音の快楽的日常

音、音楽と徒然の日々
働きアリだけでは・・・
年に1度か2度、アリの話題が記事になる。
よほど気にしていなければ読み過ごしてしまうような小さな記事であったりするけれど、
通勤途中の足下の、アリの行進が気になるような人間には「おっ!」という感じだ。

今日も、そんな一幕に心救われた。
なんでも、働かないアリがいる方が、集団全体で「誰も働かなくなる時間」が減るのだそう。
もちろん、働きアリだって休息するが、皆が皆働き詰めでは集団が破滅に向かうという。

組織存続のためにわざわざそういう仕組みがあるのだとすれば、
なんだかすごい、と理由もわからずに思ってしまうが、
自分の職場に置き換えてみれば、サボっている人間を肯定するようですっきりしない(笑)。
アリなら許せて人間なら許せないのだろうか・・・。
性格悪いね、自分。




ちょうど繁忙期のまっただ中、猫の手も借りたいとはこのことをいうのだろうというほど。
メンバー全員が働き詰めなので1人、2人と体調不良でダウンするようになった。
やるべきことはやらなければならないが、根を詰めても仕方ないので、早めに切上げた。

耳にもハートにも優しいラッセル・マローンのアルバム、「ハートストリングス」。
彼の新譜は最近見かけないが、本作は2001年の作品。
ピアノにケニー・バロン、ベースはクリスチャン・マクブライトとサイドメンも豪華。

彼の演奏は弱い者にそっと手を差し伸べるような温かさに満ち満ちている。
一時流行ったような、究極のテクニックを見せつけるような演奏とは対極にあるが、
逆にこんなギターを聴きたくても、なかなか他に見つけるのは苦労しそうだ。

ところで、働きアリの研究。
1匹、1匹に印をつけて、幼虫の世話や巣の修復など、働きぶりを各々に観察しての集大成という。

つい先日、海を隔てた埋め立て地に出かけたが、そこでもせっせと餌を運ぶアリの列を見た。
一体どこからどうしてやってきたのやら、小さな体に感じる生命の輝き!

事務所仕事でへたっていてはいけないなと反省しきり、
今日もまたアリの話題に癒された1日だった。 
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The Pursuit - Jamie Cullum


少し前に「もうすぐ出るよ〜」と書いたジェイミー・カラムのアルバム"The Pursuit"。
彼のCD、お決まりのように通常盤と豪華限定版の2種類以上がリリースされるが、
今回の限定盤は、内容もタップリのライブ映像とアルバム解説が収められたDVDがつき、
本のようなしっかりとした装丁(外箱もついてます)のかなりの豪華版。

映画「グラン・トリノ」の挿入歌が入っているよというふれこみだったので随分楽しみにしていたのだが、
残念ながら、グラン・トリノは限定盤のみで、通常盤には入っていない。
なので、わたしのようにグラン・トリノを聴きたい方には高い方しか選択肢がないが、
特別な彼のファンでなくても、映像集があまりに素晴らしいので、
倍のお金を出して購入する価値はあると思う。

限定盤のブックレットには、ジャケ絵のピアノ粉砕!の写真が極めてアーティスティックに添えられ、
まるで彼の意図するところの"pursuit"への道しるべのよう。
さらには、今回、カウント・ベイシー楽団との競演を実現しているが、
ビッグバンドがお好きな方なら1曲目から仰け反ってしまうだろう。
わたしも、思わず「おー」と声が出てしまった(笑)。

スウィンギーで、ポップで、そしてファンキーなジェイミーの音楽、
決まりきったしきりを軽々と自由自在に越境する。
「追求」というタイトルが意味するものは、きっと人それぞれに違いない。
今年の男性ボーカルものでは一押し、心の底から元気の出る1枚です。
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If on a winter's night...
心の隙を狙ったようにぐっと冷え込む夜。
子供の頃のように、霜の降りるような寒さを感じることはあまりないけれど、
人工の温かさに飼いならされた体はそう言うことを聞いてはくれない(笑)。

足下からしんしんと冷え込む夜には、
例えばNorah Jonesのような、聴くだけであったかくなる歌も良いけれど、
逆に、しーんと空気の音が凍みそうな音楽もいい。




Stingの最新盤、"If on a winter's night..."。
少し前にリリースされたリュートの伴奏で歌うStingのクラシックアルバムがあったが、
今回のはそれの続編だ。

英国のトラディショナルな音楽をベースにした音作りだけれど、
彼の声がこれほどまでにマッチするなんて、とはリュートの作品の時にも感じたこと。
わたしは彼のこれまでの作品、特にヒットした"Englishman in New York"などの歌が大好きだけど、
Stingの根っこをどちらにより強く感じるか、と言えば、本作を選ぶ。

