音の快楽的日常

音、音楽と徒然の日々
from Sweden
レコードを随分いろんな国の方から譲っていただいているが、
スウェーデンは初めてかも。
切手がきれいだから記念に画像を貼っておこう。

隅にある、fragileのスタンプもまた可愛らしい。
譲っていただけた盤の状態もすごく良かったのだけれど、
レコードを大切にしている方からのパッケージや手紙は、
ちょっとしたことだが、印象に残るものが多いような気がする。


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レコードの話 | - | - | author : miss key
One for Klook
昨日、今日といい天気で冷え込みも少し和らいだ。
なのに、夕方から外は凄い風、轟々とその音だけなら台風のよう。
だからといって負けずに音量を上げる訳にも行かず、
どうしようかなあとライブラリを眺めていて、これならと選んだ1枚。
Joe Haider TrioとDusko Goykovichのセッションアルバム、"One for Klook"。


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お洒落でリリカルなピアノトリオの演奏とDuskoがフィーチャーされた曲が半々の全8曲。
あんまりしんみりするのも週末だから、というか、週明けに向けて気が重いし、
かといって、あまりにテンションが高いのもかえって辛い。
ということで、適度に美味しいところ取りのようなこのアルバムはピッタリなのだ。

音が目一杯詰め込んであるのとか、
ガツンと来るのがいい向きにはもの足りないかもしれないが。
無駄な音がなくて、流麗で、
それでいて音楽の強さもしっかりあって。
Duskoの素っ気ないミュートともいい具合に溶け合っている。

早いもので1月もあと一週を残すのみ。
自分のペースを見失わずに一歩一歩確実にいこうと改めて思う週末。
others (music) | - | - | author : miss key
meddle
正確に数を数えてきたわけではない。
でも、おそらくは、これまで一番たくさん聴いたアルバムは、と訊かれたら、
迷わずPink Floydの"Meddle"と即答する。


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世の中にレコードというものがあるのを知ったそのときの目の前にあった1枚だ。
最初にレコードを聴く楽しさを教えてくれた人の愛聴盤として、
ほかはベームやワルター指揮のクラシック盤だったのに、
その脇にそっと置いてあったのがなぜフロイドの盤なのかは、
改めて尋ねる機会があったが、「よく覚えてない」という。

彼女はもう80歳を超えているし、そんなことを今何故訊くのかという感じであったが、
再生中、盤が一定の速さで回っているのが珍しかったのか、
その様子を(わたしが)凝視していたのは面白くて忘れられない、ということだった。

最近はさすがに凝視はしなくなったが、
ぼんやりと盤の回る様子を眺めてみるのがやっぱり心地良く、
視線を投げ出した先あたりにプレーヤーが置いてあるのも、
便利な手元よりも、ちょっと離れて眺めたいという気持ちがあるからなのかも知れない。

それにしても、このアルバムは、一体何度聴いたらそのすべてが分かるのだろう。
いまだにはっとすることもあれば、じっと考え込んでしまうこともあり、
或は元気をもらったり、癒されたりもする。

いつかこの作品をまるっとセルフカバーして欲しいなあ、そう思っていたが、
オリジナルのメンバーが欠けてしまってそれは叶わぬ夢となって久しい。
ここのところ、緊張が続いているせいか、ろくな夢を見ないけれども、
同じみるなら、そんな演奏のステージを夢みたいものだと思う。
できることなら、わたしがリックと一緒に連弾したりもして・・・。
pop & rock | - | - | author : miss key
The numbers station
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国家の特殊任務に関する指示を乱数による暗号で送電する局を巡り、
陰謀に巻き込まれたひとりのエージェントと暗号のプロの物語。

筋立てに大きなひねりもなく、物語は淡々と進んで行く。
光も音も引き絞ってあり、いかにも彼の国の辺境にある無線局といった趣きで、
いったい何時の時代の話かと錯覚しそうになるが、
暗号化のシーンでもって今時の、おそらくは普通の暮らし方をしている人間からは、
想像すらつかない世界の出来事と気づく。

派手なアクションを求めるならきっと他の作品がいい。
John Cusack演じるエージェントの、瞳の表情がなんとも言えぬ憂いを帯びて、
北国の海の暗さをふと思い浮かべる。

