音の快楽的日常

音、音楽と徒然の日々
伝えるということ
新しい職場で早くも1ヶ月が過ぎようとしている。
どの職場でも、引継というものがあるだろうけれど、
伝えるということは、思っていた以上に難しいことを痛感している。

聞いて分かったはずのことが全然だったりというのはわたしの能力の問題もあるが、
それにしても、これということを相手に分かるように伝えるというのは、
こんなに工夫がいることだったんだろうか。
正確に、という注文がつくからといって。

10代の頃、音楽をまだ習っていた頃のこと。
講師から、同じようなことを指摘されたことを思い出した。
理解したと思っていても、或る種の誤解も相俟って、
コミュニケーションは成り立っているのだというようなことだったと思う。

やれやれ。
この1ヶ月で一番数多く発したことばが、それだ。
もちろん、自分自身に対して。
GWの休みがどれほど助かるか、暦通り休めそうで正直ほっとしている。





何がいいかなと、選んだのがプレトニョフの弾くリストのソナタ集だった。
部屋に流れるのが、あのポゴレリッチのロ短調だったら、
気力の弱ってる今の自分には少々重過ぎる。
もちろん、あのliveでの名演を再現することはできないけれども。

プレトニョフのピアノ、澱みの無さに救われるのだろう。
それなら、モーツァルトとか、ショパンとかいろいろあるだろうに、
なぜか今夜はリストだったりする。
月曜という明日に備えて心の奥底で身構えてしまっているんだろうか。
否否、この曲の展開に惹かれてのこと、そういうことにしておこう。
冬の寝具がそろそろ暑苦しくて、部屋ごと衣替えしないといけないなと思わず溜息の夜。
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The Equalizer
最近、Huluで海外のドラマばかり見ているものだから、
新しめの映画をチェックがまるでできていなかった。
何しろわざわざディスクを借りなくても、Wiiの端末で見られるものだから、
ついつい楽をしてしまって。
それにしても、日本のドラマは少しも見たいと思わないのに、
海外のミステリーやサスペンス、刑事ものを夢中になって見てしまうのはなぜだろう。


そんなここ1月程、レンタル店もほぼノーチェックだったので久々に覗いてみたら、
デンゼルの新作が既に並んでいたので、早速。
The Equalizer、デンゼルが元CIAの凄腕エージェントという設定。





デンゼルはこの数年、随分幅広い作品に出ていて、
あれっと思うことも無くはなかったけれど、
今回は2時間超の長尺ながら、見ていてスカッとする好内容。
ネタバレしては申し訳ないから筋立てには立ち入らないが、
元CIAエージェントと可愛らしい少女、そしてロシアンマフィア絡みと、
いかにもな要素が、静と動とをメリハリ付けての映像に織り込まれながら、
テンポよく進んでいく。
途中、かなりグロいシーンもあって家族団らんで眺める作品ではないが、
異動後に抱え込んだあれやこれやのストレスもこれで一掃(笑)。

さて、音楽はというと、これまたハリー・グレッグソン=ウィリアムズの、
そう、ハンス・ジマーが好きな方なら納得のOSTに仕上がっている。
重低音の使い方や所々に美しくも切ないメロディを垣間見せながらの組み立ては、
「天使と悪魔」辺りを思い浮かべるけれど、
いかにも映画音楽らしい迫力はそれだけで大歓迎というもの。

それにしても週末の休みはあっという間に過ぎてしまう。
したいことがありすぎて時間が足りないなんて、
思えばそれ自体がとても幸せなことかも知れないと、
今までそんなことにも気がつかなかったんですか、と言われそうな日曜の午後だ。
 
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解放と開放と
新しい職場に移って早2週が過ぎた。
10年近く同じところにいて、ただ場所が変わる、
周囲の環境が変わるだけでも結構なプレッシャーなんだなあと、
その新鮮さを忘れていた自分に呆れてもいる。

庭いじりも良いが、雨の合間の晴れの日に、
少し外出してみようと思い立って久しぶりの銀座に。


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山野楽器の店頭に随分な人だかり、生歌!でアナ雪が歌われている。
日曜の大通りは歩行者天国らしいが、ほんとうはもっと静かな大通りが良かった、
などと、胸の内に我侭を吐き捨ててみた(笑)。

