音の快楽的日常

音、音楽と徒然の日々
よいお年をお迎えください♪
思いがけずたくさんの方にblogを読んでいただけた、とてもありがたい1年でした。
来年もまたいいなあと思った音楽をたくさん紹介できたらと思います。

わたしはこたつ犬といっしょに、みかんの食べ過ぎで手を黄色にしながら正月を迎えます。
みなさま、どうぞよいお年をお迎えください。


よもやま | - | - | author : miss key
1年がもうすぐ終わる
あと4日ほどで2012年が終了。
流れるようでいて、立ち止まることも多かった中身の濃い1年だった。
音楽の聴き方はさほど変わらなかったけれど、
年初の断捨離の影響か、手当たり次第な感じから、
もう少し狙いを定めての選盤になり、ムラも少なくなったような(気がする)。

一方、映画だけはやたら数を観て、質量ともに◎の1年、
初めて使ってみたほぼ日手帳は映画の感想だらけになった。
それとシネコンのチケットを上手に取れるようになったことがちょっと収穫。

今日は帰省前の簡単大掃除ということでざっと部屋を片付けたが、
床からCDタワーが積み上らなかったのは一体何年ぶりのことだか(笑)。
今となっては懐かしい「風景」、
というのもCDを買ったらすぐデータをNASに取り込んでしまうので、
盤は薄いビニールに入れてキャビネット直行だから。

年内最後に聴くのは、ナポリの歌手、Joe Barbieriの国内編集盤「二人だけの小さな庭」。




ナポリ民謡を聞くようになってから、イタリアのポピュラーも時々チェックしているけれど、
Joeは春先に来日公演もあって知った一人。
軽やかに、そしてささやくように歌う彼の歌声は、
どことなく映画の一場面のようで、ついつい勝手な映像を思い浮かべてしまう。
そう、自然と情景が浮かぶ優しい歌の数々。

このアルバムは彼の旧譜からのより抜きと新曲、そしてLiveから1曲を編集したもので、
日本国内盤のみの発売。
夜の遅い時間、小さな音量でゆったり聴きたい1枚、
眠る前にとっておきの音楽で疲れを解したい女性リスナーにもお勧めです。
world music | - | - | author : miss key
Merry Christmas !
季節の変わり目やちょっとした行事の折にはボルシチが食べたくなる。
短期でホームステイした先で教えてもらった作り方。
そのまんま作ると寒さのさほど厳しくない日本ではカロリーオーバーになるので、
ダイエット版ならぬ多少のアレンジをして落ち着いたもの。

困ったことが起こった。
買い置きがまだあったと思っていたビーツ缶を切らしていて、
いつものお店に買いにいったら、取り扱いを止めたとのこと。
思いつくままに周辺の大きめのお店などに電話で問い合わせてみたが、答えはNO。

そうか、思っているよりもあまり売れないんだな、赤かぶはサラダにしても美味しいのにな

そんな独り言を他所に、ああ困った困ったと思いながら、
最後に電話した2つ先の町のスーパーにはあった!!!(多謝)。

そんなちょっとしたアクシデントがあったので、今回のボルシチは記念撮影もした。




スメタナ(サワークリーム)が(少なすぎて)見えないぞとモスクワの知人にからかわれたが、いえいえ、あとから(こっそり)おかわりしますから心配いりません。

+++

連休なのをいいことに、今夜はのんびり食べて飲もうということで、映画を見始めたが、
しばらく新譜チェックをしていないなと思い出し、
CDジャーナル片手に思いつくままチェックしたら30枚ほどになった。
さすがにそれは買い過ぎなので、半分ほどに絞り込み、無事オーダー。
取り寄せのものも結構あるから、半分は年内に、残りは年明けになる。
こんなにまとめて新譜を買ったのはほんとに久しぶり、何事も溜め過ぎは良くない。

2012年もどんどんと残り少なくなっていく。
焦っても、焦らなくても、時間は同じ感覚で淡々と過ぎる。
このことに気がつくのにわたしという人間はすごく時間を要したような気がする。

2013年はもうすこし何事もまとまりをもって進めていけたらなあ(ないものねだり)。
有馬記念を観てしまったら事実上の年内これで終了、
何事も無く静かに過ぎる夜に乾杯。
よもやま | - | - | author : miss key
書斎が欲しい
子供の頃、いつか本格的な書斎が欲しいと思っていた。
20歳の時から親元を離れたため、住まいがまんま書斎のようになり、早20数年。
遊びにきてくれる友人はみな「学生さんの部屋みたいですね」などというが、
きっと、身の回りに好きなものと最低限の生活物資しか置いていないからだろう。
否、それは正確じゃない、数はたくさんあるけど、物のカテゴリーは酷く限定的なのだ。

