音の快楽的日常

音、音楽と徒然の日々
follow me
FBでの話題から教えてもらった「攻殻機動隊」。
映画のダイジェスト画像とその後ろに流れていた音楽がとても印象的だったので、
早速その映画作品「イノセント」とそのサントラを探してみた。


412B3K50BXL._SL500_AA300_.jpg


アニメーションにはとんと疎いので、作品自体については何かでご覧いただくとして、
軸となるテーマ曲は、最初聴いたときはブルガリアン・ポリフォニーのようで、
一体どうやって録っているんだろうと不思議だったのだけど、
解説を読んで納得、民謡の歌い手を大勢集めて収録したとのこと。

川井憲次という方の音楽は、ひょっとしたらどこかで耳にしているかもと思ったら、
「デスノート」や「式日」の音楽もそうなんだとか。
本作では、物語に合わせてなんだろうか、国境を意識させない、
それでいて単なるミクスチャーとは違ったアプローチ、
この物語でいう「電脳」の世界を思わせる、
幻想的でどこかつかみ所の無さが強調されているよう。

このサントラ盤、全体のまとまりもいいけれど、
最後に収録された伊藤君子の歌う"follow me"(映画でもエンドロールで流れる)が印象的だ。
彼女のベスト盤にも収録された同曲とくらべ、アレンジをもっとシンプルに、
そしてほんの少しスローテンポで抑制の効いた中にも甘やかに歌われるfollow me。

この曲だけ何度かリピートしていて、ふと気がついた。
"follow me"ということばに込められた、この物語での特別な意味のことを。

***

正直、名曲に無理矢理歌詞を当て込んだような歌は苦手だったけれど、
この歌はほかのとは全然違った。
英語で歌われているのに、どこをどう切っても和のテイストがじんわりくる。
わたしは同じならサントラ盤のアレンジの方が魅力的だと思うが、
サントラではなく、ヴォーカルを中心にしっとり楽しみたい向きには、彼女のベスト盤を。


51aSGxXgXfL._SL500_AA300_.jpg


このアルバム"Best of Best"は89年から04年にかけてのベスト集で、
バックの演奏も基本シンプルで歌唱の良さを全面に押し出す内容。
ジャズヴォーカルといっても、そう過剰な感じではないので、
ポピュラーファンにも気軽に楽しめる。
人恋しさ募る冬の夜にしっとり聴きたい1枚だ。
cinema & Soundtrack | - | - | author : miss key
「Pentax Q10で写真はもっと面白くなる」
表紙買いをしたのは久しぶり、
ネットで話題になっていた2013年2月のSwitch特別号。


51R-r7ZQI8L._SL500_AA300_.jpg


「愛しのチロ」以来、
"天才"アラーキーの写真は硬軟どちらもとりあえず見ることにしている。
「自分が自分のあるがままでいい」
そんな風に思えてしまう説得力ある写真に癒されるから。

この雑誌はPentaxのカメラ、Q10の特集号。
その巻頭、アラーキーの42枚もの撮りおろし作品とインタビュー記事で飾られている。
新製品の広告なんだろうけれど、それがどっこい、右から左へと簡単には見過ごせなくて。

「いまや才能はカメラにあるんです」
新しいカメラを手にして、気分が変わって違った写真が撮れて。
アラーキーのような人でも道具でこんな風に変われるんだ、より楽しくなったりするんだ。
子供みたいに夢中になって、無邪気にカメラと遊んで、新しい写真が撮れて。
その様子がダイレクトに伝わってくる。

少し前にわたしはRX100というSonyのカメラを衝動買いし、
それからというもの、日々の見慣れた風景を撮りたいと思った時に好きに撮ったりしている。
昔のフィルムカメラでは難しかったことも、
今どきのカメラは易々とこなし、面白い絵、きれいな絵を残してくれる。
本当はそういうのを理論のもとにテクニックを駆使して実現するものなんだろうけれど、
腕を上げたいのではなくて、写真をただ残したい、印象に残る場面を切り取っておきたい、
そういうことであれば、たとえカメラに遊ばれてしまっているとしてもいいではないか。

写真を撮ることに随分構えてしまって、ある時期からあまり撮れなくなってしまっていた。
難しく考えなくてもいいんだな、撮りたいものを楽しく撮れたらそれでいいじゃない、
そう思えたら、いろいろ迷っていた自分自身を素で受け止められるようになった。
正直、それをきっかけに随分楽になった。
そんなこんなを改めて思い起こし、区切りをつけてくれた1冊。
もちろん、
手のひらサイズのハイテクカメラでこんなに楽しく撮れる!という写真集として、
十分価値ある1冊だ。
| - | - | author : miss key
Cut the World
声が素晴らしいから、もう他には何も要らない
時にそんな風に思える歌と出会える。 