ものすごく久しぶりにLINNのshop、Legatoへ。
すっきりと整った中にもアットホームな雰囲気の店内は、
Tさんの細やかな工夫の積み重ねの賜物なんだろう。
audioのshopで長居したいと思えるお店は、わたしにとってはなかなかない。

去年発表されたAkudorik、そしてつい最近リニューアルされたDSのシステムですごす、
ちょっと、否かなり贅沢な日曜の午後。
ヴォーカルや大編成のシンフォニー、そしてフロイドの最新盤。

手を伸ばせば届きそうなニアフィールドでのリスニングだけれど、
響きはどこまでも自然だし、もっと音量を上げてもみたくなる。
先日のSpace Optimisationで感じたことが、もっと明確に強く感じられる空間。
まるで楽器が目の前にあるような、ピアノや弦楽器の響き。
ライブハウスの先頭に陣取って聴いてるような生々しさ。

技術、そして製品の進歩と言ってしまえばそれまでだけど、
ここまで来ると生演奏にしても録音のあり方にしてもその質がシビアに問われるようで、
いやもう大変な世の中になったんだなどとついつい独り言。

さざ波のようにわたしを包んで行く響きの重なりが何とも心地良く、
これ以上座っていては根が生えそうだと思っておいとましたのだが、
試聴の中で紹介いただいたTigran Hamasyanのピアノが、
わたしの部屋でも実に心地良く響いてるから、備忘録として残しておこう。
Tigran Hamasyanの最新作、"Mockroot"。


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無理矢理当てはめるとJazzになるんだろうか・・・。
初めて聴くアルバムなのに、ところどころ既視感があるのは、
きっと、わたし自身が一時アルメニアの歌謡曲やフォークロア漬けだったから。
いくつかのモチーフが形や見る角度を変えて繰り返し提案される様は、
彼の国の歌謡曲で強く感じている部分と根っこが同じに感じる。

寝ても寝てもまだ眠い春の夜には少し音楽が強すぎるかもしれないが。
このジャケットにあるような、懐かしい匂いのする水辺を彷徨う夢でも見ながら、
Tigranの奏でる音符と戯れてみる。
近所の桜は既に葉桜となったけれども、
彼のピアノの響きはどこか仄暗く、咲き誇る桜の花びらの陰影よりは、
雨に散った花のそれを思い浮かべる。
彼が87年生まれのピアニストと聴いて、一つ溜息、また溜息。
なぜ溜息が出るのかはわからないまま全12曲の演奏が終わる。
強い緊張が解かれ、一気に開放される様に思わず深呼吸の1枚だ。
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センセイの鞄
最近めっきり小説の類いを読まなくなってしまった。
時間がない訳ではなくて、多分咀嚼する気力が足りないんだろう。
長い短いによらず、手が伸びなくなってしまった。

それでいて、ずっと以前に、例えば10年以上も前に読んだものは、
どういう訳だか筋立てだの何だのをよく覚えていたりして、
思わず笑ってしまうのだけれども、ふと頭の中に思い出したりする。


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川上弘美さんの「センセイの鞄」は、人に勧められて読んだのだったが、
面白くて何度も読み返した1冊。
それがずっと後になって映像になっていることを知ったが、
そのDVDはレンタルにも出ていなくて、見る機会を逸していた。

huluというテレビ番組や映画作品をネットを通じて視聴できるプログラムの、
1月無料のお試しをしていたところ、
この作品が見られるというので早速。
柄本明、小泉今日子主演の「センセイの鞄」。


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2003年にTV放映用に製作された本作、
全編に漂う優しい空気は、読んで感じた行間の雰囲気そのもの。
水辺の多いこの街はいったいどこの街なんだろう。
風の匂いを感じながら、季節がゆっくりと過ぎて行く。
恋愛というにはあまりに淡く切ないけれど、
ああ、こういう時間があっていいんだなと、ふーっと息が漏れる。

物語が淡々と過ぎ行く様は、今時のドラマと比べて物足りないかも知れないが、
この時代にはこういう作品がまだあったんだなとほっとさせられもする。
もしこの作品をご覧になる機会があるとすれば、
まずは原作の方をぜひに。
短くてあっという間に読めてしまうのだけれども、
1行1行の台詞や描写から感じるものは個々様々だろうけれども、
やっぱり原作を、ぜひ・・・。

なんだかこれで、桜の季節を今年も無事終えられそうな気がした。
桜の潔く散っていく様にいかなる想いがあったとしても。


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