
特に2曲目の"Rve"、頭の中で想像して歩く街並の、
ぼんやりとした輪郭を象徴するかのような穏やかな音楽。
こうしていると、目を覚ますのが惜しいほど深い眠りに誘われそうだ。

明日は随分と雨が降るようだ。
散歩のつづきは夢の中ですることにしよう。


◆『横濱ナイト&デー』 町田昌弘著
  出版元の日本カメラのサイトで購入可能です→ 詳細はコチラ!
  
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雷鳴の下で・・・Иракли / Сделай шаг
名人戦第6局の行方が気になって何も手につかないので定時で仕事を終えて部屋に戻る。
空色はどんより重たい鉛色、さあ降るぞ、降るぞと言わんばかりの。

中継を見ていても胃が痛むばかり。
数日前に届いたCDからいかにもロシアンポッポスな男性ボーカルものを1枚、
イラークリの2ndアルバム、"Сделай шаг"(1歩を踏み出せ)をBGMにとりあえずリラックス。



77年モスクワ生まれのイラークリ、デビューシングルがいきなり大ヒットで期待も大きかったのだけど、
意外に地味な活動を積み上げてきた彼。
今回のアルバムにはここ最近のシングルがほぼ入っている感じで、
ストリーミングでも結構耳にしていたからそれほど新鮮さはないけれど、
アイドル系のアルバムとは一線を画しているというか、まとまりの良さに思わずにっこり。

ロシアではパワーポップ系がどちらかと言えば受ける傾向にあるけれど、
彼のように肩の力を抜いてさらっと歌える歌手もなかなか魅力的。
例えば、こんなPVも・・・。



と、ここまで書いているうちに挑戦者投了、とうとう第7局へ。
詰むや、詰まざるや
後から解説つきの棋譜をみながら久々の喜びに浸ろう・・・
雷鳴の響きに耳を澄ませながら。

◆ Иракли Official Site http://www.irakliy.ru/

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雨の日のバイオリン曲
日頃、クラシック音楽はそれほど聴かないのに、去年あたりから廉価盤Box Setを続けて購入。
安いから、というのは音楽を聞く理由にはならないと思うが、
割り返せば1枚200円ほど、などというと、何となく買いやすいし、
買わないと損する!みたいな錯覚まで起こるから不思議なもの(笑)。




雨の日のバイオリン、ではないけれど、
この"Violin Masterworks"と銘打たれたセットは、
クラシック音痴なわたしでも知っている、名だたる名手による演奏がたっぷり収められている。
まだ全曲、全CDを聴き切ってはいないけども、
廉価だからといって音が悪いわけでもないし、
選曲も、初心者にとっても聴きやすい並びになっていて、
昔はヒステリックな感じがして弦楽器がだめだったわたしにとってもありがたい構成。
今夜のように雨降りの夜はやっぱりBachかな、と思い、のんびり小音量で流している。

Box Setはとりあえず買っておいて、すべて聴き終えるのはいつのことか?みたいになりがちだが、
とりたてて毎日ノルマ化して聴くのでもなく、
買っておけば聴きたいときにいつでも聴ける、といった気楽さでもって楽しめばいい感じ。

週明け月曜独特の気怠さに言い訳しつつ、明日もまたすっきり目が覚めるように、
少し贅沢なリラクゼーションタイム。
財布の中身にちょっとばかし余裕のあるときに手を伸ばしたいおすすめの一箱。
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久々にNight Lightsを聴いた
雨が降るよで降らずの蒸せる晩、
部屋に戻って久々に手が伸びたジェリー・マリガンの"Night Lights"。





聞けば、今日、東海から西は入梅とか。
どうりで蒸すはず。
適度に乾燥、爽やかで日の差し具合も心地よい季節は短くて、だから良いのかもしれないが。

マリガンのこのアルバムを初めて聴いたのはいつのことだったか。
当時はまだ自分のレコードを買えないような歳だったので、
おそらくはNHK-FMのJAZZ番組で紹介かなにかされていたのだろうと思う。
聴き古したカセットテープはとうに手元になく、
昔聴いた同じ音、というわけにはいかなくて少し寂しいけど・・・。

おすすめの睡眠導入剤的一枚、オンタイムの緊張がなかなか解れない方にもぜひ。


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ウオッカの安田記念
天候のぱっとしない週末ながら、なんとか持ち直した今日の日曜。
久しぶりの青空のぞく府中の森、春のG1もそろそろおしまい、今週は安田記念だ。

馬場入り直後、観客席にほど近いラインを貫禄たっぷりに歩くウオッカ。
府中の1600mの舞台はウオッカのためのものだ。
 
直線の中程、彼女は出どこを失い、隣の馬は前の馬に触れて大きく躓いた。
あっ、もうだめか、こういうことを万事休すというのだろうと思った瞬間、
一端ブレーキをかけて体制を切り返し、一頭分外のラインを切り裂くようにして脚を伸ばしたのが最後の1ハロン。

