音の快楽的日常

音、音楽と徒然の日々
聴けないとなると少々寂しいような
雑誌の記事でアファナシエフがまた来日することを知った。
都内での演奏プログラムがオールブラームスだというので、
ひょっとしてまだチケットがあるのではと期待し、問い合わせてみたが、
とうに完売したとのこと。 

割と気にしているアーティストなのに、情報誌での案内等見落としていたのだろう。
ブラームスかあ、聴きたかったなあと、
チケットが買えないと分かったら、なおさら聴きたくなり、寂しい気持ちがした。
日頃、チケ情報を丁寧に見ていなかったのがいけなかっただけなのだけど。


ブラームスのピアノ曲をここ数日聞き返しているのは、
多分、花の写真を撮っては画面上で現像したりしているうちに、
小さな音で流れていて心地良かったのが偶々アファナシエフのブラームスだったから。


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これは後期作品集(その1)で、もう1枚、後期作品集2というのが出ている。
昔は2枚組で出ていたようで、中古店でも時折見かける。
もしお手元にいずれも無いようであれば、2枚組中古ゲットが安くてお得だ。
(といっても、再発廉価版で各々手に入るので、十分安いのだけれど)

ブラームスというとグールドの曲集でもよく聴いているけれど、
この週末に撮った写真には、アファナシエフの方がよく合っているような気がして。
ハッとするような繊細な響きがリリカルで、
溢れる光の中で風に揺れていた花の様子によく合うような気がして。

今日で4月が終わる。
何十回と繰り返して来た4月の終わりが、これほど惜しいという年もなかったかもしれない。


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ああこれが歌謡曲だ!と思えるような
昨日の午後は車で外回り、築地、月島から晴海、そして京橋へ。 
驚いたのは晴海の環状2号線の工事が半年ほどで随分進んでいたこと。
道幅が広いので、かなり引いてみないと道路のイメージが浮かんでこない。
海の向こうへと伸びる新しい道路、思わず黙って立ち尽くしてしまう。

海際まで行くと、新しい船が港に着けてあった。
東京消防庁の新しい消防艇「みやこどり」だそうだ。
最近新しく造られ、お披露目を目前にして最終の整備に余念がない隊員の方々。
きびきびとした動きが眩しかったのは、きっと天気のせいばかりではないだろう。

風が強くて光が眩しい1日、久しぶりに外回りに出たら少々日焼けしたようだ。
事務所に戻って顔を洗っていたら、壁向こうから何やら楽しげな鼻歌が(笑)。
音がかすかでメロディが取りにくかったが、ポール・アンカか何かのヒット曲じゃないか。
そうだよね、もうGWなんだから、気分も上向きじゃなくちゃね(笑)。


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いかにも嗚呼、歌謡曲!といった、バンド従えてのゴージャスなボーカル。
マイケル・ブーブレが久々のスタジオ録音で沸かせてくれる。
ジャケットがもう少しなんとかならないかなあと思うけれど、それはおいといて、
1曲目からビッグバンドのゴキゲンなスイングにノリノリ。

こういう歌伴も最近はこういう録音でしか耳にする機会がなくて寂しい限り。
昔、歌謡曲の番組というとしっかりとしたオーケストラでの生伴奏で、
歌も演奏もすごく迫力があって、子供心にもすごく楽しかった。

舞台でのlive演奏で聴きたいと思う歌手は、正直少なくなってしまったけど、
マイケル・ブーブレなら文句無く、かじりつきの先頭の席で聴きたい。

アルバム"To be loved"はオリジナル4曲を含む全14曲。
ラテンからバラード、そして爽やかなPopまで色鮮やかに取りまぜられていて、
彼の魅力を十二分に堪能できる。
思えばデビューからもう10年超、
下積みが長くて・・・なんていうところは、ロシアのグリゴーリィと似てるから、
そういう意味でも無意識に応援したくなるのかもしれないけれど。


☆少し前の映像ですが、いかにも彼らしい歌を(Sway)。


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つい買ってしまうBox Set
廉価なBox Setが様々にリリースされるようになって久しいが、
一時期買い過ぎたので自重していたところ、
個別には既に持っているのに、

 箱にひとまとめになってブックレットがついている
 
というだけでまた買ってしまった箱が1つ。
アシュケナージのDecca50枚セット。


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紙ジャケのデザインはオリジナルを採用というふれこみでつい釣られたが、
日本のファンが喜ぶ精密な紙ジャケとはほど遠く、
あんまりたいしたことはなかったかな、と思ったりもしたが、
やっぱりブックレットは重要。


