音の快楽的日常

音、音楽と徒然の日々
澄み切った冷たい朝に
木枯らしが吹くというニュースに、思わずカレンダーを眺めた。
気がついたら10月も半ばをとうに過ぎている。
木枯らしというのは11月と決めてかかっていたけれど、
そうか、もうすぐ冬がやってくるんだ。

風邪気味で早寝をしたら、翌朝は4時半過ぎに目がさめた。
たくさん寝られるというのは若い人の特権かもしれないが、
日がだんだんと昇り、空がじんわりと明るくなっていく様は何にも代えがたい。
風が冷たくて一枚羽織らないとベランダにじっとしていることはできないが。

二度寝するのも惜しくて、こんな澄み切った空気に似合う音楽はと探してみたのがこの1枚、
"Buenos Aires Madrigal:Argentine Tangos & Italian Madrigals"。





音の良さで知られるM.A.Recordingsからリリースされているので音は確かだ。
まるでその場の空気が立ち込めてくるような録音に思わず目を閉じる。
大編成でのタンゴも魅力的だけれど、響きをたっぷりと味わえる小編成も素晴らしい。
中にはヴォーカルの入った曲もあって、何というか、ひんやりと熱い。

そうこうしているうちに朝らしい日差しが窓から差し込んでくる。
体をうーんと伸ばしてみればいかにも休日らしい1日の始まり。
いつもは夜聴く音楽も、偶にはこうして早朝に小音量で楽しむのもいい。
秋にタンゴとはいかにもかもしれないが、一聴をぜひお勧めしたい1枚だ。



 
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訪問者
昼前からようやく晴れ間が見えた。
秋の天気だから仕方ないこととはいえ、
雨続きで草花の世話が行き届かないとどうも落ち着かない。

花をたくさん咲かせたいのなら地べたに足のつく生活を選べばいいのに、
それが簡単そうでままならない自分をもどかしく思う。
そういうものかも知れないと思う歳になってるのだろうし、
天候も何も自由にはならないことだって子供の頃から知っているのに。


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こんな高層階のベランダに咲く花に、最近いろんな訪問者が現れるようになった。
写真のような小さなハナアブや蝶、あまり嬉しくない蛾やコガネムシ。
時折ミツバチを見かけることもあり、一体どのあたりに巣があるのかと思うが、
近くに小さな寺の敷地があり、こんもりと緑の山になっているから、
どうもその辺りから「お越しになるのか」などと想像して楽しんでいる。


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ミツバチに似ているが胴が長くて大柄な蜂がよくやってくる。
どうやらツチバチの一種のようで、彼らはとても穏やかな性格の蜂らしい。
検索すると手に乗せた写真などが出てきて、
わたしもやってみたいとは思うけれども、
うっかり傷つけたりしてはいけないから、訪問時にそっと眺めるだけにしている。

最初は1頭だけだったのが、連れ立って来ていることもあり、
せっせと花粉を体に擦り付けては飛んでいく。
明日もまたやってきてくれるだろうか。
調べてみると、彼らはキク科の植物が好みのようで、
最近増やしたアスターやブラキカムがどうもお気に入りのようだ。

大通りを絶え間なく行き交う車の騒音の中に、
耳を澄ませば彼らの優しい羽音が聞こえて来る。
わたしが近くに行って覗き込んでいるのも気にせず、
無心に花粉を集める蜂の姿にただただ見とれて夕方になる。
彼らも巣に帰った。わたしも明日の準備をすることにしよう。


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よもやま | - | - | author : miss key
いつの間にか風が冷たくなって
風が冷たくて気持ちのいい季節になった。
寝違えで先日来肩の痛みが取れずにいたが、
こうして外を眺めていると、そんな鬱陶しさも紛れていく。

TIASが9月開催になって何年目だろう。
自分のアンテナだけを頼りにする音源探しには限界があって、
全然違った感覚や目的、嗜好で選ばれた数々のディスクに出会えるのは、
audioの新製品に触れる以上に楽しみだ。

