新しい年に早速何を聴くのか。
年が明けたからって別にいつもと取り立てて変わることはないが、
時間だけはたっぷりある。
いつもならぶつ切りになってしまったりする演奏時間の長いものが候補だけれど、
何、迷う必要は無い、マーラーを1番から順番に聴いた。
手元にはいわゆる歴史的録音のような古い時代のものはほとんどなく、
比較的新しい録音ばかり。
順不同で並べると、シノーポリ、ジンマン、マーツァル、ハイティンク、
ノイマン、バーンスタイン、コンドラシン、サロネン、アシュケナージ、
ブーレーズ、ジュリーニ、ゲルギエフ、スヴェトラーノフ、テミルカーノフ...。
1番はこれ、2番はこれ、という具合に選びながら端から聴いてみた。
前からこういうことを面白がってやっていたけれど、なかなか体力がいる。
音楽を聴くことは体力の要ることだ、というのが体で理解できる。
苦痛とか苦行とかの意味ではなく、お腹も空くし、
音楽が迫ってくる、そのエネルギーをしかと受け止めるのに体力がいる。
できれば、一人の指揮者で全曲揃っているのが嬉しいのだが、
ノイマンのように2度目の全曲録音が果たせず終いという、
何とも残念な(しかも間に合わなかったのが7番、8番という)こともあるが、
今日になってお年玉の如くブーレーズのマーラーBoxを手に入れた。
たしか2年くらい前に一度予約したが、何故かキャンセルになりそのままだったのを、
去年の10月に発売済なのを偶然知った。
全集が出るというので、バラのCDはほとんど買わずにがまんしていたから、
ああ、これでようやくだ、といそいそと準備をした。
今年は1番をシノーポリで聴いたが、来年はきっとこのブーレーズにするだろう。
好みや何かが少しずつ変わっていくから、不動の布陣がしかれているわけではないが。
クラシックがものすごく好きとうい訳でもないのに、なぜかマーラーだけはたくさんある。
元々は映画「ベニスに死す」のサントラに入っていた5番がきっかけで、
買ったCDがバーンスタインの録音だったのが最初だ。
例えば、Jazzのスタンダードナンバーをいろんなアーティストで集めたり、
というようなことはあまりやらないのに、
なぜか、クラシックだと、気に入った曲を指揮者や演奏者で聞き分けるのが楽しいし、
誰に言われるでもなく、自然とそうなっていく。
音楽のジャンルで姿勢を変えているわけではないのに、ちょっと不思議だ。
「最近、クラシックばかり聴いているんですか」
とよく訊かれる。
そんなことはないけれど、
静かな時間にぎゅーっと音がするくらい集中して聴くのが、
胸の中のごちゃごちゃとしたまとまりのつかないものと向き合い、整理するのに、
とても都合がよかったりするから、
そうしたときに良く合う音源がクラシック音楽だ、ということなのかもしれない。
1年、1月、1日と、時間の進み具合は同じはずなのに、
世の中の様子や環境の変化はどんどんとスピードがあがっているように思える。
その変化に無理についていこうとは思わないが、
目に見える変化の早さに戸惑いや不安を隠せないから、
凪いでいるはずの胸の内まで騒ぎだす。
2014年は「物事が安定して進んで行くような年でありますように」と年賀状に書いた。
できれば、来年の今日もこうしてマーラーを全曲聴いて、窓からぼんやり外を眺めたい。
今年はどうか穏やかな1年でありますように。