音の快楽的日常

音、音楽と徒然の日々
Babel

GWの初日、どこにいっても人混みで凄い事になっているだろう、

そうわかっていても、重い腰があがることなど滅多にないから。

朝起きていい天気だったので、いそいそと荷造りし、上野へ。

上野で丸1日過ごした土曜。

 

 

 

 

まずは東京都美術館で開催中のブリューゲル「バベルの塔」展へ。

ただいま混雑中、という案内を横目に見ながら、早速企画展エリアに。

この日のために買ったパピリオという50cmまで焦点の合う双眼鏡を携え、

いざ、いざ。

 

時系列に展示された当時の作品に、あの奇天烈というか、一度見たら忘れられない、

Hieronymus Bosch(Amazonオリジナルの刑事ドラマではなく)の作品がなんとも。

あまりの観覧者の多さにじっと立ち尽くすわけにもいかず、

蟻より遅い歩みにも苛立つことなく、じりじりとこれという作品に迫り、

離れるのを惜しみつつ、どうしてもの場合は一旦列から離れて双眼鏡を覗く。

否、最接近でもつい覗いてしまう。裸眼はとうに老眼がひどくなって、

あの館内の暗がりでは辛いので。

 

パピリオパワーでもって、ああ一度こうして覗き込むようにしてみたかったよ、

というのをやっと実現できた。

好きな絵は頭に入っているので、もちろん全体を焼き付けるようにして眺めてもみたが、

細部のディティールを、画集ではなく本物で凝視してみたかったのだ。

 

それにしても、バベルの塔よ。ああ、塔よ、塔よ!

絵に見入っていると、否、魅入られていると、

わたしの体がすうっと小さくなって、一つの窓に吸い込まれていく。

レンガが下から上に揚げられる様など、一体その時代にどうやって思い描いたのか。

人間の想像力ほど無限のものはないと、打ちのめされるほどの圧倒力で迫ってくる。

そして、ブリューゲルの絵に共通の、独特の彩りの美しさ。

解説コーナーでは、素晴らしい映像も用意され、なんとも贅沢に尽きる展示だった。

 

来年初頭に予定されている本格的なブリューゲル展、嫌が応にも期待せずにいられない。

長生きはしてみるものだ、これまではヨーロッパを転々として観て歩くしかないと思っていたのだが。

 

特設ミュージアムショップで図録やその他お土産を買い求め、かなりの荷物の量になりつつ、

次は国立科学博物館の大英博物館展へ。

荷物を一旦コインロッカーへ預ければ良いものを、やはり人混みに圧倒され、否、

どうしても早く見たい展示があって、気が逸るものだから、

重たい図録や何やを抱えつつ、またしても蟻の歩み状態の観覧へ。

これという展示の前は、なぜかあまり人気がなく、一瞬ではあったが独占状態に。

目の前に確かに展示された銀色の昆虫、生きているのを当時見て捕獲した人はどう思ったのだろう。

 

数時間に及ぶ「筋トレ」状態を脱するべく、博物館の企画展を観た後は素直に帰宅した。

それでも丸1日上野公園のあたりで過ごしたのは一体いつ以来のことだろう。

緑が多く、そういえば東照宮のぼたん苑を見る余裕がなかったのは少し残念だ。

 

今こうしてBabelの図録を見ていると、もう一度見にいこうかとも思う。

ブリューゲルの作品には、眺めて考えて、そして絵を覗き込むあまり、その絵の中に吸い込まれてと、

一度で三度美味しい愉しみが充満している。

その世界の一つのきっかけとなったのであろうBoschの作品を見ていて、

きちんと聖書を読んでみようかと思った。

思えば去年の今あたりはそういう心の余裕など全くなかったが。

上野での展示は7月2日までやっている。やはり、もう一度行こう。

 

 

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また1年が始まる

年度を区切りに働いて何年になるだろう。

桜が咲くほんの数週の間に過ぎ去る春が、

こんなに短いと感じるのはここ数年だけれども、

この時期、仕事も人間関係も改まり、日々緊張の連続。

 

疎遠になりつつある人々の近況が漏れ伝わってくるのもやはりこの時期で、

歳を理由に何事も億劫になりつつあるわたしの周囲では、

チャレンジに成功して新しい道に進む人、

思い切った選択をした人と、少し羨ましいくらいの新局面を迎えた方々がいる。

 

うらやましいなどと言ってる暇があったら自分も何かチャレンジしよう。

そうはいっても全く新しいことは難しいから、

すっかり忘れつつある語学をやり直そうと決めた。

 

少し気分を変えてみよう。

そう思って新譜から選んでみた、John Mayerの"The Search for Everything"。

 

 

 

 

歌声もギターもリラックスした中にいい緊張が。

ここのところ、例えば店頭の試聴台で新譜をチェックなんてことは滅多にしないけれど、

肩の力が抜けてきてからの方が、これというアルバムに行き当たるような。

音楽の方からこちらにやって来てくれるような。

 

ベランダに出れば、マーガレットにオステオステルマムが満開で、

ジャスミンの蕾は膨らみ、バラは葉を広げながら空へ空へと伸びている。

縮こまってる場合じゃないと彼らも言う。

そうはいってもなかなか体が動かないけれど、

せっかくいい季節になったのだから、しのごの言わず一歩踏み出してみよう。

二歩目は意外に楽にいけそうだから。

 

 

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力が湧いて出てくるような

毎年楽しみにしている近所の桜が無事に咲いた。

道路にせり出すようにして伸びた枝が電線にかかってしまい、

去年の夏、やむなしの強剪定で、体力を失いがちな高齢樹だけに心配だった。

 

 

 

 

ここに越してきた頃の勢いはさすがに望むべくもないが、

それでも種類毎に(そう、異なる種類が1本ずつ植えられている)、

ほんの少しずつタイミングをずらしながら、見事に花を咲かせていく。

パッと散るその際まで陽の光を受けながら花の潔さを嫌という程思い知らせてくれる、

桜ほどそんな花もないだろうと、またしても思い返している。

 

 

 

 

さて、今日という日はわたしにとって区切りの1日。

いつもの日曜と全く変わりのない1日であったが、

せっかくだから、これからの1年に向けて、力が自然と湧いて出てくるような歌を聴こう。

Tom Odellのアルバム、"Long Way Down"。

 

 

 

 

最初に彼の歌を聞いたのはドラマの挿入歌だったが、

彼の容姿を見たときは少し驚いた。

もっと力強さが見て取れる体つきを想像していたから。

英国の SSW、このアルバムがメジャーデビュー作品とのこと。

 

憂いに満ちた歌声、時に血肉が芯から震えるような力を湛えて。

この作品時、彼はまだ22歳。

22の時、わたしは彼のようには自由にそして深く感じることはできなかったよ。

それを、そのことを、今日のわたしは忘れ物とは思わないけれど。

そして決して楽ではないだろうこの1年、1日1日を地味に積み重ねていこう。

明日もまたいい1日でありますよう。

 

 

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