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中には少しの写真(これが、重要だ)とデータ。
50枚で8,000円ほどというのが、1枚1枚CDを集めたり、
リマスターで買い直したりというこれまでの「苦労」を思うとがーんとなったりもするが、
いくら断捨離アンになった今とて、こういうグッズ(音源としてではなく)は重要だ。


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ただ眺めていても、音は出ないけど、ね。
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overgrown
GWが近いというのに、桜が終わったと思ったら立て続けに雨風が。
今もごうごうと風が唸っている。何か気に入らないことでもあるかのように。

天候が今ひとつ、写真を撮りにでかけたいがそうもいかず、1日中こもって作業した。
3月中の締切であるレポート(の下書き)をようやく書き終え、
時計を見たらもう23時を回っている。道理で眠いはずだ。

日頃の不勉強がたたり、レポートの内容がなかなかまとまらず、
これを難産などと例えたら叱られてしまうだろうか。
部屋の中には自分の好きな物がたくさんあって、すなわち「誘惑」が一杯で、
気の向かない作業に集中するのはなかなか難しいと痛感した。
そのことが分かったことが、一番の収穫だったかもしれない。


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夜、頭を使う作業をするのは余り良くない。
よくも悪くも緊張が解れず、眠りも浅くなってしまうから。
なので、声までまるで楽器のような、エレクトリックなのに生温かなブレイクの新譜を。

ジェイムズ・プレイクという人を音楽の大先輩から紹介していただいた。
1stのデラックス盤で、2枚目のボーナスCDに大好きな"A Case of You"が入っていた。
心地良さの中にも時に胸の痛みを感じさせる乾いた洗練のアレンジ。

そのベースになる部分は2ndの本作も変わりなく、
心臓の鼓動のように電子音が底を這い、
その上を楽器の音やブレイクの声がたゆたう。
混ざるか混ざらないかのいい具合の響きでもって。

ああ、今夜のような夜はこの生温かさが、いかにもつくりもののそれがありがたい。
聞こえるかどうかぐらいの小音量、昔流行った環境音楽のような聴き方でもって。



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iPod
職場に新しい人たちが異動してきて、しばらくは毎日のように、
 「何を聴いているんですか」
 「何故大きなヘッドホンをしているのですか」
と訊かれ、その度に適当に返事していたものだから、
周囲の人からは「随分適当な人だ」と思われてしまったらしい(笑)。

通勤途上のリスニング用に買ったiPodは、第4世代の白いiPodを1台目に、
そのiPodがクラッシュしてHD換装を自分でやったのはいいものの、
時々不安定になるので常用を諦め、2台目として買った第5世代の30GBが今も現役で、
やはりiPodマニアな方が歴代のiPodをまとめたサイトを眺めていたら、
その製造期間から、
うちのiPodはもう8年ほどこわれもせずに毎日こき使われていることを知った。

壊れたりしなかったから、終ぞ保証書を取り出したりする機会も無く、
いったい何時買ったなんて、思い起こすこともしてこなかった。

最新機種は100GBをゆうに超える容量でもって、見た目も一層シンプルになった。
価格も随分こなれて、当時の半額で買えてしまう。

今使っている黒いiPodは傷だらけだし、バッテリーもすぐ切れてしまうので、
買い替えを何度も考えはするが、その度に思いとどまっている。
今日も一瞬、店頭で最新(といっても発売から随分経っている)機種を見たおりに、
買い替えようなんて気持ちに一瞬なってしまったのだけれど。

慣れた道具がやっぱり一番だから、壊れるまでは当分このままか。
今日また大きな地震が国内のそこここで起きていて、
こんな調子の生活がいつまでも続く保証も無いんだなあとふと思いはしても。


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そういえば、何かの映画の中で、主演のデンゼル・ワシントンが、
第3世代の光るボタン付きの白iPodに、
モンスターのきしめんのような平たいケーブルのついたイヤフォンで音楽を聴いていた。
世紀末さながらの荒れ果てた土地で、バッテリー切れのiPodを寂しそうに見やる。
充電、というのが大変な苦労と対価をともなうような世界でもって。

大きな地震が来ても幸運にも生きていて、手元にiPodが動いていれば、
そんなことが実際目の前に起きてしまったりするんだろうか。
あんまり考えるのはよそう。
夢に出て来てしまいそうだから(デンゼルではなくて、世紀末の街に漂う自分が)。
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貴方の記憶に残る人生を
4月はいつも慌ただしいけれど、こんなに忙しない年もなかったと呆然とした一週間。
いつもなら桜花賞、皐月賞と出かける予定で一杯で、
良い意味で落ち着かない季節だったりするけれども、
そんな余裕は微塵もなく、とにかく毎日、朝が来てあっという間に夜になる。

