ジャンルに拘らないで | 2013.08.30 Friday |
ジャンルに拘らないで音楽を聴けるようになったのは何時頃からだろうか。
10代の頃、小難しい現代思想の本を(無理に)読むことと同じ感覚で、
モダンジャズを聴くというのがちょっと流行ったりした。
単にかっこ良く見えたからじゃないか、と思う。
中身が分からなくても、肩肘はってそういうのを楽しむ(ふりをする)というのが。
映画音楽で始まったわたしの音楽体験は、今まさにそこに回帰しているという感じで、
わずかな空間を逆手にとって空気の動くような再生をして喜んでいたりもするが、
その反面、自分の物差しで測れないような音楽に出会うと、
全身の細胞が開くような驚きと感動でいっぱいになる。
RM Hubbertという人を知ったのは、つい最近のことで、
LINN RecordsのHi-Fi音源リストでこのアルバムを見かけたのが最初だ。
彼はロックバンドをやっていたようだけど、
今はフラメンコギターを使っての演奏で、もうすぐ3枚目のアルバムをリリースする。
"Thirteen lost & found"という不思議なタイトルのこのレコードは、
爽やかだけど、極太なギターの音色で始まり、
途中、やっぱり不思議なメロディラインと、女性ヴォーカルの楽曲を挟んで、
最後は見事に「着地」する。
なんだか、遊覧飛行にでも連れ出されていたような、不思議な感覚。
そうでなければ、知らずに口に入れたキャンディーが、いろんな味に変わって、
それでもって次はどんな味になるのかと、つい期待してしまうような。
彼はグラスゴー出身のギタリスト、というのも、LINNが取り上げている理由かもしれないが、
もちろん録音も良くて、
本当なら提供されているHi-Fi音源で聴く方が、
もっと身震いするような感覚がお腹の下の方からこみ上げても来そうなのだが、
へそ曲がりなわたしは、すごく時間がかかったが、LPで手に入れた。
それでもって、このアルバムはぜひレコードで、これこそベストマッチだ、
などと独りごちている。
彼のことを調べていると、ポストロック、とか、下手するとパンク、とか。
こういう単語を目にすればつい敬遠したくなるわたしだけれど、
このジャケットにして、出だしのこの音! が全てを物語っているような気がして。
今週はトラブルが雨霰のように降り注ぎ、一週間が一ヶ月のようにも感じられたが、
こうして部屋に戻ってくれば、当たり前のようにレコードが回っている。
それとこれとは脈略のないことだけれど、
がんばったかいがあったな、とやはり独りごちる猛暑の夜だ。
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