今年、一番気に入ったのは女性ヴォーカルで、シーネ・エイというデンマークの歌姫。
何枚もアルバムが出ている中で、会場で聴いたのは傅信幸さんの講演で何度も流れた作品、
Face The Musicだ。





シンプルで洗練された伴奏に乗って、落ち着いた歌唱を聴かせてくれる。
普段、それほど女性ヴォーカルを聴かないけれど、
程よく艶っぽくて、それでいて重心がどっしりとしている。
楽器の演奏とうまく絡みあって、小さな音量で聴いていてもこの浸透力。
曲によっては透明感たっぷりの録音もあって、まさに秋の夜長のBGMにぴったり。
ちょっとお酒が飲みたくなるのは困ったものだけど(笑)。

映画を見るか、音楽を聴くか、迷うことが増えそうないい季節、いい夜。
明日もいい天気でありますよう。


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園芸店に出かける
この週末、都内のある園芸店に出かけた。
秋の花苗が沢山あるこの時期に一度は出かけたいと思っていたところで、
これまで、自宅から少しばかり離れているのでなかなか機会がなかったが、
小旅行気分で知らない町に出かけるのもいいものかもしれないと、ふと思い立った。

坂の多い街を2つか3つ越えたと思う。
静かな住宅街のまん真ん中なのに、
随分と広い敷地で、お店自体は大きなログハウスのよう。

早速売り場に行ってみると、
それはもう何というか、作られた売り場なのにまるで大きな庭のようでいて、
いろいろな花や木が並んでいるというよりは茂っていて、
多くの植物が息をしているのがわかるほど、人と植物の距離が近い。

もちろん手にとって見なければ売れないし買えないけれども、
その園芸店の売り場は、これまで出かけた店の中ではずば抜けて自然で、
花と土のいい香りがする。
何より沢山の蝶や蜂がやってきているのがその証拠、
うちの田舎にだってこんな光景はないなあと、思わずため息が出た。

見るだけのつもりであったが、ついつい苗を買い込み、
本当はもっと他所にも出かける予定であったのを、
炎天下の中、苗を弱らせてもいけないので、自宅に帰り戻った。





おしゃれなお店なんだろう。
英語で書かれた新聞に包まれて、苗はわたしの家に到着した。
今時はネットで検索すれば、どの種類の花にはどんな用土が合うのか等、
詳しく解説されている。
早速近所のホームセンターで不足分を買い足しに出かけたのは言うまでもなく。

ずっしりと重い用土や鉢を抱え、またしても炎天下の道を歩く。
天気がいいのも程度次第で、苗が乾燥仕切らないよう、慌てて植え替え作業をした。
久しぶりのいい運動、いい作業。
日が暮れかけてホッと一息、選んだのはロシアのヴァイオリニスト、ピカイゼンのBach。





Bachの無伴奏、秋はついついこの曲を聴きたくなる。
上のジャケットはCDのもので、わたしの手元にあるのは3枚組のレコードだ。
スロベニアの古いレコードを扱うお店で見つけたもので、
箱はボロボロ、解説書には前オーナーの書き込み多数、でも盤の状態はいい。
(箱などが綺麗であれば、買えない値段だったと思う)

たっぷりと歌われたような演奏や、感極まるような演奏が好きなら、少し違う。
淡々と弾き進まれていくBachに、たたただ身を任せたい、そんな時にこれ以上ない演奏。
夏の終わりに、緑に覆われた古い公園の片隅で、そっとこんな音楽が聞こえてきたら・・・。

暑かったのも荷物が重たくて腕がちぎれそうだったのも忘れ、
とっぷりと日が暮れていくのも構わず、じっと聴いている。
人が見たらなんと悲しげなと思うかも知れないが。

それにしても目に浮かぶのはあの「庭」の様子だ。
わたしもいつか、小さくとも花に溢れ、虫が集まる庭を作りたい。
この週末のことは、ずっと覚えていよう。




 
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