音の快楽的日常

音、音楽と徒然の日々
サルビアの花
突然、どうしようもなく「サルビアの花」が聴きたくなった。
ヒットしたのは女性グループが歌ったバージョンだったと思ったが、
聴きたかったのは作曲者である早川義夫が歌っているもの。
それも、やっぱりレコードがいい。


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45回転盤も非売品ながら出るには出ているが、余りに高いので、素直にLPを買った。
出かけた渋谷の某店には、初期盤から再発盤まで何枚もストックがあったが、
その中で、一番こなれた価格の盤を買った。
ジャケットはそれなりだったが、盤はほとんど聴いていない状態のもの。

「サルビアの花」を知らない人に何と説明すればいいだろう。
ただ耳懐かしい日本語の歌、というだけでは決してなくて。
この曲が書かれてから40年近い時が流れて、時代背景が全く異なる中で、
こうした歌の文句はどんな風に受け止められてしまうのだろう。

わたし自身、別の項目でも書いたように、早川義夫の歌にはなかなか近づけないでいる。
何か、そう、彼の情念に絡めとられてしまいそうで。
それでも、この曲がどうしても聞きたくなってしまった。

人ごみでうんざりするような街中を、
このレコードを抱えて歩く自分が何だか浮いて見えたが、気のせいだろうか。
駅前で尖閣諸島問題を訴えるトラメの割れた音が耳に突き刺さった日曜の午後。


レコードの話 | - | - | author : miss key
クールダウン
ストリーミングの映像にて楽しんだ王座戦第二局。
激辛三兄弟よりも実は辛い人かいる、とは今日とは別な解説での話題だったが、 
初心者にも、終段の厳しさが画面を突き抜けて伝わってきた。

一度上がったテンションは中々下がりそうもなく、
画面から離れてぼんやりしようと思い、わたしには珍しくクールダウン向きのCDを選んだ。
Digitonalというエレクトロニカのユニットのアルバム2枚だ。


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最初の1枚をたまたまジャケ買いして気に入ったので、
後からブルーのジャケのタイトルも買い足したが、
エレクトロニカといっても決して無機質ではなくて、
深い森の向こうから流れてきても不思議じゃない気がする音楽。

普段はこういうのをあまり好んで聴いてはいないけど、
ヴァンゲリスよりはもう少し人肌に近い温度感があって、余計な力みなしに聴ける。
もしLiveなら、後ろに流れる映像によってはもっとドラマチックに感じられるかも知れない。

まるで出戻ったような蒸し暑さにうなだれつつ、
熱くなった頭をひたすらクールダウンする。
ネットで対局を眺めているだけでもこれほどなのに、
実際に指されている棋士の方々というのは一体どれだけの集中力と体力があるのだろう。
熱い、もう一番!の台詞が出たのかどうか、
来週の第三局も目が離せない。


◆ Digitonal Official web site  http://www.digitonal.com/
pop & rock | - | - | author : miss key
50年前のスピーカーで音楽を聴く
三連休の初日の土曜、溜まりに溜まった本やCDを整理した。
物を置く隙間ができると、そこに置けるからと喜んであれこれ買い込んでしまうので、
ここ数ヶ月、忙しいのを理由にして放置してあったのだが、 
放っておいても片付かないので仕方なく。

見た目はもう一つながら、収納力で言えば大助かりのホームエレクターを組み直し、
夕食までには作業終了したものの、どっと疲れが(笑)。
今日の日曜、朝から好天も体はどっしりと重くて動く気がしない。
だからというわけではないが、用事を作って外に出た、酷暑の残滓を額に感じつつ。

***

いつもお世話になっているaudio shopでレコードプレーヤーの講座があるというので、
お店に寄ってみたら、鳴っているのは何と50年も前のユニットを使った古いスピーカー。
キャビネットも美しいので後から作ったものかと思ったが、オリジナルとのこと。
それはもう、朗々と鳴っていて、思わず聞き入ってしまった。

