音の快楽的日常

音、音楽と徒然の日々
そのまま生きる

その昔、五月病とよく言ったけれど、何となく憂鬱で働きたくない、出かけたくないetc...

環境変化に晒される人の多い、春という時期を過ぎてみたら、

緊張感が解けた後、持って行きようのない気持ち、モチベーションの上がらなさ、

それらに体に溜まった疲れがさらなるブレーキとなって・・・。

 

自己啓発本によれば、気持ちのやり場をなくさないよう、日記を書こう、

音楽を聴こう、画面を眺めるのをやめて本を読もうetc...

確かにそうかもしれない、なるほどと思えるけれど。

 

今日の1枚は、どういうわけか(否、理由がわかっている、自覚ある場合も含めー笑)

なんだかやる気がでないね、という時にいい感じで聴けるアルバム、

六角精児バンドのメジャー盤第2作の「そのまま生きる」。

 

 

 

 

1作目の「石ころ人生」があまりにもぶっ飛んでいるから、

本作を耳にして、あれと拍子が狂う方もおられるかも。

スルメのようにとは言わないが、今回作の緩さが赦しにも似ているんだろうか、

張り詰めた神経が勝手にどんどんと解れていくのが気持ちいい。

 

1作目は聞いていてVocal六角さんの念のようなものがどんどんと突き刺さり、

彼の、何というか包み隠す所のないエッセイの数々が音になったんだと妙に納得もしたが、

「そのまま生きる」はその表題通り、

お気楽とは違う、いい意味で力の抜けた明るいブルース仕上げ、

何だか今回はギターがすごいな、と思ったら、元憂歌団の内田勘太郎さんが参加とのこと。

このアルバム、好き嫌いはものすごく出るとは思うが、このゆる楽しさは中々体験できない。

 

音質も、変にいじらずストレートでオンな感じが、小さな小屋のライブを聞いているようで、

こんな天気の悪い日に出かけもせず鬱々と部屋で縮まっている自分が何だか可笑しくなる。

自然と笑えてしまうのだ。

歌の文句を追いかけると、これ笑っていいんかな、と思うところもなくはないが、

さすが呑み鉄の六角さんのバンドだ、これでいいんだ(これが、ではなくて)と。

 

このCDは去年の暮れに出ていて、まだ普通にamazonなんかで手に入る。

ネットフリマで法外な値付けで出されたりしているのがよくわからないが、

Spotifyでも聴けるのでお試し気分でぜひ。

※残念ながら「只見線のうた」は入っていません!

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初夏という季節が

初夏という季節が一体いつ頃をいうのかわからなくなった、とはここ数年思うこと。

気候が随分と変わってきたな、と思っていたら、

今度は新しい生活様式ということばが巷に溢れかえっている。

柔軟で臨機応変ができる方が羨ましい。

取り残されないように、と焦る気持ちが嫌なので、

我が儘ではない、許される範囲で自分の調子を保っていければと思う。

 

休日に在宅の時間が増えて、言われるほど苦にならなかったのは幸運だろうか。

レコードプレーヤーのメンテ期間を含め、

盤をしまってある棚の整理が思いの外できたのは良かった。

家にいてwebでいろんなものを探せてしまうから、

もう手元にあるものをダブって買ってしまうとか、ジャケ違いの盤などやってしまいがちだ。

若い頃のようにまとめて音源を買うことはあまりないが、

盤の状態チェックも兼ねて、1枚1枚引っ張り出しては眺めてみた。

 

もう人にあげてしまったかも、と思っていたものがまだあったり、

やはり、念の為、ではないが2枚しっかり同じのがあったり(これはダブりではなく)。

特に、自分のお小遣いで買った70〜80年代のポピュラーでは、

今でもCDを買い足したりして聴いているものが少なくない。

 

例えば、今、現役で歌っている国内の方なら1番かな、と感じる玉置浩二さん。

安全地帯のヴォーカルから一人の歌手に、いつ頃から意識しただろうか。

そんな彼の音源が新たに1枚のレコードとして編まれた。

タイトルはシンプルに「玉置浩二ベスト」(Stereo Sound社 SSAR-045)

 

 

 

 

このジャケットの写真を眺めて、

ああそんなに時間が経ったんだなあと思わずため息が出たけれど、

歌唱の素晴らしさは何ら変わらず、むしろ歳を重ねて進化しているのでは。

 

このベスト盤でうれしいのは、単なるベスト盤ではなくて、

歌い手への思い入れが十二分に伝わってくる選曲と曲順になっていること。

A面にソロ活動の初期の頃の作品からバラード集として、

かたやB面には2015年のライブ音源を。

また何といってもCDシングル等でしか聴けなかった「行かないで」が入っていること。

 

そして、このレコードの音質には正直驚いた。

何が何でもハイファイ、というのではなくて、聴いていて心の底からほっこり胸熱サウンド。

うまく言葉にはできないが、古いレコードの鳴り方とは違う音の広がり方。

今の技術でもって作られたすごいレコードなんだなあと。

もし残念なことがあるとしたら、

アナログレコードでしか出てないので聞ける方を選んでしまうし、

(※安全地帯のベストも同様に2枚で出ていて、こちらはSACDハイブリッド盤も出ている)