充実しているからですよ、などと宴会ではからかわれるが、
筋肉が引きつるのか、笑う顔がどことなく不自然な気がした。

エキセントリックで、逆に不安を誘うような音楽ばかり聴きたくなり、
これまた久々に出たアルバム、Земфира(ゼムフィーラ)の"Жить в твоей голове"を
iPodに入れて朝も昼も夕方も、繰り返しヘッドフォンで聴く毎日が続いた。


 

一時期、彼女の髪型を真似て、少しワイルドな(或はぼさぼさの)ショートにしてみたが、
今どこにいるのかわからない、みたいな軽みのようなものはなかなか真似し難くていた。

今回のアルバムは、表題曲が1曲目で、しんみりと語りかけるように、
シャボン玉を一つ、一つ丁寧に部屋に浮かべていくようにことばを置いていく。
と思ったら、2曲目以降はザリザリといつものゼムフィーラのサウンドで、
オルタナティヴで心にちくりと痛みを残していくような響きが連なっていく。

彼女の1stを聴いたときの新鮮な驚きを、時折思い出すことがある。
当時は6畳一間のアパートで、とにかく物が多くて、
そんなデッドな場所で無理にミニコンで音を出しているものだから、
それが嫌な音楽だったら拷問になってしまっただろうけれど、
遊びに来てくれた友人も、こんな音楽がロシアにあるんだねえと感心したり驚いたりだった。

時の経つのは思いのほか速くて、
当時の友人の中には一足早く遠い向こうの世界へ旅立ってしまった人もいる。
桜が満開の木の下で、彼らの表情を思い出しては、少し寂しくなったりもするが、
こうして元気でいることが一番の「回答」なんだろうと思わないでもない。

思えばこの春は風の強い日が多くて、
桜の花が、咲き誇ったまま千切れて落ちていたのが目に焼き付いて離れない。
供養ということではないのだけれど、いくつかは部屋に連れてきてしまった。

貴方の人生のあるひとこまは、こうしてわたしの頭に焼きついて離れない。
その逆はどうだろう。
どこか片隅でわたしという名の時間の記憶が残っていたりするだろうか。
それとも、そんなものは体と共に焼かれて灰になってしまっただろうか。


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気楽に楽しく撮る
先日、スコット津村さんの写真展に出かけた折、
期せずして作家ご本人にお目にかかれた上、少しお話もうかがえた。

あまり難しく考えず、自分が撮ろうと思ったものを素直に撮るのがいいと。

フィルム時代は何かとあれこれ考えてしまい、その気合いが写り込んでしまうようで、
堅苦しさがどこか拭えなかったけれど、
デジタルカメラになってからは、何枚でも好きに撮ることができて、
(つまり、フィルムや現像代の心配をしなくてもいい)
部屋に戻ったらすぐ画面に出して眺めることもできるからか、
メモ帳の走り書きのように、気軽に撮ることが当たり前になった。

何かを撮るぞみたいなロケハンの真似のようなことを何年も前にはしたりしたが、
しばらくそういう気力体力が失せてしまってからは、
カメラはただ眺めて愛でる対象と成り果てていた。
でも小さなデジカメを買ってから、特に最近のは簡単ですごくよく写るから、
いいなあ、きれいだなあ、いったいなんだろうと思う度にさっと写し撮ってしまう。

慌ただしい通勤途上でも、数秒あれば撮れるから、
取りあえず写しておいて、
何か思ったり感じたりしたことを、画像を見ながら思い出して考え事をする、
そんな贅沢な時間の使い方も覚えた。

スコットさんの写真は、ご自分で"shot & shot"と称されていて、
或る瞬間が真空パックされたような世界で、
被写体はどれも活き活きとして、今にも声が聞こえて来そうだったりする。
そんな写真をわたしも撮れたらいいなあと思いつつ、
犬も歩けば的に気楽で気張らない写真を、今年は大いに楽しんでみようと思った。

◇ スコットさんのインタビュー記事
  http://photo.yodobashi.com/live/instance20130405/index.html
◇ スコットさんの作品集(blogへのリンクもあります)
  Photo Yodobashi "Live Leica"


よもやま | - | - | author : miss key
包みこむような
久々にうれしい新譜が手元に届いた。 
Александр Маршал(アレクサンドル・マルシャル)の"Обернись"(Wrap)だ。