書店の棚、特に雑誌の棚をふらっと眺めていると、
中高年をターゲットにした男性誌のテーマに、「書斎」というのが結構目につく。
大変なローンを組んで家を建てたけれど、
働くお父さんのプライベートルームとしての「書斎」は、
持つのも理解を得るのも、
< 多分、部屋が贅沢だというのではなくて、そこに「(時々)こもる」ことへの理解が・・・
なかなか大変らしい、というのが記事のそこここから伝わってくる。

書斎だったら何でもいい、というのではなくて、
文人の書斎なんかに、いっちょまえに憧れた時代もあって、
時折そういった雑誌に組まれる写真入りの特集は、ついつい手が伸びてしまう。
本棚に並ぶのはどんな本なのか、机にはどんな文房具が置かれているだろうかと。

文章を書くのに、升目を埋める行為から遠ざかってもう随分になるから、
いかにも机に構えて座ってどうのこうのではないのだろうけれど、
ひょっとして、しっかりと机に向かうこと自体に某かの値打ちや意義を感じているのかも。
年末に向けて、1年前にやった「断捨離」後の効果測定(笑)をしながらふと思った。

***

クリスマスプレゼントということなのか、
音源のフリーダウンロードというのがあちこちのサイトでやられている。
わたしはLINN Recordsとドイツ・グラモフォンのを試しにやってみたが、
LINNの方でお試しに落とした1曲がすごく良かったので、
初めて高音質データでもってアルバム全部を購入しようと思ったら、
あら、残念、権利の関係で日本からはその1曲のみしか許諾されていない模様。
仕方がないので、結局CDを買い求めてしまった。
Trashcan Sinatrasの"In the Music"というアルバム。




出たばかりの新譜ではないけれど、LINNが改めて高音質で提供している中の1枚。
グラズゴーのバンドだということで、取り上げられているのだろうか、
これは彼らの通算5枚目のアルバムで、2010年のリリース。
1stの頃を知らないわたしは、ちんまりと落ち着いて清々しい音楽をすごく気に入ったけど、
若い頃のバンドはもっとみずみずしくてはじけた感じがあったのか、
ずっと聴いているファンからすると、評価も少し分かれているよう。

確かに96kHz/24bitsという高音質で聴いた"Oranges and Apples"が好印象だったから、
というのもあるけれど、多分、俗にいうハイレゾじゃなくても、十分素敵なサウンド。
スローでたゆたうような、
そして緩やかにみえて実は芯の強さを思わせる独特のタメに思わず眼を閉じる。
思い出すのは、そう、思い出せる限り小さかった頃のこと。

まだ字も読めない子供のために、やりくりして揃えられた日本文学全集が並んだ本棚。
テレビもカメラもない家だったけど、それがわたしの書斎原風景なんだろう。
話がそれるけれど、
都知事を辞した石原慎太郎は、その全集に現役で入れられた作家の1人。
性格は全く違う方々だけど、作家出身の都知事が3人続くということの背景を考えたくなる。
今年もあと10日ほど、気温がぐっと下がっていよいよ冬らしくなった夜だ。


よもやま | - | - | author : miss key
笛吹けば
夜、笛を吹くと蛇がくると、親からよく言われたものだ。
学校教材のプラスチックでできたリコーダーやオカリナが好きで、
そうやって叱られるまで、ひとり部屋でいつまでも吹いていた。

練習曲などはすぐに飽きてしまうから、
吹くのは、テレビドラマや映画の間奏で耳にしたちょっとしたメロディとか、
適当でたらめに思いついた30秒ほどの即興曲。
ほんの思いつきだから録音でもしなければ楽譜に起こすこともできない。


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それほど好きな笛だったのに、木管楽器を使った演奏というと、
手元にそれらの録音は言うほど揃ってはいない。
それでも、このAmsterdam Loeki Stardust Quartetだけは特別で、
手に入る一通りのCDを購入し、いつでも好きに聞けるように全部をNASに入れてある。

BachのThe Art of Fugue、手に入る録音は星の数ほどあるかもしれないが、
このジャケットに想起されるような、
闇の中にほんのりと灯るあかりのような温かさと密やかさを持った演奏はそうはあるまい。

1つの楽譜から紡ぎだされたとは信じられないほど、まるで生きているような蠢くメロディ。
頭の中でえいっと分解してみれば、それはいくつかのリコーダーによる合奏なのだけど、
息が合っているなんてことばが陳腐なくらい、
選び抜かれた響きのアンサンブルは本当にひとつの音楽になっている。

