音の快楽的日常

音、音楽と徒然の日々
黒電話
家の電話機、どうも調子がおかしいのか、液晶表示の文字化けが酷い。
電源を入れ直せば直るけど、IPに対応できていないとかそういうレベルではなさそう。
もっとも10年以上も使っているから、いつ故障してもおかしくない。

そんなことを思いながら、ふと田舎の黒電話を思い出した。
少なくとも両親が文字盤の大きな今の電話機に買い替えるまでは現役で、
しかも買い取りではなかったものだから、NTTに回収されて今はない。

そうか、黒電話か、あれは良かった、壊れないし、何しろダイヤルだし。
ボタンを押す方式のものは味気ない。
電気が付いて暗がりでも便利だけど、わたしはそんな夜中に電話しないし。

そうと思えば吉日、早速黒電話を探してみた。
古道具店に並んでいる電話機はどれも奇麗に整備してあって、
特に今のIPにも対応するよう改造してある4号機などは、ウインドーから眺めること数分。
でも4万円某というのはわたしには高すぎた。

で、実用的な600型、601型に狙いを定めて(笑)、
ヤフーオークションでたった800円の600-A2型の黒電話を落札した。
驚いたことに、オークションでは同様の電話がどっさり出品されている。
わたしが落札したものは安い代わりに、動作未確認、清掃一切せずの現状渡し。
でも、壊れていても中を開けたりして楽しめるので損はない、そんな感じだった。

ただ実際届いてみると、その汚れ方はハンパじゃなかった。
どんな使い方すればこんなに汚れるのか、しかも普段手で触れる道具なのに・・・。
クレンザーで磨きたいが、キズだらけになってしまうので止めて、
洗剤を使いながら丁寧に清掃した。
シールの跡も酷くて、おそらく店とか事務所とかそういう場所で使われていたのだろう。
今時はシールはがしもいろいろ売っていて、便利なリキッドタイプを1本調達し、清掃。
苦労のかいあって、見違えるほど美しくなった。


早速、モデムにつないで試してみたら、何の問題もなく受発信できた。
めでたし、めでたし。
しかも受話の際、音声も聞き取りやすくて耳のあまり良くないわたしには大助かり。
ラジオも昔の機種の方が聞き取りやすいわたしの耳なので、
まあ、古いものの方が合うのだろう。

1つだけ問題が。
着信音の「リーン!」という音量調節ができず、不在時はざぶとんでも被せておくしかないこと(笑)。
何しろ古いマンションの壁なんて、この手の音は良く響くだろうから、近所迷惑にならないようにしないと。
でも、ベル音の良い音といったら、ない。
何でも真鍮製だとかで、この機種の後、601型では音量が調節できる反面、ベル音も質感が違うのだとか。

なんだかんだで、当面はこの黒電話で十分間に合いそう。
留守電もついていなくてある種、電話くださった方にはケンモホロロ状態だけど、
知人関係はメアドを知っているので特に支障もないだろう。
かくして雨の週末は、電話の掃除で終わったのだった。
よもやま | - | - | author : miss key
どっちつかずの気分のときには
定時かっきりに事務所を出て帰り戻った寒い部屋。
ここのところ長距離を行ったり来たりですっかり気が滅入っているが、
だからといって何をしたいというわけでもなく、
自分でも困るほどどっちつかずの気分に苛まれる。

そんなときは、邪魔にもならず、主張もせず、
かといって美しさや流麗なメロディに癒される瞬間も欲しい、
そんな身勝手な条件にあったBGMが恋しくなる。




もう3年ほど前にリリースされた福田進一のアルバム、『哀愁のショーロ』。
ラテンアメリカの作品を編んだ珠玉の1枚。
彼の演奏では、いつか武満徹作品も聴いてみたいと思いつつ、
現代音楽系のメロディは、それこそとりとめもない不安に襲われることもあって、
福田進一のギターなら、やはり今日のような沁みるメロディがいい。

部屋でぼんやりするとりとめのない時間も、
こんな曲が静かに流れているとなんだかとても贅沢に感じられる。
部屋でお酒を飲むことも止め、思いつくままに古い本をぱらぱらと眺めてみたり。

春はまだかなあ、もうすぐかなあ。
共に暮らすメダカ達ともども、暖かな日差しを請う日々。
world music | - | - | author : miss key
自然体、これがなかなか難しい
ここのところ、バンクーバーオリンピックの競技結果に一喜一憂の日々。
同僚にワンセグ携帯の映像を見せてもらったり、
休憩時間のネットでニュースをチェックしたり。

特に男子フィギュアの行方は何より気になって仕方がなかったが、
日本の選手が初メダルの喜びも、ロシアンフリークのわたしとしては、
プルシェンコ選手のどこか固さの抜けない演技もさることながら、
競技を終えた後の会見の内容にはさすがにがっかりしてしまった。

フィギュアはダンスじゃなくてスケート、そういう趣旨のことだったのかもしれないが、
層の厚い米国、日本に比べ、かつてのスケート大国の影もひっそりと、
いかにも古豪というような言葉が似合いそうな気配さえするロシアの代表として、
有力な後輩が追いかけて来ない現実への焦りのようなものがあったのではと思われた。

ロシア社会の変化はひいてはスポーツの世界にも影響を与えてしまっている、
そういうことなんだろうと自分なりに咀嚼してみても、
かつてキラ星のごとく選手を輩出してきた旧ソ連の面影は、もうない。
しかし、何と言っても次はソチ。
ロシア選手の素晴らしい演技が見られることを期待したい。