しかし、本当の感動はその後やって来た。
件の講座が始まって最初の曲、Dino Saluzziの"Kultrum"。


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心と体のやれ具合というか何と言うか、
明日が休みでなくとも日曜の夕刻に、
伸びやかに響くバンドネオンの音色、もうそれだけで反則でしょうって心の中で呟いた。
こういう選曲だけで、もうやられたねって、頭の中も真っ白で。
そしてただ音楽に身をまかせてサウダージに包まれる幸せ。

Saluzziのバンドネオンは時に、
荒涼とした空間に投げ出されたような錯覚を起こしそうなほど、
なんとも救いのない厳しい音調だったりするが、
膝を抱えて寂しさに震える夜も、朝が来ない訳じゃないって、
涙が乾いた頃には胸の底の澱も潰え、心穏やかに眠れたりする。





そうそう、ECMというだけで引いてしまいそうな方のために、ではないが、
Dino Saluzziの演奏は、例えばRickie Lee Jonesの"Pop Pop"でも聴ける。
ものすごく控えめで、さり気なくだけど。

それにしても、本当にいい音で鳴っていた。
同様の体験をされた方が「オーディオの進歩って何?」ってコメントされていたが、
思うに、音楽を楽しみたいという人の気持ちは昔も今も多分変わらないから、
きっとそういう人々の手で作られたオーディオは、技術的な違いはあれど、
本質的な部分はブレていないのだろう。

うちは今どきの装置に頼っているけれど、
わたしのスピーカーも、わたしと一緒にたくさんの音楽を通じて長い時を経て、
将来、「ああこんないい音がするんだ」と言われるよう、ずっと鳴らしていきたい。
講座を担当されたFさん、素晴らしいひとときをありがとうございました。

◆ Dino Saluzzi Official web site  http://www.saluzzimusic.com/
audio | - | - | author : miss key
インド古典音楽のレコード
先週のオールナイト上映参加敢行の折、
合間の時間つぶしに立ち寄ったレコファンで拾い上げたレコード8枚の中の1枚が、
前から興味があるのに何故か1枚も持っていなかったインドの古典音楽のレコード。




きっとすごく有名な人なんだろうと思って買ってきたが、
家で調べてみたらやはりそうだった。
Ali Akbar Khan、サロードという楽器の第一人者による演奏集。
「集」といってもインド音楽は楽曲の長いのが多いので、
案の定、このレコードにも表と裏それぞれ1曲ずつしか入っていない。
1曲、約20分の演奏!

インドの音楽についてはほぼ無知の状態で、
何しろサロードとシタールの見た目の区別もつかない覚束なさ(笑)。
でもさすがにレコードをかけてみたら、その音はシタールの幻想的で芳醇な響きとは異なる、
骨太で地に足のしっかりとついた響きに、
ああ、これがサロードという楽器の音なんだと感心することしきり。

途中、タブラが入っているが、録音もサロードをメインに押し出していて、
一つ一つのメロディよりも音楽の強さそのものが印象に残る。
同じ古い弦楽器の、例えばリュートの音楽などと比べると、その違いは明瞭。
楽器から出される音量自体も違うのだろうが、
背景となる歴史や宗教なども違うせいか、同じ古典といっても世界は全く別なのが面白い。






ところで、渋谷レコファンには小さいながらもワールド系レコードのコーナーがあるし、
セールや特集など折々にまとまって出されるときもあるから侮れない。
同じ日にヨルゴス・ダラーラスの若き日のアルバムを見つけて喜んだり、
タンゴの歴史的名演集のフィリップス盤Box Setを手にしてしみじみしたりと、
強行軍の日程の最中、有り余る収穫に朝帰りの始発電車中も荷物の重たさも苦にならず(笑)。

で、今週も漁盤に、と意気込んでも同じようにいかないのがレコード探しの面白いところ。
とはいっても、いよいよ涼しくなってきたから、レコード店巡回日和。
さあこの連休、行ったことのないお店にも出かけてみよう。
world music | - | - | author : miss key
突然の雨
大粒で少々喧しい、突然の雨がバルコニーを打つ。
湿度が高くて鬱陶しい今日の終わりになって、
何とも気持ちのよい雨の訪問よ。

