音の快楽的日常

音、音楽と徒然の日々
思い出に区切りがまた一つ
川村カオリさんが亡くなったのをニュースで知った。
就職して2年目、公私ともにトラブル続きのわたしに、
元気が出るようにと先輩が贈ってくれたテープが、
彼女のアルバム"church"だった。

「歌詞がはっきり聞こえる歌が好きだ」
そんなことを話していたのを覚えてくれていたのか、
或はわたしがロシアに興味があるから、
モスクワ生まれの彼女のことを教えてあげようとテープを作ってくれたのか、
その辺は今となってはよく判らない。

つい最近、CCレモンでコンサートがあったような気がしていたけれど、
気のせいだろうか。
彼女の歌は、そのアルバム以来何も聴いてはいないけど、
名前を見たり聞いたりする度にあの贈り物のことを思い出しては嬉しくなった。
そんな意味で、彼女の歌がわたしの元気の素であったことには間違いない。

手元のテープはプレーヤーが壊れてしまって聞けないけどー
今日の訃報、わたしの胸の中で何か一区切りついたような気がした。
雨が降るような、降らないような、蒸せた1日の終わりの出来事。


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ファイナル!ー 原信夫とシャープス&フラッツ
暑さもここに極まれリ!と思われた週末の午後、
代々木体育館の脇を木陰づたいに出かけたNHKホール。
原信夫とシャープス&フラッツのファイナルツアー、いよいよ千秋楽1日前の公演。

シャープの演奏というと、NHKや昔は普通の民放でもあった歌番組でおなじみの歌伴。
なので、彼らの名前を知らなくても、実際に耳にしたことのある方はとても多いはず。

開場後、すぐに並んでわかったのが、お客さんの年齢層の高さ。
自分がひょっとして最年少!?みたいに思えてしまうほど。
それはそのはず、原信夫さんは大正生まれ、軍の楽団に所属していてその後ジャズのバンドを編成。
司会の方がその長い歴史をうまくまとめていらっしゃったが、
私が初めて聴いたのだって幾つくらいの時だったか、もう随分前のことだ(笑)。

ジャズのビッグバンドが好きであれこれ聴いてきたわたしも、
基本的には国内の楽団というとそれほど熱心には聴いていなくて、
うまく比較の対象も思い浮かばないけれど、
海外の有名どころの良さを上手く消化しながら、
日本の音楽らしさを意識的に打ち出しているのが他所にはない魅力ではないか。


その昔、わたしがそれなりの広さのホールでオルガンを演奏することになり、
その時の恩師の選曲が何と『シャイニー・ストッキングス』だった。
当然ながら、この曲の持つ流麗で子供にはこなしがたい艶のようなものがだせなければかなり厳しいのだけれど、
それを言葉で判らせるのは無理と思ったのか、シャープの演奏が録音されたテープを渡されて、
それをひたすら聴いて真似しなさい、というのが彼の指示だった。

シャープの演奏に感じられた、バタ臭くなく、抑制が効いてどこか爽やかさもある艶やかさは、
当時12歳の子供が聴いてもそれはもう十分に魅惑的で、
それこそ踊り子たちが自慢の御脚を披露するシーンなど思い浮かべさせもしたが、
或はまた、その少し「残している」ところが
12歳のわたしにもなんとか弾きこなせそうな気持ちにさせてくれたのだった。

ところでライブ当日、尺八の山本邦山をはじめ、
シャープの演奏をバックに雪村いずみ、綾戸智絵など新旧の歌姫がゲストで次々登場。
番組収録もあってか、前半は多少固さも感じたけれど、
後半、歌伴が始まってからはエンジン全開、心地よいグルーヴに身を任せて思いでの曲を聴きついだ。




上のジャケットは今回のツアーで、昨年中に収録された演奏から編集されたCD。
SACDハイブリッド盤で、おそらくシャープのCDでは初めてではないだろうか。
今回の機会を捉えて、旧作もかなりの枚数、復刻発売されている。
ビッグバンドの音源は意外に手に入り難いものが少なくないし、
シャープス&フラッツのアルバムはCD化されていないものも結構あるように思う。

ビッグバンドがそれほど得意でなくてもワールド系が好きな方なら、
彼らのニューポート・ジャズフェスティバルに参加した時の録音をぜひ聴いてみて欲しい。
全曲、日本の曲でチャレンジ、大成功を収めた際の貴重な音源でもある。
アレンジの妙、侘び寂びとゴージャスな金管演奏の融合が癖になってしまうかも(笑)。

世界でも類を見ないと言われるほど、一人のリーダーのもと長きに渡り活動してきたシャープス&フラッツ。
生演奏を聴く機会が失われたとしても、
その残された素晴らしい音源で名演の数々を楽しめることを幸せと思おう。
最後のツアー、聞き逃した方は上のCDをぜひ。

◆ LAST FOREVER Tokyo Bunka Kaikan 11.02.2008 /原信夫とシャープス&フラッツ
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メダカの不思議

