音の快楽的日常

音、音楽と徒然の日々
ラブソングを探していたら
この気分をどう伝えたら。
日頃は甘ったるくて嫌になるラブソングも、
こうして聴いてみると、なかなかに沁みてくるものがあって。
ゆらゆら帝国最後のアルバム「空洞です」からタイトルチューンを。




ゆるっとしたギターの音にそんな特別な歌詞じゃないのに、
じんわり胸に迫るものがあって。
軽いノリなのに、聴いたあとずしんと残る、確かな重みがあって。

思えばみんな空洞、そうだ、空洞なんだと。


 なぜか町には大事なものがない
 それはムード 甘いムード
 意味を求めて無意味なものがない
 それはムード とろけそうな
 入り組んだ路地であなたに出会いたい....


ややこしい世の中だからこそ、シンプルな言葉が突き刺さる。
なのにこの響きの優しさはなんだろう。
まったりとした一体感、遠い目をしながらの一体感。
これがラストのアルバムだというのなら、そうなんだろうと納得の1枚。
 
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「ジゴロ・イン・ニューヨーク」



ウディ・アレンが出てるというのでこれはもうぜひ観たいと思っていた映画、
「ジゴロ・イン・ニューヨーク」。
ジョン・タトゥーロ演じる古本屋の三代目が商売に行き詰まり、花屋で"修行中"のところ、
これまたウディ演じる親友のマレーが何の思いつきか、
ジョンに男娼になることを勧めるところからストーリーは転がるようにして勢いが。

ウディの軽妙な会話に笑っている場合じゃない、
時にムーディで、或はシリアスで美しい場面の数々、
これぞラブストーリーの真骨頂、観ている端から膝をたたきたくなる(笑)。

  誰もがひとに触れてもらいたい、という気持ちをもっている

そんなシンプルなテーマがあれよあれよと広がり絡まりながら、
迎えたフィナーレはあっけなくもさっぱりしていてこれまた思わず口元が緩む。

お勧めできるポイントは物語だけでなく、盛りだくさんの音楽も。
ニューヨークの街並に拘って切り取られたシーンと対にして、
ジーン・アモンズのテナーが劇場に充満したかと思えば、
ディーン・マーティンの"Sway"が憂いたっぷりに響き渡る。





使っている音楽はどの曲もキャラが強いものばかりだが、
出演している俳優・女優陣はいずれも目ヂカラに定評のある方揃いで、
決して音に負けず、いい感じだ。
優男演じるタトゥーロの瞳がいつも濡れていてどっきりするけれど、
なんというか、
切ない、という感情がこれほど素敵なものだとはこの歳まで終ぞ知らなんだ、
というか。
今年夏までに観た中では間違いなく3本の指に入る1本。
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Let it Go!
週末出かけた先で、「アナ雪はもう観た?」と訊かれて、
そういえば劇場で歌声、みたいなすごいノリに気後れし,
つい観そびれていたのを思い出した。
ブルーレイももう出たよ、ということだったので、
その日の帰りに早速レンタルショップへ。
すごい枚数の「アナ雪」はブルーレイだとあとたった1枚だけというのにも驚いた。
それで、ようやく合唱の意味がわかった、「アナと雪の女王(Frozen)」。


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わたしが観たのは2D Blu-rayのオリジナルと吹き替え版。
先日書いたピエール瀧さんが雪だるまのオラフの吹き替えをやっているので、
これはもうどうしたって両方観なければという感じで4時間TVの前で釘付け状態(笑)。

物語自体はとてもシンプルで、自然と流れを追っていけばいいようになっているけれど、
場面の描き方が、ミュージカル仕立てというのもあるのか、一つひとつが深い。
ピクサー作品なんかに慣れてはいても、
本作のアニメーションの動きの軟らかさ、独特の抑揚やテンポの強弱も素晴らしく、
実写とは全く違った楽しさも十二分に堪能できる。

さて、人から聞いて気にはなっていた、
観ている子どもたちが何とはなしに歌い出してしまう、というシーン。
ああ、これなら無理もない、このわたし自身も自然と声を出したくなって納得(笑)。
女王のエルサが解放された魔力でもって雪で凍ったお城を瞬時に作り上げていくシーンは圧巻。
エルサの動作、両手の動きがまるでタクトのように観る者の心をわしづかみにする。

"Let it go"、
松たか子さんの歌唱も魅力的だったが、個人的にはオリジナルの方を押したい。
歌詞がなんといってもストレートで突き刺さるのが良い。
なんとも出遅れ感があって、ようやく辿り着いた感があるけれど。
「アナと雪の女王」、あまりに流行り過ぎて気後れがあった方にはぜひとお声をかけたい。


