子供の頃、いつか本格的な書斎が欲しいと思っていた。
20歳の時から親元を離れたため、住まいがまんま書斎のようになり、早20数年。
遊びにきてくれる友人はみな「学生さんの部屋みたいですね」などというが、
きっと、身の回りに好きなものと最低限の生活物資しか置いていないからだろう。
否、それは正確じゃない、数はたくさんあるけど、物のカテゴリーは酷く限定的なのだ。
書店の棚、特に雑誌の棚をふらっと眺めていると、
中高年をターゲットにした男性誌のテーマに、「書斎」というのが結構目につく。
大変なローンを組んで家を建てたけれど、
働くお父さんのプライベートルームとしての「書斎」は、
持つのも理解を得るのも、
< 多分、部屋が贅沢だというのではなくて、そこに「(時々)こもる」ことへの理解が・・・
なかなか大変らしい、というのが記事のそこここから伝わってくる。
書斎だったら何でもいい、というのではなくて、
文人の書斎なんかに、いっちょまえに憧れた時代もあって、
時折そういった雑誌に組まれる写真入りの特集は、ついつい手が伸びてしまう。
本棚に並ぶのはどんな本なのか、机にはどんな文房具が置かれているだろうかと。
文章を書くのに、升目を埋める行為から遠ざかってもう随分になるから、
いかにも机に構えて座ってどうのこうのではないのだろうけれど、
ひょっとして、しっかりと机に向かうこと自体に某かの値打ちや意義を感じているのかも。
年末に向けて、1年前にやった「断捨離」後の効果測定(笑)をしながらふと思った。
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クリスマスプレゼントということなのか、
音源のフリーダウンロードというのがあちこちのサイトでやられている。
わたしはLINN Recordsとドイツ・グラモフォンのを試しにやってみたが、
LINNの方でお試しに落とした1曲がすごく良かったので、
初めて高音質データでもってアルバム全部を購入しようと思ったら、
あら、残念、権利の関係で日本からはその1曲のみしか許諾されていない模様。
仕方がないので、結局CDを買い求めてしまった。
Trashcan Sinatrasの"In the Music"というアルバム。
出たばかりの新譜ではないけれど、LINNが改めて高音質で提供している中の1枚。
グラズゴーのバンドだということで、取り上げられているのだろうか、
これは彼らの通算5枚目のアルバムで、2010年のリリース。
1stの頃を知らないわたしは、ちんまりと落ち着いて清々しい音楽をすごく気に入ったけど、
若い頃のバンドはもっとみずみずしくてはじけた感じがあったのか、
ずっと聴いているファンからすると、評価も少し分かれているよう。
確かに96kHz/24bitsという高音質で聴いた"Oranges and Apples"が好印象だったから、
というのもあるけれど、多分、俗にいうハイレゾじゃなくても、十分素敵なサウンド。
スローでたゆたうような、
そして緩やかにみえて実は芯の強さを思わせる独特のタメに思わず眼を閉じる。
思い出すのは、そう、思い出せる限り小さかった頃のこと。
まだ字も読めない子供のために、やりくりして揃えられた日本文学全集が並んだ本棚。
テレビもカメラもない家だったけど、それがわたしの書斎原風景なんだろう。
話がそれるけれど、
都知事を辞した石原慎太郎は、その全集に現役で入れられた作家の1人。
性格は全く違う方々だけど、作家出身の都知事が3人続くということの背景を考えたくなる。
今年もあと10日ほど、気温がぐっと下がっていよいよ冬らしくなった夜だ。