 一週間ほど前であったか、日本のメダカがヒトやチンパンジーよりも古く、

1800万年も前から南北別系統に枝分かれしたらしい、という記事を読んだ。
北日本と南日本で棲んでいるメダカの系統が違うというのも初めて知ったが、
この春先からヒメダカを飼い始めたわたしはついメダカというと気になって、
ヒトよりも古く、というところに強調のある記事に何となく違和感を感じながらも、
メダカの不思議に何となく一人相づちを打った。
確かに、孵化したばかりの「我が子」をパクリと一飲みにしてしまう親メダカを目の当たりにし、
メダカの野生に息を呑む場面もあったりと、
メダカのいる暮らしはそれほど暢気なものではないものの、
日々朝目覚めて、というより給餌の時間を知らせる水面のざわつきにたたき起こされ、
餌やりだの水換えだの体調チェックだのと朝の1時間があっという間に過ぎて、
自分の朝食はおざなりに(笑)という、あまり笑えない生活を何ヶ月かやってみたところ、
ひ弱で何話すわけでもないメダカのいる暮らしはやはり面白いのだった。
というより相手も生き物なので、途中で「降りる」訳にもいかず、
かなりの数になった稚魚に閉口しつつ、或は時々死骸を見つけては凹んだりしつつ、
メダカもこうしてまた元気にやっているのだからと、毎日仕事に出かけている。
今日はノー残業デー。
仕事は残っていたが、こうも湿度の高い日は水も痛みやすいかもと思い、
買物もそこそこにして部屋に帰り戻った。
餌の食べ残しやいたずらされた金魚藻の残骸を掃除して、
少し涼しくなったかな、と流したのがRickie Lee Jonesの"Pop Pop"。
このアルバム、どの曲もスローでのんびりした曲ばかり。
シンプルなギターの伴奏にほどよく抑制の利いた歌唱。
お日様の香りがする布団で眠るような心地よさが、
今日のようなじめじめをすっかり忘れさせてくれる。
ところで、メダカ。
犬や猫のように寿命の長い生き物ではないので、
それがはかなく、またその場面場面で辛い思いをするけれど、
小さいもののために来る日も来る日も世話をする愉しみというのがこれほどとは。
自分の都合で羽のないテントウ虫を作りだしてしまったり、
身勝手と傲慢ではこの地上、右に出るもののないヒトの愚かさを、
彼らは水槽の向こうから眺めているかも知れない。
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梅雨が明けて
もうしばらく雨が続くのかと思っていた矢先に梅雨明け宣言。
今年は梅雨が明けた途端、いやその直前から夏らしい暑さが続き、
夏が始まったばかりの時点で既に夏バテ状態(苦笑)。
せめて部屋では涼しい音楽を、と選曲も涼しい系統ばかり。


ノイマン&チェコフィルの組み合わせは最も好きなものの1つで、
彼らの演奏なら大作も楽しく聴けてしまう。
チェコフィルだから、というのはもちろんあるのだろうけれど、
中でもドヴォルザークの曲は、いかにもチェコを感じさせてくれる。
特にこのスラブ舞曲集。
メロディの美しさで言えば
第二集の作品72 No.2 in E minor(mazurka)がこれ以上ないといっても過言ではない。

主旋律をシンプルに展開させた構成に、目を閉じて思い浮かべるはどんな踊り子か。
古都の佇まいに胸ふるわせるカレル橋からの眺めを遠景にして、
色彩感たっぷりに演出された舞台さながらの演奏に、
10数年の歳月がまるで一瞬のようにして旅先のあの日に連れ戻される贅沢。
或は羚羊のような手足に恵まれたならばこんな曲に我が身を乗せて踊ってみたいと想うような演奏。

想えばノイマンの指揮でライブ演奏を一度も聴くことができなかったのが今となっては返す返すも残念。
残された音源の素晴らしさに感謝する夏の夜。
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『やがて復讐という名の雨』
学生時代から就職直後にかけて、月に10本以上も映画を見ていた時期がある。
もちろん、貧乏なので(笑)、見るといってもテレビの深夜映画を録画したり、
人からテープを借りたりして。

音楽を聴く環境が整うにつれて、時間の使い方も少しずつ変わって来て、
ここ7、8年は話題作の半分も見ることもなく、
そこまで忙しい訳でもないのに、またDVDでレンタルすればいいやと映画館からも足が遠のいていた。

それが、先月テレビを新しくしてからというもの、手持ちのDVDはもちろんのこと、
レンタルショップでブルーレイも置き始めたのをきっかけに、
時間があれば映画を見て過ごすようになった。
かといって、わざわざ下調べも面倒なので、レンタルショップの店頭であれこれ適当に選んでいるだけ。





話の筋を理屈で追うよりも、感覚的に愉しんでしまっていいのか、という疑問はさておき、
ダニエル・オートゥイユ演じる刑事が、堕落の先にようやく見つけた救いのようなものに素直に共感できるのは、
こうした犯罪ノワール系の作品に横たわる侘しさや厭世感に惹かれるからだろうか。