マルシャルはゴーリキィ・パークの元リードヴォーカル。
ソロになってからは、ロックからポピュラー、ロシアンシャンソンと幅を広げ、
バンド時代を遥かに超える活躍で今もライブ会場が一杯に埋まるアーティストだけど、
彼の歌はぶれずにずっと同じ方向を向いてた気がする。

最近のPVやテレビ映像を見ると、髪も透き通るようなほど白くなって、
それはそうだ、自分だって一体何年ファンやってるんだと過ぎた時間の長さに驚くけれど、
でも、声量はさすがに少し落ちたかも知れないと思うくらいで、全然変わらない。

今回のアルバムにはオリジナルとカヴァー曲から編まれた全14曲。
意外な選曲だったのは、
Игорь Саруханов(イーゴリ・サルハノフ)のオリジナル、"Поплакала, и хватит"。
こういうしっとりとした美しい歌詞の歌を彼に歌われてしまうと、
いったいわたしはどうしたらいい(誰もそんなことは気にしていないけれど)!

心の隙をふいにつかれて目眩がしたけれど、
気がついたら柔らかなシーツにでも包まれてるような不思議な感覚。
今朝は新緑目映い街路樹に目を奪われたが、まだまだ春を愉しみたい。
ああ逝ってしまうという惜しい感じが胸を優しく締め付けるのがまたいいのだけれど。

マルシャルという歌手は、本当にぶれない人だけど、でもいつも新しい彼を見せてくれる。
ずっと歌っていて欲しい、わたしにとって宝物のようなアーティストの一人。

(※最初にマルシャルを紹介してギターを弾いているのがイーゴリです)

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lay me down
仕事帰りに立ち寄った写真展。
シアトルの街、街の人々の表情が、
それこそプリントから飛び出して来そうなほど活き活きと写し撮られていて、
深呼吸をしながら眺めた。

色鮮やかで時に激しいという表現が合うほどのコントラストに、
光と、その街の空気が瞬間、瞬間にショートしているような目映さを覚えた。


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Cold Specksは女性ソウルシンガーによるプロジェクト。
CSI:NYのシーズン8を見ていたら、途中、まったりと濃い歌声が流れて来た。
それが彼女の"Lay me down"、
アルバム"I predict a graceful expulsion"の最後に収められた曲。

2、3分の短い曲が11曲、
素朴で素っ気ないギターの弾き語りが、かえって声の濃さを引き立てているよう。
先の写真展では、もっと静かなBGMが流れていたけれど、
わたしの頭の中にはSpecksの歌声がぐるぐると渦巻き始めた。

***

翌朝、あれこれしなければいけないこと、読まなくてはいけないものが山積みで、
昨日の体験を頭の中に引きずりながらなんとか気持ちを切り替えようとは思うものの、
ちっともうまくいかなかった。

そんな日もあるよ。

誰も言ってくれないから独り言(笑)、夕方からは大雨だというから朝から外に出た。
あいにくの強風に曇り空、写真を撮るような気分ではなかったけれど。
犬も歩けば棒に当たる、ではないけれど、
八重桜の花の重たさがそうさせたのか、まだ散るには早い花がそのまま落ちていた。
lay me down, lay me down..........


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pop & rock | - | - | author : miss key
今夜聴くとしたら
いつか島レコードのことを書いたけれど、
節目、節目に思うのは、今手元に何枚かレコードを出すとしたらどれにしようか、
みたいな、他人からすればどうでもいいようなことばかり。

今日という日は、わたしにとって何度目かの節目で、
毎年、やっぱりこの日を迎えられるのが本当に楽しみで、本当にうれしい。 

(FBやメールでのたくさんのメッセージありがとうございます)


ここぞ、という時に針を落としたくなる1枚がある。
出だしの数秒で、

 人生 生きてるだけで まるもうけ

という思いで胸が一杯になってしまうような素晴らしい音楽の詰まった1枚が。

今夜はChet Bakerの残した最晩年のスタジオ録音、 "The Heart of the Ballad"を。
中でも"All the Way"という曲が心の隅々まで沁み渡る。
これを歌った彼の眼には一体何が映っていたんだろうか・・・。

時を超えて傍に行くことはできなくても、
声のかすかな震えや温もりから何かを想像することは許されるよね、
誰も居ないだろう闇夜にそっと問いかけながら、静かな歌声に包まれる幸せという名の夜。


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レコードの話 | - | - | author : miss key