確かに古楽やトラディショナルが好きな人向けではあるし、
気分が鬱なときに聴いてどうか、という点もあるけれど・・・。
冬という季節の寒さだけではなくて、ひっそりとした空気の凛とした様子など、
やはり冬でなければ味わえない素晴らしさがあるというもの。

このアルバムは、四季の移ろいを楽しむどころか、冬が寒くて嫌いだというわたしにも、
そういう空気の存在を教えてくれる。
夜、一人の部屋でしみじみ聴きたい1枚だ。
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Der Katalog
はるばるドイツからやっと届いたクラフトワークのBox Set。
中身は全部知ってるアルバムばかりだけれど、
リマスター、新装ジャケット、豪華ブックレットという付録がついて、
更には元々のオリジナルであるドイツ語バージョン。
リマスターが何よ、というなかれ。
思っていたよりも丁寧な作りで、待ったかいがあるというもの。






ブックレットというかLPサイズのアートワーク集は、アルバム毎に1冊ずつ編まれていて、
言葉での解説はほとんどなし、なのでドイツ語分からなくても全然関係なし。
わたしもドイツ語は不勉強の至りで辞書片手に少し分かる程度。
ブックレットの中身を心配して同じだったら英語版?と迷っていたのだけれど(笑)。

肝心の音の方。
自然なリマスター、といっても言葉では伝わり難いが、
全体に情報量が増して、とても聴きやすく楽しい仕上がり。
ただ雑誌でも紹介されているが、アルバム毎にリマスターの分かりやすさは少しずつ違うように思う。

「アウトバーン」や「ザ・ミックス」は音が出た瞬間にああ違う!と分かるけれど、
「ヨーロッパ特急」や「放射能」は全体にリマスターの効果を感じる程度。
でも細かく聞き比べてみると、音質アップの恩恵が至るところにあるのが分かる。

電子楽器での演奏ものについて音質を追求しても・・・、とは周囲から時折言われること。
以前はわたし自身もそう思っていて、
YMOなどは手持ちのレコードでいいもんね、とCDには手を出さずにいた。
それがYMOのベスト盤2枚組がリマスターCDとSACDで出た時に他所で聴かせていただいて、
それこそ目から鱗というやつで、すっかり改心。
確かにアナログレコードの底力も凄いと思うけれど、CDも内容によっては凄く良いし、
食わず嫌いせず、聴いてみないとわからないと思った。

今時はCDどころかダウンロードしたデータで音楽を楽しむ時代。
でも、実際にモノを手に取ってみたり触ったりする楽しみ自体は時が移ろいでも変わらないことのような気がする。
わたしのような人間のために、この手のパッケージメディアの供給が続くことを祈ってやまない。
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冬らしい、乾いた1日の終わりに
夕刻から仕事の用向きで外出。
乾いた風の吹きすぎる通りでは、コートを着込んだ人も違和感がなく、
さあ、いよいよ冬だと思いながら足早に目的地に向かった。

日の落ちるのが早くなると、気持ちももり下がる。
明るい時間に目一杯活動する農家育ちだからなんだろうか、
自分でも嫌になるほどそういうところがはっきりしている(苦笑)。




部屋に戻ってからの1枚目は、Ian Shawの最新作、"somewhere towards love"。
オリジナル曲あり、カバーあり、スタンダードナンバーありの珠玉の12曲。
Linn Recordsからレーベルを移っての第一作、
感触的にはLinnでの作品の流れをそのまま引き継いだ形での、 
シンプルで生成りの肌触りがなんとも心地よいピアノの弾き語りだ。

なかでも7曲目から8曲目、
"You must believe in spring"と"Here's to life"の2曲は彼にぴったりの選曲、
ハスキーでどこか荒涼として乾いた空気の漂う歌唱、
なのに、人肌寂しさを埋め合わせるような温かみもあって、荷物を置いたまま聞き入ってしまう。
少し音量を小さめにして聴いていると、まるで隣に座って歌ってくれているような錯覚を起こす。
夜、体が冷えてなかなか眠れない、そんな貴女にもぜひお勧めしたい1枚だ。
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中世の旅と溜息と
先日の『天使と悪魔』以来、ずっとずっと心は中世に旅したまま。
テンプル騎士団に関する本を何冊か書店で拾い、思いつくままに読み漁っては、
昔読んだ阿部謹也さんの本に想像した中世の世界と繋ぎあわせていく。 

