『レーニンの墓』 | 2011.02.28 Monday |
1年のうちで一番忙しいこの時期、
毎年のこととはいえ、要領よく過ごす術が未だに身に付かず。
買った本が読まないまま机の端に積まれていき、
その山の高さについため息も出る。
知り合いから紹介してもらったロシア関係の新刊。
佐藤優さんが推薦という帯のことばに惹かれ、買ったはよいが、
買って1週間ほど手が伸びなかったのは、
忙しいというより分厚い上下2冊組という量のせいだ。
ソ連帝国最期の日々、と副題が添えられたデヴィッド・レムニックのピュリツァー賞受賞作。
自らの取材を元に編まれたソ連崩壊の交響詩、その響きは人によって違うのだろうが、
霧の向こうの、遠い島国からは見えづらかった世界が、
或は旅先に見た黒煙で煤けたホワイトハウスの景色の意味がようやくそれらしく、
輪郭のある形となって想像できるような気がした。
二巻組の大著であるが、焦点はゴルバチョフ時代。
個人的にはその前段のチェルネンコ、そしてアンドロポフの書記長在任時代についても、
短いとはいえ、もう少し掘り下げてもらいたかったと思う。
個人的にはアンドロポフが居なければロシアはまた違った姿になっていたのではと思うから。
話は逸れるが、
子供の頃、ソ連の書記長の交代は、前任者の荘厳な葬儀に象徴された重みあるもので、
葬儀のひな壇に並んだ後継者たちの並び順を確認しようと、
TVで映像が流れていた様子を思い出す。
蝉の一生かと思わせるような、どこかの国の総理大臣の交代とは違って、
子供ながらにカーテンの向こうの政治劇を想像しながら、ため息したものだった。
本の話に戻ると、
個人的には下巻の後半が、
先日みたグシコフのTV映画の時代背景がよくわかって面白かった。
その意味で、全部読み通す必要はなくて、
目次をみて気になる項目だけ目を通しても読めてしまう組み立てになっている。
わたしがロシア語の夜学に通っていた頃はまさにゴルビーブーム。
クラスも定員オーバーで大盛況、あんな時代はもう二度と来るまい。
そのゴルバチョフの凋落ぶりがこうも淡々と描かれていることに複雑な思いもないではないが、
「終わってみればこういうことだった」
と簡単には語れない変革がわずかの間に起こっていたのだとは、
こうして少し時を置いて噛み砕いてみて、
はじめて受け入れることができることなのかもしれない。
帰宅時間がつい遅くなり始めてから手を付けた2冊の本、
読み通すのに1週間もかかってしまい、ペースの遅いのに我がことながら閉口するが、
一気読みしなければ筋がよくわからない類いの本でないのが救い。
値段も量もヘビーだけれど、この時期のソ連史に興味のある方ならお薦めだ。
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