偶々ジャケットが印象的だったので買ってみたオーケストラとの共演盤、"Cut the World"、
Antony and the Johnsonsの最新アルバム。


61BGE6vObDL._SL500_AA300_.jpg


曲の中には、過去の共演の影響か、ダイレクトにビョークを思わせる内容のものがある。
彼の声自体が何かの存在感の強い楽器のようなので、
伴奏と競争のようになってしまう場面もあり、
そういう金管なんかの装飾的なものはむしろ余計な感じすらあって。

彼という人の声が、声だけが美しく響くためには何が必要なんだろう、
それにはきっと、ピアノのシンプルな弾き語りがいいのではないか。
ひょっとしたら、
ベスト盤的な選曲の本作で気に入った曲から元のアルバムに戻るのがいいのかも知れない。

或る種の祈りにも似た歌と歌声。
中性的でつかみ所の無さも、実は故意に生み出された世界なんだろうか。
それにしてもこの声、この歌声。
歌声が美しいメロディにのせられるだけでこんなにも説得力を持つものだったとは。
pop & rock | - | - | author : miss key
BTTB
ここ数日時間があり余っているのは、
先日、インフルエンザに罹患してしまい、隔離休暇中のため。
前回のインフルエンザ罹患から10年ぶり、上京してから3度目になる。
その都度、いい薬が出たりなどして対処は楽になってきているが、
時間の経過とともに体力が落ちていることもあって、3回の中で一番キツい体験となった。

2度目の検査でようやく発覚という不幸も重なったが、
40度を超える高熱というのは、体中の細胞が一斉にレジスタンスの後、
それこそ持てるエネルギーを使い切ってしまうので、またしても一斉に呆ける様が、
自分の体ながら、情けなくともどうしようもない。

頭の細胞も酷い熱で随分死んでしまっただろうから、余計なことも一緒に忘れられたろうか。
このややこしい時期に同僚には負担をかけてしまい申し訳なくて入る穴も見つからないが、
生体テロ状態にならないよう、こうして部屋の中でじっとしているのも仕事と思って、
臨時の冬休みを大事に使うくらいしか頭がまわらない。

そういえば、と戦メリの後、坂本龍一のアルバムをがさがさと漁ってみた。
最初に聴いた「千のナイフ」から一体何年経っているのか数えるのも嫌になるが、
最初というのは余程印象的なものらしい、いろんなアルバムを買って聴いてきたけれど、
一番好きな坂本作品と言われるとやっぱり千のナイフになってしまう。


bef546020ea07273b0454110.L._AA300_.jpg


BTTBという作品には、「ウラ」盤も出ていて、
どちらかというとそのミニアルバムの方がよく聴いてきてはいるが、
降った雪がなかなか溶けず、部屋の中も冷蔵庫のようにキンと冷えているような日には、
こういうシンプルでまとまったピアノ作品もいいなあと思って聴き直してみた。

曲のディティールよりも何よりも、平熱に戻り、普通に音が聞こえることにほっとする。
耳の状態が本調子に戻るのに週末ぐらいまでかかってしまうんだろうが、
しばらくはこうして耳に優しい音楽で慣らしていくしかないだろう。

医師の話では、都内では先週から爆発的に患者数が増えたのだという。
当分はその猛威を振るうと思われるので、発症を避ける意味でも体調を整えられたし。
音楽を聴くのも楽しむのも、健康あってのことと当たり前のことを痛感した数日間だった。
pop & rock | - | - | author : miss key
Merry Christmas Mr.Lawrence
映画監督の大島渚さんが亡くなったニュースに思わず溜息が出た。
著名な方の訃報がこれだけ続くとそれなりに不感になっていたりもするが、
作品の好き嫌いはともかくとして、日本の作品をそれほど観ていないわたしでも、
思いつく作品は両手で足りないほど。

ただ、映画音楽との関連でいえば「戦場のメリークリスマス」、
そして日本版監督作品の「風が吹くとき」くらいしか手元にサントラ盤がない。
ではと振り返るに、たけしのあの笑顔が印象的な戦メリを選んだ。




映画ももちろん、地元の映画館に観に出かけた。
当時、YMOの熱狂的なファンだったこともあり、坂本がラジオで紹介などしていたので、
もう絶対観なければとかなり力が入っていた記憶がある。
本作は今考えても非常に個性的なキャスティングがなされていて、
部分的なセリフ回しは妙に詳しく覚えていたりして、10代の頃の興味が目前に蘇るようだ。