1、2時間して一旦「元の時間」に戻って来た自分がいる。
仕事やその他のことにもこれだけ集中できればいいのにと思うほど、
溜息が出るともなく目眩を覚える。

最初はそのまま寝床に潜り込み、睡魔に任せるままであったが、
あまりにも夢見が激しくて朝起きてどっと疲れていたりするので(笑)、
クールダウンではないが、レコードの片面ほどでも流して少しぼんやりするようにしている。


そんな時の1枚がビーチ・ボーイズの"Surf's Up"。




手元にあるレコードから好きなのを10枚選べ、と言われたら、
このアルバムはどうしたってその中に入れざるを得ないだろう。
ビーチ・ボーイズというと、当初は「サーフィンUSA」しか知らないでいたのが、
細野晴臣さんのお勧め盤ということで気軽に手を伸ばしてみたのが最初。
でもその最初に聴いたときの、思っていた音楽とは全然違ったという驚きからなのか、
随分体に力を入れ、じっと固まって聴いたのを覚えている。

メロディがいいとか、歌詞がいいとか、アレンジがいいんだとか。
そういう風ではなくて、このアルバムがなぜ手放せなくなったのかうまくは書けない。

否、とても好きだ、理屈じゃないんだ、それだけといえばそうだけれど、
ちょっと聴きで気持ちがアップしたり、特定の曲をリピートして落ち込むだけ落ち込んでみたり、
或は目の焦点をどこにも合わさずにひたすらぼんやりして体中の緊張を抜いてしまったり。
更には疲れ過ぎたり興奮したりで眠れない夜の特効薬に、これほどいいレコードはない。

で、「中世帰り」で体が妙に強ばるのをゆるゆると解し、深い眠りに誘ってくれる。
寝床の中だとアームを上げられずにそのまま・・・になってしまうから(笑)、
ソファにかけてぼんやりしたまま足下の感覚が戻るまでの30分ほどならレコードで聴きたい。
今夜もまた"Disney Girls"が聴きたい。



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byrds tree
先日の国境の南に行く途中、例によって中古レコード店を梯子した。
1つめのお店では、手頃なレコードを3枚、2つめではもう見つからないかと思っていた盤を購入。
その最初の3枚のうちの1枚(2枚組)がbyrdsのベストアルバム。


 


程度は上々なのに980円という買いやすさ。
否、探せばもっと安いのがあるかもしれないけど、内容と状態からしてこの値段で十分。
byrdsはCDのボックスセットを持っているけど、
よく聴いている曲をまとめてちょっと聴きたいときにちょうどいい選曲のレコードが欲しかった。

盤も確認せずに買ってきたが、ゲートホールドのジャケットの内側には、
なんとbyrdsの系譜が綿々と描かれていた。




日頃、詳細なメンバー構成などに頓着せず聴いていたりするので、
改めて眺めてみると、何だかすごい。
これだけメンバーの入り繰りがあるのに、でもどこを切ってもbyrdsの音楽。

別のロックバンドで、やはりメンバーの入れ替わりが激しいものがあって、
わたしが気に入っているのは特定のメンバーが在籍する数年の作品だとわかったのは一通り聴いてみてからのことだった。

そういうプロフィールもちゃんと調べてみれば、自分の気に入るアルバム探しに役立つんだ、
そう思いつつも、こまめにチェックし、整理する根気がないものだから、
ジャケットの内側に描かれたこのツリーにしげしげと見入ってしまった。
だからどうっていうことはないんだけど、このレコード買って何だか得した気分。
こういうことがあるから、やっぱりレコードって楽しい。
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『世界のガール・グループ』
この週末、久々にレコードコンサートに出かけた。
テーマが『世界のガール・グループ』ということで、
わたしが日頃聴いているものというと、ウクライナのヴィア・グラとかになってしまう(笑)。
だけど、音楽で世界を旅するこのレコードコンサート、
旧くは30年代から最新盤の喉歌系まで目が回るようなプレイリストで大いに楽しんだ。




アメリカはニューオーリンズを起点としたJazz系のコーラスグループ、
クリスマスが近づくと嫌でも聞こえてきそうな"the Ronettes"などフィル・スペクターものから、
Zap Mama、クアルテート・エン・シー、そして日本からはザ・ピーナッツにゴールデンハーフ。

それぞれの音楽の背景やエピソード、世事を折り込みながらのひとときは、
濃厚な中にも、思わずにやりとしてしまうこぼれ話に気持ちもほぐれ、気がつけばお開きの時間。

今回、個人的にものすごく気になったのが、ブルガリアン・ヴォイスの1曲。
選者の北中さん、わざと不協和音的なものを選んだとのお話だったが、
宇宙の響きとはよく言ったもので、これを何と表現すればよいのか。
早速ディスクをオーダーしたので、全曲聴いて改めて紹介したい。

