「電源は大事」とだけ書いて中途半端にしてしまったリニューアルの件。
当初は、「今年はカートリッジを更新!」する計画だったので、
今回のリニューアルがどれほど魅力的であろうが、「華麗にスルー」するつもりでいた。
でも、やっぱりそう言う訳にはいかなくて、とうとうアップグレードをお願いすることに。
とはいえ、とうとうと言うには余りにも短い間に決めてしまったのだけれど、
そのことにはもう触れないことにする。
上の写真はRadikal(LINNの装置にはこうした名前が1つ1つ付いている)の電源部分。
新旧そっくりだけれど、よく見ると少しずつ違っていて、
いつ製作されたものか日付も基盤の隅っこに印字してあった。
こういうことでもなければ見る機会もなくて、
その都度質問したり、写真撮ったりとさんざ作業の手を止めさせてしまっていたので、
当初の予定時間を大幅に越してしまった。
< すみませんでした!
さて、装置のアップグレード作業も終了、早速、おためしタイム。
いつもお世話になっているお店のHさんより
「使用前、使用後」を試すように奨められていたので、
ことば通り、作業の前後で同じ盤を聴き比べてみた。
さて、何が違う、何が変わったって・・・
無音の部分からして気配というか、
「さあ、これから演奏が始まるぞ!」という緊張感の広がりが何とも爽快。
聴き比べたのはライナー指揮シカゴ響のシェエラザードだったけど、
静まり返った中、バイオリンソロから合奏へのテンションの上がり方なんて、
どこが変わったかなんて分析はもうどうでもよくなっていた。
きっと、再生の能力で言えば、どの部分がどういう風に良くなってというような、
改善された要素の総合力、相乗効果でもって、
結果として音楽としてはそういう風に聞こえたんだろうと思うけれど、
高音がどうだとか、低音がどうなったとか考えなくて済むところが、
LINNの装置をずっと使っているシンプルな理由なのかも知れない。
***
LINNの本国スタッフの方がよく説明されるのは、
エンジニアの皆さんで試聴をして、
みんながこれならいいと太鼓判を押したものが製品化され、世に出されるということ。
音楽をより楽しく聴けるかどうか。
単に改良されているだけではなくて、求めるものの方向性が変わらずにいるということが、
わたしのように、普段気に入って使っているものは基本的には変わってほしくないという、
融通の利かない人間にとって、とても有り難く、
またそのおかげで、新しい技術の恩恵に浴しながらも、
感覚としては全く変わらずに同じ装置を長く使い続けられる。
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思えば、わたしにとって「レコード再生空白の15年間」があった。
今は、レコードで音楽を聴くことを再開して10年ほどだけど、
上京した当時がちょうどCDの出だした頃で、
レコードで新譜もだんだん出なくなり、
また手頃に買えるレコードプレーヤーもあまりなかったこともあって、
後ろ髪を引かれつつ、CDで音楽を楽しむようになった。
そもそも、プレーヤーやカートリッジはもう作らなくなって、買うこともできなくなる、
そういう思い込みがあり、そういう風に世の中が変わったんだと納得していた。
いや、もっと言えば、生活自体にまるで余裕がなくて、
レコードの世界という魅惑の深い沼に落ちてる暇もなかった。
もっとも今も余裕はないけど、何が違うって、深い沼を眺めて愉しむ気持ちというか、
ある種の節度のようなものでもって今があるような気がする。
それにしても、レコードには一体どれだけの音楽が詰まっているのか。
レコードそのものは、電蓄やてんとう虫のプレーヤーで聴いても楽しいし、
目的や思いの深さでもっていかようにでも聞ける優れものだと思うのだけれど、
でも、聴こうと思えば、一体どこまで音楽の深さを引き出せてしまうものなのか、
これに対する答は当分出てきそうにない。
今はただ、こういう装置を手元で気軽に使えるようにしてくださっている様々な方々に
感謝の気持ちあるのみ。
「レコードなんて」と思ってる貴方、
騙されたと思って一度、レコードを手に取って、そして聴いてみてください。
人生変わるかもしれませんから(笑)。