邦題から、当初はもう少し違う展開を想像していた。
或はその「陰謀」の深層に迫る件は省略されていて、
目の肥えたサスペンスファンを唸らせるようなものでもないと思う。
それでも、観た後のこういう余韻を残す作品は久しぶりで、
できれば小さな映画館で夜遅い時間にぼんやり眺めてみたかった。
国内の作品にはなかなか望めない色合いと静けさのある1本。
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龍笛
年末に見た映画が印象的だった。
BSで流れていた少し前の作品の1つだったが、
夢枕獏さんの「陰陽師」シリーズを映像化した2作目で、
主演を1作目からの引き続きで狂言師の野村萬斎さんが演じたもの。

話の筋は家族が漫画やらで読んでいたのを聞いて知っていたのだが、
小説や漫画の頁から飛び出した安倍晴明が活き活きと、
しかもあるときは妖艶かつ美しく演じられているのをみて、
大袈裟を恐れずに言えば、時めく瞬間の連続だった。

この物語には、安倍晴明と同じく歴史上の人物、源博雅が登場する。
龍笛(りゅうてき)と呼ばれる古来の楽器の名手として名高い人だそうで、
映画の中でも笛を吹くシーンがたくさん出てくる。

いつもなら、映画のサントラを探して楽しむところ、
今回はどうしてか、その古楽器がとても気になったので、
そういう録音があるのかどうかと思いながら探したら、
古い古い譜面を再現して演奏集が出ていたので早速聴いてみた。
長谷川景光さんの龍笛でそのタイトルもずばりの「源博雅の龍笛」。


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以前ならこのCDを棚で見かけても、手に取ることはなかったと思う。
雅楽を耳にする機会がなかった訳ではないが、
笙の、あの独特の響きであったり、舞台の合間に響く鼓であったりと、
正直、横笛の音色は耳には残っていなかった。

さて、このアルバム。
現存する最古の笛譜である「新撰楽譜」の解読により、復元、演奏された楽曲集。
といっても、なかなか演奏された笛の音を想像しづらい。
素朴ながら表情豊かにたゆたう笛の音は、
平安京のその昔、朧月夜に琵琶を連れてどこからか笛の音が聞こえる、
そんな空想を逞しくする。

西洋音楽の音階に慣れた耳にはそれだけで独特に響くけれども、
おそらくはこんな風情のある音楽が流れていた世の中は、
今と比べれば、その時間の流れ方も違ったのではないかと思えるほど、
ついて出るは溜息ばかりなり、の夜だよ。




 
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8月戦争
この映画がDVD化されてから、随分あちこち探したが、
本国以外のお店では在庫なしばかりでどうしても手に入らなかった。
なので、見るのを半ば諦めていたのだが、
2年経ってから期間限定ではあったが日本の映画館でも上映されるとは想像もできなかった。
原題"Август. Восьмого"、「オーガスト・ウォーズ」。


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ロボット映画が流行ったのが追い風になったのか、或は権利関係の問題なのか、
理由はわからないが、
あの南オセチア紛争からたった数年でそれを下敷きにした作品がでるとは。

誤解されているようだが、この作品はロボット映画ではない。
紛争に巻き込まれた我が子を守るために戦地に乗り込む母親の物語であり、
生々しくも激しい戦闘シーンが延々と続いていく。
ヒーローに憧れる子どもが想像するロボットや怪獣の動きが所々で重なるが、
そうでもしなければ、いろんな意味で難しかったというのは考え過ぎか。

ラブストーリーとして眺めるには、
本物のロシア軍の協力のもとに撮影されたという戦闘シーンが
あまりに長く重たすぎるが、
どちらが、という問題ではなく、
その背景にある旧ソ連圏の複雑な歴史と文化について思い起こすのに、
十分なきっかけや着眼点を与えてくれる。

堅苦しいことは抜きにすれば、
ロシア国内で活躍する若手俳優も出演していて、
こういうメジャー作品(といえるかは?)の鑑賞をきっかけに、
日々、新着情報に並ぶ山のようなロシア映画作品の中から、
自分にとって面白そうなこの1本を探すきっかけにしてもなかなか楽しい。

さて、ここのところ、映画の挿入歌であたっている感のあるЛюбэ(リュベー)だが、
この映画でもエンドロールのBGMに流れているのが彼らの歌だ。

 ◇ Любэ, Корни, In2NatiоnによるOST "Просто Любовь"

 


