音の快楽的日常

音、音楽と徒然の日々
気持ちの整う
先日紹介したディスクガイドから何枚か買った中で、
ここずっと一番リピートしているかも知れない1枚、"bachCage"、
フランチェスコ・トリスターノのアルバム。


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クラシック音楽の聴き方が浅い自分だから、こうしたBachに違和感もなく、
乾いた喉に水が注がれるが如くの心地良さ。
当初は、それこそ時空を跨いでどんな演奏が展開するやらと頭でっかちになっていたが、
いざ聴いてみると、当たり前のことだけれど、1つの作品として驚くほどまとまっている。
調和、というと少し違う。
一本きちんと筋の通った具合の良さでもって、
ああ、こうして聴いてみる方がずっと早い、早いんだなあと思った。

年度末の慌ただしさについつい流されそうになるが、
彼のピアノを聴いていると、胸の奥の靄がすっと晴れるよう。
あと2ヶ月、と思うからつい焦ってしまうのかな、
そんなどうでもいいことをつらつらと考えながら鉛のようにどんより曇った空を見上げる。
冷たい空気に吐く息の白さがいかにも冬で、
でも冬が終わったら春が来るのだからと切り替えてみる。
今夜はもう一度このアルバムを聴いて、心の中を真っ白にしてみよう。
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季節外れだけど
先週、先々週と一週間はほんとうに長かった。
冬休みが暦のおかげでちょっとばかり長かったことが、
これだけ「社会復帰」を阻むとは・・・。

さすがに若い頃のように昼夜逆転したりするようなことはないが、
このなんというか、息の続かない感じはどうしたものか。
食事と睡眠で少し長い目で見ながら調整していくしかないだろうが、
時間の流れについていけない焦りなんだろうか、
どうも普段凝ったことの無い肩までずっしりくる始末。

というわけで、季節外れだけど、
思いっきり気持ちを緩めてくれそうな1枚を。
60年代にブラジルで活躍したコーラス&ピアノトリオのテーハ・トリオ、"Terra A Vista"。


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このアルバムがすごいのは、そろそろと再生するだけで、
ほのぼのとしたリラックスムードが部屋いっぱいに充満すること。
ボサノバって夏の昼下がりなんかに聞きたくなるんだけれど、
こういう音楽をレコードで聞いたりすると思わずうたた寝しそうなんだけれど、
外は木枯がびゅうびゅうと音を立てて何と寒そうな気配であったのだけれど、
それでもこの週末は彼らの音楽で部屋を一杯にして過ごした。
男声コーラスといい具合に力の抜けたピアノの組み合わせは、
どういう訳かリピートしていても飽きなくて。
嗚呼、明日もなんとかいつもの時間に起きられますように。


 
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A Thousand Days
年末に出かけたポゴレリッチのリサイタル。
真綿で包まれるようにして、激しくも美しい曲の数々に癒された晩。
しばらくはもうピアノは聴かなくていいんじゃないか、そうも思えた晩の後。

先日紹介したディスクガイドに、
古びたピアノの写真がジャケットになった1枚に眼が留った。
いつだったか、古いピアノの補修の際、鍵盤の地が見えた様子に、
ほんとうにこれで綺麗に直るんだろうかと内心首を傾げたことがある。

なぜポゴレリッチの話を出したかと言うと、
彼はリサイタルの演奏前に、既にホールが開場した後も、
それこそ結構ぎりぎりまで、関係者に促される時間まで、
そろそろとピアノを普段着のまま弾いていたりする、
その、時に物悲しく、切なく、それでもじんわりと体が温まるような不思議なカデンツァに、
ああこの響きがCDに収められていれば、毎晩寝る前に聴くのになあと溜息する、
そんな音楽に、このジャケットのピアノのさわりが少々似ているような気がしたから。


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Mitchell Froomの"A Thousand Days"。
ネットで検索してみると、彼はどうやらピアノではなくキーボードを弾くようで、
道理で、軟らかい鍵盤に慣れているひとの指の置き方が見えるような響きなのだけれど、
このそろそろと始まり、流れていく、そんな時間が私の部屋にも欲しかったものだから。

夜限定ではないけれど、
薄暗くなった、日もとっぷり暮れた辺りから深夜までのいい時間に、
静かに流れるピアノの音は、
いかにもな音でもメロディでもないけれど、
覚えて自分も弾きたい、歌いたいというメロディではないけれども、
こんな響きが部屋にあると、一人の夜も怖くないなあと思えたりする。

疲れがピークを過ぎて抜けきれなくなる頃に見る夢は随分と悲惨で、
何かに追いかけ回されてそれこそ逃げ回るサスペンス映画のようで、
しかもそれは不条理に満ち満ちていて、登場人物も勿論でたらめで。
朝目が覚めてくれよと夢から逃げ出すようにして起き出す朝が無くはないから。
こういうときは、矢鱈に能天気な音楽ではなく、
短調で、鍵盤がそっと押さえられているような音楽が聴きたいのだ。


新年会があって、珍しいお酒やおいしい料理を口にして、
新年の抱負を語った。
人生に、1年という区切りがあってよかった。
それが例え堂々巡りの、あの夢のようであったとしても。
今夜もまたこのアルバムを流しながら深くベッドに沈み込んでしまおう。
三連休の翌日、寝過ごさず、きちんと起きられますように。
pop & rock | - | - | author : miss key
音楽の架け橋
1年に一番まとめて本を読める時間、それが正月になって何年になるか。
とはいえ、震災後にまとめて本を手放してからというもの、
それほどまとめて本を買い込み、端から読むような真似はしなくなった。
できなくなった、という方が正確だろうか。