それから、全然地域は違うけど、ブラジルのグループ、クアルテート・エン・シーにはすっかりやられてしまった。
セクシーだけどパワフル、もちろんハーモニーの美しさも。
彼女たちのアルバムは最近、CD化されていくつか復刻されているのもある様子。
感じからしてレコードでぜひ聴きたいけれど、それも45回転で・・・。
それはちょっとハードルが高いかもしれないから、とりあえずCDでいいかな(笑)。

さて、ゴールデンハーフ。
参加者のお話では、ドリフの番組にも出演していたのだとか。
彼女たちというと『黄色いさくらんぼ』を思い浮かべるが、オリジナルはスリーキャッツ。
プレイリストでは、『チョットマッテクダサイ』が流れたが、
多分懐かしさでいうとさくらんぼではないだろうか。






こうした歌謡曲はLPじゃなくて45回転盤がいいよね、とは田中さん談。
わたしも昔、ヒット曲のドーナツ盤を買って好きなだけ聴くのが楽しみだったので、
それはもう、実感をもって理解できる(笑)。
ネットオークションでも手軽に手に入れることができるし、ドーナツ盤の世界も面白そうだけど、
45の世界は、それはこれ、深い沼が控えてますよと隣人の助言に素直にうなづく(笑)。

こうなると、次回のお題が今から楽しみだったりするけれど、年内にもう一度あるかどうか。
テーマに興味があるかどうかはひとまず置いといて、とりあえず参加するのが吉。
国境の南のマスターが入れてくれた美味しい生ビールで喉を潤しつつ、
都会の喧噪を忘れて音楽にどっぷり浸れる3時間。
今回逃した方はぜひ。

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crazy love
「天使と悪魔」の影響か、中世ものに凝り出してしまった。
読むのになかなか骨の折れるウンベルト・エーコを読み返し始めたり、
忙しいというのにこういう時に限って、しんどいことに時間を費やしてしまう。

先日の映画を観た後で、
映画作品としてはそれに先立って公開された「ダヴィンチ・コード」をブルーレイで改めて観たが、
映画の筋とは関係ないところで、登場人物の衣装の美しさ、
特にテンプル騎士団の衣装は何とも印象的で、紅い十字に溜息。

謎の森にあって伝説という名の霧に包まれた団の歴史。
タイムマシンがあれば、十字軍の時代に行って自分の目で確かめてみたい、
そういえばこんなことを何かの文集に書いたことがある。
もう30年ほども前のことだから、当時はどんな思いで書いたのか少しも覚えていないけれど。





"crazy"という言葉。
字面通りに受け取った時の浅薄さ、或は閾を超えてしまったその世界の怪しさ。
マイケル・ブーブレの歌う愛の世界は、その濃厚な歌声に反して爽やかだ。

彼のアルバム、いつも1曲目にインパクトのある曲を持ってくるけれど、
今回の"cry me a river"は、歌伴のアレンジが今ひとつとってつけたように大げさ。
ある種のしつこさを打ち消さんということなのだろうか、
でも通して聴いてみると、ラウンジ、と一蹴できない何かが残る。

与えるだけが能じゃないけど、奪うだけというのも芸がない。
今時の事件にまつわる、愛への行き過ぎた幻想、かりそめの姿よ。
パワーポップ系ながら、夜ひとりの時間に小音量でゆったり聴きたい1枚だ。
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斜光

今日の東京は今年初の木枯らしが吹いた。

朝からいい陽が差して、でも窓から離れたところまでぐっと差し込んでいるのが、
いよいよ冬だと思わせる朝だった。
本格的に日が短くなると、なんだか損をしたような気がしてしまうのはわたしだけだろうか。
我が家にこの春先から暮らしているメダカたちも、
一夏越えて、最初の5匹から50匹を超える大家族になった。
親の世代は食欲も落ちて、動きも落ち着いたものだが、
子供の世代はこれから冬だと備えてでもいるのか、食欲がますます旺盛だ。
メダカは長日性といって明るいのを好む魚だという。
道理で、朝から天気の良い日は踊るようにして元気よく泳いでいる。
給餌の時は心から和むひとときだが、
こうして食事に群がる様子もあとひと月ほどか。
ヒーターは寿命を縮めるとのことなので、部屋の常温で冬を越してみようと思っている。
エアコンをやたら入れると温度差が激しくなるので、
人間もなるべくヒーター無しの部屋になる。 
外に出かけることもなく、訪ねてくる人もなく、ひっそりとした部屋ですごした一日。
いよいよ冬だ。
支度しなくてはと気忙しく思う割には腰があがらずとは毎度のこと。
週末には音の棚も少し入れ替えてみることにしよう。
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