ヒップホップやロックのミュージシャンとのコラボはロシアの歌謡界でそう珍しくはないが、
彼らのようにロシア度!が強烈に高いバンドとのコラボレーションは、
わたしがロシアのポピュラーを聴き始めた頃はとても想像ができなかったこと。
(もちろん、ヒップホップと呼ばれる音楽もなかった時代だが)

ちなみに映画作品のDVD(Blu-ray)は日本語吹き替え、字幕ともにOK。
たまにTSUTAYAでロシアの映画DVDを見つけるが、せいぜい日本語字幕まで。
願わくば字幕なしでもガンガン見られるほどの語学力が欲しいところだが、
なかなかそうもいかない。
本編132分というちょっと長めの作品だが、ネットでの予習無しでの鑑賞が吉。
上記の「おためし映像」を見て気になった方はぜひ。
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花のような一瞬
強烈な寒波に見舞われ、災禍を招いているという海外のニュース。
マイナス二桁の気温は一度だけ体験したことがあるが、
そこまでいくと、もう寒いんだかなんだか分からない。
寒過ぎて感覚が麻痺してしまうからだろうか。

東京もいかにも冬らしい冷え込みで、
部屋の中でも指先がかじかんで動きが悪い。
アームを操作する手の危なっかしさが、ちょっと困る。
なので、ここ数日はCDの音源をおとなしく聴いている。


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アラーキーの題字と写真であしらわれた早川義夫さんのミニアルバム。
「花のような一瞬」というタイトルの刹那さが切なさとだぶる。
シンプルなピアノの弾き語りが、時に重たく突き刺さるものの、
この空気の冷たさには、このぐらいじゃないと音楽が負けてしまいそうだから。

なぜ、アラーキー?
と思われた方は、ぜひ一聴を。
唸るような独特の歌い方は少し慣れが要るかもしれないが、
普通のことばで編まれた飾りっけゼロのラブソングがこんなに威力があるって、
なんだかすごいね、いいよね、と思うから。

すでに廃盤なので探すのはちょっと面倒かもしれない。
或は後のオリジナルアルバムに再度別アレンジで入れられた曲もあるけれど、
こちらの方がずっと素朴で、それでいて生々しい。

アラーキーの写真集を引っ張りだして眺めてみる。
歌と写真が頭と心の中でいい具合にリンクして、新しい絵が広がる。
寒い部屋の中で、聴き終わったときの、ぽっとほんのり温かな点。
そこからそろそろと温かな血が流れ出るようにして広がるのは、
或る種のやさしさなんじゃないかと、信じてしまいたくなる1枚。
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Hungaroton
新年早々にレコード店に出かけた。
賑々しい雰囲気もさることながら、
毎日の目玉を作ろうと壁やらお楽しみの箱に少しずつ入っている注目盤に、
お店の気合いを感じて一層楽しくなってしまうのはもはや病気だろうか。

年末、ご近所の音楽ファン方を訪ね、深夜まですっかりお邪魔して、
あのCDやあのレコードと、これはという演奏を次々に堪能したが、
その時にひときわ耳に残ったのが、
ハンガリーのチェロの名手、Miklos Perenyiという演奏家の録音だった。

バッハの無伴奏は貴重な3枚組の箱入りだったが、
何と言っても端正で清々しい音色は日頃Shafranばかり聴いているわたしには、
また別の世界を覗いてしまった気がした。

その箱のデザインもさることながら、"Hungaroton"というレーベルを見て、
Yugoton、とかに何と無しに愛着というか執着を感じてしまうわたしは、
ああ、これはわたしのところに来ないといけないレコードだと意味も無く決め込んだ。

そうはいっても、そう簡単に件のレコードは見つからないからね、
と自分に言い聞かせつつ、出かけたいつものお店だったが、
これが運良くPerenyiによるコダーイのレコードがあった。
今年の盤運はそう悪くなさそう、と思ったら、
またしても他人には意味不明の笑みが漏れてしまったかも知れない。


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先述の"レコードの館"では、小編成のものを多く聴かせていただけたが、
振り返ってみれば、うちには室内楽のような盤はものすごく少ない。
独奏か一気に大編成、というのは極端というより分かりやすい世界だが、
小春日和にうとうととする心地良さの響きを知ってしまったからには、
もう後には戻れない(笑)。
また一つ、目の前に新しい扉が開いてしまった。