 
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梅雨時の湿気の酷さには閉口してしまう。
好きなレコードの音も、こうも湿度が高いともうひとつのような気がして。
乾燥して静電気地獄になるよりはいいが・・・。


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音に適度な緊張と輝きがあって、それでいてメロディや歌詞に叙情もあって。
モップスの5枚目のアルバム、「雨」。
モップスのアルバムはわたしにとってどれもきらきらと輝いて、
最初の頃の作品はもちろん後から聞いて知ったのだけれど、
小さい頃から耳にしていた音はやっぱり心地良くて、
それは同じようにして覚えた食べ物の味と似ているようで、
ウン十年経った今でもその感覚は変わらないのだ。

モップスの音源はしばらく手に入りにくい時期があったけれど、
この春にまとめて再発されていて、
妙なプレミア付きの盤ではなく、やっと普通に買えるように。
「雨」は、大好きな鈴木ヒロミツの歌うナンバーが少なめなのは残念だけれど、
音のまとまり具合でいえば、このアルバムをまずは挙げたい。


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子どもの頃の耳ってなんだか凄いと改めて感じたことが。
モップスのVo.鈴木ヒロミツは後に俳優としても活躍したことは言うまでもないが、
当時喜んでみていた刑事ドラマ「夜明けの刑事」で彼のヒット曲が使われているだけでなく、
やはり大好きなバッド・カンパニーの楽曲が挿入歌として取り上げられていて、
知らず知らずに耳に入って来た音や音楽が、今では具体的な意識の形になっている。
同様の体験はいくつもあるが、
それでも、一つ一つ、湖の底から上がってくる気泡のようで不思議でならない。
つい懐かしくて映像を探してみたら、当時のドラマってキャスティングも豪華で、
子どもだから喜んで見てただけではないんだなあとしみじみ思う。
今夜は「雨」を聞きながら休もう。
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Kazoo
LINN DSの新しいコントロールソフトがリリースされた。
その名もKazoo。
LINNの製品はどれもネーミングが少し変わっているから、
今度はどんな名前になるのやらと思っていたが、
覚えやすくて可愛い響きでちょっと意外。


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わたしはアルバムのジャケットで選盤するので、
こうしてザザーッと一覧できるのがありがたい。
左側のアルファベットバーで大まかに場所を探せるし、
Kinskyよりも見易く探しやすい。
1つのNASに約2,000枚分くらいデータが入っているが、
そのくらいの量ならさくさく探せてしまう。

プレイリストのつくり方が以前よりスマートになっていて、
最初は戸惑うもすぐに慣れた。
おそらくは、便利な機能がたくさんあるんだろうけれど、
おいおい覚えていこう。

サーバーのソフトの方はまだ文字化けがあったり安定していないようだが、
MacとiPad上で使ってみる限り、特に問題はなさそう。
Davaarのアップデートと被ってしまい、落とすのに少々時間がかかったが、
DSユーザーならKazooを試す価値ありと思う。

我が家にDSがやって来て早3年、とうとう4年目に突入した。
レコードは簡単に手放せないものの、CDはおかげで大分整理がついて、
この週末も押入の肥やし状態になっていた聴かないCDを整理した。
確かにあるはずなのに、しまった場所がわからなくてもう1度買う、
というような酷い状態から脱却できたのも、
探している最中に積み上ったCDのタワーが崩れてどっと疲れることもなくなったのも、
DSという便利な装置のおかげ。

時折、LINN DSの使い心地などお問い合わせをいただくけれど、
NASへのデータ取り込みなどは慣れてしまえば何と言うことはないので、
それほど構えなくても自然と使えてしまうし、
わたしなどはあれほど執着していたCDPからあっさり離れてしまえたので、
案ずるより産むが易し状態でした。
手元の盤が半端ない数あって、似たような悩みを抱えるリスナーの方に、
一度ぜひお試しあれと思います。よかったらぜひ。


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live in France 1987
梅雨空の続く中、手元にある音源を改めて聞き返している。
もう何度も聴いたはずのアルバムなのに、
こうして次の1枚を選んでいるとどれにしようと迷ってしまうのが自分でも可笑しい。

湿度の高い時期になぜか聞きたくなるのがChetのヨーロッパでのlive盤で、
選曲はもちろんだけれども、
あのウエストコーストでの録音のからりとした音よりも、
どこか湿り気のある拍手がぱらつく小さな小屋での録音が、
この季節に無理がないようで心地よいのかもしれない。
今夜は晩年のアルバムから"live in France 1987"を。