蛇はこの寒い時期、辺りをうろつくようなことはないだろうが。
このアルバムはぐっと冷え込んでしんと静かな夜にそっと聴きたい。
音楽がまるでこちらに語りかけてくるような錯覚に戸惑いながらも、
たったひとりの夜を十二分に愉しめるよう。
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溜息の一日
多くの小学生が銃撃で尊い命を断たれた彼の地の惨劇、
合衆国大統領が涙を禁じ得ず、言葉を絞り出すようにして語るニュースの画面。
繰り返し流れる映像に、無意識のうちにも感覚が遠くなる。
あまりに酷い出来事で受け止めたくないという気持ちが働くのだろうか。

TVのチャンネルを他所に回せば、総選挙の様子が淡々と流れている。
随分極端な票の流れ方にも思えるけれど、
それは「今のままじゃだめだ」ということなのか、それとも違う意味合いなのか。
いずれにしても、部屋の床には見えない溜息の山が積もっていそうな気配。


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「追悼」の意をこめて選びたい、そう思いながらライブラリを眺めても、
なかなかピッタリくるものが選べない。
そのうち、当の本人が疲れてしまい(こういうのを今時はへたれというんだろう)、
結局、溜息の山を横にどけてくれそうな、リラックス度満点の1枚を流す。
Norah Jonesの少し古いアルバム、"New York City"。

暗い部屋でこのアルバムを聴いていると、
ライブハウスの、それもステージから近い席でのんびりLIVEを楽しんでるかのよう。
ベースの音がいい具合に下の方からぐいと伸びてくるのが心地良い。
胸ではなくて、胃の少しした辺りにずーんとくる、この感じ。

Norahの歌って、スタジオで作り込んだものよりも、こういう録音の方が伸びやかだ。
日曜の夜だから、このくらい優しい音楽で丁度いい。
お酒がなくても緊張を緩めてくれる1枚、疲労困憊のこの時期にお勧めです。
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壊れていく様の一瞬の美しさを
何がきっかけかもう忘れてしまったが、
松田優作の主演作を手の届くところから見直している。
ハードボイルドもあれば、売れっ子女優と共演の甘ったるさ残る作品も。

ざっとお腹いっぱい観たところで思ったのは、
人が壊れていく様を演じるのがなんて(まるで素のように)巧い人なんだろう、と。
優作演じる主人公に絡む女性も連れて崩れていく。
ほんの一瞬だけど、その合間に見える美しさに息を呑む、倒錯の世界。

『愛の嵐』という、一部ではカルト作品のように言われる映画がある。
わたしはつい同じような軸でもって眺めては溜息してしまうが、
愛の・・・のようは歴史的背景をここ東京に置き換えるのは難しいけれど、
優作が仮にこの映画の主人公を演じたとしたら、などと、とりとめもない想像をする。

そんな類いの映画を1日に何本も見続けると、
さすがに全身の水分が抜け切ったようになってぐったりする。
これ以上乾くことのないようにするには、どんな音楽がいいだろう・・・。


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Billie Holidayの再来なんていうコピーがついていたから、つい買ってしまったレコード。
もちろんGrady Tateが共演しているのを見逃しているわけでもなかったけれど、
Lady Kimの歌う枯葉、
声音は濃厚な蜂蜜のようでいて、哀しい文句はまるで風に舞う木の葉。
開いた傷口に塩を塗込めるような音楽だと辛いから、Holidayじゃなくて彼女なのかな。

なんでそんな映画ばっかりみるのよ、とは友人達からよく言われること。
Lady Kim聴いてリセットしたから、また映画に戻っても大丈夫かな。
夜更かししすぎて、昼食後の睡魔が恐ろしい今日この頃。
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帯のことばに釣られる
最近は読書自体より週末の書店巡りの方がずっと楽しみな時間になってしまった。
眼精疲労が酷いので本を読み進めるのがままならず、
眼鏡や虫眼鏡を動員し、スタンドも眼に優しいものに換えてみたものの、
1時間もすれば眼の奥がズズンと痛みだす。
若い頃にもっと読んでおけばよかったと、後悔の日々、まあ仕方がないけれど。

本を選ぶのに、最初の数頁だけささっと眺めて選ぶ、というのも億劫で、
最近は帯の宣伝文句に惹かれたものに手を伸ばしがちだ。
帯、というと、レコードの国内盤が好きな方で、
これがないと無価値!ぐらいの勢いの方がいて、
「そうなのか、帯は大事なのか」なんて思ったこともあったけど、
確かに帯のデザインや書かれた宣伝文は時代やセンスの鏡でもあり、面白さは否定できまい。