思えば、弦楽で気に入っている数少ないアーティストで、
最初にバッハを聴いたケラー四重奏団があるが、
思えば彼らも確かハンガリーの演奏家だ。

それにしても、一層冷え込んできたこの時間帯にひっそりと聴くコダーイ、
一音、一音がたおやかで慈愛に満ちた響きよ。
今年もまたレコードにまみれてしまおう。
レコードの話 | - | - | author : miss key
2014年はMahlerから
新しい年に早速何を聴くのか。
年が明けたからって別にいつもと取り立てて変わることはないが、
時間だけはたっぷりある。
いつもならぶつ切りになってしまったりする演奏時間の長いものが候補だけれど、
何、迷う必要は無い、マーラーを1番から順番に聴いた。

手元にはいわゆる歴史的録音のような古い時代のものはほとんどなく、
比較的新しい録音ばかり。
順不同で並べると、シノーポリ、ジンマン、マーツァル、ハイティンク、
ノイマン、バーンスタイン、コンドラシン、サロネン、アシュケナージ、
ブーレーズ、ジュリーニ、ゲルギエフ、スヴェトラーノフ、テミルカーノフ...。

1番はこれ、2番はこれ、という具合に選びながら端から聴いてみた。
前からこういうことを面白がってやっていたけれど、なかなか体力がいる。
音楽を聴くことは体力の要ることだ、というのが体で理解できる。
苦痛とか苦行とかの意味ではなく、お腹も空くし、
音楽が迫ってくる、そのエネルギーをしかと受け止めるのに体力がいる。

できれば、一人の指揮者で全曲揃っているのが嬉しいのだが、
ノイマンのように2度目の全曲録音が果たせず終いという、
何とも残念な(しかも間に合わなかったのが7番、8番という)こともあるが、
今日になってお年玉の如くブーレーズのマーラーBoxを手に入れた。


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たしか2年くらい前に一度予約したが、何故かキャンセルになりそのままだったのを、
去年の10月に発売済なのを偶然知った。
全集が出るというので、バラのCDはほとんど買わずにがまんしていたから、
ああ、これでようやくだ、といそいそと準備をした。

今年は1番をシノーポリで聴いたが、来年はきっとこのブーレーズにするだろう。
好みや何かが少しずつ変わっていくから、不動の布陣がしかれているわけではないが。

クラシックがものすごく好きとうい訳でもないのに、なぜかマーラーだけはたくさんある。
元々は映画「ベニスに死す」のサントラに入っていた5番がきっかけで、
買ったCDがバーンスタインの録音だったのが最初だ。
例えば、Jazzのスタンダードナンバーをいろんなアーティストで集めたり、
というようなことはあまりやらないのに、
なぜか、クラシックだと、気に入った曲を指揮者や演奏者で聞き分けるのが楽しいし、
誰に言われるでもなく、自然とそうなっていく。
音楽のジャンルで姿勢を変えているわけではないのに、ちょっと不思議だ。

「最近、クラシックばかり聴いているんですか」

とよく訊かれる。
そんなことはないけれど、
静かな時間にぎゅーっと音がするくらい集中して聴くのが、
胸の中のごちゃごちゃとしたまとまりのつかないものと向き合い、整理するのに、
とても都合がよかったりするから、
そうしたときに良く合う音源がクラシック音楽だ、ということなのかもしれない。

1年、1月、1日と、時間の進み具合は同じはずなのに、
世の中の様子や環境の変化はどんどんとスピードがあがっているように思える。
その変化に無理についていこうとは思わないが、
目に見える変化の早さに戸惑いや不安を隠せないから、
凪いでいるはずの胸の内まで騒ぎだす。

2014年は「物事が安定して進んで行くような年でありますように」と年賀状に書いた。
できれば、来年の今日もこうしてマーラーを全曲聴いて、窓からぼんやり外を眺めたい。
今年はどうか穏やかな1年でありますように。
others (music) | - | - | author : miss key
С Новым Годом! 2014
新年あけましておめでとうございます。

去年は短いようでいて、内容の濃い、とても長く感じられる1年でした。
このblogもたくさんの方に目を通していただくことができました。

新たな年も、ぼちぼちとですが、書いていきたいと思います。
今年もまた多くの素晴らしい音楽との出会いがありますよう。

***

С Новым Годом! 
Новый год, более здоровым и замечательная вещь для всех :)!


よもやま | - | - | author : miss key