観客の悲鳴、どよめき、複雑な気持ちが綯い交ぜになった会場の唸りが彼女に聞こえただろうか、
そんなことはおかまい無しに、最後の最後、わずか数秒間で先頭を行くディープスカイを一気に抜き去った。

競走後、「何もなければ4、5馬身ちぎられたかも」とは2着の鞍上談とか。
やむを得ずゴール前で脚を溜めさせられた彼女の弾け方、
先日のヴィクトリーマイルとはまた違った感動に思わず胸が一杯になる。

もう二度と見ることがないかもと思うほどのすごいレース。
間違いなく、わたし自身が見て来た安田記念の中でもベストレース。
並みいる牡馬達を撫で切りにして、一体これ以上どう走れというのか。
馬券が当たった人も、そうでない人も、きっとどこかハッピーになって家路についたに違いない。
彼女から貰った抱えきれないほどの元気、大事に使って来週からまた働こう。
よもやま | - | - | author : miss key
とうとう大画面テレビを買った
現在のブラウン管テレビとつきあうこと約9年間。
友人たちが液晶テレビに移行していくのをうらやましく思いつつ、
何となく今までの画面の方が見やすくて買い替えができなくていた。

それがとうとう買えた。買ってしまった。





機種はPanasonicのプラズマテレビで37型。
少し前まではプラズマテレビなんて高価で手が出なかったけれど、
今では液晶の少し高級な機種と大して変わらない価格。
おまけに、狙ったわけではないけれど、ボーナス前商戦なのか、値引きが結構あって、
わたしは量販店のポイントで頂いて、そのポイントでもってブルーレイプレーヤーまで購入。

品定めは苦手なので、身近な人といっしょにお店に見に行ったりとか、
人が買ったりするのを参考にしつつ、わたしはほとんど映画を見ることしかしないから、
プラズマがいいかと思いながら、そういう先入観から一歩も抜け出すことはできなかった。

本当言えば、パイオニアのテレビが良かったけれど、高すぎるし重たすぎる(笑)。
それでPanasonicの一番小さなモデルにした。
新聞を等身大に切ったりして大きさを部屋の中で確かめたりしつつ。

もっともこのテレビがいいなと思った、というかとうとう買い物できたのは、
お店で担当してくれたメーカーの販売員の方の影響が大。
疑問には丁寧に答えてくれたし、ネガティブな要素もきちんと説明してくれた。
おまけに、PAL互換のあるブルーレイプレーヤーを、自社製品でもないのに、
あれやこれやと接続しなおしたりして(店頭のディスプレイ!)最後まで面倒みてくれて、
そこまでされたら、同じだったらそういう店員さんから買いたいよね、って思うのが人情。

隣接他店の方が価格が安かったようだけれど、約1時間のお買い物は珍しく大満足。
買い物下手で、結局迷ったり、決められなかったり、疲れてまた次にと見送ったりの繰り返しだったから、
やっぱり上手に背中を押してもらえると有り難かったりする。

早速、普段見ているDVDソフトから試しているけれど、十分すぎる画質でしばらくは寝不足必至。
それに、わたしが買ったLGのプレーヤーはPAL互換ありで、しかもリージョン5も一作業でできる。
然してロシアもののライブ盤や映画も見放題。
パイオニアの機種が大丈夫かなと思ってお店で試した限りは×で途方に暮れたのだけど、
それよりも価格も安いLGのマシンがわたしにとってはコストパフォーマンス大。
しかも動作も速くて、なかなか絵が出てこなくて苛つくこともなし。

こんなことだったらもっと早く買えば良かったかな、とはいつものこと。
しばらくは手持ちのDVDを見直しながら、操作や調整の方法などにも慣れて行こう。
お手伝いいただいた店員さんには海より深く感謝、ほんとうにいい買い物だった。
よもやま | - | - | author : miss key
青空の記憶に
 


連休中、郊外の美術館に出かけた折の写真。
この丸い筒のようなドームを見て、
昔見たプラハのモーツァルトに関連した漆喰壁の建物を思い出した。

旧市街の石畳に足がついていかず、少し歩いてはすぐ休憩。
お茶にケーキを1日何度か繰り返し、一回の旅行で持ち帰った荷物以上に体重が増えていた。
確かその日も素晴らしい快晴で、カレル橋からの眺めは今でも絵に描けるほど生々しい。

サイフェルトの翻訳詩はどこか物悲しく曇り空が似合いそうであったけれど、
お金のない時期に無理して出かけたからなおさらなのか、
その清々しさと光の具合が忘れられない。
記憶の引き出しから何度も取り出しては眺める特別の風景だ。
よもやま | - | - | author : miss key