それに相応しい、という訳でもないが、
ほんの少し涼しく爽やかになりつつある朝や夜が、
もっとそれらしく、なりますようにとの思いを込めて。


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ロシアのピアニスト、アレクセイ・リュビーモフつながりで見つけたCD。
CDのおしまいに入っているオーケストラとピアノの共演を除き、
じつはValentin Silvestrovというピアニストが演じる自らの作品集。

ジャケットは秋というより冬を思わせる絵柄だけれど、
アルバム全体に横たわる爽やかですっきりとした空気感は、
まさにこの夏、暑くて辛かった夏の日々にこそ恋いこがれたもの。

リュビーモフは最後のオケとの共演でピアノを弾いていて、
この曲もなんとも言えず清々しい。
こういうアルバムが出るからECMが止められない人も少なくないだろう。

夏の疲れを引きずりながら、空を眺めてはあと何日かと数を数えたくなる。
鱗雲の夕刻にこおろぎの声、車の流れる音は遠い。
秋はすぐそこまで来ている。
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最後のオールナイト鑑賞
小説の方も随分と話題になっていた『ミレニアム』シリーズ3部作がいよいよ封切り、
しかも初日だけは1から3までをぶっ通しでオールナイト上映の企画が。

2週間くらい、どうしようか迷っていたのだけれど、
2だけ見てもどうせ3が待ち遠しくて落ち着かないだろうから、
がんばって出かけてみることにしたのが昨日の土曜。

おまけに、3Dで公開中のバイオハザード4も見たものだから、1日で10時間近く映画漬け。
職業的にこなしている方ならもっと観るのかもしれないが、
わたし自身にとっては映画館をハシゴしての鑑賞では人生最長記録(笑)。 




圧巻は何と言っても2。
濃密な物語に多くの人が否応もなく巻き込まれていく様は、
舞台となったスウェーデンのイメージからは隔たっているけれど、
澄み切った風景の空気感が作品全体に独特のカラーを与えていると思う。
それに言わずもがなだが、主人公リスベットの圧倒的な存在感。
もちろん、パンクなルックスというだけではなくて。

ちなみにソフトは国内盤では1のDVDのみが発売中で、
海外盤でかまわなければ1のブルーレイも出ている。
いずれレンタルでも3部作を観ることができると思うので、
原作をご存知の方はもちろん、そうでない方にもお薦めの作品だ。

それにしても、翌日のこの気怠さは一体(笑)。
さすがに朝5時に映画館を出て家に帰り戻るという荒っぽいことは、
もうこれからは無理。
駅で始発を待つ若い人たちの群れのなかで、映画の筋を思い出しながら一人反省の朝だった。
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気持ちをスカッとさせたい時の1枚
今日の雨、一体何日ぶりだろう。
こんなに雨が少ないのに、渇水騒ぎが起きないのも不思議だけれど、
雨嫌いのわたしがこんなに雨を待ち望むなんて、もうないことかも知れない。

涼しいのはいいとしても、窓を開けたままだとどうしても湿気が酷い。
じめっとしたのが鬱陶しい。
そんな時の為にと買った訳じゃないけれど、
先日のレコ漁りの収穫から、クインシー・ジョーンズの『愛のコリーダ』。


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クインシー・ジョーンズ楽団が来日した時の記念ライブ盤は出た当時に買って持ってたけど、
そのオリジナルである本作は図書館で借りてテープに録音したのをすり減らしてそのままだった。
ガサガサとレコ箱を漁っていたら、
買って1回か2回しか聴いてなさそうなきれいな盤が出て来たので迷わず抜いたこのレコード、
値段がたった300円というのも驚きだ。

思えば買ったレコード、一旦カセットテープに落としてから聴いていた。
ラジカセの方が便利というのもあったけれど、
何しろレコードプレーヤーの針をそうそう交換できないから。 
レコードを聴くってそれなりの思いがあったし、日常でありかつ特別な行為だった。