本作のサウンドトラックは言うまでもなく坂本龍一の初サントラ作品。
楽曲による構成がロジカルで音楽だけ聴いていても充実した内容で、
ミニマルだったり、或は現代音楽のような手法やworld色もほんのりあったりと、
思えば現時点で喜んで聴いている音楽の芽が一通り詰め込まれていたりするのには驚いた。

本作以降の坂本龍一によるサントラ作品は、
より物語に寄り添いコンセプチュアルになりながらも、
オケ作品からピアノソロまで演奏形態には幅を持たせながら大きな流れを生み出していく。

そういえば、このアルバムにはシルヴィアンの歌バージョンは入っていても、
教授のピアノソロバージョンは入っておらず、
当時、カセットブックなるものを購入して、そのテープでピアノソロを聴いていた記憶が。
残念ながらカセットテープはほとんど手放してしまい、現物を確認できないが、
その後も教授はいろいろな場面でこの曲を弾いているようで、音源入手はむずかしくない。

サントラ用に用意したオーケストレーションの壮大なアレンジよりも、
このタイトル曲のように、素朴なピアノソロの方がいいと感じるのは、
それだけメロディーワークと構成がしっかりしているからでは。

映画の方も見直してみようかと思ったら、手元にあったのはVHSテープで痛みも酷かった。
DVD化はされているので、今度またレンタルで探してみようかと思う。
ちょうどインフルエンザ罹患で隔離休暇中のため、時間はたっぷりある。
まあ、こんな状況を喜んでて良いわけでは決してないのだけれども。
cinema & Soundtrack | - | - | author : miss key
初雪
東京に今年最初の雪が降った。
雪が降る、というと、粉雪が舞い散り、しんしんと降り積もる様を思い浮かべるが、
今日のはそんな生易しいものではなく、
どんどん、じゃんじゃん降るといった様相で、 
この部屋に引っ越して来て以来、初めてベランダの雪かきをした。

雪、というと、
例えば"19"(アデルではなくてアルスー)の"Первый снег"が思い出される。
彼女はほんの13とか14の歳で堂々デビューし、
今では女優やモデルもこなすマルチタレントだ。
でも、音楽で言えば、
このアルバムを含めた1stからの初期数枚が、彼女らしくまとまっていると言えるだろう。


220px-Alsou_-_19.jpg


つぼみが開き切るかどうか、という微妙な加減がかえって切なくさせる歌唱。
日本のCD店でも並んだアルバムだから、world好きな方ならどこかでご覧になったかも。
ちょうどt.A.T.uなんかが輸入されてキャンペーン著しい頃で、
ロシアのポピュラーに一瞬、商業的な目が向いた時期と重なったこともあったと思う。

歌の文句は一見、どうということのない恋物語だけれど、
ちょっとしたことばの言い回しというか、ほんの一言の、
胸をそっと押されるような適度な圧迫感が心地良いのだ。


  Ты мой первый снег
  Я тебе так рада
  Ты пришел ко мне
  Навсегда, навсегда. Слышишь...


もっとも、今日のようにどかどかと降る雪にはあまり合わないけれど、
「雪の降る町を〜想いでだけが通り過ぎてゆく〜」では寂しすぎるから。

Алсуの"19"、
リリースから10年以上経ったいま、改めて聴きたいロシアンポップスの道標的1枚。
pop & rock (russian and other slavic) | - | - | author : miss key
Lys & Love
新しいことにチャレンジしたり、積もり積もった課題を解決したりするきっかけは、
多分、重たいニュースの連続で毎日顔をしかめて過ごすより、
1日1度は心から笑ったり笑顔でいたりすることからの方が掴めそうな気がする。


41N7UfUkpFL._SL500_AA300_.jpg


Laurent Voulzyの最新作、"Lys & Love"。
否、この歌手について詳しかったわけでもなくて、気まぐれにジャケ買いしてしまった1枚。
紙ジャケットの表紙をめくってみると、
凝ったデザインのブックレットに変梃ギターを抱えた本人の写真。
好き嫌いがはっきり分かれそうなノリだけど、音楽はいたってポップでファンタジックだ。

調べてみると70年代から活躍している大ベテランのミュージシャンとのこと。
最近はアルバム制作のペースも落ちていたようだけど、
わたしのように彼の過去作品を知っていなくても、これは素で楽しめてしまう。

それほど深刻じゃないラヴソングが、無意識のうちの緊張をうまく緩めてくれる。
そう、しかめっ面してる暇があるんだったら、
時にはこんなポップな音楽で部屋を満たしてしまおう。
明日の朝はきっと気分爽快、1日がきっと楽しいものにできる予感。



pop & rock | - | - | author : miss key
Solitude
表現しようと思ってもなかなか難しいこともあるが、
逆に意識していなくとも雰囲気に醸し出される根のようなものがあるとすれば、
例えば、彼の音楽もその1つなんだろう。
Vahagn "Vahagni" Turgutyanのアルバム"Solitude"。