さて、全く気分を変えるための1枚を。
バッドカンパニーのLive盤、"Hard Rock Live"。




CDとDVDがセットになった豪華版だけど、音源だけ聴いていると、
昔の録音と勘違いしそうなくらい素晴らしい演奏!
ポール・ロジャースという人の歌を意識して聴き出したのはつい何年か前のことだけど、
いやはや、素晴らしい歌い手というのは年齢に関係なくいいという証明のようなLive。

それにしても、普段通りの実力を大舞台で出すことの難しさよ。
体験した人だけにわかる、五輪の特別さなのだろうか。
いつも通り、自然体でいけば入賞可能性大なのに、これがなかなか。
今日のライブ盤のように、いつものポールだなんて喜んで聴いてはいるが、
実はこれが結構大変なことなのではないかと改めて思った次第。

"Hard Rock Live"、
元気がないときもあるときも、
きっと思い出したように取り出して聴きたくなる1枚だ。
pop & rock | - | - | author : miss key
病院の窓から眺めた景色は
先週の後半、父の入院している病院で過ごした。
予後の厳しい状況ということもあって、
地元一番の景勝地を一望できる、眺めの良い個室で治療を受けることとなったのだ。

公営競馬の廃止後、利用がなかなか決まらなかった跡地にできた病院は、
医大に併設された近代的な施設で、
医師も看護に当たってくださる大勢のスタッフの方もみな素晴らしい人たちだった。

数日間の昏睡から意識を取り戻し、ときおり窓に顔をやりながら、
それでも視線がどこと定まらず、なぜ・・・が見えるところにいるのかと、
誰に話すようでもなく独り言を口にしていた父。
何度説明しても、それはもう彼の記憶にもとどまることもなく、ただ淡々と時が流れていく。
そんな空間は一人の病人と一人の付き添いには広すぎた。
そう、ぽつんという音がしそうなくらいに。


看護を交代して東京に戻ったのが日曜の午後。
にわか愛国主義者となってテレビを眺めるも、
バンクーバーオリンピック、期待の選手は残念な結果に終わった模様。
それでも数秒間流れた競技の様子は、随分と素晴らしいものに思えた。




荷物も片付け終え、一息ついて久しぶりに聴いたのが"Recorded Fall 1961"、
Stan Getz とBob Brookmeyerの好演盤だ。
このアルバムで聴ける、どこかさめざめとしたゲッツの音色が堪らなく好きなのだ。

2曲目の"Who could care"を聴きながら、病室での会話を一つ一つつなぎ止めて行く。
もう残された時間はわずかだというのに、気の利いた話題がなかなか思い浮かばない、
自分の不器用をこれほど恨んだ日はなかったのではないか。

そんなことをつらつらと思いながらも、
ぼんやりとこの穏やかなニ管の競演に身を預けてしまおう。
悲しいというのではなく、ただただ噛み締めるものの重たさを痛感した時間だった。
others (music) | - | - | author : miss key
I can see the gates of heaven...
表題を『天国の門』と訳されたMarta Sebestyenの最新作。
彼女の声を初めて聴いたのは、映画『イングリッシュ・ペイシェント』の音楽だった。
懐かしさと、地の底から響き渡るようなどこかおどろおどろしさもたたえながら、
映画のストーリーを思い出すと、何よりも先に彼女の声が朗々と胸に響き渡るのであった。




シンプルな伴奏に彼女の歌の組み合わせ。
Stingのアルバムに感じる白樺の森の静けさとは真逆の、
土の香りがぷんと漂うような、天国ではなくて、地を感じさせる歌と演奏。

本作は解説が付された国内盤がリリースされているが、
歌詞の和訳まではついていないので、
英訳を頼りにしつつ各々の曲を聴いている。

ふと思い出すのは、もう随分前に訪れたハンガリーはエステルゴムの丘。
古くて由緒ある教会のオルガンの音色。
そして、その響きはどこまでも高く、空へと通ずるようであった。

本作はそんな空高く、天への導きのための歌なのか、どうか。 

日頃悩み抜くことを避けて日々を過ごすわたしにも、
どうにもやるせなく、立ち往生してしまうことがある。
そんなとき、どこかに導きの星はないものかと無意識に遠い天を仰ぎみる。

天国の門、すべての人に開かれているのか疑問に思えど、
在ると信じて進むことは、きっと無駄なことではなかろうと思いつつ、
今日という一日を終えてようよう床に付く。

『天国の門』、
ふと立ち止まり、目を閉じて何かを思いたい、
そんな時に聴きたい1枚だ。
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Discman
ポータブルCD機の話題を目にして、
わたしも、そうそう、うちにもあったよと思いながら押し入れから出してきた、
お気に入りのポータブルCD再生機、Sony D-303。

就職した年に買ったから、余計に思いで深いのかも知れないが、
何しろ、見た目も素敵だし、音も良い。

音飛びが酷くなって、そのまま引退、2代目CDウォークマン(丸いやつ)に乗り換えたが、
音はやっぱりこちらの方が良かった。

今夜、久々に電源投入、CD再生!
無印良品の小さなアンプ付きSPにつないでのお気楽リスニングだけど、 
いやあ!懐かしいやら、嬉しいやら。

また調子を悪くするだろうけど、しばらく机上で使ってみよう。
なんだかほんとうにすごくうれしいなあ。


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