価格もこれだけ手の込んだアルバムなので高額になってしまってはいるけれど、

彼のファンでレコード聴ける方なら1枚持っていて間違いがないと一押しだ。

 

出版元のサイトでは、「群像の星」についても弾き語りVer.で発売予定とのこと。

わたしは会社の回し者ではないし、いわゆる企画モノにはちょっと引き気味で、

3月に限定で出ているこのレコードも今頃になって聴いているぐらいだから、

大きな声で言えることは何もないのだけれど、

いい音源は持っておいた方が幸せになれるという法則が大勢の方にも通じると信じて。

今日もいい音楽、いい歌で締めくくれた。明日からまたがんばろう。

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revages

待ちに待ったレコードプレーヤーが戻ってきた。

オーバーホールや部品(この部品というか仕組みには名前がついていて、Karouselという)

の更新をお願いして約2週間ほどの「不在」を経て。

audioの装置は中古で探すことが多いわたしにとって、数少ない新品で買ったプレーヤーで、

自分のものとして手に入れたものとしては2代目のレコードプレーヤーになる。

10代の頃、実家にあったモジュラーステレオはほぼ独り占めだったから、

これを入れれば3代目か。

 

今のプレーヤーは思えば使い出してから10年以上経っていた。

ピンクフロイドの再結成ツアーがあるということで昼食おにぎり1個みたいな無理貯金して

貯めたお金が、結局ツアーは開催されず行きどころを無くしたときに、

ややっと目に留まったのがこのプレーヤーだった。

その前に使っていたのが気に入らないわけでも何でもなくて、

寧ろとてもいい音でいい調子だったのだけれど、どうしようもなかった。

 

以来、楽しい日も嬉しい日もしんどい日も辛い日も悲しい日もずっと一緒だった。

でも、こうして何もかも見違えるようにピリッとして戻ってきたのを見たら、

長いように思えたその2週間も、あっという間のことだったように思えた。

 

少し話がそれるが、機械とか装置とかの、

人の手が介在し、細やかな配慮があって手元に届き、こうして動作する様が好きだ。

元の部材の一つ一つが意味のある形で、理想に近い形に作られ、組み上げられている。

エレクトロニクスの素晴らしさも、もちろん大きいのだろうけれど、

金属の塊から削り出されて生み出されたその形自体が本当に美しく素晴らしいと思う。

レコードプレーヤーに執着があるのは、そういうところが動作や外見に強く現れるから。

ほんとうに滑らかに静かに回っているターンテーブル、

そして出音の確かさは見た目のそれと完全につながっていて、信頼とか安心とか、

一言では表せない揺るぎなさとなる。

 

 

今日、取り上げる1枚は、どうして最初からレコード出してくれないかな、

とちょっと残念に思ったアルバム、Jean-Louis Matinierのアコーディオンと

Kevin Seddikiのギターでのデュオ作品、"Rivages"。

 

 

 

 

最近はSNSが便利で、フォローしているレーベルの新作が、

試聴リンクとともにどんどん紹介される。

ECMもその1つで、アルバム買う前からちょい聞きがいいかどうかは別として、

これはぜひ早く聞いてみたいと予約ページを覗いたら、

ECMで最近よく出るアナログレコードでの発売がない!

もう少し待ってみれば出るかな、とも思ったが、試聴した曲がものすごくよかったので、

まあいいか、寝る前の1枚にするならCDも欲しいということで購入。

 

動きや表情の豊かなアコーディオンに、これまた万華鏡のようなギターのアンサンブル、

火花が散るような演奏合戦ではなくて、互いにしなやかに交わるような。

音の響きもさることながら、演奏の背景というか空気がなんとも言えず嫋やかで、

これはぜひともレコードで聴いてみたいと、聴けないのが残念で仕方ないほどで。

 

レコードの方が音質が良い、ということではなく、これはもう好き嫌いの世界に近い。

良い音というか、聴いていて間違いなく心地よく、これが好きだと迷うことのない音だ。

もちろん盤にも良し悪しがあるから全てがそうではないが、

わたしがずっと聴いてきたアーティストの全盛期にはCDはまだ出てなくて、というのが大半。

音楽を聴き始めた頃のメディアが偶然レコード(そしてカセットテープ)というのがあるけれど、

子供の頃美味しいと思ったものは忘れないというが、それと同じような気がする。

 

今回のオーバーホールでうれしいというか悩みが1つ増えた。

レコードはCDより大きいし、ましてやダウンロードと比べたら見た目の「がさ」がある。

かたや部屋の収納力には限りがあり、引越し時に用意したレコード棚はもう一杯だ。

でも、聞きたい新譜がレコードで発売されるのなら、多分レコードで買ってしまうだろう。

もちろん古い音源もレコードで買うだろう。

かといって、あまり聞かない盤を手放すというのもどうか。

わたしはまだそのレコードに入っている音を全部聞いたわけではなかったことが今回分かってしまった。

手元の1枚、1枚にどんだけの音が入っているんだろう、そう思っただけでうれしくなる。

レコードってすごい。レコード万歳!

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