41y75DfQNsL._SL500_AA300_.jpg

名で分かる通り、彼はアルメニア出身のギタリスト。
ベースにあるのはフラメンコなのだそうだけど、
太古の世を思わせる懐かしい響き、
そして熱や降り注ぐ光とは反対の、
どこか仄暗くてひんやりとした手触り、それも鉄ではなくて石に触れたときの。

本作はピアノやベース、そしてパーカッションなどを交えたアンサンブル作品で、
ぱっと聴きはお洒落で洗練されたジャズのピアノトリオのようだが、
あまりに冷静な演奏の、
偶然ではなく、隅々まで計算され尽くしたような美しさに戸惑う。

彼は時に強く、時に繊細で艶やかな響きを自在に奏で、他に絡み合っていけるのは、
べースとピアノがしっかり音楽の大きさを支えているから。
全12曲を聴き終えた者の胸に去来するものは様々であろうが、
最後に入れられた表題曲のギターソロに大きな溜息をつくのはきっとわたしだけではないはず。
心の窓を全開にして真っ正面から聴きたい1枚だ。
world music | - | - | author : miss key
花を召しませ
子供の頃の遠い記憶に浮かぶ正月の風景は親戚集まって卓を囲む麻雀の様子だ。
あのじゃらじゃらと牌をかき混ぜる音が、
最初は喧しくていたのが、あの1人の上気と残りの溜息とが織り混ざる調子にひかれ、
或はカタカナなんだろうな、と子供ながらに想像した麻雀用語に聞き耳を立ててみたり。

そうして興味を持ちながらもわたしは麻雀のルールを一切知らない。
色川武大の小説が好きだからといって、阿佐田哲也名義の小説を読んではみても、
あの記号が立て並びに頻出して物語る、或る種の醍醐味が分からなくて、
かの小説の面白さを理解できるはずもないと知人から切って捨てられもしたが、
それがわからなくても、阿佐田名義の作品には十分な面白さ、行間から伝わる空気があった。

後に映画になった「麻雀放浪記」を見て、
やっぱりルールは分からないままに見たが、ものすごく面白かった。
新しい映画作品なのにわざわざモノクロだとか、
効果音や音楽も時代に合わせた響きでいかにも「モノーラル」だったり、
或いは外連味の無いカメラの寄り方にドキドキしながら、
まさに活写される個性的な登場人物にぐいぐい引き込まれていくのだった。
だからきっと、麻雀のルールを覚えればもっと面白さが分かるのだろう、
と頭では分かっていながら、覚えることが余りに多すぎるせいか、今も不勉強のままだ。

この作品、ブルーレイで再発売され、手頃な価格でディスクが買えるようになったので、
お正月用に手に入れた。
改めて見てみると、当時見たときには気づかなかった細やかな人物描写にハッとする連続で、
あっという間に「終」の文字。

それに、
たった1度しか見たことの無い映画だったのに、
この曲が流れた瞬間、当時見ていたときのことが仔細に思い浮かんだりして、
ちょっと慌ててしまった。




岡晴夫の歌う「東京の花売り娘」。
蓄音機で聴きたくなるような伴奏と歌声、
時代といえばそれまでだが、単なるノスタルジーではない何かに強く強く共鳴する。

岡晴夫の歌というとあとは「あこがれのハワイ航路」しか知らないが、
思えばこの映画にこの歌というのがあって、
例えば「時代屋の女房」の「旅の夜風」や「陽暉楼」の「サーカスの歌」・・・。
それも蓄音機と傷だらけのレコードから流れ出る、あの重たいノイズまみれの音楽でないと、
などと思ったりするのは、やっぱり懐古趣味と一刀両断されてしまうのかもしれないが。

さて今年2013年も、いよいよというかやっぱりというか、映画と音楽まみれでスタート。
去年は新譜漁りを怠ってしまったので、そこら辺りを反省しつつ、
過去の音源もうまく掘り当てながら、ゆるゆるのんびり行こう。
cinema & Soundtrack | - | - | author : miss key
С Новым Годом 2013
新年あけましておめでとうございます。
新たな1年が一層健やかで充実したものになりますよう。
そして素晴らしい音楽とのたくさんの出会いがありますように!

***

С Новым Годом! 
Новый год, более здоровым и замечательная вещь для всех :)!



DSC00467.jpg
よもやま | - | - | author : miss key