音の快楽的日常

音、音楽と徒然の日々
Albufeira
今年も残すところわずかとなった。
今日のような良く晴れて冷たい日の空を眺めていると、
学生時代によく聞いた北欧のJazzを思い出す。

バイト先に行く途中にあった中古盤の店で、
タイトルや曲名の意味もわからず、ただジャケットの絵柄だけで選んでいただけの、
そんな盤の中には、今でもふいに思い出すフレーズがいくつもある。

時だけがうんとたくさん過ぎ行きて、わたしの心持ちは大して変わってはいない・・・。
たまには北欧のJazzをということで選んだ1枚、Guttorm Guttormsen Kvartettの""Albufeira"。


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当時のわたしは、ゼロというか、O(オー)に斜め線が引っ張ってあると北欧、
みたいなレベル感で盤選びをしていたけれど、
こんなジャケットの盤があったら、きっと無理しても買っただろう。

すうっと抜けるような透明感と遠くの灯りのほんのりとした温かみ。
北欧の音楽に惹かれてたとしたら、きっとそんなところに違いない。
このアルバムの1曲目もまさにそんな曲で、今時のことばで言えばとてもスピリチュアルだ。
リーダーのGuttormsenはノルウェーの演奏家/作曲家なんだそう。
それにこのAlbufeiraは当時の発売枚数が少なくて、CDでの復刻版はありがたい限り。

寒い季節にエアコンを入れた部屋の中で冷たいアイスを食べたりする矛盾を抱えつつ、
今夜は部屋の窓を開け放し、
ぐっと空気の冷えたこの部屋でそろそろと流れるピアノに包まれる。
あああと数日で今年も終わってしまうよとあれこれ振り返りつつ。
明日もまたいい天気でありますよう。


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others (music) | - | - | author : miss key
ヒカリという名の馬
師走の微妙な時期に香港を訪ねたのは何年前のことだろう。
最近は現地に行かずとも観戦できる。
臨場感はないが、部屋に居ながら応援できるいい時代になった。
今日は香港競馬のG1デー、今年もたくさんの馬が日本から参戦した。

その中の一頭、エイシンヒカリ。
ヒカリと名付けられたのは、これほど快速で逃げる脚色をわかってのことだったのか。
わたしは芦毛の馬が好きだ。
理由はこれだというのは特にないが、わたしもごま塩頭だから親近感がわくのかもしれない。
ヒカリも最初は、何頭もいる芦毛馬の一頭だったが、
彼のそのなんとも言えないやんちゃなレースぶりに一瞬で魅せられた。

頑固な性格が見て取れるレースぶり。
騎手から促されているから走るのではなく、彼は走りたいように走る、
少なくともわたしにはそのように見えた。
まっすぐ走りたくないときもあったようだが、それでもきっちり結果を出した。
そして秋の天皇賞、強豪馬に混じっての大舞台に駒を進めるも、
この時ばかりはいつもの彼らしさは鳴りを潜め、着外に沈んだ。

ヒカリがいつも勝てるわけでは無い、競馬に絶対は無い、そう思っていても、
府中のコースを駆ける彼の様子を何度見ても腑に落ちない、
そんなはずはない、距離が長いとか、能力の壁だとか、
翌日のレース評はどれも腑に落ちなかった。

***

香港の競馬場は独特の雰囲気だ。
香港という土地のもつ熱気もあるだろう。
それでもヒカリは初めての遠征先で体調を保ち、好調が伝えられていたが、
レースでの人気は意外なほどに低かった。

しかしながら、彼は人間のさまざまな杞憂をよそに、いつになく落ち着き払い、
自分の影を他馬に踏ませることなく、素晴らしい逃亡劇を決めてみせた。
平坦なコースも彼に合ったものだったかもしれないが、
最後の直線ではさらに加速し、終わってみれば優勝タイムはレースレコードだった。





彼は逃げる。結果は付いてくる。
記念の馬服をまとい、表彰セレモニーの時も、彼はまだまだ走りたいのか、
少し落ち着かなかった。
それもそうだろう、普段とは何もかも違うのだから。
今日ばかりは騎手の気持ちも汲んだのか、騎手の話ではレース中はもっと走りたい気持ちを抑えたのだそうだ。
嗚呼それにしても。
大観衆の目を釘付けにして、今日も彼は異国の地で逃げた。
ヒカリ、ほんとうにおめでとう。


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よもやま | - | - | author : miss key
Spectre
先行上映の感想があまりにも↑↑だったので、とにかく見なくてはと、
寒い中いそいそと映画館に出かけた。
ひょっとしてもうすぐ封切りのStar Wars一色かと思っていたがそうでもなく、
行ってみればいつもの映画館だった。





かなりの長尺をあれだけ満員のお客さんがじっと正面を眺めている様子はある種異様だ。
007は振り分ければアクション映画なのだろうけれど、
全体に色味も音も抑えめなのに、
画面の中でぐっと存在感を増したBondの立ち振る舞いに胸熱くしたのはわたしだけではないはず。

イントロは何やらオーソドックスなのに少々驚いたけれど、
テーマ曲までの独特の入り方にいつも期待してしまう私は、
歌い手は一体誰なんだろうと気になりながらも、
だれが歌っているのかは映画を見るまでネタバレを避けてきた甲斐があったというか、
ああなるほどそうなんだあとその歌い出しに納得至極で。
007 Spectreの挿入歌Writing's on the Wallを歌うのはSam Smith。





 


この美しいメロディを耳にして、最後のシーンはきっと印象的なものに違いないと思った。
ネタバレしてはいけないのでなかなか書きづらいが、
主人公が女性と共に消えていくシーンがキザにならない人って、
実はそうはいないのではないかと、本来の筋とは違うところに感心したりもして。

筋と違うといえば、男性はスーツ姿が決まっているとなかなかに素敵で、
スーツ姿が素敵な男性はもうそれだけでいいやとは言わないけれど、
先日のKIngsmanでもそうであったが、やっぱりかっこいいわけであって。

できれば、ダニエル・クレイグ版007の全作品を一通り見てから、
最新作Spectreをご覧になることをお勧めしたい。
いろんな意味で幾重にも楽しめること請け合いだから。

サントラは前作に引き続きThomas Newman。
スカイフォールみたいだけどおとなしい、という感想がそこここにあるけれど、
サントラを耳にしてシーンが浮かんでくる様は、出汁のよく効いた煮込みのようでもあって。
ああサントラっていいよなあとしみじみしたのだった。

ちなみにSamの歌う挿入歌はサントラCDには入っていない。
別途発売のSam SmithのSingleで聴けるのでご注意を。


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