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Jazzレコード店のご主人に言わせれば、
Chetの盤は選曲がどれも似通っていてつまらないんだという。
もっと他の曲もやってくれよ、と。
ヨーロッパのあちこちでギグをして遊牧民のようであった数年の記録を見ると、
そうした声も合点がいくのだけれど、
こうしてその夜にその1度きりの演奏を聴いていると、
曲目は同じでもそうでなくても別に構わないという気持ちになる。
何かを表現しようとして追求しているようなスタジオ録音とは違い、
こうして当夜の空気を共有しているという錯覚に多くを支配されているからかもしれない。

Chetは日本でも人気があるのか、或は単純に売れるからなのか、
今でもぽつぽつとリマスターでの再発が続いているが、
残念ながら再発タイトルは定評のある限られたアルバムが対象だ。
今夜のアルバムのようなものは、
ひょっとしたら権利の関係もあって難しいのかもしれないが、
こうしてCDなりレコードなりを聴いていると、
ちょっと残念というか、
こんなlive演奏こそもっといろいろな方に聴いて欲しいと思ったりもする。

花が咲いて散るような潔い、或は刹那的な演奏でもないけれど、
今聴きたい!と思わせる何かがあって。
こうして音源に埋もれる生活をしていていも、
今だからこそ改めて聴きたいアルバムってあるんだなと納得の1枚だ。


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かもめのジョナサン
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かもめのジョナサン。
作者の意向で改めて発表された最終章が加えられ、
今回「完成版」として和訳も出版された。

初めて読んだ英語で書かれた本がジョナサンだったということもあって、
これはもう読まねばと予約をしてまで買ったが、
話題になっていたせいか、なかなか届かなくてやきもきした。

13の時に手に取った本が、こうしてまたわたしの手に戻って来た。
愚直、ということばをこの本をきっかけに知った。
鳥には鳥の苦労があるなどと言ったりもするが、
かもめのように空を飛んでみたいと切望もした。
いかに飛ぶか、は、如何に生きるか、と問われているようで、
問いに応えられず悩みもしたが、やがてその気持ちも凪いでいった。

数十年を経て、わたしの中で再度完結した物語。
もう少し時間ができたら、改めて自分に問いかけながら読み直してみたい1冊。


 
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The Division Bell
決して新譜に魅力がないからではないが。
つい、こうして何度も手を変え品を変え出されるアイテムに手を伸ばしてしまう。
でも、今回は買って正解だった。
Pink FloydのThe Division Bell、Deluxe Set。





アナログレコードを中心にした豪華Boxセット。
美しいアートワークも、既に知っているデザインであってもやっぱり溜息。
ストームが既にこの世を去ってしまったから、
フロイドとヒプノシスのこういう作品というのは本当に見納めなんだと思うと、
それもまた溜息で。

数年前におまけグッズてんこ盛りで出されたフロイドのBox Setは、
正直、別の意味で溜息だったが、
今回はレコードの音も○だし、カラーレコードの色も綺麗だし、
リマスターの音が気に入るかどうかは別だけれど、
こうしてまた改めてThe Division Bellを楽しめたのは本当にうれしい限り。

手元にあるのは、オリジナルのUK盤(黒い普通の盤)、
それから薄い青のカラーレコード(US盤)の2種類。
カラーの方はあまりいい音がしなくて、見た目重視な感じだけれど、
こうして比べてみると、元々のレコードも、伸びやかでゆったりとした再生を楽しめる。

今回のセットの2LPは所謂重量盤。
盤はもちろん、ジャケットや内袋なども、
ここのところ反っていてがっかりすることの多い国内発売のレコードが
なんだか悲しくなるほど綺麗に作られていて◎。
こうした豪華版の他、単体の2LPバージョンも近日中に出るそうで、
シングル盤やおまけのアートワークに興味の無い方には単体の方がいいかも。

本当はこんな蒸し暑い日の夜ではなく、
晴れた日の午後、お茶でもしながらのんびり聴きたい。
でも梅雨どきの週末に爽やかな午後は期待できないので、
或は週末まで待てないから、
海外から届いたレコードをこうして眺めつつ、溜息つきつつ、
1枚、1枚を丁寧に聴いていく。
The Division Bell、次にもしオリジナルアルバムがでていたとしたら、
いったいどんな音楽だったんだろう。
際限なく膨らむ想像で胸も一杯になる夜だ。


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