本を読むのには体力がいる。
多分、気力の前に、集中できるだけの体力が。
そのことに気づいたのは恥ずかしながらごく最近のことで、
若い頃は時間と体力はあっても経済力が伴わず、図書館にない本はどうすりゃいいんだ状態で、
働くようになったら、体力はあっても時間はなくなり、
職場から勤続○○周年なんて表彰してもらう今となっては、
多少のお金と時間はできても、体力的な問題が立ちはだかる。
ああ、なぜにこうもうまく行かないのか、
三竦みの問題というのはオチがどうやら同じようで。


2014年は珍しく、クリスマスプレゼントをいろいろと戴けた。
贈ってくださった当人はそういう意識はお持ちではないのかも知れないが、
わたしはちゃっかりしているので、これが世間で言うクリスマスプレゼントか、
と、一つひとつ嬉々として包みを開け、こみ上げるうれしさをかみ殺した。
その中の1冊が、タイトルにあげた「音楽の架け橋」というディスクガイドだ。


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著者の渡辺亨という方をわたしは知らない。
敢えて、検索しないで、知らないままに頁をめくってみた。
すると、「青」というテーマでもって、
ジャンル横断的に著者の感じるところの快適盤が簡潔な紹介文とともに並べられている。
その先頭に、見覚えのあるジャケットがあった。

音楽の内容は正直思い出せないその1枚のアルバムは、
なんでもグラスゴーで活動するバンドで、なんと(灯台下暗し)LINNから出ていたもの。
おやまあそれなら聴いてみなくてはとネットで検索してみたら、
これはちょっと向き合って聴いてみたいなあということで、
しばらく止んでいた音源捜しの旅が期せずして始まってしまった。

この本を贈ってくださった方は、
まさか、どんなに仲の良いご夫婦にも訪れる倦怠期のようにして、
わたしが音楽とのつきあい方を、距離を測りかね、悶々としているなどとは、
全く想像だにされていないはず。
それでも、この一冊は、ずっと取れないで苦労していた喉の閊えを
見事に一瞬にして抜いてみせた。

紹介されたすべての盤が全ての方にとってすばらしいはずはなく、
星の数より多いかも知れない盤の中から、
たった1枚でも気付きや心の靄が解けて晴れるようなきっかけとなる音楽があれば、
もうそれで十分なのだ。

柔らかな装丁の横長の本は、ぱらぱらと頁をめくって眺めるには好都合で、
気に入ったジャケットの作品を、
一昔前ならいきなり購入などして、届いてからの悲喜こもごもは避けられないのだったが、
いまどきはネットでさわりを試聴できたりもできるから、
(その意味ではどんな音楽が届くのか、わくわくする気持ちはあまりなかったりするが)
手にしてがっかりというのを避けられるから、
ウン十枚の紹介がなされているディスクガイドを手にして気後れすることもなくなった。

職業的にいい音楽探しをしているわけでもなく、
自分にとっての好評盤とそうでないものはどうしても分かれてしまうから、
そういうちょっとした、そうはいっても当たり前の流れというものが、
思えばどうもここのところ面倒になっていたのだ、多分、きっと。





今は店頭に出向いて気に入ったものを探す、ということ自体ちょっと難しくなってきていて、
以前なら、何年も前の作品が棚に並んでいて選び放題が羨ましいなどと、
海外からやってきた知り合いから言われたりなどしたのだが、
数年経ってみると、その某国と同じような状況になった。

話は逸れるが、ロシアのポピュラー音楽はストリーミングラジオでもって、
それも結構な音質で常時楽しめるようになり、
何が何でも盤を探さなくても良くなってきている。
聴けさえすればいい、そう思えば、盤の入手にこだわる理由はなくなってくる。

しかし何のきっかけもなく、ある1枚が手元にやって来れるのか、と考えた時、
それはやっぱり無理な相談であって、
となれば羅針盤とまではいかなくても、それなりの道標となる一冊が、
それもその人のリスニングスタイルによく間に合う一冊があるのとないのとでは、
音楽生活の快適さも結構変わってくるんじゃないだろうか。

今回この本を贈ってくださった方には、以前にもディスクガイドを戴いており、
前のはそれこそ読む端から「うひゃひゃ」などと絶対他所の人には聞かれたくないような、
萌えの高テンション状態が続くような特殊なものであったけれども、
この「音楽の架け橋」は、ある程度の時間、音楽に親しんで来た方にとってなら、
何かのきっかけをつくってくれるだろうと期待して損は無い。

わたしの場合、自分で探すとここに行かないんだよなあ的な、
なかなか手の届かない部分の1枚というのを何枚か見つけ、
ちょっと、否もうかなりうれしかった。
年初のお年玉、といえばまさにその通りだ。
この歳でお年玉までちゃっかり戴いてしまったような、気恥ずかしさも手伝って、
連休の怠さもどこへやら、これで溜まったディスクの整理もできるというもの。

辞書や事典のような役割でなく、いろんなところに出向くきっかけさえ作ってくれればいい、
そんな方にもうってつけの一冊。

 
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С Новым Годом! 2015
新年あけましておめでとうございます。




2014年という年はわたしにとってかつて無い程に濃密な1年でした。
音楽の聴き方も、音楽に対する姿勢も、根っこから変わってしまうほどに。
blogの更新もままならなくなりましたが、
それでも、たくさんの方に目を通していただき、とてもうれしく思います。

新たな年も、例年に増してぼちぼちとですが、書いていきたいと思います。
今年もまた多くの素晴らしい音楽との出会いがありますよう。

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С Новым Годом! 
Новый год, более здоровым и замечательная вещь для всех :)!


よもやま | - | - | author : miss key