久しぶりにロシア文学の棚の前に立ったら、早速ポンと眼に飛び込んできた1行。
「現代ロシア文学の極北」。
現代、というのがどこらへんからどこまでか、というのが不勉強で不確かだったが、
わたしは「極北」という表現に弱くて、
この一言だけで「きっと特別面白いに違いない」などと決めつけてしまう始末。
サーシャ・ソコロフの1冊は、構成がややこしくて得意な分野では決してなかったが、
その本はかくして買い物かごに颯爽と収まった。
これはもっと寒くて足下が辛いほど冷え込んだ日の朝に読めるようとっておこう。




今日は朝からよく陽が差して、本当に気持ちのよい休日になった。
しゃきっとした空気に合うよう選んだのは、ウィスペルウェイの弾くバッハ無伴奏。
バッハの無伴奏はいろいろな演奏家のものを何枚も持っていたりするが、
この旧作は、録音のライブな感じが朝の空気によく馴染み、頭の中は高原の教会で生演奏。

ウィスペルウェイはつい最近も3回目の無伴奏録音をリリースしていて、
アルバムジャケットはその3枚目のものがとても素敵なのだけど、あいにく未聴。
なので新旧の比較はできないが、試聴する限り、本作の方が穏やかかつ晴れやかな感じ。

彼は決して「極北」などという形容詞がつく方ではないけれど。
来春、来日予定のウィスペルウェイ、バッハでなければエルガーもお勧めです。
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音楽にあった写真を
アルヴォ・ペルトの音楽が密やかにも注目されている、そんな記事を見かけたのが数日前。
注目といっても、ポピュラー音楽に対するようなものとは違うのだけど、
積極的に紹介してきたわけでもない一人の作曲家の音楽が、
それもエストニア出身の方の音楽が注目されるというのは、やっぱり嬉しいことだ。

ペルトの音楽に似合うような写真を撮りたいと思い、
常日頃から上着のポケットにカメラを入れるようになって数日。
書き割りできるような具体のイメージがあるわけでもなく、
特別な風景を求めて遠出するわけでもなく、ただ日常の中にそんな一コマが無いものか。
そんなことを思いながら、通勤途上、ぼんやりと空を見上げたりする。

銀杏並木が黄金に輝く時期は短くて、あっという間に枯れ葉のシャワーが始まった。
ペルトにはいまひとつ合わないけれど、
(ペルトの音楽は例えば海とか砂浜とか或は砂漠の荒涼とした風景に合う・・・?)
カメラ持ち歩きの記録に1枚だけ。
透明感のある風景を収めようと思えば、まず自分の頭が空っぽになる必要があるのかも。




よもやま | - | - | author : miss key
Pra Dizer Adeus
少し、否、随分前のこと。
Jazz喫茶のマスターが紹介された女性ヴォーカルの編集盤がすごく売れて、
結局そのシリーズは3集まで出たのだけれど、
わたしは最初のアルバムに入っていた、
"To say Goodbye"という曲ばかりをリピートしていた。

Janet Seidelという、声から想像するよりはもう少しベテランの歌手で、
気怠くもスイートに歌われるその曲は、哀しい歌詞だけど、
哀しいのとは違う何かが心のそこからしみ出してくるようで心地良かったのだった。


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Till Brönnerはドイツ生まれのトランぺッター。
Chetが居なくなってその隙間を埋めてくれるミュージシャンを探していて、
どこか枯れて鈍い光を放つ音色に思わず聞き耳を立てた、それが彼だった。

アルバム"Oceana"は、スローテンポの曲を中心に編まれたややスムース系のサウンド。
ところどころにヴォーカルも入れてあって、
この作品にも、実はSeidelが歌っていたその曲"Pra Dizer Adeus"が入っている。

元はポルトガル語で歌われるスローボッサ。
Seidelの歌のときのようなじわりこみ上げるものはないけれど、
醒めた歌声とほんのりウォームトーンのトランペットの絡み具合が絶妙で、
やっぱりわたしはこの曲ばかりリピートしてしまうのだった。

彼のトーンにChetのような絶望感はないけれど、
影を追いかけても、どこまでいってもそれは影だということがわかってしまって、
その寂しさを埋めるのに、この曲はひょっとしたら具合がよかったのかも知れない。

それにしても、たださよならだけを歌った歌なのに、
これを素で棒読みされると辛いけれど、メロディがメランコリックだから受け止めてしまう。
どちらかというと「さよならだけが人生だ」のノリの方が、
わたしには合っていたりするのだけど・・・。
ひょっとしたらこの歌の言う別れにどこか憧れたりしているんだろうか、
否それはないな、きっとない。
明日の雨が笑いそうな夜のひとりごと。
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