Local Objects | 2016.12.18 Sunday |
バラの葉摘が始まった。
これが始まると本格的な冬だなと思う。
バラのある生活を始めて何年になるだろう。
最初に買い求めた苗は幹もしっかりしてバラが樹木であったことを思い出させてくれる。
この週末、本当に空気が凍るように冷たい。
花の世話をしていると束の間それも忘れるけれど、
作業が終わって一息つくと、吐く息の白いのに驚く。
冷たい日だからというのではないけれど、
クラシックギターのソロアルバムが聴きたくなった。
Zsofia Borosの"Local Objects"。
Borosは80年生まれのハンガリー出身のギタリスト。
彼女の弾くギターはどこまでも透き通った美しい音色だ。
選ばれた楽曲はいずれも現代の作曲家のもの。
強い主張はないけれど、ひっそりとした中にも仄かな温かみあるメロディ。
そしてどこかメランコリックで懐かしい。
眠れない夜のお供がまた1枚、また1枚と増えていく。
それが喜ばしいことなのかどうかはわからないけれども。
悲しきワルツ | 2016.12.11 Sunday |
半年以上前から楽しみにしていたコンサート。
このために風邪をひかないように、体調崩さぬよう、万難を排してやってきた。
この日を心の隅に置いていたから何とかやってこれたようなもの。
彼の演奏を聴くようになってからというもの、
新しい音楽の扉が次々と開かれていった。
聞いて知っている曲なのに、全く違った曲にも聞こえるほど、
無意識の思い込みをあっという間に粉砕してもくれる。
何かに囚われているところからあっという間に解放してくれる。
以前はピンともこなかった曲が、彼の演奏で聴いたその晩から、
忘れ得ぬ1曲となることも一度や二度ではなくて。
公演前の静かな練習の風景もすっかりお馴染みではあるが、
あの陰影に満ちた響きを本番の公演でもぜひと思っていたが、
何とアンコールで選ばれたのがシベリウスの悲しきワルツだった。
どうしたらあんなに切なくも美しい響きでホールを満たせるのだろう。
叙情に溺れるのでもなく、瞳の奥に秘めた静けさにもにて、
一音、一音、まるで遺言のようにして彼の指を離れていくのだ。
贅沢な時間はあっという間に過ぎる。
もう少しだけ聴いていたかったなというのはもっと贅沢かもしれない。
心の整理を促されるようなひと時、思わず寒空に立ち尽くす。
嗚呼またしても夢に見る晩が一つ増えたことに海より深く感謝。
Ghost | 2016.12.04 Sunday |
Amazon Kindleの読み放題おためしというのをやってみた。
月額980円、Apple Musicみたいなものだなと思って軽い気持ちだった。
10件まで読みたいものを登録でき、手元のiPadで早速やってみた。
それが。
画面で読むというより眺める行為は、想像していたものと結構違ってた。
本を読むという行為に何を求めているかにもよるのだろうけれど、
少なくとも読書はわたしにとって紙を一枚一枚めくりながらのものだった。
これまでもそうだったし、きっとこれからもそうであり続ける、
目がこれ以上なく疲れた後、それが嫌というほどわかった3時間だった。
時間とお金がそこそこできた今、今度は目が疲れやすく読み進められない。
若い頃は時間と体力はあってもお金がなくて。
読みたい本を買って読みたいなあと思っていたことが実現できるのに、
目が疲れて読めないとは、みたいな(溜息)。
***
光が低く斜めに差し込む午後のいい時間。
いかにも冬という澄んだ空気と空の色、例えばこんな音楽かなと選んだのが、
Radical FaceのGhost。
electric presidentの一人、Ben Cooperのソロユニットによるアルバム。
2曲目のWellcome Homeという曲の、なんとも郷愁を誘う様にひかれる。
アコースティックギターの伴奏にフォーキーな歌声。
体の芯から溢れるようにして迸るメロディが軽快なリズムに乗って。
車の流れる音が絶えない道路の傍に住むようになって、
ベランダに作った小さな緑の庭を眺め、
こんな音楽を聴きながら過ごすほんのひとときが、
生まれ育った土地の匂いを思い起こさせてくれる。
気がつくともう12月。
気が向いて窓を洗ってみれば、差し込む光の清々しさに驚くほど。
年末と言わずに普段から掃除くらいすればいいのだけれど。
咲きに咲いた黄色のビオラがモズのつがいに坊主にされて寒々とした様も、
こうしてみればなかなかの風景(というのは負け惜しみか)。
この寒さの中、ヒナソウの健気に咲く姿に元気をもらってまたがんばろう。