実体験や実話に基づいて描かれた作品というと、少し前になるが『ゾディアック』も印象的な1本。
ブルーレイで出たのを機会に観てみたら、闇の深さに引きずり込まれそうな、残像感たっぷりの映像に思わず緊張。
DVDとブルーレイ、規格の違いでそう変わらないと感じる部分もあるけれど、
本作については、個人的には全く別の作品に感じるほど、画質UPの威力にひれ伏した。

ちなみにサントラ盤については、復讐の〜の方はどうやら出ていない模様。
ゾディアックの方は、オリジナルスコアとコンピの両方が出ている。
あまりおどろおどろしい音楽もどうか、しかも大抵は夜に聴くのに、と思いつつ、
やはりオリジナルスコアの方を選んでしまう。

いずれにしても、夏の寝苦しい夜、映画三昧の日々は当分続きそう。
寝不足は辛いのだけれども、とにかく新しいテレビとプレーヤー様々である。

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日本語字幕がなくても
いつもより減額された賞与でも、もらえるとやっぱり嬉しいもので、
あまり余裕もないのに、あれこれ買い物のイメージを膨らませるのは退屈じゃない。

この夏、購入したのは、なんと炊飯器。
もう10年ほど使い込んでいたIH炊飯器、裏蓋の部品が破損して修理不能となり、
この度無事のお役御免となったので買い替えた。
ご飯が待ち遠しいとはまでは言わないが、なかなか美味しく炊けるので◎。

それから、先日ブルーレイプレーヤーを買ったので、
amazon.comで安さに負けて購入した何枚かを早速観てみたら、
やっぱりというかその美しさに単純に感動。
少し古い作品だけど、ディズニーのバグズライフ。
話の筋はすっかり頭に入っているので、日本語字幕がなくても大丈夫(笑)。

それにしてもアニメーションがここまでリアル(意味がおかしい?)だと「美しい」を通り越してしまう。
今度はモンスターズインクを借りて見てみよう。

ちなみにアメリカ版のブルーレイ、データダウンロードのおまけ付きながら、
DVDでいうリージョン1エリアオンリーなので、日本からはダウンロード不可(残念)。
国内盤が待てないで海外から購入を検討されている方、この点ご注意を!


 


そして、バタバタと春先から忙しくしていてついに映画館に行くことができなかった"Gran Trino"。
これだけは大画面で見よう!と思っていたのに残念に思っていたが、
バグズ同様にアメリカから買ったブルーレイのディスクで見る本作品は、
シーン毎に考え込んでしまうような印象深さと映像の美しさにため息。




話の結末、これは先日、ピーター・バラカンさんがラジオで涙必至!と評していた通り。
これもおかしな言い方かもしれないが、いい感じでほんと、泣けます。
心の渇きを感じている方にはぜひお勧めしたい1本。

ちなみに、ジェイミー・カラムの挿入歌は一番最後に流れるが、
そのシーンが何とも爽やかで、また泣けてくる。

英語が苦手なわたしが言っても説得力に欠けるが、
ブルーレイディスクは海外から買ったほうが安いし、英語字幕で案外なんとかなる。
そんなことばかり言ってないで英語も勉強しようかな、と少々反省の蒸し暑い週末。

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Утомлённое солнце(太陽に灼かれて)
久しぶりに見た『太陽に灼かれて』、ニキータ・ミハルコフの作品。
他の作品は結構DVD化されているのに、この作品は日本では未DVD化。
レンタル落ちのビデオも相当痛んで見ることができなくなってしまったので、
とりあえず中古で探したヨーロッパ盤のDVDで見てみたら、
冒頭に流れるタンゴの調べ、"Утомлённое солнце"がなかなか切なくて、
自然と映画の中に引き込まれてしまう。


 


元々はロシアの曲ではなかったのかもしれないが、
歌の文句はとても美しいのでつい口ずさみたくなる。
というか、知らなくても映画を見ている間に覚えてしまうのだ。

監督の実の娘(作品中でも娘役)が何かを辿るようにして歌う"Утомлённое солнце"。
ロシア語の響きがタンゴのリズムに良く合うのは静かながらも情熱的な響きを持つからだろうか。


"Утомлённое солнце"という曲、調べてみると、随分興味深い背景を持っているよう。
ちなみにロシア語の歌詞も含め、ロシア語版ウィキペディアに出ているのでリンクを下に。

→ http://ru.wikipedia.org/wiki/Утомлённое_солнце

ヨシフ・カプゾンの歌で映像があればと思い探したが、なかなか見つからない。
せめて歌詞とメロディを(上のリンク先、下方にもリンクがありますが)。

→ http://a-pesni.golosa.info/romans/utomlsolnce.htm

そして、更に上のリンク先で紹介されているのがポーランド語版。
これもとても素晴らしいので、改めてリンクを。
梅雨の夜、物思いに耽りつつ典雅かつ憂いに満ちたFoggの歌をぜひ。


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