今は、聴かなきゃ損とばかりに、レコードはレコードでガンガン聴いているけれど、
そんな10代の頃の体験があるからなのかも知れない。

それにしても、このノリ、キレの良さといったら。
元々編成の大きなものが好きだからというのもあるけれど、
"Just Once"なんて、歌い手であるジェイムズ・イングラムのアルバムよりずっといい音で聴けるし、
普段よりググッと音量を上げたくなる始末(笑)。

こんな調子だから、レコード漁りは止められない。
家族のことやこの酷い暑さのこともあってレコ店巡りから離れてたけど、
季節が落ち着いたらまたこまめに回ってみよう。
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炎天下のレコ店探訪
ほんとうは昨日出かけるつもりだった、久しぶりの中古レコード店。
でも余りの暑さにダレ切ってしまい、行かずに夜になった。
で、日本中のそこここで記録更新中の更に暑い今日の真昼時に仕方なく外出した(苦笑)。

近くにありながら、初めて出かけたディスクユニオン中野店。
J-Popからワールドまで広く浅くの中古店だ。
レコードは店奥の壁際にざっと1列程度しか置かれていないのに、
なんと探しに探していたアルバムが状態もよく廉価で出て来た(涙)。
暑いのに出かけて良かった・・・。

ひょっとして今日は運がいいかもと思い、店内をうろうろしてみたら、
結構思いのほかの収穫ありで思わず笑みが洩れそう。
そのうちの1枚が70年代の刑事物テレビドラマのサントラ盤。


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この番組、わたしが小学生の頃、ちょうど再放送をやっていて、
夕方4時あたりだったか、見るのをいつも楽しみにしていた。
子供の頃からのおじさん趣味というか、渋系に弱いわたしであったので、
天知茂演じる会田刑事にぞっこんだったのは言うまでもなく。

こんなCDが出ていたことも知らなかったので、
手に取ったCDをまじまじと眺めてしまった。
確か、実家には天知茂が歌う『昭和ブルース』のドーナツ盤もあったと思うけれど、
何と言ってもこの曲、このテーマを久しぶりに聴いてしみじみ。

更に驚いたことに、youtubeにはこのドラマそのものもたくさんアップされていた。
最近にも再放送されたりしていたんだろうか・・・。
そんな番組知らないなあ、思い出せないなあ、という向きには↓の映像を。
映像のそこここから昭和の薫りがぷんぷんしますが、どうぞお許しを。
ところでこのサントラ盤はまだamazon等でも普通に買えるようです。
いやもう、何はともあれ、暑かったけれどいい休日だった。

 
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imagine project
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記録尽くめの暑さに対抗しても仕方ないのに、
相変わらず涼しげなものを探して聴いている毎日。

最近は普通に店鋪で売っているCDよりも、
通販や取り寄せじゃないと買えない旧譜を買うことが多いが、
これは久々に出てすぐくらいに購入したタイトル。

いろんなミュージシャンとの共演で綴った本作、
ハンコックはどの曲でもピアノを楽しそうに弾いている。

全体に気張らず聴けるアレンジをしている中で、
特に注目はトゥマニ・ジャバテ、フアネス、ティナリエンがフィーチャーされた5曲目以降。
ワールド系には日頃手の伸びない方でもこれなら楽しめるのでは。

オーディオ快楽的にはもっとHi-Fiに振って欲しかった気もするけれど、
ハンコックはもちろん、皆とてもリラックスして演奏している様子が伝わってきて、
それだけで十分なのかも。
ジャケットは秋冬っぽいけど、
当初の目論みからは外れて(笑)、演奏はなかなかホットな1枚だ。
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暑さに想像力がうなだれた日
仕事の用向きでほぼ1日、炎天下に過ごした。
前から乗りたいと思っていて、今日初めて乗った舎人ライナーに感動したのもつかの間、
(※ 噓だと思ったら先頭に乗ってみてください)
「これが熱中症?」というような頭痛と気分の悪さに参り、駅のホームで小休止。

せめて頭の中だけは涼しげに、と、
昔出かけたプリトヴィッツェの森などを思い出してはみたものの、
頭痛を頭の中から追い出すことはかなわなかった。

記録的な、余りにも酷い暑さに、わが想像力があっさりとうなだれた夏の日。


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よもやま | - | - | author : miss key